【この辺りの治安ってどうですか?】そんな質問にアナタはどう回答しますか?

賃貸、売買を問わず、これからそこで暮らす顧客にとって「治安」は、気になるでしょう。

内見に立ち会うと、かなりの確率で質問されます。

「隣の人はどんな方ですか?」、「街灯が少ないような気もしますが、治安はどうですか?」などの質問を、皆さんも少なからず受けていることでしょう。

その際に、どのように回答しているでしょうか。

「この辺りは閑静な住宅地ですから、それほど心配する必要はないでしょう」、「私の知る限り、治安に問題があると認識していません」などと回答するのでしょうか。

ですが、それらは正確な情報なのでしょうか?

閑静な住宅地に見えるからと言って、必ずしも治安が良いとは言えないはずです。

もちろん、不動産業者には隣人や周辺の治安などについて情報を提供する義務はありません。

また、主観的な判断で情報提供することは控える必要もあるでしょう。

ですが顧客が確認を望んでいるなら、エビデンスを提示するなど、顧客が自ら判断できる材料だけでも提供したいものです。

そのような質問を想定し、予め簡単な調査を実施しておけば良いだけの話です。

そこで今回は、ひと味違う営業マンだと評価されるために必要な、治安についての調査方法と、防止対策について解説したいと思います。

事前調査の大切さ

突然の来社に対応し内見手配する場合を除き、案内する物件の下見をしない方は少ないでしょう。

案内する物件が分譲マンションで、以前に同物件を案内したことがあるのなら販売資料で間取り等を確認すれば問題は生じません。

ですが戸建の場合、販売資料から読み取れるのは間取り以外に前面道路の幅員や法令上の制限、容積率などまで。

近隣環境や通学路の状況、主要交通機関までの経路や嫌悪施設の存在などについては、資料だけで読み取ることはできません。

現地を下見して確認するほかないからです。

そのため予算を始めとして各種こだわり条件のヒアリングを徹底し、物件選定前に下準備を行います。

当然に顧客から質問されそうな内容については、予め調査を完了し備えます。

このような下地準備が成約率に影響を与えるのです。

ところが下準備の時に漏れがちなのが「治安」についての調査です。

これは地域の犯罪発生率とその傾向と言い換えても良いでしょう。

物件を斡旋すればそれで終わりの私たちと違い、顧客はその場所で実際に生活を始めます。

賃貸物件でも近隣の治安によって入居率は変動するのですから、売買物件であれば尚更でしょう。

例え立地がよくても犯罪発生率が高ければ、少なからず売却価格に影響を与えます。

このように顧客の意志決定に影響を与える治安ですから、それについて質問し、根拠のない回答がされたと感じれば少なからず不信感を持つでしょう。

無意識に発した一言であっても、それにより顧客との「縁」が切れてしまう可能性もあるのです。

そもそも治安って……

そもそも「治安」とは、一体どのような意味を持つのでしょう。

広辞苑を紐解いてみると「国家が安らかに治まること。社会の安寧秩序が保たれていること」と定義されています。

「安寧」は社会が穏やかで平和なこと、「秩序」とは整った状態にあるための条理です。

つまり、「治安はどうですか?」という質問にたいしては、物件周辺における平穏の度合いに加え、それが整っている状態であるかを回答する必要があるのです。

平穏の対義語は「不穏」、つまり形勢・世相が穏やかではないこと。

世相が穏やかでなければ増加するのは「犯罪」です。こじつけの「感」はありますが、顧客の質問について回答するのであれば、物件周辺の犯罪件数とその傾向を知ることで事実に即した回答ができそうです。

犯罪発生率と傾向の調べ方

犯罪発生率や傾向を調べるには、以下の方法が役立ちます。

1. 地方警察のウェブサイト

市区町村単位についての犯罪発生率や傾向について調査したいのなら、物件所在地を管轄する地方警察のウェブサイトで調べるのが良いでしょう。

また、サイトでは地域ならではの犯罪抑止についての取組を確認できる場合もありますので、より具体的な状況を把握するために有益です。

例えば筆者が拠点としている北海道であれば、北海道警察が公開している「犯罪発生マップ」を利用しますが、侵入強盗や窃盗、路上強盗のほか不審者情報や特殊詐欺情報が地図上で確認できます。

