【不動産業界で活性化するIT取引】だからこそ反社チェックが重要な理由

筆者はご覧いただいているコラムの執筆以外にも不動産実務やセミナーなど多岐に渡り不動産関連業務を行っていますが、その中でも特に力を入れているのが不動産コンサルティングです。

以前に「不動産会社のミカタ」コラムで「【無資格でも良いの?】知られていない不動産コンサルティングの実情」という記事を書きましたが、宅地建物取引業務と不動産コンサルティングは契約形態や報酬に対する考え方もことなります。

そのようなコンサルティングを地道に続けていると、不動産業者向け専門媒体などのコラムを提供している関係もあるのでしょうか、一般の方ばかりではなく不動産業者からの相談も多くなりました。

もっとも不動産業者の場合は「手助けを願えないか」という趣旨の依頼です。

つい最近、某地域で手広く事業を展開している不動産業者から相談が持ち込まれました。

曰く「分譲マンションの契約・決済も既に終わり購入者もすでに入居している。内見や契約も全てIT取引であったことから、決済時以外に顔合わせしていなかったのだがどうやら購入者は反社の人間であったらしい」とのこと。

不動産取引ですから物件の引き渡しまで完了してしまえば、それ以降、契約不適合などの問題が発生しない限りトラブルに巻き込まれることはそうないのですが、クレームは管理組合・理事長の連名によるものでした。

購入者は入居してから「深夜まで大声で騒いでいる」など素行が悪く、不特定多数の怪しげな人間が頻繁に出入りしているなど近隣住民からクレームが多発したことから管理会社などからも注意を実施したのだが一向に改善されません。

理事長などが訪問をした際には、そつなく謝罪を述べるらしいのですが管理会社の社員などが注意に赴いた際には、恐喝すれすれの対応をされることもあるのだとか。

そこで理事長や管理組合が専門業者へ反社チェックを依頼したところ「限りなく黒に近い企業舎弟」とされる会社の代表者であることが発覚しました。

結果、そのような人間を相手に取引を行った「責任」を追求され、不動産売買契約書約款に基づく契約解除、並びに近隣住民に不安を与えたことに対する慰謝料の支払い、そして居住者の立ち退き交渉が求められているのだとか。

ご存じのように今回のような場合には、例え反社ではなくても「区分所有者の共同の利益に反する行為」であるとして区分所有法の規定に基づき「専有部分の使用禁止請求・売渡請求・競売請求」などの対処法も考えられますが、使用禁止の場合でも管理規約上の普通決議の承認が、今回の理事長などが求めている売渡請求等ですと特別決議(区分所有者4分の3以上かつ議決権4分の3以上)の賛成を経てから裁判となりますから、何にせよ時間がかかります。

管理組合や理事長が、販売業者に対してクレームを言ってくるのも理解できます。

相談してきた不動産業者も、大きな声ではいえませんが反社チェックを適正に行っていなかったとの後ろめたさもあることから契約解除や慰謝料請求等については顧問弁護士にまかせているらしいのですが、問題は立ち退き交渉です。

理事長は「今日中に立ち退かせろ」みたいな勢いで詰め寄ってくるらしく、可能性が著しく高いだけの状況においては、警察に介入してもらい法的に立ち退き交渉をしようと思っても民事不介入の原則があり、現段階では積極的に動いてくれません。

銃,骸骨

結局のところ依頼の内容は、出張経費はもちろん相応のコンサル料も全て負担するので、立ち退き完了までの交渉も含め業務を引き受けてくれないかということでした。

契約する前の対処法

今回の依頼は遠方でもあり、また完全に立ち退きを完了させるには時間も相応にかかることから進捗状況に併せて都度、助言をおこなうとのことでコンサルティング契約を締結しましたが、さてこのような事態を引き起こした原因は事前の調査不足です。

不動産売買契約書には暴排規定が盛り込まれていますが、各条項は購入者が反社に属する者ではないという確約と、発覚した場合の契約解除、そして自らまたは第三者をして本物件を反社会的勢力事務所その他の活動拠点に供しないことを確約する内容です。

