【事故物件を売却する】重要事項説明書記載例と抑えるべきポイント

コロナの影響により私たちの働き方は大きく変わり、それに伴う雇用格差が広がりを見せています。
業種によっては雇い止めや業務縮小などに踏み切らなければならず、それらの影響によるものと断定はできませんが、コロナ禍以降の自殺者は増加を続けており、厚生労働省では独自の対策や各研究機関と共同して因果関係調査を実施しています。

事故物件,売却,重要事項説明書自殺者の増加数は、賃貸・売買など私たち不動産業者の取引形態によらず、「事故物件」を増加させます。
このような背景もあり「事故物件」が増加したことから、心理的瑕疵に関しての不動産トラブルもまた、増加傾向にあります。

不動産の売買を取り扱う私たちは、事故物件だからと避けて通ることはできません。(もちろん、取り扱わないという選択肢もありますが)
残念ながら「事故物件」となってしまった場合、その物件を可能な限りスムーズに売却することができれば、残された遺族に対してどれだけ助けになるでしょう。
今回はそんな「事故物件」を売却する場合の、購入検討者への告知内容や、重要事項説明書への具体的な記載方法について解説します。
今回の記事をより深く理解するには、前段として事故物件の定義や査定方法を理解している必要があります。

それらについては過去に解説した記事がございますので、下記URLからご覧ください。

【心理的瑕疵に時効は存在するか?】事故物件告知の法的見解を考える
https://f-mikata.jp/jikobukken-kokuchi-2/
【実践編】事故物件の調査・査定を徹底解説
https://f-mikata.jp/jikobukken-chosa/

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事故物件に関する国の動き

国土交通省は事故物件に対する知識・経験不足からのトラブルが絶えないことから、心理的な瑕疵に関する適切な告知・取り扱いに関するガイドライン策定に向けての動きを本格化しました。

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その第1回となる有識者会議が令和2年2月5日に「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」として開催されています。
有識者会議の参加者は宅地建物取引業者・消費者団体・弁護士等で構成されており、具体的に取引対象の不動産における過去の死亡事故が発生した事実などの心理的瑕疵を、どのように取り扱うかについて議論されています。

残念ながらこの会議は、一部報道関係者を除き非公開でおこなわれていることから、この記事を執筆している時点で具体的な会議内容ついては公表されていません。
会議の目的は、事故物件を正式に扱える不動産業者があまりにも少なく、法的な知識拡充が追いついていないことからトラブルも多く、結果的に既存住宅市場活性化の阻害原因を誘発していることを払拭したいとの国の考えがあります。
これは冒頭でお話したように、コロナ以降の自殺者増加を国が危惧しており、適切に事故物件を取り扱える業者を増加させることにより、市場経済活性化の根幹をなす不動産取引を活性化させ、既存住宅市場抑制の原因を除去することが目的とされています。

国が危惧しているとおり、現時点で事故物件の取り扱いに精通した不動産業者は多くありません。
法律的な知識や販売手法など、具体的なスキルを身につけることは、ビジネスチャンスにもつながります。
「事故物件をビジネスチャンスとする」、この考え方を不謹慎と捉える方が多いのは事実ですし、日本人のメンタリティーにそぐわないかも知れません。
ただし実際に起こってしまった事件を、なかったことにはできません。

私たち不動産業者は、すでに起こってしまった「事件」という「事実」を認識し、それらを正確に購入検討者に伝え、判断をしてもらう手助けをする。
それが結果的に残された遺族を助けることになり、不動産業者としての社会的な存在意義と地位向上につながるのではないでしょうか。

事故物件は販売資料へ記載が必要?

