初めての競売物件入札|3点セットから読み取る方法

不動産業に従事している方で「競売物件」を聞いたことがない人はいないと思います。

最近は少なくなりましたが競売物件を専門として取り扱う「競売屋」とも呼ばれる不動産業者を筆頭に、競売も扱えるという程度や、言葉は知っているけれども一度も取りあっかったことがないと言う方まで様々です。

今回は、あくまでも興味はあるけれども一度も「競売物件」を取り扱ったことが無い方に向けて、競売物件の説明から調査方法、3点セットの読み方、競売物件入札の注意点について解説を行います。

初めての競売物件入札|3点セットから読み取る方法

この記事でわかること
・競売物件の調査方法について理解できる
・競売の入札が自分でできる
・競売を行う場合の注意点がわかる

競売物件とは

競売物件を理解している前提で話を進めていきますが、基本的理解を深める為に競売物件について解説を行います。

競売とは、「居住用物件に限らず事業用も含め、不動産を担保に融資を借り入れ返済不能に陥った場合、債権者の申し立てにより、裁判所が競売公告を行い一定期間に最高値を付けた入札者が競落し、その競落金を債権者が回収する」一連の手続きです。

競売は昭和54年法律第4号「民事執行法」の中に含まれていますが、同法の中でも「第二目強制競売」第45条から第92条にかけて詳しく定められていますので、民法が苦手でも一度は目を通しておくと理解が進むでしょう。

現在のようにインターネットが普及していない時代には、通称3点セットと呼ばれる「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」の閲覧をおこなうためには裁判所まで出向かなければならず、注目を浴びる競売物件は閲覧中が多いため待ち時間も長く、膨大な資料をいちいちコピーしなければならないことから非常に手間がかかるものでした。

また当時の競売物件は、反社会的勢力による占有事案も多く、立ち退きにも相応のノウハウが無ければ対応出来ないことから専門性が強く、裁判所に常時いる顔見知りは紳士的とは言い難い時代でした。

現在の競売物件

問題が多くトラブルの多い競売物権は平成10年10月16日の法律第128号による「競売手続き円滑化を図るための関係法律の整備に関する法律」の制定により、一気に様変わりしました。
特に同法第68条に加えられた「買い受けを申し出た差押債権者のための保全処分」により、立ち退き交渉リスクが一気に軽減されたことが大きかったと思います。

特に重要な68条の2全文を見てみましょう。

【第六十八条の二 入札又は競り売りの方法により売却を実施させても買受けの申出がなかつた場合において、不動産を占有する債務者又は不動産の占有者でその占有の権原を差押債権者、仮差押債権者若しくは第五十九条第一項の規定により消滅する権利を有する者に対抗することができないものが、不動産の売却を困難にする行為をし、又はその行為をするおそれがあるときは、執行裁判所は、差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。以下この条において同じ。)の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、担保を立てさせて、その行為をし、又はその行為をするおそれがある者に対し、不動産に対する占有を解いて執行官又は申立人に保管させるべきことを命ずることができる。】
※引用(衆議院 第143回国会 制定法律一覧より)

難解な表現で書かれていますので、大事な部分のみ要約すると「占有者の立ち退きを裁判所執行官が行うことを命じる」ことが出来るようになったことです。

もっとも、これは最終手段ですので、あまり多くはありませんが、法改正明け渡しに関する「引き渡し命令」も裁判所から得やすくなり、「引き渡し命令」を根拠としての「強制執行」も申し立てから3日程で得られるなど、競売物件のハードルは一気に下がりました。

明け渡し交渉は楽になったが、その反面

法律が整備されると、立ち退きノウハウを売りにしていた競売屋の存在意義がなくなりました。

そして、一般の方が競売参加することにより、落札額も上昇を始めます。

立ち退き交渉が難航する競売物件は、市場価格の4割程度で競落できる時代もありましたが、現在ではせいぜい2~3割程度、人気地区では市場価格とほとんど変わらない程度まで競落価格が上昇しています。

