【こんな営業手法は禁止されている‼】あらためて覚えておきたい、宅建業者の禁止事項について

本年(2024年)1月9日からNHKでスタートした、「正直不動産」が話題になっています。

不動産を題材にしたドラマですから、毎週、楽しみにしている方は多いでしょう。

山下智久さんが演じる永瀬財地が、とあることをキッカケに嘘がつけなくなり、否応なしに正直な不動産営業マンとして活躍する姿を描いたビジネスコメディードラマです。

原作は同名の漫画ですが、原作者の夏原武さんは不動産業者ではないものの、綿密な取材により裏付けされた不動産業の「闇」を暴くと同時に、随所に専門的な知識を散りばめていることから、私たちにも参考となる面白しろさです。

さて、嘘がつけなくなる前の永瀬財地の営業手法は、少なからず私たち現役の不動産業者が行っている手法が含まれています。

例えば利益が生じることが確実である、もしくは将来の環境や交通などの利便性が向上すると誤認させる言動をとるなどです。

また、契約を締結するかどうかの判断に必要な時間を与えず、一気呵成に契約まで持っていくスピード営業も、同様です。

営業マンからすればそれらの行為は、ある程度までなら許容されると思われているかも知れません。

ですが、これらは宅地建物取引業者に禁じられている行為です。

線引は難しいのですが、禁止行為が何かを正確に理解しておかなければ、どの程度までならセーフなのかすら分からないでしょう。

筆者は不動産業界に入った30年以上前は、コンプライアンスなんて言葉も普及していませんでしたから夜討ち朝駆けなんて当たり前、日中不在で帰りも遅いなら、夜中に訪問してこいと事務所を追い出された時代です。

理解や調査が及んでもいないのに、平気で断定的判断の提供をしたこともありました。

思い返せば汗顔の至りですが、それによりトラブルに遭遇し、そこから学んだ(学ばざる得なかった)知見が積み重なって記事を提供しているのですから、何が幸いするか分からないものです。

ですが、そのような経験はしない方が良い。これは断言できます。

高額な不動産を販売するのですから情熱は不可欠です。

だからと言ってゴリ押しの営業手法が許容されるとは思えませんし、ましてや嘘を吐くのは問題外です。

今回はそのような失敗を防止するため、宅建業者に禁止されている営業行為(手法)についの理解を深めていきましょう。

こんな営業手法は禁止です

私たちは勧誘や契約に関し、宅地建物取引業法を遵守すると同時に、消費者契約法を始めとする各関係放棄を遵守しなければなりません。

そのため以下のような行為が禁止されています。

1. 手付の信用供与(宅地建物取引業法第四十七条3号)

具体的には手付金を貸付る、もしくは手付の分割払いや後払いを条件として契約を誘引する行為が禁止されています。

契約自由の原則により、手付金の有無や額について特定の法的制限はありません。

唯一、宅地建物取引業法では業者が売主の場合に限り、手付金の上限が売買代金の20%までとされているだけです。

契約当事者が一般人同士の場合、手付金が「0」でも問題はないのです。

その場合、買主は手付金の放棄により契約を解除することができません。

違約金(20%等)を支払う他ないからです。これでは当事者の負担が大きくなる。

そこで10~50万円の少額手付て契約をすることが多くなるのです。

ですが、それでも手付金を用意するのが難しいと言う顧客にたいし、その額を貸出せば信用供与になります。

また宅地建物取引業者が売主の場合、「取り合えず10万円を手付金の一部として預かり、残りは後日で結構です」なんてトークで契約を締結した場合も同様です。

即決が重要であるとはいえ、手付金の用意が難しい状況の顧客にたいしては、無理強いせず慎重に進めることが大切です。

2. 断定的判断の提供(宅地建物取引業法第四十七条のニ第1項、同法施行規則第十六条の十一号イ、消費者契約法第四条1項第一~ニ号他)

