【人がいないは誤解に過ぎない】不動産会社の採用難を構造から読み解く実務論

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不動産業に限らず、企業にとって「人」は宝です。

いつの時代においても、「ヒト・モノ・カネ・情報」が組織の成長にかかせないことに異論はないでしょう。

その中でも「ヒト」は、他の要素と異なり意思を持ち自ら成長することで、組織の価値を高める存在です。

どれほど優れた商品や資金、情報を有していても、それを活かすのは「人」であり、競争の源泉は最終的に人材へと帰結します。

「人は石垣、人は城」と、戦国武将である武田信玄の人材育成に関する名言を歌にした『武田節』でも、人の重要性が説かれています。

城や石垣といった物理的な強さではなく、人の結束や能力こそが組織を支えるというこの思想は、現代の企業経営においても色褪せず、変化の激しい現代においてはむしろ高まっているとさえ言えるでしょう。

特に不動産業界は、多くの消費者にとって一生に一度の買物である高額商品を取り扱うという特性を持っています。

不動産の購入や売却は、単なる取引ではなく、多くの場合で人生設計そのものに深く関わる重要な意思決定だからです。

そのため、不動産営業には販売スキルにとどまらず、顧客の人生背景を理解する洞察力、信頼関係を構築するコミュニケーション能力、さらには不動産以外の法務、税務、金融など幅広い分野の専門知識、そして強い倫理観が求められるのです。

ですが、これらの能力や知識は一朝一夕で身に付けられるものではありません。

相応の時間をかけて実践経験を積み、学び、思考して初めて形成される能力だからです。

しかしながら、このような重要性とは裏腹に、不動産業界は慢性的な「採用難」と「人材定着の難しさ」という課題を抱え続けています。

これは、若年層における就業志向の変化や人口減少といった外部要因の影響もさることながら、業界特有の報酬体系や教育体制、さらには旧来型の企業文化が、求職者から敬遠される要因となっている側面も否定できません。

実際、企業へ講師として赴いた際、休息中に若手営業と話せば「仕事がきつい」「長時間労働が常態化している」「成果主義が厳しすぎて生活が安定しない」「昭和体質に付いていけない」といった本音を聞かされます。

筆者の修行時代と比較すれば、十分恵まれた環境だと感じてしまうのですが、そう考えること自体が時代遅れなのでしょう。

ですが、視点を変えれば、これらの課題はいずれも「改善余地の大きい領域」だと言えます。

つまり、採用手法の見直しや報酬制度の再設計、教育体制の強化や企業文化のアップデートなどによって是正できるからです。

実際、これらを実現することで、人材確保と定着率向上を実現した企業は存在しています。

これらの企業で共通するのは「人材をコストではなく投資と捉える」「個人の成長と組織の成長が比例している」ことを理解して、仕組みを構築している点です。

本稿では、不動産業界における採用難の背景を整理したうえで、若手人材が集まらない本質的な理由を明らかにすると同時に、効果的な採用媒体の使い分け、魅力のある歩合制の設計、さらには人材を育成・定着させる教育制度について具体的に論じていきます。

そして、単なる表層的なテクニックではなく、「なぜ人が集まり定着するのか」という本質に踏み込み、実務に活かせる示唆を皆さんに提供したいと思います。

人材が集まらない本質的な理由

不動産業は従業者10名以下が約8割に達するほどの、いわば少数精鋭が求められる業態です。

従業者規模別事業者数とその割合

このうち、4年制大学卒業者は男女合計で令和6年3月の就職者は13,195人しかおらず、かつ具体的な就職先は明らかにされていないものの、大半が上場会社に就職しているとの予想も成り立ちます。

不動産業の就職者の男女内訳

新卒者が上場会社への就職を希望するのは、企業のネームバリューや収入はもちろんのこと、教育体制やコンプライアンス、労働環境の適正性、評価基準の透明性などが確立されていると判断されるからではないでしょうか。

そこには、「長時間労働」「体育会系」「ノルマ至上主義」「休みが少ない」など、いまだに根強く存在する不動産業界のネガティブイメージが影響を与えていると推察されます。

言い換えれば、採用難は単なる採用活動の問題ではなく、「業界の見られ方」や「企業側の設計」などの問題が複雑に絡み合った結果発生していると推測できるのです。

四半世紀以上前に不動産業界へ飛び込まれた方にとっては、これらのネガティブ要素はイメージでなく現実だったでしょう。ですが現在では、厳しさは残るものの待遇面では改善されている企業が増えています。

