不動産価格の高騰が顕著になって久しく感じる頃合い、いかがお過ごしでしょうか。
さて、そんな中で高利回りを求めていくと見かけることになる「借地権の収益一棟アパート・一棟マンション」について、業者兼大家さんポジションからのポイントに触れてみたいと思います。
※私もつい先日、借地権一棟RCを取得、借地権バージンを切りました。
借地権売買の微細な項目・注意点(地主の窓口業者にアプローチしたり、筆が切れていなかったら測量したり)は不動産会社のミカタ内でも散見されるので、そこは割愛。
借地権の中では多く当たるであろう、旧法借地権アパートの売買を想定してみていきます。
購入者から見た借地権の注意部分は次の通り。
毎月、地代が掛かる
借地権ですから、当然に毎月の地代が掛かります。
一方で、あくまで土地は別の人(地主)のものなので、所有権だと買主負担となる「土地に掛かる固定資産税・都市計画税」は地主さんの負担となります。(建物分は買主の負担が発生します。)
また、一過性のものですが、不動産取得税も建物分のみが買主負担です。
この地代が通常の所有権で掛かってくる固都税より相当高いパターンが少なくないのが、一般的な借地権のツライところ。
だからこそ表面利回りがちょっと高く(価格としては割安感が有るように)売りに出されることが多く、結局運営費(含む地代)を差し引いて、ネット(NOI)を見てみると、「アレ?手残り美味しくないじゃん」というのは収支を叩くとよくある事案です。
売買時(基本は売主負担)に譲渡承諾料が掛かる
借地権価格の10%とかが多いですが、数百万等、それなりの金額が設定されていることがほとんどです。
現時点の建物所有者(借地権物件の売主)が負担するのが一般的なので、取得するだけであれば買主としての費用負担はありません。
ただ、いつかの売却時にはこの譲渡承諾料が必要です。
また、「転売」が頭に過る不動産業者としては、
○「新中間省略(三為)で登記を省略した場合にも譲渡承諾料が必要なのか?」
事業収支に大きな影響があるため、こういったことが気になるのは間違い有りません。
これについては、地主さんとその窓口の地主お抱え仲介業者さんのスタンスによって異なりますので、「1年以内の転売だったら譲渡承諾料ナシに…」とか、「登記入れてないんだから譲渡承諾料いらないですよね?ね!?」とか、しっかりとしたヒアリングが必要です。
更新時に更新料が掛かる
こちらも先程と同様、数十万から数百万。建物が木造などの非堅固建物で20年(以上)、RCなどの堅固建物で30年(以上)というのが一般的な旧法借地権の期間ですが、この期限を迎えて更新をする際に掛かるお金です。
売買時に残存期間を承継するのか、それとも借地期間を決済時からリセットするのかなどはケースバイケース。
建替え承諾料が掛かる
建物を建て替える際にはこれが掛かります。
既存の建物を砂になるまで持ち続ける意向であれば、当面掛かりません。
ただ、旧耐震木造アパートをピカピカのRCに建て替える際などには必要です。
堅固か非堅固かで承諾料も変わってきたりします。
融資の難易度が高い
借地権物件は融資が組みにくいです。資産性・担保評価が(土地がないことで)低い、金融機関によってはそもそも扱いたくない等、融資の対象となる金融機関が狭まります。
地主の協力のハードル(融資利用)
借地権でも融資を組める金融機関と購入希望者(買い手)が追いついてきたとして、融資に際して一番のハードルとなり得るのが、「地主の念書」と「地主の印鑑証明書」です。
<地主の念書>というのは、購入者が融資を使う金融機関から求められます。
よくある内容を要約すると
○地主様が土地所有権を移転するときには知らせて下さい。
○建物抵当権実行時、建物所有権が他の人に移ったときに、地主様の土地の賃借権も新所有者に譲渡させて下さい。
こんな感じの内容です。
物件購入者から見たら当然に思えるかもしれません。
されども、地主様のポジションから見たら…
・「自分がそこからお金を借りるわけでもないのに、なんで俺が売るときに知らせなきゃいけないんだよ」とか、
万一の抵当権実行から競売になったときなんかに
・「そんな、誰ともわからないヒトに、俺の土地を貸せるものか!」
こういった部分に苛立ちや不安を感じることが有り、そもそも念書の記入捺印に協力いただけなかったり、捺印はするけど「印鑑証明書だけは絶対に出さない」という固執があったりと、スムーズにいかないパターンは少なく有りません。
こういった形で所有権だと掛からないお金や地主(とそれを囲う窓口不動産業者)といった存在がある「借地権」案件ですが、やはり最大のメリットは「安く買える」可能性が高いことです。
「借地か…メンドクセ」と、投げ捨てずに、じっくり料理してみるとディールに繋がる可能性も!所有権以上に気を使う借地権、調査漏れの無いようにご留意下さい。
それではご安全に!