事故物件を販売する場合には、可能な限り早い段階で購入検討者へ告知する必要があります。
具体的な説明方法に関しては冒頭でご紹介した過去の記事で解説しておりますので割愛します。
それでは、まず販売資料への記載について解説します。
まず宅地建物取引業法で「事故物件」であることを、販売資料に記載することが定められているかとの質問に対して、答えは“NO”です。
定められていません。

正確に表現すると、明確なガイドラインが定められていない現在においては、資料や広告への具体的な記載方法に特段の定めはなく、宅地建物取引業法に定められているのは契約前までに口頭による告知を義務付け、かつ重要事項説明書への記載や、現況報告書などの記載をおこなうよう定めているだけで、販売資料への記載は義務付していません。
業者により販売資料等に【告知事項あり】と記載しているのは、トラブルを未然に防ぐために、業者が自主的に記載を行っているだけです。

事故物件不告知の罰則

事故物件=心理的瑕疵です。
この心理的瑕疵は、重要事項説明書(法35条書面)に記載が義務付けられており、違反すると厳しい罰則が定められています。
具体的には、宅地建物取引業法35条書面(重要事項説明書)における同法47条1項(宅建業者が業務に関し、故意に重要な事項を告げず、不実の事項を告げる行為を禁止し)違反に該当します。
また、同法65条2項2号に関しての「宅地建物取引業に関して不正もしくは著しく不当な行為」にも該当します。

これら47条違反などについての罰則は、同法79条の2(同法に違反したときには業務停止処分に止まらず、2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処せられ、またはこれを併科される)の適用になります。
宅地建物取引業法においては、致命的とも言える非常に重い罰則が適用されるということです。
無論、この罰則以外にも購入者から民事訴訟をおこされ、損害賠償が判決された場合には賠償金も加算されます。

重要事項の記載に定めはあるの?

これだけ厳しい罰則が定めているのに、重要事項説明書(35条書面)への記載方法について具体的な定めはありません。
後程、詳しく説明いたしますが「このように書いたら良いのではないか」という事例をあげているのみです。
考えてみればおかしな話です。
具体的な記載方法が定められていないにもかかわらず、罰則だけが厳しく定められている。

そこで、私たち不動産業者は悩みます。
「下手に記載すれば、罰則が適用される可能性が高まる」
そのような背景も、「事故物件」を取り扱いしたくない一つの理由となっているのかも知れません。

「限定列挙」ではなく「例示列挙」で記載する

「心理的瑕疵」についての記載については、「限定列挙」ではなく「例示列挙」が求められています。
ねんのためですが「限定列挙」「例示列挙」の違いについて解説しておきます。

限定列挙は、「記載した事由が全てであり、記載内容は限定され、その他の事由は認められない」
例示列挙は、「調査により判明した事由を記載しているが、それはあくまでも調査の範囲内で判明したことであり、それ以外の事由も存在する可能性は否定できない(受け入れる)」

つまり、記載した調査内容は完璧であり、それ以外の事由は一切認められず、記載した内容が全てであると誤解を与えるような表現は“NG”だということです。
この記載方法についての制度的曖昧さと、当事者間の認識に左右されるという心理的瑕疵の性質が増加するとトラブルの温床となっています。

解釈の違いによるトラブルと、裁判所の見解

当事者間の認識に左右されるという心理的瑕疵の判例にもとづき、裁判所の見解を考察してみます。
首吊り自殺のあった家屋が解体され、土地として販売され新築住宅を建築したが、心理的瑕疵により転売不能となることにたいして損害賠償を請求した判例です(大阪地裁平成11年2月18日)

「自殺については嫌悪すべき心理的欠陥の対象は具体的な建物の中の一部空間という特定は離れて、もはや特定できない空間内におけるものに変容している」

まず自殺による心理的瑕疵の影響は、住宅全体の中で自殺した部屋という特定された居室ではなく、家全体という空間に及ぶという考え方を示しています。これは解体した後も、土地にその影響が及ぶのかという判断基準も示唆しています。

「土地にまつわる歴史的背景に原因する心理的な欠陥は少なくないことが想定される」

居室内での自殺は土地の歴史的背景(いわゆる“ゲン”の悪い土地)と結びつけることを肯定しています。

「その嫌悪の度合いは特に縁起をかついだり、因縁を気にするなど特定のものはともかく、通常一般人が本件土地上に新たに建築された建物を居住の用に適さないと感じることが合理的であると判断される程度には至っておらず、このことからして原告が本件土地の買主となった場合においても、およそ転売が不能であると判断することについて合理性があるとは言えない」

