【売却時は引き継ぎ必須!】長期優良住宅の媒介時に欠かせない承継義務について、アナタは理解できていますか?

認定住宅とは、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき認定を受けた住宅のことです。

ですが認定住宅との表現は認知度が低いため、「長期優良住宅」と言い換えた方が良いかも知れません。

長期優良住宅の普及の促進に関する法律,認定制度

認定制度が開始されたのは平成21年6月4日から(既存住宅の増築・改築認定は平成28年4月1日)ですが、国土交通省によれば令和5年3月の認定実績として戸建てだけでおよそ144万6千戸に達していることが確認できます。

長期優良住宅の普及の促進に関する法律,認定実績

長期優良住宅の総戸数が増加し、それに伴い売買物件情報とての露出も増えました。

大手不動産ポータルサイトのat homeでも、長期優良住宅の中古一戸建特集として専用ページを公開しています。

長期優良住宅の中古一戸建特集

ご存じのように長期優良住宅は、省エネルギー性能や耐震性はもとより、長期間使用するために必要な構造及び設備を有しており、それ以外にも居住環境や自然災害への配慮を行っている住宅ですから、およそ「安心して購入できる住宅」だと言えるでしょう。

電気を始めとするエネルギー価格の高騰もあり、環境負荷意識が否応なしに高まる昨今、「長期優良住宅」である、それだけで物件訴求力が高まります。

ですが長期優良住宅の売買を手掛ける場合、「維持保全計画書に基づき維持保全等を行い、その記録を保存」する必要があり、かつ購入者は、所轄官庁に承認を受けなければなりません。

つまり長期優良住宅の売買には特別な手続きや手間が必要とされるので、注意が必要なのです。

これらを正しく理解して売主や買主に対し説明を行わなければ、高い確率で問題が発生します。

今回は長期優良住宅を手掛ける場合に必要な知識について解説します。

維持保全計画とは

長期優良住宅は設計段階で省エネルギー性、耐震性、可変性、劣化対策、維持管理・更新の容易制など、建築物の性能等に関する認定基準を満たし、かつ居住環境や住戸面積、災害配慮などの要件を全てクリアすることにより認定されます。

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住宅の基本性能として求められる要件は高く、性能等5項目の全てにたいし基本等級以上の水準が求められます。

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例えば省エネルギー性を確保するため必要な断熱等級や一次エネルギー消費量等級は、2022年新設基準における最高等級が要件とされます。

断熱等級,一次エネルギー消費量等級

一般的に建物性能と建築費は比例しますから、長期優良住宅の建築費が割高になるのも頷けます。

ですが、長期優良住宅ならではの恩恵、例えば各種補助金の利用や住宅ローンの金利引下げ、税の特例措置や地震保険料の割引などが受けられます。

そのような補助等の対象とされるのは、それだけ価値のある建物だからです。

長期優良住宅は、「住生活の向上や環境負荷の低減を実現するため、長期使用できる良質な住宅を普及する」ことを目的に創設された制度ですから、メンテナンスについては設計段階から計画し、それに基づく適切な実施が求められます。

維持管理計画は30年以上の期間にわたり、10年以内毎に点検を実施して、修繕や改良が必要と認められる場合、それを実施することが義務付けられています。

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また地震や台風などの自然災害が発生した場合においては臨時点検を実施することも義務とされています。また点検等により、劣化状況が著しいなどと判断される場合には、長期修繕改革自体を見直さなければなりません。

よくある質問に、「長期優良住宅の点検は誰が行うの?」というものがあります。

制度では点検者に特別な資格を求めていませんから、所有者が自ら行えます。

もっとも、一般の方が劣化状況等について判断することは難しいことから、通常はハウスメーカーや第三者の診断会社などに依頼するでしょう。

施工したハウスメーカーなどは、一定期間(10~20年など)点検料を無償としているのが一般的ですが、点検の結果、修繕が必要とされた場合の工事費は有償(メーカー保証の範囲を除く)です。

ハウスメーカーによる修繕は安心できる反面、割高です。そのため、修繕を他の工務店などに依頼する場合も多いようですが、メーカー保証期間内に他店の工事を実施した場合、その箇所についてはメーカー補償から除外されることがありますので、事前に確認するなどの注意が必要です。

維持保全記録の書式

維持保全記録の書式に定めはありません。通常は物件引渡時に、ハウスメーカーなどから渡されたファイルに添付されているものを使用しているのでしょうが、例えば下記のような住宅金融支援機構が提供している維持保全記録シートを利用しても問題ありません。