営業初心者はもちろん、それなりに経験を積んだ営業でもつい口にしてしまうのが断定的な情報です。

特に法改正が行われるタイミングでは注意が必要です。

私たち不動産業者には、関連法規も含めて幅広い知識が必要とされます。

宅地建物取引業法を始めとして、民法、建築基準法、都市計画法、税法、登記法など、専門士業ではなくても、顧客から質問された場合には答える必要があります。

その際、うろ憶えであれば迂闊には答えない。これが肝心です。

例えば投資物件を斡旋する場合、利益が確実に得られると誤解させる言動はNGです。

ですが、筆者のもとにも頻繁に架電されてくるワンルームマンションの営業電話では、「確実に利益のあがるワンルームマンションのご案内です」なんてトークが堂々と使用されています。

もっとも、「企業名簿を基に電話してきてるのだろうが、私は不動産業者だよ。それに、確実に利益があがるなんてトークは断定的判断に該当し……」と切り替えす途中で、大半は電話が切られます。

面倒な奴に電話してしまったなどと思われているのでしょうが、このような確信犯は別にしても、私たちもウッカリ、断定的な表現をしてしまう場合もあります。

よくあるのは「不動産取得税は幾らぐらいになりますか?」や、「付近で再開発が行われるようですが、この辺も将来、値上がりしますかね?」なんて質問です。

不動産取得税は「課税標準額✕税率」で計算できますから、軽減措置などの知識があればすぐにでも計算できますが、将来的な価格変動については予測できるものではありません。

確実であると判断できないものについては、断定しない。

調査・検討が必要な質問にたいしては、後日回答する旨を伝え、不確実性の高い場合には、「あくまでも推定(もしくは仮定)ですが、〇〇のような状況が懸念されます」など、常に逃げ道を残しておくことが肝要です。

ちなみに消費者契約法においても「断定的判断の提供」により、それが確実であると誤認させ契約した場合は意思表示を取り消せるとしています。

確実性のない情報については提供しないよう注意が必要です。

3.脅迫や威迫により契約を迫る行為(宅地建物取引業法第四十七条のニ第2項、消費者契約法第四条第四号他)

民法において契約は、当事者の自由な意思に基づいて結ぶことができ、それにより締結された契約にたいし国家は干渉しない(契約自由の原則)と定められています。

ただし威迫や脅迫により契約の締結を強要した場合はその限りではありません。

宅地建物取引業法では「契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げる」ことを目的に、相手方を威迫してはならないとしていますが、消費者契約法第一節第四条(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)各項及び号で、威迫による場合も含め、禁止行為について詳細に定めています。

私たち不動産業者は法人、団体、個人を問わず「事業者」とされますから、宅地建物取引業法で定められていない営業禁止行為であっても、消費者契約法により制限されます。

どのような行為が抵触するのか、理解を深めておく必要があります。

4.判断に必要な時間を与えない(宅地建物取引業法第四十七条のニ第3項、同法施行規則第十六条の十一号ロ)

即断即決は営業の基本です。

内見を終え、事務所に戻りクロージングに入り買付証明を入手する。

まさに理想的な流れではありますが、「高額な買物なので、自宅でじっくりと考えたい」と言われることがよくあります。

イケイケの営業研修では、「家に返せば終わり」とよく言われ、その場で決着をつけなければ一気に成約率が下がると指導されます。実際、それは事実でしょう。

じっくりと考えれば、様々な不安が生じます。

営業が一緒にいれば解決策や考え方について説明されますから不安も払拭されるのでしょうが、自宅ではそうもいきません。

自宅で考えると言って帰宅した方の大半は、何も考えていません。

「明日、返事します」と言って帰った方の方が、まだ見込みもあります。

いずれにしても解放してしまえば成約率が下がるのは事実でしょう。

それが分かっているからこそ営業マンは、その場で決着をつけようとします。

気持は分かりますが、それも程度問題です。顧客に考える時間を与えない行為は、施行規則で違反行為とされているからです。

顧客が即断できない理由が見抜けていなければ、どれだけ時間をかけても徒労に終わります。

それを見極め、気持ちよくお別れする。

その度量が必要です。

手練手管を駆使して長時間クロージングを行い、強引に申込書を入手しても、その後、断られる可能性が高まるだけだからです。

「長時間の勧誘やその他の私生活又は業務の平穏を害するような行為」は禁止されていることを理解して、見極めましょう。

5.迷惑を覚えさせるような時間に電話し、又は訪問する行為(宅地建物取引業法施行規則第十六条の十一号ホ)