しかし、その実態が十分に発信されていないため、過去のイメージだけが先行し続けているのです。

経営者の集まりでも、一昔前のスパルタ方式を採用し続ければ社員が定着しないことを皆理解して、待遇を改善しています。にもかかわらずネガティブイメージは払拭しきれていないため、現在の実態と乖離しているのです。

結果として、実態が改善されているのに「古い業界」とのレッテルが先行し、若手人材の選択肢から外されてしまうという構造が生まれていると言えるのです。さらに次のような問題もあります。

1. 報酬制度に対する不安と不信

一般的に、不動産業界は「稼げる仕事」と認識されています。歩合制であり、かつコンスタントに売上を上げ続けていけるなら、それは紛れもない事実です。

しかし現実には、毎月コンスタントに成果を残せるのはごく一部の営業に限られ、大半は振れ幅が大きく収入も安定しません。

特に近年の若年層は、従来のように一発逆転を狙って業界に飛び込んでくるような層は少なく、安定した収入と生活の見通しを重視する傾向が顕著です。

そのため、以下のような懸念があれば、応募が見送られます。

◯歩合給の計算方法が不透明
◯最低保証(基本給)が低い
◯歩合の支払いサイクルが長い
◯成果が得られるまでの期間が長い

特に、面接時にこれらの説明を曖昧にすれば、面接後に先方から辞退される可能性が高まります。

2. キャリアパスの不透明さ

不動産営業として活躍するためには、営業力や交渉力などはもとより、法務、税務、建築関連法規など高度な専門知識が不可欠です。

にもかかわらず、求職者の多くは「不動産営業=物件を斡旋するだけの仕事」という単純なイメージを思い描いています。

その結果、「どのようなスキルが身に付くか」「どのようなキャリアに発展するのか」への理解が及ばないのです。

若手人材にとって重要なのは「この会社で努力を続ければどのような未来が開かれるか」です。

そのため、採用する側は次のような具体的キャリアパスが存在することを説明する必要があるのです。

◯マネジメント職への昇進
◯仕入れや企画へのキャリアチェンジ
◯独立や起業への道

3. 教育体制の不安

不動産業従事者には高度な専門知識が不可欠なため、未経験者には参入障壁が高い分野と言えるでしょう。

にもかかわらず従来は、およそ徒弟制度が業界内で蔓延していたため手取り足取りの指導は望むべくもなく、先輩社員の鞄持ちをしながら現場を見て、必要な知識は人に聞き、自ら本を紐解くなどして学んだものです。

