競売実務編|3点セットの内容を解説

この記事でわかること

・3点セットの具体的な項目について理解できる
・3点セットの読み取りが自分でできる
・注意して確認しなければならない項目が分かる

前回の不動産調査記事【初めての競売物件入札|3点セットから読み取る方法】(https://f-mikata.jp/hajimete-kyobaibukken/)では、競売物件についての説明や基本的な調査方法、現在における競売物件価格推移など足早に解説をおこないました。

記事の中で3点セットについての解説も行ったのですが、お読みになった方から、「そもそも3点セットの見方がよく分からない」と言ったご意見が多数、寄せられました。
確かに競売物件の調査や注意点、具体的な入札方法などに関しては定められた手順も多く、短い記事の中では解説しきれませんでした。
競売実務を取り扱って戴くには、ステップごと詳細に解説をしなければ実践的ではなかったと反省しております。

そこで今回は、実践編初回として「3点セットの読みとり方」について解説いたします。

3点セットをダウンロードする

現在の競売物件情報の取得につきましては、上記URLに記載されている記事中の「競売物件を調べる」の項で解説しています。

BIT(不動産競売物件情報サイト)のアクセス方法や3点セットのダウンロード方法まではそちらをお読みください。
BIT不動産競売物件情報サイトへのアクセス先のみご紹介しておきます。
http://bit.sikkou.jp/app/top/pt001/h01/

今回はダウンロードした3点セット(物件明細書・現況調査報告書・評価書)について解説していきます。

期間入札の公告

3点セットはPDFでダウンロードされます。
このPDFを開くと、まず「期間入札の公告」が先頭に表示されます。
「期間入札の公告」は、裁判所が競売に関する入札情報や調達に関わる情報を公開する目的で作成されています。

この「期間入札の公告」は3点セット(物件明細書・現況調査報告書・評価書)には含まれていいませんが、管轄裁判所が公告する入札期間・開札期日など大切な情報が記載されています。それぞれの意味について解説します。

●入札期間

具体的な入札金額を決定し、入札する期間と期日

●開札期日

入札者の中で、最も高く価格を付けた入札者を最高買受申出人として執行官が定める日時

●売却決定期日

最高買受申出人に対し、競売不動産の売却を許可するか否かを審査し、その結果について決定という裁判を行う期日
※実際には債権者、債務者及び所有者等の利害関係人は、売却許可決定に対する不服申立方法として執行抗告をすることが出来ます。公告掲載日の翌日から起算して1週間以内に執行抗告の申立がされない場合に売却許可決定が確定することになります。

●特別売却実施期間

期間入札による売却を実施しても、適法な買受の申し出がなかった場合のみ行われる売却方法です。特別売却が実施されると、期間中において適法に一番早く買受申し出を行った入札者が買受権利を取得します。
期間入札の公告で、上記以外に注目して戴きたいのは「民事執行規則33条」に定められる「買受申し出資格の制限」です。

民事執行規則とは民事執行法を正しく運用するための規則です。
この中で第三十三条では、「執行裁判所は、法令の規定によりその取得が制限されている不動産について は、買受けの申出をすることができる者を所定の資格を有する者に限ることができる」としており、例えば下記のように市街化区域でも生産緑地など農地の場合には「買受申し出資格の制限」が適用される場合もあり、一般の方は入札制限されます。

申し出資格に制限がある場合には、☆印が記載されます。
せっかく調査を行い競売入札決意しても入札制限に引っかかって入札が出来ないケースもありますので注意が必要です。

次に注目するのが価格についてです。
分かりやすく解説するために、部分的な事例を表で作成しました。

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●売却基準価格

不動産鑑定士が調査した目安となる不動産価格です。簡単に言えば鑑定士が判断した相場額を執行裁判所が認めた価格と理解すれば良いでしょう。

●買受可能額

入札の下限額です。実際に入札する場合には、この下限額を下回る入札を行うことは出来ません。

●買受申出保証額

入札に参加する際に執行裁判所に提供する保証金の額です。
一般的には売却基準価格の2割とされています。

実際に入札額を決定する場合には、

① 「買受可能額」以上の価格で
② 「買受基準価格」を参考にしつつも
③ 実勢価格や販売価格を視野に入れ
④ 入札者数を予想しつつ
⑤ 過去の競落価格を参考に

入札額を決定することになります。

また保証金は、競落出来なかった場合に返金されます。
保証金の提供は

① 執行裁判所の所定振込用紙で必要事項を記載し
② 入札期間内に入金

する必要があります。

競売は申立人が取り下げを行った場合には、競売手続き自体が取り消しになります。
その場合には保証金を入金するだけ徒労に終わりますので、入金前に裁判所で取り下げの有無を確認しておくと良いでしょう。

また「期間入札の公告」には「物件目録」も記載されています。
物件目録では物件番号ごとに所在・地番・地目・地籍の情報が記載されていますが、不動産業に従事されている皆様であれば特に説明の必要はないでしょう。

物件明細書

さてここから3点セットの最初となる「物件明細書」についての解説です。

順番として下記のように情報が記載されていますが、これらの情報は非常に大切ですので要所に解説を加えます。

1. 不動産の表示

基本的な不動産概要です。

2. 売却により成立する法定地上権の概要

競売により建物と敷地所有者が別人となるケースがあります。
いわゆる法定地上権の成立要件を満たす競売対象外物件が存在している場合です。
この法定地上権に関して記載されています。

