【境界を巡る問題に終止符!!】新たな土地境界確定制度の概要

所有者不明土地等の問題に解消するために改正された不動産登記法ですが、相続による不動産の取得や住所移転の義務化はすでに決定事項ではあるものの実施に向けての問題点を整備する討論会が継続して行われています。
登記義務化は、所有者不明の土地や家屋問題を解決する切り札として期待が持たれていますが、単純に相続や住所移転の登記を義務化にするだけでは根本的な問題を解決することはできません。

相続しても使用されない不動産に関しての問題もその一つです。
売却できる不動産であれば良いのですが、接道要件を満たしていない無指定の地域や山林など、売却したくても購入希望者のいない土地などは、結局は放置状態が継続することになり抜本的な改革とはなりません。

そこで登記法の改正として令和3年4月21日に「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)が改正され、同時に「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)を改正しています。
この法律はどちらも所有者不明土地の「発生予防」「利用の円滑化」を目的としています。
まず相続登記の義務化で、所有者不明等の「発生を予防」、そして同じ観点から法務大臣の承認を受けて土地の所有権を国庫に帰属させる制度を創設しました。

次に必要とされるのが、「利用の円滑化」です。
そのために所有者不明土地の管理に特化した所有者不明土地管理制度を創設するとしています。
これには財産管理制度のほかにも、共有者が不明の場合における共有関係の見直し、そして相隣関係規定の見直しです。

土地境界確定制度

これらの改正は、総合的に所有者不明地問題を解消するための総合的な施策ですが、私たち不動産業者もその恩恵を多分に受けることができます。
例えば、隣地所有者が所在不明のために難航していた境界確定の問題などです。
今回は、創設準備が進められている「土地境界確定制度」のポイントも含め、現行制度の問題について解説します。

相隣関係規定の合理化が必須とされる理由

所有者不明の空き家や土地問題を解消するには、確かに登記を義務化してしまうのが最優先です。
ですが、登記を義務化してもそれだけで空き家問題が改善される訳ではありません。
つまり相続における持ち分割合の問題や、名義を移転しても継続する空き家状態などによる管理制度の強化など、同時に考えていかなければならない問題が山積しているのは冒頭で説明したとおりです。
その一つが今回、解説する地籍更正に関しての問題です。

土地境界確定制度不動産業者の皆さまはよくご存じのように、仮測図の作成も含め一連の地籍更正登記は土地家屋調査士が扱います。
地籍更正登記を依頼した場合、土地家屋調査士は以下のような手順で業務をおこないます。

1. 法務局等資料調査
2. 現地調査
3. 事前仮測量
4. 立合依頼(官を含め、全ての隣接所有者)
5. 立合
6. 測量
7. 図面作成
8. 隣地所有者からの承認印受領(確定測量図)
9. 登記申請

何も問題がなければスムーズに流れる作業ではありますが、隣地所有者が不明の場合などでは話が変わります。
また隣地所有者が相続の持ち分割合で揉めているケースなども厄介です。

土地境界確定制度例えば上記の図の場合ですと、官1・民4で合計5名の立ち合いですめば楽なのですが、そのように都合よくはいきません。
1筆の土地が複数で共有されていることなど普通にありますから、場合によっては10人以上への立ち合い依頼をすることになります。

立ち合い依頼日に全ての所有者が集まってくれれば良いのですが、人それぞれ事情もありますし、居所が遠隔地である場合などは日程調整だけでも大変です。
土地家屋調査士の報酬も難易度により跳ね上がりますので費用もかさみます。

地籍更正登記の難易度が上がる理由

地籍更正登記に必要な費用はその難易度により変わると説明しましたが、難易度は以下のような場合に上がり、その処理に要する手間や時間、労力により費用も跳ね上がります。

●地域区分(とくに都市部・農村部など)
●隣接地に赤道(里道尾)水路(青道)などの官地が存在している場合
●隣接道路が私道で、共有者が複数いる場合
●隣接地共有者の人数
●境界鋲の有無
●隣接地所有者が協力してくれない
●隣接地所有者が居所不明の場合
●面積広大地
●公共基準点からの距離