北海道警察犯罪発生マップ

データ期間を指定する事により、過去の犯罪事案種別を比較できますので、同種の犯罪が突発的なものか、それとも恒常的なものかを確認できます。

同種の犯罪が反復継続して確認できる場合、治安に問題があると考えることができるでしょう。

表示方式や使い勝手は多少異なるものの、どの都道府県警察でも同様の情報が確認できますので、地域の治安を調査したい場合、積極的に利用すると良いでしょう。

2. 自治体のウェブサイト

一部の自治体では、犯罪発生率や防犯対策い関する情報が提供されています。

警察で公開されているマップ方式のものは見かけませんが、統計情報としての犯罪情勢などを確認できます。

自治体,犯罪発生率

また「子供に対する声掛け案」などの届出受理状況なども確認できますので、小さなお子様のいる家庭には有益な情報となるでしょう。

それ以外にも、安全な地域づくりに取り組むプログラムなども確認できる場合もありますので、地域全体の治安確保や安全性向上に向けた取組を洞察するのに有効です。

3. 全国読売防犯協力会

全国各地に販売店を要する「読売新聞」が、警察・自治体窓口などの外部と窓口と連携し、防犯活動の一環として情報を公開しているサイトです。

犯罪発生マップ

新聞社ならではの情報として地域の防犯活動を紹介しているほか、各都道府県警の「犯罪マップ」へのリンクを提供しています。

治安と利便性の因果関係

治安について考える場合、人口比率は見逃せないファクターとなります。

つまり人が集まるほど犯罪発生率は上がる。しかも、飲食を提供する繁華街においてはなおさらです。

もっとも、繁華街は特殊な環境が形成されますから、その周辺に居住する場合は相応のリスクを覚悟する必要があるでしょう。

繁華街ではなくても、利便性が高く人の集まる地域は、それに比例して犯罪発生率も増加します。

住民の防犯対策や地域警察の努力によって程度の差もありますが、これは間違いのない事実です。

極論ですが、不便であっても犯罪が少ないエリアを選択するか、犯罪発生率が高くても利便性の高い地域を選択するか二律背反となる条件のいずれかを選ぶしかないのです。

そのバランスを勘案し、顧客自身がどの程度までなら許容できるか検討し決断する必要があるといえるでしょう。

また犯罪学者などによれば、自転車窃盗率や万引きなどの軽犯罪は、失業率や生活保護者の地域居住割合と相関していると指摘されています。

説得力のある意見ではありますが、必ずしも該当するとは言えません。

犯罪マップで確認すると、雇用促進住宅や市営住宅の近隣では犯罪発生率の高いケースが確認できる一方で、地域によってはまったくそのような傾向が見受けられないケースもあるのです。

思い込みだけで毛嫌いする、もしくは誤った情報を顧客に提供するのではなく、犯罪発生マップを確認するなどして正確な情報を提供するよう心がけたいものです。

調査結果の情報提供と、対策の提案

あくまで筆者の場合ですが、「治安はどうですか?」との質問に備え、内見前には防犯マップで犯罪傾向を確認し、そのデータを提供できるよう準備をしておきます。

質問されれば、取りまとめた情報を提供するだけで済ます。

まさに「備えあれば患いなし」です。

突発的な内見依頼などで準備できていない場合、「治安に問題がある地域には見えませんが……」としながらも、「後ほど調査して、結果をお知らせします」と返答します。

顧客がこれから生活を始めるかも知れない住宅です。

正確な情報を提供する必要があるのです。

調査結果は包み隠さず開陳しますが、例えば侵入窃盗が多発している地域の場合、ホームセキュリティシステムの利用を推奨するほか、近隣から目の届かない窓に、防犯アラームやセンサーライトの設置を提案します。

ホームセキュリテイはセコム(SECOM)、アルソック(ALSOK)、CSPセントラル警備保障が御三家とされており、それぞれの会社で様々なプランが提供されています。

セキュリティー機器については「買取」、「レンタル」の2種類に分けられますが、会社によらずおよそ8割はレンタルを採用しているようです。

費用については初回のみ、保証料や工事費としておよそ50,000~70,000円が必要で、以降は5,000~7,000円/月が一般的です。

とはいえ、安全は「金」では買えないと分かってはいても、その負担額に躊躇される方が多いのも事実です。

そのような場合、防犯アラームやセンサーライトを提案するのも方法です。

どちらも通販やホームセンターなどで比較的安価に購入でき、開閉センサー式の防犯アラームは600円/台で、人感式アラームなら2,000円/台で購入できます。

またセンサーライトも4,000~9,000円/台が主流ですので、ホームセキュリテイを導入するよりは安価に、一定の効果に期待できます。

侵入窃盗の発生場所別認知件数は、年度ごと警察庁「住まいる防犯110番」で公開されていますが、例年、もっとも多いのが一戸建住宅です。

侵入窃盗の発生場所別認知件数の割合

さらに侵入別で見ると、鍵の閉め忘れが最も多く(46.8%)、次いでガラス破り(26.2%)、施錠開け(8%)と続いています。

住宅で発生した侵入窃盗の侵入方法別認知件数の割合

無施錠については、居住者が気をつけるほか、電子錠などを採用すれば防止できますしガラス破りは防犯アラームやセンサーライトを採用することにより、一定の抑止効果があるでしょう。

モニター式インターホンやピッキングが困難なディンプルキーの普及に伴い、玄関からの侵入は激減しています。

ほとんどが「窓」からの侵入です。

一戸建住宅における空き巣の侵入口別侵入手口

つまり窓からの侵入を防止する手段を講じれば、ある程度は安心できるのです。

とはいえ、防犯アラームやセンサーライトの電池切れには注意が必要ですし、マンションの場合、例えオートロックであったとしても、それを過信して無施錠で家を空けてはなりません。

コンシュルジュなどが常駐して目を光らせているマンションであれば話も別でしょうが、オートロックは住人の出入りの際、それに乗じ入り込むことは容易いからです。

まとめ

今回は「治安」について質問された場合の調査・回答方法と、不安を持たれている方に提案する防止対策について解説しました。

紹介した防犯マップを見れば分かるように、まったく犯罪が発生していない地域などありません。

人が暮らしていれば、少なからず発生する危険はあるのです。

犯罪が発生するのは自宅だけではなく、路上での引ったくりや暴行・恐喝など、危険は常に隣り合わせです。

地域の犯罪発生率を調査し、その程度によって居住エリアを選択することも大切ですが、「君子危うきに近寄らず」の諺があるように、危険な地域には近づかない、対策として防犯アラームを携帯(ちなみに防犯スプレーは市販されているものの、明確な理由もなく携帯している場合、軽犯罪法違反とされる場合があります)するなどの配慮は必要でしょう。

便利で人が集まる地域ほど犯罪率は上昇する。

この原則を理解して、顧客に有益な情報を提供するよう心がけたいものです。

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