大切なのは、一定年数の経過ごとに必要とされる点検、修繕を行い、その記録を残すことです。

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長期優良住宅は、大手ハウスメーカーだけが建築できるものではありません。所定の要件を満たしていれば、規模の小さな工務店でも認定を受けられます。

ただし長期優良住宅で求められる修繕計画は、30年以上の長期です。

メンテナンスの依頼は、建築した会社に依頼するのが最も良いのですが、事業規模の小さな工務店等の場合、倒産リスクを勘案する必要があります。

筆者のもとにも、「建築した工務店が倒産していました。この場合、定期点検はどうすれば良いのですか?」と、長期優良住宅にお住まいの方から相談の入ることがあります。

点検は所有者が行うことも認められていますので、その旨を説明しますが、確実性を得たいなら第三者の診断会社の利用を推奨します。

ちなみに第三者の診断会社に依頼した場合の費用はインスペクションと同程度、およそ5~10万円が目安となるでしょう。

また、地震や台風などの自然災害発生時には臨時点検が義務とされていますが、地域によっては頻度が高いでしょう。その都度、第三者の診断会社に依頼して費用が発生してはたまりません。

先述したように、点検は所有者自身で行うことが認められています。被害が発生していない場合は自らの目で確認すれば良いでしょう。

何より大切なのは、点検を実施してその記録を残すことです。

行政庁への報告は確実に行う

長期優良住宅が筑後、5年以上経過すると、点検、メンテナンス状況について所轄行政庁から報告を求められることがあります。

該当住宅から抽出された所有者宛に、所轄行政庁から「報告書」が郵送されてきます。

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依頼書(報告書)が郵送されてきた場合、必ず回答しなければなりません。

報告を怠る、もしくは虚偽の報告をすると30万円以下の罰金に処される可能性があるからです。

また、長期修繕計画に従って適切なメンテナンスが実施されていない場合、所轄行政庁から改善を求められ、それに従わない場合、認定を取り消されることもあります。

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報告書は難しい書式ではありません。維持保全記録シートと、ほぼ内容は同じです。

定期点検を適切に実施していれば、その内容を書き写すだけで作成できるでしょう。

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漏れ落ちなく記載した報告書を返送すれば、それで報告は終了です。

忘れてはならない権利義務の承継

長期優良住宅を取り扱う際には、所有者の義務や売買手続きに必要な書類などの重要な情報を、契約当事者双方に正しく説明する必要があります。

売主は認定通知書、承認通知書、維持保全計画書を確実に引き継ぐことが求められます。

買主(相続人含)は所轄行政庁に認定の引き継ぎを申請し、承認を得ることが必要です。

長期優良住宅,承認申請書

申請には変更認定通知書、承認通知書、維持保全計画書のほか、所轄行政庁によっては維持保全状況報告書の提出が求められる場合もあります。

申請に必要な各添付書類等は売側業者が、申請書は買側の媒介業者がする必要があります。

イザとなって慌てないよう、取引前に準備しておくと良いでしょう。

また長期優良住宅の売依頼を受けた場合、広告表現にも注意が必要です。

これについては国土交通省が媒介業者等にたいし、以下のような注意喚起をしています。

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各種恩恵を享受できる長期優良住宅は注目度も高く、物件として訴求力もありますが、それに伴う注意点もあることを理解することが大切なのです。

まとめ

今回は認定住宅、いわゆる長期優良住宅を取り扱う場合の注意点、とくにメンテナス記録について詳しく解説しました。

長期優良住宅の認定が受けられる諸条件(省エネ性能や可変性、耐震性など)を理解するには、建築知識が不可欠です。媒介業者に多くは、「売買することが自分たちの仕事」と割り切り、建築知識などについて積極的に学ぼうとする意識に欠けている傾向が見受けられます。

ですが、長期優良住宅を取り扱う場合、顧客にたいし正確な説明を行う義務がありますから、知見が及ばないからと言って説明を怠ることはできません。特に今回、解説したような長期修繕についての実施、記録義務などについては、確実に理解を求める必要があります。

説明を怠れば、高角度で説明義務違反が問われるでしょう。

性能や快適性、その他、金利優遇や税制優遇などメリットの多い長期優良住宅ですが、その恩恵が受けられるのも、「良質な住宅の普及」が根底にあるからです。

建築費の高騰や少子化の影響もあり、新築住宅の受注が今後、減少していくと見込むハウスメーカーなどは、リフォームや自社の建築物件の買取再販に力を入れています。

再販住宅の販売を手掛けるのはハウスメーカーの社員ですから、よほど努力しなければ知識において太刀打ちできません。

優良な住宅を扱うために、私たち不動産業者は学ぶ必要があるのです。

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