小売り最大手の米ウォルマートはメタバース(仮想空間)で顧客に仮想商品を販売するビジネスに備えて、独自の仮想通貨と複数種の非代替性トークン(NFT)の発行を準備していることが、米特許商標庁への商標登録出願によって分かりました。
同社は電子メールで送付した発表資料において、「新たな技術が形作る将来のショッピング体験について、当社は引き続き検討していく」としており、「今日お伝えすることはないが、われわれは技術革新の一環として日頃から商標登録を出願していることに留意していただきたい」と説明しました。
NFT(非代替性トークン)とはブロックチェーン上に記録される代替が行えないデータ単位のことです。これまでSNS上で広く流布していた画像や動画、音声など一つ一つに代替不可能な独自の価値をつけることができるため、これらを売買できるようになります。
元記事はBloombergより
同社はこの代替が行えないNFTの特性を生かし、メタバース上に画像や映像としてアップロードされた商品を現物同様に売買できるようなビジネスモデルを構築するものと考えられます。
昨年8月にウォルマートは、「デジタル通貨戦略とプロダクト・ロードマップ」を開発し「仮想通貨関連の投資とパートナーシップ」を見極める人材を探しているとして、求人広告を自社サイトに掲載していました。
昨今、ECの台頭やシェアリングビジネスの拡大、少子高齢化などによって市場が縮小しつつある実店舗小売業界では、経営環境が大きく変わろうとしています。
体験価値の提供によって「売らない店」への舵を切った丸井の他、実店舗におけるマーケティングデータの販売を収益軸とする小売のスタートアップ会社が海外から進出するなど、実店舗のあり方の変容に目が離せない状態となっています。
今回のウォルマートによるNFT発行準備は、そうした小売店のあり方を大きく覆す流れの一環としてとらえることができ、メタバース上でセレンディピティ(偶然の発見)を担保する新しいビジネスモデルが形成されていく流れに注目が集まります。