この慣習は根強く、いまだに「見て覚えろ」「まずやってみろ」といった属人的な育成に依存している企業も存在しています。

しかし、このような環境では未経験者は不安と感じるだけです。定着率はもとより応募自体が敬遠されるでしょう。

したがって、教育体制を明確に設計しそれを公にするだけでも、採用に関して優位性を発揮できるでしょう。

4. 情報発信の不足

現代の求職者は、企業のサイトや求人票だけでなく、SNSや口コミサイトなど多様な情報源をもとに意思決定を行います。

不動産業はDXとの親和性が高い業態ですが、思うようには進展していません。

これは、アナログ思考が根強いとの背景もありますが、過去の様々な調査においても不動産業の経営層平均年齢が62歳と、高齢化が顕著であることも理由の一つでしょう。

これには資産承継型産業である、意思決定時に経験値が重視される、同族経営の比率が高いなど様々な要因があるとされています。

実際、経営層年齢が高いほど複数の構造課題が表出し、特に自社の労働環境に関する情報発信が疎かになりがちです。

ブログやSNSで日々の業務内容や職場の雰囲気など、働き方の実態を発信するだけでも一定の効果が得られるのに、積極的に発信を推奨している企業は多くありません。

経営者によっては業務時間中にブログを書いていると「遊んでいる」と見なして叱責するケースがあるほどです。

結果として、情報が発信されていないことを理由に募集が見送られるのです。

ここまで述べてきたように、不動産業界の採用難は「人がいない」のではなく、「人材が集まる設計」になっていないことに起因しています。

つまり、採用活動とは単なる募集行為ではなく、報酬制度、教育体制、情報発信、さらには企業文化まで含めた“経営そのものの設計”に他ならないのです。

採用媒体の使い分けと実務戦略

前章では、若手人材が集まらない本質的な理由について整理しました。

そこから見えてくるのは、単に求人を出すだけでは応募が集まらない時代に突入しているという現実です。

これは、不動産業に限らずサービス業、運送業、建築業など、人手不足が顕著となっている業界に共通する傾向です。

このような環境下において、企業はどのように採用活動を設計すべきなのでしょうか。

結論から申し上げれば、この問いに最適解は存在しません。

ですが、「採用媒体の選定と使い分け」によって、ある程度のレベルまで底上げすることは可能です。

多くの不動産会社では、職業安定所への登録と「大手就職情報媒体への掲載」がとりあえずの手段として選択されがちです。

しかし、求職者の情報収集行動が多様化している現在、このような運用では十分な成果に期待できません。

とりあえずの募集に対しては、「不動産業に興味も関心もないけれど、とりあえず応募してみよう」という志の低い方しか集まらないのです。

少数精鋭が求められ、かつ競争が激化する業界において、このような方が将来的に活躍できる可能性は極めて低いと言わざるを得ません。

熱心に教育訓練を行っても、短期間で離職されればその労力は無駄になるのです。

したがって、「誰に来て欲しいのか」を明確にし、そのターゲットに最適な媒体を選び運用する必要があるのです。

1. 採用媒体は「ターゲット別」に設計する

すべての層を一つの媒体で募集しようと考えてはなりません。

実際、新卒、第二新卒、経験者、未経験者では、情報収集の方法はもとより、重視するポイントも異なります。

新卒や第二新卒は安定性と教育体制、社内の雰囲気を重視する傾向が高いでしょうし、経験者は稼げる体制か否かが判断基準となるでしょう。

つまり、それぞれに適した媒体を選定しなければ、応募効率は著しく低下するのです。

したがって、実務的には以下のように大きく3つに分類したうえで、適切な媒体と訴求内容を検討する必要があるのです。

◯新卒・若手層

この層は、条件だけで企業を選ぶことはありません。

それよりも、「どのような会社なのか」「どのような人が働いているか」といった“共感性”を重視する傾向が強いのです。

そのため、従来型の求人媒体だけでなく、ストーリー性を伝えられる媒体の活用は不可欠です。

具体的な媒体としては、次のようなものが挙げられます。

●Wantedly(ウォンテッドリー)など、給与や待遇のみでなく、企業の「ビジョン」や「社風」への共感を軸とするマッチングサービス。
●InstagramやTikTokによる日常発信。
●自社のホームページ上におけるブログ・採用サイトの充実

不動産業界は、「怖そう」「厳しそう」といった先入観が持たれがちなため、それを払拭することが重要です。

特に若手層に対しては、同年代社員の一日や、上司との関係性、オフィスの雰囲気など、職場環境を可視化することが有効です。

◯中途経験者

営業経験者や即戦力人材は、「共感」よりも「条件」を重視します。

そもそも不動産営業職は、企業に属していても個人事業主としての側面が強く、年収、インセンティブの割合、裁量の大きさなどを比較検討します。

そのため、次のような媒体が有効です。

●リクナビNEXT
●doda
●ビズリーチ

また、掲載する際には「年収1,000万円以上も可能」といった曖昧な表現では不十分で、平均年収や中央値、達成までの期間など具体的な情報を公開することで、信頼性が大きく向上して優秀な人材を確保できる可能性が高まります。

◯未経験・異業種からの転職者層

短期間での業績向上だけを目的とするなら、中途経験者のみを採用するのが最適です。

しかし、報酬に釣られて入社する営業は企業に対する帰属意識に乏しく、他に良い条件の企業があれば、すぐに転職してしまいます。

また、我関せずの態度を取る方も多く、社内の人間関係が殺伐とするといった弊害も生じます。

そのため、育てることを前提として、積極的に未経験者層を採用することが現実的な戦略であると言えるでしょう。

無論、新卒採用ができればそれに越したことはありませんが、安定思考が根強い層を開拓するのは困難を伴います。

有効な媒体としては次のようなものが挙げられます。

●Indeed
●求人ボックス
●Googleしごと検索

これらの媒体はクリック課金型が主流であり、運用次第ではコストパフォーマンスが高いメリットを享受できます。

また、効率を少しでも引き上げたいのであれば「未経験者歓迎」「充実した研修制度」「安定収入」といったキーワードを適切に盛り込めば良いでしょう。

ただし、実際に研修制度が充実しているなど、受入体制の整備が不可欠です。

それがなされないまま表示回数を引き上げるためのキーワードを使用してはなりません。

このように、3階層に分けて効果的な媒体について述べてきましたが、重要なのは媒体そのものではなく「求人内容」です。

どれほど優れた媒体を利用しても、次のような状態では応募につながりません。

●抽象的な仕事内容
●不透明な報酬体系
●教育制度の具体的な説明不足
●キャリアパスの不在

逆説的に言えば、これらが明確に設計されていれば、仮に媒体選定に誤りがあっても、一定の成果が期待できるということです。

つまり、採用活動とは「自社の魅力を的確に言語化する作業」であり、それが不十分な場合は、ただ媒体だけを増やしても成果に結びつくことはないということです。

歩合制度の設計と採用力の関係

前章では採用媒体の使い分けについて解説しましたが、どれほど適切な媒体を選定したとしても、最終的に応募者の意思決定に影響を与えるのは「報酬制度」であることは間違いありません。