決済を終え引き渡しを完了し、入居まで済ませている場合に効力を適用させるには何とも心もとない内容でしかありません。

IT重説の普及により、内覧はもちろん契約においても非対面で行える時代です。

運転免許更新時に口うるさく言われる「かもしれない運転」ではないですが「反社かも知れない」との意識で契約当事者の人物確認をすることが重要です。

今回の相談ケースのように、反社であるとの確証までは得られないけれどもかなりの確率で疑わしい場合には国土交通省で推奨している「反社会的勢力排除条項についての確認書」を取得して、反社会的勢力ではないことを誓約させておくことが必要でしょう。

下記の書面も一例ですが、反社・誓約・覚書などのキーワードで検索すれば様々な書式が検索できます。

それらの内容を参考に書面を作成し、可能であれば引き渡し後に反社であると発覚した場合の対応についてまで文言を入れておくことをお勧めします。

反社会的勢力排除条項,確認書

反社チェックの方法

さて具体的な方法ですが、インターネットで「反社チェック」を検索すると有償で行ってくれるサービス会社が確認できます。

費用を払ってでも漏れ落ちをなくしたいとの意向であれば、そのような会社を利用するのが一番良いでしょう。

ただし反社チェックの方法はそれほど難しいものではありません。

反社チェックのサービス会社でも基本的な調査方法は同じで、唯一ことなるのは独自に集積したデータベースを保持しているぐらいでしょう。

チェックの基本は下記のようなインターネット検索で、氏名で該当しないかの確認をおこないます。

1. インターネット検索
2. 新聞記事検索
3. 公知情報検索

同姓同名が多数ヒットする場合に備え、氏名の前にキーワードとして「詐欺」「反社」「粉飾」「指名手配」「暴力団」などを入力します。

調査の結果、疑わしい場合には氏名・生年月日・住所が分かっていれば、警察や暴力団追放センターなどに出向き、調査結果や必要性も含めて説明すれば、該当する場合において情報を開示して貰えます。

また契約時に融資を利用する際には申込書類に必要であることから運転免許証の写しを取得しますが、現金取引の場合に取得していない方が見受けられます。

本人確認のために必ず写しを取得しておきましょう。

運転免許証からは住所・氏名・生年月日はもちろんですが、それ以外にも様々な情報が得られます。

反社チェックを行う際には手元にあった方が間違いありません。

基本的なことですが、運転免許証には「第」から始まる12桁の番号が記載されていますが、この数字は警察庁通達「運転免許証の番号の形式および内容について」により厳格に意味づけされた数字です。

番号の最初の2桁は免許を取得してから初めて交付を受けた都道府県を表しています。

免許書,番号

公安委員会番号一覧
その数字を公安委員会番号一覧に当てはめれば、免許取得時の居住地を知ることができます。

そして3・4桁目は免許取得時の西暦下二桁が記載されます。

例えば「78」であれば1978年になりますから、令和4年時点で誕生日を迎えた時点の年齢は「44歳」であると分かります。

免許証の控えがあれば生年月日を確認することは容易ですが、取得せずに非対面取引を行う場合、本人確認として画面前に免許証を提示して貰っている程度では不安ですから、免許番号を口頭で伝達してもらったほうが良いでしょう。

正確な年齢や免許取得時の居住地が追加情報として得られていれば、インターネット検索で何らかの「事件」において同姓同名がヒットした場合、当人であるかどうかの可能性について推測しやすくなります。

まとめ

今回、冒頭で紹介した業者からの相談は珍しいケースであると思われるかも知れませんが、誰にでも起こりうることです。

暴排条例等により反社に属する者は銀行口座も作れず社会から締め出しを受けていますが、対応策として巧妙に体裁を繕うための情報が組織内で共有されています。

いわゆるマニュアルです。

しかも書類としてではなくインターネットにより情報がやり取りされていることから、警察当局もなかか実態をつかめないばかりか、法改正の先を行く方手法が常に模索されているのだとか。

もっとも「法律」が実態に追いつかないのは今に始まったことではありませんから、私たち不動産業者は常に用心して、対応策を講じておくことが必要だと言えるでしょう。

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