【報酬アップを目指して!】媒介報酬以外の収益を生む不動産コンサル活用法

令和6年7月1日に、空家等に係る媒介報酬規制が見直されました。この改正に伴い、国土交通省は宅地建物取引業法第34条の2(媒介契約)に基づき、媒介以外の関連業務については報酬上限の規定に拘束されることなく、別途費用を請求できることを明確にしました。

これは、不動産業界において大きな進展です。

法令上の解釈では、以前から不動産に関連する相談業務などは媒介業務とは別にコンサルティング業務として報酬を受領できるとされていました。しかし、実際には一般的な媒介業務と重なる部分が多く、業界内でもこの点が明確に認識されていなかったこともあり、媒介報酬に含まれると見なされることが多かったのです。

しかし、媒介業務に付随する業務と、純粋なコンサルティング業務は本来別物です。

したがって、受託する業務内容を具体的に定義することで、空家関連業務に留まらず、コンサルティング業務として別途報酬を受領することが可能なのです。これは、不断の努力により蓄積された経験や知識を活用し、これに見合った報酬が得る新しい道が開かれたとも言えるでしょう。

この変化は非常に画期的ですが、その前提として顧客に納得してもらえるだけの専門知識と労力を提供することが求められます。また、まずは媒介業務とは異なる独立した業務であることを顧客に理解してもらう必要があります。

今後、媒介業務以外の関連業務、いわゆる不動産コンサルティングによる報酬取得が、安定した経営の基盤になっていく可能性があります。

適切なコンサルティング業務で報酬を得るためには、抑えておくべきポイントがあります。今回は、コンサルティング業務を受任するにあたって理解しておきたいポイントについて解説します。

不動産コンサルティング業務の定義

不動産コンサルティングについて法的な定義は存在せず、必要な資格もありません。極端に言えば、宅地建物取引業者である必要もなく、誰でも不動産コンサルタントを名乗って業務を行い、報酬を得ることが可能なのです。

公益社団法人 不動産流通推進センターの認定資格に「公認不動産コンサルティングマスター」があります。しかし、これは不動産特定共同事業法施行規則に基づき国土交通省に登録された「登録証明事業」の一環です。

「登録証明事業」は国土交通大臣の登録を受けた事業であり、合格者には特定の知識や技能を有していることが証明されます。そのため「公認不動産コンサルティングマスター」資格者には、以下の法令等に基づく準公的資格としての要件が認められています。

1. 不動産特定共同事業法における「業務管理者」となる際の資格。

2. 不動産投資顧問業登録規定における登録申請者及び「重要な使用人」の知識についての審査基準を満たす資格。

3. 金融商品取引法における「不動産関連特定投資運用業」を行う場合の人的要件を満たす資格。

資格試験では、宅地建物取引士試験では出題されない分野、例えば経済や金融など幅広い知識が問われます。不動産のプロフェッショナルを目指す人であれば取得しておきたい資格ですが、不動産コンサルティング業務を行うために必須ではありません。なぜなら、不動産コンサルティングには法令上の定義が存在しないからです。

不動産コンサルティングをあえて定義するならば、平成11年9月21日に公開された不動産コンサルティング制度検討委員会による「依頼者との契約に基づき、不動産に関する専門的な知識・技術を活用し、公正かつ客観的な立場から、不動産の利用、取得、処分、管理、事業経営及び投資等について、不動産の物件、市場等の調査・分析等をもとに、依頼者が最善の選択や意思決定を行えるように企画、調整し、提案する業務」という内容が当てはまるでしょう。

同報告書では、上記を不動産コンサルティングの定義としたうえで、基本的な条件を次のように示しています。

◯不動産に係る依頼者の広義の意思決定に係る助言・提言を行う業務として、宅地建物取引業法上の宅地建物取引士である不動産の売買・交換や売買等の代理・媒介業務から分離・独立したものであること。

◯不動産開発業務や管理業務などとも業務範囲を異にし、かつ、これらの業務の受託を前提にしない固有の業務であること。

◯成果について依頼者が報酬を支払うに足りる新たな付加価値が認められる内容であること。

この基本的条件は、不動産コンサルティング技能登録者を念頭に策定されたものですが、「不動産コンサルティング」とは何かについて理解を深める一助になります。

媒介業務との線引

不動産コンサルティング業務を行った結果、媒介業務の受託に至った場合や、媒介業務と平行して別途コンサルティング報酬を受領した場合には、宅地建物取引業法の報酬上限規定(宅地建物取引業法第46条)に抵触する可能性があります。

したがって、「媒介業務以外の関連業務」を正確に理解しておく必要があります。

例えば、先述した不動産の利用、取得、処分、管理、事業経営及び投資等に関する提案業務は関連業務として、不動産コンサルティング業務の範疇となります。しかし、これらの業務が売買の斡旋や媒介契約の取得を目的とする場合、あるいはコンサルティングの結果として前述の成果に至った場合には、媒介業務の一環とみなされ、宅地建物取引業法に基づく媒介報酬上限規定が適用される可能性は高くなります。

これはコンサルティング自体が媒介業務に付随する業務とみなされるためであり、この線引が特に難しい点なのです。

したがって、以下のような明確な自主基準を設けておくと良いでしょう。

◯物件売買への関与、もしくは媒介契約の締結を目的とする相談業務は、コンサルティング業務とはしない。
◯コンサルティング業務として受任した場合には、媒介業務には関与しない。