特に不動産業界では、歩合制度の設計次第で「人が集まるか否か」が決まるといっても過言ではないのです。

かといって、「年収1,000万円以上可能」「高インセンティブ」といった文言を並べても、人材は集まりません。

求職者、特に若年層は「最大値」ではなく「再現性」を重視するからです。

したがって、一部のトップセールスマンが寝食を忘れるほど努力して得られる報酬額を提示しても求職者には刺さりません。

それよりも、「一定の努力をすれば誰でも稼げる水準」を提示する必要があるのです。

◯採用に強い歩合設計の特徴

完全歩合給、あるいは計算方法の不透明さや立ち上がり期間の配慮不足が見受けられる制度設計は、求職者から一番に敬遠されます。

これらに共通しているのは「会社目線で設計されている」という点です。

一方で、歩合制を採用しながら募集に成功している企業は、次のような制度設計を行っています。

① 固定給+歩合のハイブリッド型
生活できるだけの固定給を保証したうえで、努力次第で稼げるという設計にしています。
これにより、未経験者や若手層の心理的ハードルを下げることができます。

② 明確かつシンプルな計算式
誰が見ても即座に理解できる、単純計算で算出可能な歩合給や支給条件が設計されています。
成約件数に連動して歩合率が変動するといった複雑な制度は、それだけで敬遠される傾向が見受けられます。

③立ち上がり支援の設計
未経験者が初契約をあげられるようになるまでには、少なくとも3~6ヶ月程度の期間は必要です。
この間に生活が困窮しないよう、特別手当を支給するなど支える仕組みが不可欠です。

④チーム歩合の採用
個人歩合を重視すれば、どうしても「個人主義」に陥りがちとなります。
先述したように、営業がいつかないのは業界特有の現象と割り切り、短期間での成果のみを求めるのであれば従来通りの方法でも良いでしょう。

ですが、それではいつまでたっても「優秀な社員がいない」という状態が改善されません。

何より、社員が定着せず離職が相次ぎ、募集しても応募のない状態が続けば、企業の存続自体が危ぶまれます。

そのため、近年ではチーム歩合制を採用する企業が増えているのです。

例えば、チーム全体の売上に応じたボーナス支給、あるいは新人育成の貢献度に応じた評価制度の導入などです。

これにより、協力関係を促進することが可能となります。

これらの制度設計は採用時にも「雰囲気の良さ」や「働きやすさ」として伝わりやすいといった効果が生まれる一方で、どれほど優れた制度設計を行っても、それが外部に伝わらなければ意味をなしません。

そのため、求人情報や面接時には、次のような情報を開示して具体的に説明する必要があるでしょう。

●歩合の計算方法
●平均年収と分布
●成果が出るまでの平均的な期間
●実際の成功事例

これらの情報を開示することで、求職者の不安を解消し、信頼性を高めることが可能になるでしょう。

教育制度の設計と人材定着の仕組み

前章までは若手が応募してこない理由、採用媒体の効果的な使い分け、歩合制度の設計について解説してきました。

しかし、どれほど優れた採用戦略を構築しても、入社後に人材が定着しないようでは成果として結実しません。

経営戦略的には、「採用できない」こと以上に「育たない」「離職する」ことの方が、時間と費用、労力へ与えるダメージも大きいからです。

1. 教育制度は「採用の一部」であると理解する

多くの企業では「採用」と「教育」を別物として扱います。

しかし、この二つは明確に連動させてこそ、はじめて価値を生み出します。

なぜなら、求職者は「入社後に成長し、力を発揮できるか」を重視しているからです。

特に未経験者や若手人材は、「何を学べるか」「どのような教育を受けられるか」「どれぐらいの期間努力すれば一人前になれるか」を応募・入社の意思決定を行います。

つまり、教育制度は社内施策にとどまらず「採用における最重要コンテンツ」とさえ言えるのです。

2. 教育訓練の失敗パターン

筆者は企業から依頼され、新人営業向け教育研修講師として活動しています。

その際、次のような教育上の課題を抱えている企業が多いと感じます。

①OJT依存型
従来の徒弟制度を未だ教育訓練の主体としているケースが見受けられます。
この方法は、指導を担当する先輩社員の知見や仕事に対する取り組み方、具体的な方法など、いわゆる「質」にばらつきが生じます。
つまり、再現性がないのです。
場合によっては、さぼり方や見せかけの仕事を行う方法を教授されるなど、悪影響を及ぼすケースさえあるのです。

