まず一つ目のプロジェクト「浜町LAB.」は築40年のビルを、設計事務所・起業家・写真家・キュレーター等の各分野で活躍する人々をシェアオフィスに招き入れ、交流の拠点としてリニューアルしました。これから生まれる新しい文化の発信拠点となることを目指しており、地域開放型のオフィスとしてビルオーナーと設計者がタッグを組んだ案件となります。特に評価された点は、元々築40年のこのビルのテナントに入居していた設計事務所とともに物件購入をしたという点です。この素晴らしいチャンスを活かすことで魅力的な場ができていると賞されています。日本橋の界隈性を活かした大きく道に向けて開け放たれる1階スペースでは様々なイベントが開かれており地域に根ざしていることがうかがえ、タイルのカウンターなどマテリアルとディテール共に細やかで丁寧な作りになっています。
画像はJIJI.COMより
2つ目の神田ポートビルは、築56年のビルを、神田錦町の歴史や立地を意識しながらリノベーションしました。神田錦町は東京大学発祥の地であり、周辺には現在も多くの学術機関が集積する「学びのまち」として歴史を紡いできました。このような伝統を生かし、「アカデミック」と「ウェルビーイング」をテーマに、都市生活者の新たな居場所として、サウナラボを中心にコミュニティーを育み、新たな文化を創造する拠点となることを目指しています。評価されたポイントは、地元やエリアという感覚が希薄になっている都市部において、新たな行動や回遊を生む起点を整備、地域との関係をつくるきっかけをつくった点にあります。単なるビルのリノベーションにとどまらず、戦略的に地元の事業社をテナントとして入居させることで、住民やファンを巻き込むことに成功しています。さまざまな魅力のシナジーにより、人が集い、滞留し、学び、自ら活動をはじめるという地域愛がまちに還元されていく仕組みなどがしっかりデザインされている点が評価されました。
3つ目の「TAKEBASHI HILLS」は、9階建てのオフィスビル内の最上階部分に構える13戸の賃貸住宅です。竣工24年を迎え古さを感じさせる共用部分を全面的にリニューアルすることで都心のビルの最上階でありながら、玄関を開けたら、自然を感じる公園のような居心地良い中庭をつくりだしました。コロナ禍においてテレワークが普及し、暮らしにおける住宅の比重が高まる中、住まわれる方の「ちょっと息抜きしたい」というささやかな願いを叶えられる空間を創出することを目指しました。評価ポイントは非常に殺風景であった賃貸住宅の最上階の共用部が、高級感を感じさせる共用部へと変貌している点にあります。植栽やベンチや格子のスクリーンによって、住む人がちょっと座って落ち着きたくなる中庭に変貌しており、共用部に住人が憩うことで、豊かなコミュニティーも生まれてくると考えられ、評価されました。