【耐震性だけでは足りない】知っておきたい液状化の危険度と、発生した場合の対策について

正月ムードを一瞬で吹き飛ばしたマグニチュード7.6、最大震度7を記録した能登半島地震が発生したのは2024年1月1日16:10のことでした。

それ以降も最大震度5強の地震が続き、罹災された方々は気が休まる暇もありません。

何より、情報が集約されるにつれ、被害の規模が次第に明らかになり、その甚大さが人々の心に沈痛な影を投げかけています。

現状では被災された方々の苦労を慮り、また不眠不休で必死に救助活動を行う方々に敬意を払うと同時に一人でも尊い命が助かるよう祈るしかありません。

改めて解説するまでもありませんが、日本は地震大国です。

気象庁によれば全世界で発生したマグニチュード6.0以上の地震、その17.9%は日本周辺で発生しているとされています。

また、国連開発計画(UNDP)が公開したマグニチュード5.5以上の地震が発生率ランキングによれば中国、インドネシア、イランに続いて第4位とされています(1980~2000年までの年平均回数)。

気象庁は日本付近で発生した主な被害地震のデータを公開していますが、毎年のように震度5以上の地震が発生しています。

被害地震のデータ

日本に在住して、一度も地震を経験したことがない方はおられないでしょうし、被害地震レベルの地震に遭遇した経験を持つ方は少なくないでしょう。

日本が地震大国であることは無意識下で理解しており、また自身も経験があるはず。

それなのに、震災に対する備えについてはあまり芳しくないように感じます。

防災に対する意識調査は、官民ともよく実施されていますが、それらの調査結果を見ても災害用の持ち出し袋などを準備しているのは全体の4割程度に留まり、残りの6割は準備していないようです。

また災害発生時の避難場所についても同様で、およそ6割の方は避難場所を知らないと回答しています。

住宅に関して言えば、新耐震基準以降の住宅は震度6で倒壊・崩壊しないレベルで建築されています。

もっとも、2025年4月から施行される建築基準法改正以前の、木造2階建て以下、かつ延床面積500㎡以下については、実質的に構造計算が免除されているような状態が続いてきましたから、耐震性について絶対とまでは言い切れませんが、それでも旧耐震よりは堅固でしょう。

建築確認手続き,4号特例

ですが建物の耐震性がどれだけ高くても、液状化が発生して土台ごと傾けばなすすべもありません。

また地盤改良工事を実施したとしても、地盤の深い部分で液状化が発生すれば、建物は傾いたり倒壊したりする可能性があります。

例えば、2008年の長野県北部地震では、地盤改良工事を実施した建物でも、液状化の影響で傾いたり倒壊したりする被害が発生しています。

私たち不動産業者には宅地建物取引業法の定めにより、ハザードマップによる水害リスクの説明は義務付けられていますが、液状化リスクについてはその限りではありません。

地盤に関しての説明は、建築をする立場の人間が行うものだとの暗黙の了解でもあるのでしょうか?

ですが既築住宅の場合、建築側の人間が絡むことはないのですから、結局、顧客は購入を検討する物件の地盤がどのような状態なのか、また、建築時に地盤保証を受けているのかどうか、そして保証付きであったとしても、その内容がどのような物かを知らずに購入しているのです。

また防災意識調査の結果によると、災害用の持ち出し袋を準備している人の割合は、年代別では、60代以上の人ほど高く、20代以下の人ほど低くなっています。

地域別では、都市部に住む人ほど高く、地方部に住む人ほど低くなっていることが確認できます。

説明が義務ではないとしても、私たちは地盤やこれらについての知識を、もう少し深く理解し顧客に説明する必要があるのではないでしょうか?

そこで今回は、震災に備える意味合いとして液状化リスクや住宅の地盤保証を中心に解説したいと思います。

液状化はなぜ起きる、そして調べ方は?

液状化とは、地震の発生により地盤が液体のような状態になる現象のことです。

堅固に見える地盤の中には水(地下水)があり、その表面は地下水面と呼ばれます。

地盤は地中で砂粒同士がかみ合い、お互いを摩擦する状態で安定を保っていますが、地表面近くにこの地下水面がある場合、地震による振動により一時的に砂粒のかみ合いが外れ、地下水脈と混じり合います。

このドロドロに混じり合った状態が液状化です。

液状化,図解

つまり液状化は、地下水脈が地表と近いほど発生する可能性が高く、また堆積がゆるい砂地盤ほど発生頻度が高くなるということです。

具体的には埋立地、干拓地、河道を埋めた土地、砂丘や砂州の間にある低地などの場合は特に注意が必要なのです。

地形区分に基づく液状化の発生傾向

それでは、液状化リスクについて調査するにはどうすれば良いでしょうか?