②放置型育成
先輩社員の行動を見て、自ら考え学び成長しろというスタイルです。
実際、筆者はこの方法で学びましたが、現在の若手人材に適合する方法ではありません。

③成果主義との不整合
人材を採用した以上、一日でも早く成果を挙げられるレベルまで成長して欲しいと願うのは当然です。
しかし、不動産取引を扱うには膨大な知見が必要であり、それらは短期間で身につけられるものではありません。

最低でも3ヶ月以上は教育訓練を行い、成長度合いを確認したうえで実践させるよう配慮が必要です。

この育成期間の配慮に欠けている場合、早期離職を招く結果となります。

3. 理想的な教育制度の設計

教育制度で重要なのは「段階」と「可視化」です。

●入社~1ヶ月:基礎知識・業務理解
●1~3ヶ月:ローテーション制による同行営業・ロールプレイング訓練
●3~6ヶ月:成長度合いを測定したうえで単独営業開始(フォロー前提)
●6ヶ月以降:目標達成フェーズ

このように段階分けすることで、本人と企業双方が進捗を把握しやすくなります。

さらに、段階ごとの評価基準が属人的となるのを防止するため、「評価基準の可視化」と「教育担当者の明確化および責任範囲の設定」を行わなければ、教育は機能しません。

教育制度は「育てる」だけでなく、「離職させない」ことも目的としています。

そのため、教育担当者には以下の視点が求められます。

(1)初期成功体験の設計
最初の契約をどのように取らせるかは教育担当社員の「匙加減」に大きく左右されます。
問題が生じると想定されるにもかかわらず契約を推し進めれば、当然ながらクレームが発生します。
このようなつまずきが初期段階でおこれば、そのまま離職につながる可能性が高まります。

(2)定期的な面談の実施
教育担当社員に任せきりにするのではなく、定期的にそれ以外の上席が面談を行うよう設計する必要があります。
これにより、不安や不満を早期に把握し、適切な対応策を講じることが可能になります。

(3)過度なプレッシャーの回避
営業会社である以上、実績を挙げることは不可欠です。
しかし、成長度合いには個人差があり、さらに担当した顧客の巡り合わせといった要素も影響します。

実際、長期間成果を出せなかった新人が、あるきっかけを境に急成長する事例は珍しくありません。

したがって、短期的な結果のみで評価するのではなく、中長期的な視点で成長を捉える必要があるのです。

何より、不動産営業に求められるのは知識だけではありません。

コミュニケーション能力やヒアリング力、提案力など総合的な能力が求められます。

これら膨大な知識やスキルを身につけるのに必要とされる期間には個人差があることを理解して、企業が体系的に学べる環境を整備するのです。

研修講師として企業に赴いた際「人を育てられる会社」かどうかは、社内の雰囲気や何気ないコミュニケーションを見れば即座に分かります。

求職者は敏感ですから、その違いを確実に見抜くのです。

制度設計が重要であるのは間違いありませんが、それ以前に「この会社で働きたい」と思える空気を醸成できるかが肝要だと言えるでしょう。

そしてその空気は、制度と日々の運用の積み重ねによってのみ形成されます。

採用に強い企業とは、偶然人材が集まる会社ではなく、「人が集まり、育ち、定着する構造」を意図的に設計している組織に他なりません。

まとめ

本稿では、不動産業界における採用難の本質を「人がいない」のではなく、「人材が集まり、定着する設計になっていない」という視点から整理しました。

若手人材が応募してこない背景には、業界イメージ、報酬制度への不安、キャリアの不透明さ、教育体制の不信、さらには情報発信の不足といった複合的な要因があります。

これらはいずれも、企業側の設計と発信によって改善可能な領域です。

採用媒体の使い分けにおいても、望む人材に応じて、単なる掲載ではなく、ターゲットごとに接点と訴求を設計する必要がある点を指摘しました。

これらを総合すれば、採用とは単独の施策ではなく、報酬・教育・情報発信・組織文化を一体として設計する、いわば“経営そのもの”とさえ言えるのです。

人材をコストではなく投資と捉え、その成長を前提とした仕組みを構築できる企業こそが、この厳しい時代においても持続的に選ばれ続ける存在となるのです。

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