明け渡し交渉は楽になっても、残る問題点

ここまでの説明を見ると、わざわざ競売取引を覚えるメリットが無いように思います。

一般の方が直接、競売参加すれば私たち不動産業者に介入するメリットがないように思えるからです。

ですが競売入札のハードルが下がることにより、不動産知識のない一般の方が入札することによる新たな問題が多発しています。

その問題整理や、不動産のプロとしてのアドバイスなどに関して、新たな不動産ビジネスが生まれているのです。

そのために、競売物件の調査に精通する必要があります。

明け渡し交渉は楽になっても、残る問題点

まず、一般の方があまり深く考えずに競落した場合の問題点を列挙します。

●内覧できないことによる現況調査報告書との相違
●従来から引き継がれる相隣関係などの近隣トラブル
●重要事項説明が行われていないことによる、法的な規制の錯誤

このような問題尾を予め予測し、対応出来るのが不動産業者です。

競売物件を調べる

競売物件を調べるにはBIT(不動産競売物件情報サイト)にアクセスします。
http://bit.sikkou.jp/app/top/pt001/h01/

競売物件入札,解説

トップページでは裁判所・事件番号・ブロック(エリア)と、3種類の方法で競売物件を検索することが出来ます。

詳細情報まで進むと、具体的な物件情報の概要を確認することが出来ます。

検索結果一覧では物件番号別に

① 事件番号
② 売却基準価格
③ 買受申出保証額
④ 物件種別
⑤ 所在地/地目/用途/面積

競売物件入札,解説

を、確認することが出来ます。

興味のある物件があれば詳細情報をクリックします。

競売物件入札,解説

そこまで行くと、先ほどご説明した3点セットをダウンロードすることが出来るようになります。

また、このページに表示されている入札期日や開札期日などは、ダウンロードする3点セットの「期間入札の公告」に記載がありますので特段、覚える必要もありません。

3点セットの調査方法

3点セットは物件明細書・現況調査報告書・評価書で構成されており、PDF方式でダウンロードされます。

物件明細書は期間入札の公告で、入札期日や開札期日の他にも固定資産税額や売却基準価格、買受可能額・物件目録・明細書などで構成されており、物件の基本情報を知ることが出来ます。

特に明細書に記載されている物件の専有状況は必ずチエックしましょう。

物件目録では「その他事項」に注目します。

競売物件入札,解説

競落後に処理しなければならない占有状況などの予備情報は、ここから多く取得することが出来るからです。

評価書」は、裁判所が売却基準価格などを決定するために不動産鑑定士が作成した書類になりますので、皆さんも見慣れているかと思いますので説明は割愛します。

3点セットから実地調査へ

実際に競売を行う場合の実地調査はとても大切です。

一般の方が競売物件を競落して困るのが、この実地調査が不充分であるにも関わらず、競落してしまったことが原因です。

不動産のプロである私たちが、一般の方と同じ失敗をしてはいけません。

まず現地調査の原則論です。

1. 競売物件の内部を見ることが出来ません。
2. 現況調査報告は、「調査の経過」に記録されている日時における写真であり内容です。

つまり報告書に「占有者無し」と記載されていても、調査日以降に占有者が入る可能性もあります。

また「放置物無し」と記載されていても、放置車両が残されるケースもありますし、室内状況も写真状況のままであると断定は出来ません。

占有者が明け渡し前に、壁を破壊して出て行くなどはよくあるケースです。

つまり、3点セットを読み込んで現状把握につとめると同時に、複数回現場に赴いて占有状況や放置物の状況を確認して競落後に必要とされる手間を勘案してから入札を行うのがプロの仕事です。

まとめ

今回は、不動産競売の基本的な説明から初めて3点セットの読み方までを解説しました。

本来であれば、具体的な入札方法や入札金額の読み方、競落してからの手続きなど具体的な説明を行いたかったのですが、文字数の都合から割愛いたします。

今回のコラムの中でもふれましたが、昔と比較して「競売物件」が身近にはなりましたが、一般の方が入札することにより事前調査の不足などからトラブルが多発しています。

特に現地調査が不足していたことから、立ち退き交渉の手間が増えたり、写真とはまったく違う惨憺とした室内状況により、想定しないリフォーム費用が発生したりと様々です。

私たち不動産業者に必要なのは、3点セットを基本として、想定される諸問題を可能な限り予防する「先読み」のスキルです。

わかりやすい役所調査マニュアル公開しました

本マニュアルにおいては、調査項目を8つに分類して解説していきます。また、入門編では各項目の大まかな考え方、概要のみを解説します。それぞれの詳細や具体的な調査方法については、実践編で解説をしますので、まずは全体像を何となく掴んで頂ければと思います。

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