「夜討ち朝駆け」なんて言葉は死語なのでしょうが、不動産業界では未だに生きているような印象を受けることがあります。古くからの営業手法を引き続き押し付けている企業も存在します。

筆者は新人時代、まさに言葉通りの営業手法を強要された世代ですが、そのような時間に行われる営業行為を「熱心だ」と評価する顧客は、極めて少ないでしょう。

時間帯については(PM9:00~AM8:00)は電話や訪問を避ける方が良いでしょう。

施行規則では「迷惑を覚えさせるような時間」と記述され、具体的な時間帯について言及していません。

しかし、通説では、「貸金業法施行規則」で規制されている上記の時間帯が、およそ迷惑とならない時間帯であると解釈されています。

6. 預り金の返金を拒む、もしくは手付放棄による契約の解除を拒む行為(宅地建物取引業法施行規則第十六条の十一第ニ及び三号)

物件の申込時に現金を預かる行為は、慣例的に「申込金」と呼ばれています。

この行為は優先順位の確保や購入に関しての真剣度を確かめるために行われるのが一般的ですが、「預かる」自体は法的に問題ありません。

ただし預り金は手付金とは異なります。

もしも心変わりがあって返還を求めらた場合、速やかに返却する義務があります。

「他の物件に流用できる」と言い訳され、返却に応じてくれないとの相談が筆者に寄せられますが、言い訳の理由は脆弱な主張です。一見して囲い込み行為に見えます。

返却を拒否する行為は法的に問題がありますので、慎重に対応する必要があります。

覚えておきたい法のピラミッド

不動産業者の禁止行為については宅地建物取引業法や同法施工規則のほか、民法や消費者契約法の定めにより制限されますが、同様の内容が定められているケースも多く、「一体、どれが優先されるのか?」と質問をされることがあります。

特別法と一般法、省令等の違いについて理解している方ならご存じでしょうが、日本の法体系は、憲法を頂点にピラミッド構造で形成されています。

それにより優先度は上位の「法」とされるのですが、法や省令等を定める場合には、原則として上位にある「法」の定めに反しないことが原則とされます。

例えば、宅地建物取引業法は、不動産業において他の法律と競合する場合、優先的に適用されます。

もっとも宅地建物取引業法だけで全ての事柄について定めることはできません。

特別法で定められていない内容、及び矛盾しない限度においては一般法が適用されるのです。

政令や省令(施工規則等)は、法律の下位置規制に位置づけられていることから分かるように、「法」ではありません。政令は内閣が、省令は各省の大臣が制定した命令です。

そのため「法律」で特別に委任さらた場合を除いて罰則を設けることはできないのです。

宅地建物取引業法施工規則も省令ですが、宅地建物取引業法第四十七条のニ第3項で、「国土交通省令・内閣府令で定めるもの及びその他の宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に欠けるものとして国土交通省令で定めるものをしてはならない」とされているように、法律で委任されています。

ですから宅地建物取引業法施工規則に反した場合には、法の委任により罰則が適用されるのです。

このような法の関連性なども含め、知識を拡充し、違法とならない営業展開を心がけるよう注意したいものです。

まとめ

今回解説した内容は、実務を行っている不動産業者であれば当然に理解していなければならない事項です。

ですからあらためて解説する必要などないのかも知れません。

ですが理解され、遵守されているはずの禁止営業行為に関しての相談が、国民生活センターや各都道府県の窓口相談に寄せられる相談において、それなりの件数を占めているのです。

相談の対象とされた業者は、皆、確信犯なのでしょうか?

筆者はそう思えません。

おそらくは意図せず行った行為が、違法であるとされたケースが多いのでしょう。

法治国家では、「そんな法律があるのを知らなかった」なんて言い訳は通用しません。

定めがある以上、認知していなくても温情はないからです。

自身の営業手法が禁止行為に抵触していないか、時に見直すことが大切だと言えるでしょう。

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