「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」により、従前と比較して簡素化された物納要件ですが、申請には地積測量図の提出が必要であることから、地積測量図が存在しない場合には事前に地籍更正登記をしておく必要があります。
また売却するにしても、相隣関係の境界トラブルが存在していれば足かせになります。
この地籍更正登記に関しての法律が従前のままでは、上記のような難易度の高い場合には過大な費用や手間の問題から停滞してしまいます。
そこまでの事態を織り込んで、境界確定に関しての手続きを簡素化して活性化させるのが今回の改正理由です。

制度改正のポイントや手続きの流れ

それでは法務省で検討されている、改正のポイントについて解説します。
改正の大きな変更点が、境界確定登記のハードルを下げたことです。
現在も隣地所有者が不明の場合などには法務局の登記官が筆界を定める「筆界確定制度」は存在していますが、申請してから平均して1年程度も必要なうえに、それに伴う費用も過大であることから、土地家屋調査士も最後の手段としています。
様々な面でハードルが高く、制度自体は知っていても実際に利用しようとは思わないのが現行制度です。

このような有名無実化している法律を改正して、所有者不明地の取引を活性化させることを目的として具体的には以下のような点について改正がおこなわれます。
解説の前に、境界についての説明をしておきますが、法律の定義では「相互に隣接する1筆の土地と他の土地との境を特定するための2点以上の点及びこれらを結ぶ直線」としています。
「境界確定」とは、土地の境界が明らかではない場合において、制度の定めにより法務局または地方法務局の長が指定する登記官が境界を確定する行為を意味しています。
手続きの開始は所有者によるとしており、この場合における所有者とは「登記名義人のほか表題所有者または相続人、その他一般承継人」です。

これら所有者からの申請により、必要があると認められる場合において境界確定手続きが開始されます。
手続きが開始されると、遅滞なくその旨が公告されるとしています。併せて、隣接土地の所有者すべてにその旨が通知されます。
これと同時に境界確定登記官が、境界確定委員会(仮称)にたいして、当該境界確定にたいして意見を求めるとされています。
この境界確定委員会の創設が、法改正における最大のポイントだと言えるでしょう。

委員会は法務局もしくは地方法務局に、委員3名以上で構成される予定となっています。
委員については固定的組織ではなく、境界確定に関して必要な学識経験者(現在のところ弁護士・土地家屋調査士などを予定)を法務局または地方法務局の長が多数の委員を任命しておき、手続き事にその中から担当委員を指定して構成するとされていますので、裁判員制度をイメージすると理解しやすいでしょう。
委員会は、測量・実地調査のほか、土地の所有者や利害関係人に対して資料の提出を求めることや、質問を自らおこなう権限を有するとともに、調査官に命じて必要な調査をおこなわせることができます。

またその他にも、必要があると認めるときには関係行政機関の長または関係地方公共団体の長にたいして、資料の提出や情報の提供、意見の陳述などの協力を求める権限が与えられます。
さらに調査の結果、関係土地所有者間に所有権に関しての紛争が存在していることが明らかになった場合には、当該紛争に関して調停をすることも認められています。
委員会による意見の提出により境界確定登記官は遅滞なく境界確定を実施できることから、従来と比較して速やかな解決が期待されます。

確定した境界に基づき、座標値や理由を付した境界確定書(仮称)図面が作製され、その旨が境界確定登記官により公告されます。
手続きにより境界確定されると、登記簿及び地図上にも公示されます。
これは境界確定にかんしての行政処分行為ですから、後から所在不明であった利害関係者が異議を唱えても、制度創設以降は民事訴訟による提訴はおこなえず、また行政不服審査法による不服申し立てもできません。
唯一の方法として行政事件訴訟法の定めによる、取消訴訟等の抗告訴訟をすることができるとしていますが、覆すことは難しいでしょう。

まとめ

新たに創設が予定される境界確定委員会にたいして大幅に権限が付与されることにより、職権による境界確定が容易になり、手続きの簡略化が期待されます。
もっとも、個人財産である不動産の境界確定にたいして行政が介入して、いわゆる「裁き」をする訳ですから、申請方法等も含め、実施にいたるまでの課題は数多く残されています。

ですが令和3年4月21日の「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)公布後2年以内で、その施行が予定されているのですから、現在、境界問題で揉めており、何ら解決の目途が立たない場合で時間的な余裕もある場合には、制度創設まで待つのも選択肢の一つかも知れません。
少なくても申請後の手続きや費用も、大幅に軽減できる可能性が高いと予測されます。
また制度内容を理解しておくことにより、顧客に提案する内容も、将来を見込んでの話題として提供できるようになるでしょう。

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