また、コンサルティング業務を受任する際には、不動産コンサルティング業務委託契約書の締結は必須ですが、契約書の約款に媒介契約への変更に関する条項(例 第2項)を盛り込んでおくのも一つの方法です。

実際に宅地建物取引業者に対するアンケート調査でも、媒介業務以外の関連業務として報酬を受領できたケースは、残置物の撤去や廃棄物処理、畳交換や草刈りなどの実費請求を除けば、補助金の手続き代行に関する事例が見られる程度です。

コンサルティング報酬を受領できる可能性があったケースでも、その87.9%が請求していないと回答しています。

これは、媒介業務とコンサルティング業務の境界が不明確であること、また報酬を受領するための知識に欠けていることが原因の可能性が高いと考えられます。また、消費者が媒介業務以外の業務について報酬請求が可能であることを知らず、全て媒介業務の範囲だと認識している可能性によるものでしょう。

不動産コンサルティングマスターに対するアンケート結果でも、41%が媒介手数料以外の報酬を受領していないと回答しています。

媒介業務以外の関連業務範囲については次項で詳述しますが、不動産コンサルティング業務は媒介業務と重複する部分が多く、明確に区分しなければ報酬が得られない点について理解しておく必要があるのです。

コンサルティング報酬を請求できる具体的な業務

媒介業務以外の関連業務には、以下のようなものがあります。

◯利活用に向けた課題整理
◯活用方針の提案、収支推計
◯相続相談及び手続き支援
◯売却、贈与、賃貸、除去など手法ごとの収支シミュレーション提案
◯資金計画、資金調達の提案やサポート
◯任意売却相談及びサポート
◯賃貸物件に関する空室対策の提案
◯境界確定に関する助言やサポート
◯権利関係の助言や手続きサポート
◯リフォーム提案、支援
◯専門職種の紹介及びサポート
◯税金に関する情報提供
◯除草、通風、清掃などの空家管理業務
◯家財の片付け、処分の代行
◯定期的な見回り点検(空家)
◯郵便物の保管や転送(空家)
◯他士業のあっせん、及び連絡調整業務
◯補助金など支援制度の紹介及び相談業務

これらの業務は、媒介業務に関連する側面を持ちつつも、適切なスキームに基づき独立した業務として受任することにより報酬請求が可能です。

そのため、媒介業務とは別の業務であることを十分に説明し、以下の基本的なスキームを遵守することが求められます。

①事前説明
②不動産コンサルティング業務委託契約書の締結
③成果物の書面化

また、媒介業務との線引をより明確にするため、受任する具体的な業務内容を「不動産コンサルティング業務委託契約書」に記載しておくことが重要です。この手順を守ることで、顧客にたいして業務内容を明確に示すと同時に、媒介業務との混同を防ぐことができます。

算定報酬の相場と決め方

不動産コンサルティング業務を受託する際、最も難しいのが適切な報酬額の設定です。媒介業務の報酬の上限規定がある一方で、コンサルティング報酬には基準が存在せず、当事者の合意によって自由に決定できるからです。

しかし、目安がないことで、提案する業務内容と報酬額が妥当なのかの判断が難しくなります。そのため、インターネットで他社の不動産コンサルティング報酬を調査し、あらかじめ独自の価格表を作成しておくと良いでしょう。

さらに、業務内容に応じて報酬を算出する方法として、以下の計算式を活用するのも一つの方法です。

報酬=直接人件費+経費+技術料+特別経費

各項目の内容や算定根拠は次の通りです。

◯直接人件費:従事者の賞与や税金を含めた年収から日額を割り出し、業務に従事する延べ日数を乗じた額です。

◯経費:通信費や消耗品など、業務に必要な実費の総額です。

◯技術料:コンサルティング業務で発揮される技術力や経験、総合企画力などに対する対価です。例えば、業務経験に基づくアドバイスや戦略立案の内容、有用性などを金額に換算して算出します。

◯特別経費:出張旅費や宿泊費など、特別依頼に基づき必要となる費用の合計です。

ただし、この方法で毎回計算するのは手間がかかるため、基準となる価格表の用意をお勧めします。

まとめ

今回は媒介報酬以外で報酬を得る手段としての不動産コンサルティング業務について解説しました。

不動産業者には、その業務の性質上、不動産の売買や賃貸実務にとどまらず幅広い知識が求められます。例えば、物件調査や相続に関する相談、境界や越境問題の処理、販売価格の妥当性判断、収支計算書の作成など、媒介契約を締結するために不可欠な業務も数多くあります。しかし、媒介契約や売買契約などが成立しない場合には、それらの業務が無駄となり、投じた経費や労力が無駄になる場合も多いのです。

適切に業務を処理するために必要な知識や経験は、一朝一夕で身につくものではなく、日々の努力を重ねた結果得られるものです。そして、そのための行動が対価として報われないままでは、労力の無駄だけではなく、不動産業者自身の成長機会も失われてしまいます。労働の対価として適切な報酬を得るのは当然の権利です。

媒介業務に留まらず、多用な役割が期待されている今だからこそ、不動産コンサルティング業務に関する理解を深め、積極的に取り入れることが必要なのです。

【今すぐ視聴可能】実践で役立つノウハウセミナー

不動産会社のミカタでは、他社に負けないためのノウハウを動画形式で公開しています。

Twitterでフォローしよう

売買
賃貸
工務店
集客・マーケ
業界NEWS