法定地上権は、権利関係の中でも非常に強い権利です。
例えば定期借地権住宅の建物を競落した場合、地権者は別にいて競売対象物件ではありませんから、建物競落者は地代支払いの必要があります。
またその逆に競売対象が土地で、建物が第三者名義で建っている場合もあります。

賃料支払額についても新たに交渉が必要になるなど、一気にハードルが上がります。
この欄に法定地上権などが記載されている場合、競売初心者が安易に手を出す物件ではありません。

3. 買受人が負担することとなる他人の権利

この項目も注意が必要です。
記載方法も色々ありますが、例えば賃借権末尾に「上記賃借権は最先の賃借権である」と、記載がある場合には競売物件にたいして早い順位での第三者賃借権が締結されており、買受人は競落後、引き続き第三者の賃借権を認めなければなりません。

この賃借人は「不法占有」と異なり、善意無過失の賃借人と定義されます。
立ち退きに関しては競落人が自己所有として必要性があるなど、法的な正当事由が認められなければ簡単に解約することは出来ません。
入札目的により異なると思いますが、この項目に記載がある場合にはうかつに手を出すことは控えましょう。

4. 物件の占有状況等に関する特記事項

この項目には、調査日時点における「占有」の状況が記載されています。
もちろん占有者がいない方が、立ち退き交渉を必要としないために競落後の業務が楽になります。
以前のブログでも解説しましたが、昔のように反社会的勢力が占有しているようなケースは昨今見かけませんし、民法の改正で立ち退き交渉も非常に楽になりました。

特にこの項は、前項で解説した「買受人が負担することとなる他人の権利」などの法的に強い権利ではなく、「占有の権利として認められない」と、裁判所書記官が明記したものとなりますので、原則として引き渡し命令の対象として処理することが出来ます。

この項目にも、占有状況により様々な記載がありますが「占有しているが、○○の主張する占有は認められない」もしくは「同人の占有権の存在は認められない」などと書かれている場合には、「裁判所が占有者の主張する占有権主張に根拠なし」とお墨付きを与えたようなものです。
手慣れている不動案業者であれば、「引き渡し命令」の制度を利用しなくても容易に立ち退きをさせることが出来るでしょう。

5. その他買受の参考となる事項

この項目にはその他、買受に対して注意を要する内容が記載されています。
例えば競売物件が「要役地」もしくは「承役地」である場合や、競落しても現在使用している「使用収益」が、当然に使用することが出来ないなどに関する情報などです。
特に注意戴きたいのは、複数人で所有している不動産の持ち分だけを競落した場合などでは、他の共有者が占有している場合に排除命令は出されません。
この項目に記載がある場合には、法的な理屈も含めて慎重に調査を行わなければなりませんので注意が必要です。

現況調査報告書

現況調査報告書とは裁判所執行官が競売開始決定後に、現地入りしての調査した記録をまとめたものです。
物件目録から始まりますが、物件概要の記載ですので不動産従事しているかたであれば内容をすんなり理解出来る程度のものだと思います。
この現況調査報告書では「その他事項」の記載内容に着目して下さい。
敷地の境界石の有無やアスファルト敷設状況など、また建物についても内部の損傷状況や劣化状況等が詳細に記載されています。

例えば

●床面の一部に汚れ、損傷等が見受けられた。
●1階洋室1にクロスの剥がれが見受けられた。
●浴室の換気扇は、故障により使用できない。
●給湯ボイラーに原因不明の不具合があり、エラーが出て使用できないことがある。
●2階洋室1の換気扇周辺クロスに雨漏りの跡が見受けられた。
●その他外壁及び内壁に、経年相応の損傷、消耗及び劣化が見受けられる。

などです。

これを見ただけでも自己所有ないしは転売目的の入札であっても、競落後には最低限として外壁塗装・クロス張替え工事(全体)・給湯ボイラー交換・浴室換気扇交換などが必要となり、予めリフォームに必要な金額を算出して入札額を決定することが出来ます。
競売入札では建物内部を確認することが出来ませんので、この文字情報や写真から建物の劣化状況等をおおよそ判断することが大切です。
それらの調査の日時が調査経過に記載されています。

その他にも「土地建物位置関係図」「間取図」「前景や内部の写真」などで現況調査報告書はまとめられていますが、残念ながら掲載されている写真は画像も粗く、詳細を確認することは出来ません。
あくまでも参考程度にしておいた方が良いでしょう。
経験則で恐縮ですが、現況写真から2~3割ほど(場合によってはそれ以上)内部状況が悪いと思った方が正解です。

評価書

評価書は管轄裁判所からの委託を受けて、当該エリアの不動産鑑定士が鑑定人として評価をまとめた書類です。
交通や都市計画・供給処理施設、評価額判定方法などが詳細にまとめられており、位置図・公図・建物図面など私たち不動産業者が重要事項説明書を記載するのに必要な情報がまとめられています。
大切な情報がまとめられているのは間違いないのですが、日頃から重要事項説明を手掛けている皆様にたいして特筆することはありません。

まとめ

今回は「3点セット」の読み方、特筆すべき注意点について解説させて戴きました。
実際に競売を取り扱うには「習うより慣れろ」の精神が大切です。
解説を行った手順を参考にまずは3点セットをダウンロードして、内容を読み取るトレーニングを行いましょう。

とくに今回、注意喚起をおこなった「買受人が負担することとなる他人の権利」「その他買受の参考となる事項」などは、案件により様々な記載事項が存在します。
分からない語句や表現などは、自分で調べて理解して行くことが知識の拡充につながります。
次回の不動産競売実践編では、「大きな声では言えない、現地調査の実践」について解説を行いたいと思います。

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