原告が心理的瑕疵により転売不能になると主張したことにたいして裁判所は、土地に新築された建物が、転売をする場合において、因縁を特に気にする人の存在は認めつつも、通常一般人がそこまで神経質になるかという点につき合理的根拠はないとして心理的瑕疵を否定しました。
この裁判の最終的な結論として
「したがって本件建物内において平成8年に首吊り自殺があったという事実は本件売買契約において隠れた瑕疵には該当しないとするのが相当である」と結んでいます。

この判例は自殺後に解体した土地に対してであって、同じ条件、つまり事件後に解体された土地でも、「殺人事件」の場合には裁判所の判断が異なります。
「心理的瑕疵に時効は存在するか」という命題にたいして、「通常一般人の嫌悪感」という表現が判決理由として散見されていることから、通常の人が感じる嫌悪感をどのように解釈するかにより判断が異なるということです。
同じ死亡であっても自殺や他殺は、病死や自殺、事故死と比較しても通常一般人の嫌悪感も相当に強いことから、事件の性質や残虐性、報道の過熱度により近隣の記憶に深く刻まれ心理的嫌悪感が強く、査定額に与える影響や「心理的瑕疵」に関する嫌悪感が沈静化するまで、長い期間を必要とすることが伺えます。

売主告知書は必ず添付する

「事故物件」売買の場合、必ず所有者からヒアリングしてその後、事実との整合性について詳細な調査をする必要がありますが、併せて「事故内容に関する告知書」は記録し、契約関連書類の一部として添付することをお勧めします。
これは私たち宅地建物取引業者が、事故内容について質問調査を実施した記録(証拠)となりますし、もう一つは告知書の存在により、所有者が記憶違いを訂正し、任意に回答をしなおす機会を与えることにつながるからです。
また所有者からの告知によらず、心理的瑕疵を偶然に知り得た場合においても47条に定める告知義務に該当することから、上記と同じく「事故内容に関する告知書」を作成し、所有者に確認をしてもらい契約書に添付することをお勧めします。

具体的な記載方法はどう考える?

私たち不動産業者が、もっとも頭を悩ませるのが「重要事項説明書」「事故内容に関する告知書」への具体的な記載方法でしょう。
国の判断としての具体的な記載方法は、「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」によるガイドラインの完成を待たなければなりません。
ですが完成はいつになるか分からず、それまでどうしたら良いのかが問題になります。

実際にインターネットや書籍などを利用して記載例を調査しても、「心理的な瑕疵」の告知義務違反は絶対にダメといった記事は散見されますが、具体的な記載方法についての解説は、ほぼ見受けられません。
私が加盟している「全日本不動産協会」重要事項説明書記載方法に関する記入上の注意を参照すると

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「昨年8月に祖父が1階和室で病死し、1週間くらいして発見された」と記載事例をあげていますが、この記載方法で本当に良いのかという疑問が、個人的には生じています。
記載事例を説明され購入した場合において、通常一般人の多くは「死因は病死で、単に発見が遅れただけ」という認識を得るかも知れません。

ですが実際には死後1週間後に死後損傷が激しい状態で発見され、近所が大騒ぎになりマスコミも殺到してテレビのレポーターが近隣にインタビューをおこない、近隣の人々を中心に深く記憶されている可能性もあります。
認識も人それぞれであることから、軽く考えていたが実際に引き渡しを受けてから、近所から聞き及んで「聞いていた話と違う」となる可能性を否定することはできません。
これは事例が悪いのではなく、ガイドラインの策定もないことから記載したくても記載できないという実情によります。「全日本不動産協会」としても、これ以上の注意喚起ができないのでしょう。