最も信頼性高い情報は「地区区分に基づく液状化の発生傾向図」「都道府県液状化危険度図」を閲覧することです。

これらは液状化マップ、液状化ハザードマップ、液状化防災マップなどの名称で公開されており、50m~1km四方の土地を一つのメッシュとして危険度の評価をしているものが多く、都道府県や市区町村単位から公開されています。

検索サイトで「〇〇市、液状化マップ」と入力すれば検索できますが、自治体によっては見つけにくい場合もあります。

その場合は各自治体の防災担当に照会すると良いでしょう。

液状化マップ

各自治体で作成される液状化マップは、特定の地震を想定せず液状化の発生傾向を相対的に確認するためのものです。

ですから造成前に沼地であった地域などについて、その土地履歴が確実に反映されている訳ではありません。

ですから「怪しい」場合や、確実に危険度を知りたい場合はボーリング調査やコーン貫入試験などを実施して、液状化が発生する可能性が高い地層(砂がちの土)について、その深さや厚さを調べる必要があります。

微地形から見た液状化可能性

もっとも費用面などを勘案すれば、戸建住宅の場合に限られるものの、ボーリング調査ではなくスウェーデン式サウンディング(SWS)試験による簡易調査も有効だとされています。

スウェーデン式サウンディング(SWS)試験による試験可能深度は地表から10~15メートル程度ですが、戸建における液状化被害は地表面の変状が影響していることが多いからです。

ちなみにスウェーデン式サウンディング(SWS)試験の費用は、概ね10~15万円前後が目安です。

通常、スウェーデン式サウンディング(SWS)試験は新築時(建替含む)に実施し、敷地内の4隅と中央の5点を調査しますが、住宅がすでに建築されている場合は中央の調査ができません。

それでも目安となる情報は得られますから、敷地の液状化が心配な方には有効な調査だと言えるでしょう。

調査結果で液状化の危険性があると判定された場合の対策

さて前項の調査により液状化の危険性が高いと判定された場合の対策について解説を続けます。

結論から言えば既存住宅であっても地盤改良工事は可能です。

ですが費用が過大になるのが難点です。

通常、新築時には液状化対策として地盤改良工法(締固め、固化、置換など)を採用します。

液状化,対策

既存住宅でそれらを採用するためには、住宅の水平を保持したまま基礎下を掘り下げるほか、曳家工法でいったん移動させるなど大規模な工事が必要になります。

工事を実施するには敷地面積が必要であるほか、その費用を勘案すれば現実的とは言えません。

そこで考えられるのが薬剤注入工法です。

薬剤注入工法とは、混ぜ合わせることにより硬化する性質を持った薬剤を基礎下に注入することで、地盤強度を増す工法です。

ですがこの工法は、基礎下の全面に薬液を浸透させるのが難しく、そのため未固結部分が残る可能性が指摘されています。

また硬化の持続年度も地質の影響を受けると指摘もされており、必ずしも万全な対策とは言えません。

第22回国土技術開発賞 最優秀賞を受賞した㈱竹中土木/ケミカルクラウド㈱の「住みながら宅地境界を地盤改良壁で囲む液状化対策工法」も興味深い工法ですが、まだ一般的ではありません。

結局のところ「既存住宅の地盤改良工事は可能だが費用が過大となる。薬剤注入工法は一定の効果に期待できるが、かならずしも万全とは言えない」が、一つの結論として導きだされます。

それを踏まえれば、液状化が懸念されるエリアの住宅を斡旋しない、もしくはその危険性について十分に説明し納得を得てから取引を行うのが懸命なのかも知れません。

例外としては対策工事を実施して保証を得ている住宅ですが、その場合でも保証期間には注意が必要です。

通常、地盤保証は基礎工事が開始されてからスタートし、引渡から10年をその期間としている場合が多く、築後10年以上を経過している場合、すでに保証が終了している可能性があります。

地盤保証会社によっては追加料金(1万円程度)を支払うことで20年まで延長できるところもあります。

それが可能な場合、保証の延長について提案する必要もあるでしょう。

もっとも前述したように、対策工事が行われていてもそれより深い部分で発生した液状化を原因とした沈下は防げません。

ですが、復旧に伴う高額な費用が保証(1事故あたり5,000万円までなど)されるほか、契約によっては仮住まい費用や訴訟費用なども保証されますから、費用面についての安心感は得られるでしょう。

ただしほとんどの地盤保証では、地震を始めとして噴火、洪水、津波、落雷などの天災を原因とした場合や、地滑り、崖崩れ、断層の活動や地割れなどの地形変動による地盤の沈下については免責とされています。

保証内容について詳細に確認することが大切です。

まとめ

能登半島地震は震源地周辺地域にも影響を及ぼしています。

例えば新潟においても地盤沈下が発生し、対応に追われているのだとか。

筆者と知己のある新潟の業者に聞いたところ、沈下した住宅を格安で復旧しますとの営業FAXが届いたとのこと。

金額を見ると確かに安い。

逆に言えば安すぎる。

そこでその業者が真っ当か調べたところ、熊本地震で手抜き工事を行い処分された業者が、名を変え営業していたのだとか。

筆者は阪神淡路大震災と胆振地方中東部地震を経験していますが、その時も悪徳業者が暗躍するのを目にしました。

阪神淡路の時も、復興に乗り込んだ業者のおよそ6割強はその手の業者であると言われましたが、火事場泥棒のような手口から顧客を守るためには、良心と正しい知識を持った私たち不動産業者が「力」を発揮する必要があるでしょう。

天災は人間に防げるものではありません。

ですが備えることは可能です。

不動産は人命を守る場でもあります。

それを斡旋する私たち不動産業者は学びを深め、適切なアドバイスができるよう備えておきたいものです。

【今すぐ視聴可能】実践で役立つノウハウセミナー

不動産会社のミカタでは、他社に負けないためのノウハウを動画形式で公開しています。

Twitterでフォローしよう

売買
賃貸
工務店
集客・マーケ
業界NEWS