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業界初?具体的な記載方法を解説

事故物件を数多く取り扱い、引き渡し後において「心理的瑕疵」によるトラブルを発生させたことがない、私の考える最適解として具体的な記載方法を解説します。
不動産売買の実務をこなしながらも「不動産のMIKATA」など、不動産に関連する記事を執筆している関係上、難航物件に関するコンサル依頼も多く、おそらく事故物件の取り扱い件数については一般的な不動産業者よりも多いと思います。
ただしこの記載方法については、あくまでも個人の経験則にもとづく記載方法であるという点について、予めご了承ください。
まず記載内容の項目については、裁判判例における判断基準を参考にしています。
ポイントは以下の通り。

1. 事件の発生場所
2. 事件の概要(自殺・病死・殺人などの具体的な概要)
3. 事件の重大性(マスコミの報道状況、社会的認知の度合いなど)
4. 経過年数
5. 事件後から現状までの経過(解体・リノベーションなど)
6. 近隣の記憶状況

これらの内容について「限定列挙」ではなく「例示列挙」で文章を組み立てます。
記載箇所については「その他重要な事項」になります。

【記載例】
「本件、売買対象物件において【告知義務あり】とした内容につき、以下の通り調査結果として列挙する。

 

① 平成〇年〇月〇日に本物件、1階洋室にて殺人による死体が発見された(警察発表及び、売主告知書による)

② 遺体損壊状況については新聞報道を見る限り、「死体が発見された」以上の記載が見受けられなかった(また相続人である本件、売主も具体的な説明は聞き及んでいないのは告知書通り)

③ 事件後、捜査のためにおおよそ1週間ほど警察車両や捜査員が近隣を周回していた。またマスコミの姿も頻繁に見受けられた(売主告知書による)

④ 売主による「事故内容に関する告知書」の内容にもとづき本件物件を中心として半径100mを目安に、おおよそ20件にたいして近隣住民への聞き取り調査を行った。

⑤ 物件近隣は賃貸物件も多く、住民の入れ替わりも多いことから、主観的なものではあるが聞き取り調査に対して知らない世帯が多く、記憶している世帯は3件程度であった。

⑥ 売買物件は事件後すぐに解体され、更地の駐車場として活用し10年が経過しており、その間において事件を起因とするトラブルは何等確認されていない。

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また添付書類として「事故内容に関する告知書」を添付するようにお勧めします。

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また物件状況報告書にも「告知あり」の記載を忘れないように注意しましょう。

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    まとめ

    今回は事故物件の調査を実施し、その内容を重要事項説明書に記載する方法について解説しました。
    ご紹介した方法は実際に「事故物件」を取りあつかった経験をもとにまとめています。
    今回の記事を執筆するにあたり、心理的瑕疵に関しての具体的な記載方法に関して、インターネットはもちろんのこと、事例として「全日本不動産協会」の記載方法や各書籍を調べなおしましたが、私が納得のいく方法についての解説は見受けられませんでした。
    どれを見ても断定的表現は避け、具体的な記載方法まで言及していません。

    現在までのところ国の指針が明確ではなく、また当事者間により「心理的瑕疵」の認識が異なるのが原因ですが、反復継続して実務を行わなければならない私たちとしては明確な答えが欲しいところです。
    そこで様々な裁判判例を読み込み、各種の関連書籍を調査して行きついたのが、解説した重要事項説明書への具体的な記載方法です。
    私が実務として取引する場合においても、今回解説したポイントを加味して重要事項説明書に記載していますし、また重大事件として人々の記憶に残る「事故物件」取引の場合には、作成後に必ず知見のある弁護士に調査結果の記録と併せ、内容を確認してもらうようにしています。

    とにもかくにも「事故物件」については、慎重さが肝心です。
    口頭による説明においても文章を起案する場合と同じく、限定的な表現にはお気を付けて下さい。
    調査で判明しなかった風評被害や新たな事実が発見されないとも限りません。
    この記事をお読みになった皆様が、実際に「事故物件」を取り扱い、既存住宅市場活性化に貢献できる要因となれば幸いです。

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