プロが考える投資用物件の修繕予算

『修繕にいくら掛けるのか?いくらまで掛けて良いのか?』

これは、実需物件でも、投資用物件でもとても重要な課題です。

ただ単に「中古マンションを購入して、自分で住む!」というエンド消費者であれば、リフォームローンや預貯金からの予算の中で、最大限自分の理想の形を実現すれば済む話。

ただ、我々のような(不動産のミカタを閲覧されるような)不動産業者にポジションを置くものとしては、投資した修繕費用は回収せねばなりません。

実需物件(区分ファミリーマンションのリノベ・再販事業など)は、レインズの成約事例や売出中物件で事例を見て「リノベ後の事例」を参考に販売できるであろう金額の上限・下限を設定→利幅と修繕コストとのバランスで取り組むか否か、どこまでやるかを算出するのが一般的な形でしょうか。

一方で投資用の収益不動産においては、その修繕コストを掛けることで「いくらの賃料が目指せるか」が大切になってきます。
出口(売却)を想定するに際して、レインズ等で成約事例や売出事例を参考にするのはもちろんですが、その際のポイントとなるのは「価格」そのものではなく、「利回り」です。

利回りを構成する要素は価格と年間でその物件がいくら稼ぐか、つまるところは「賃料」です。

賃料アップに向けてのリノベーション

修繕・リフォーム・リノベーションとボキャブラリィはありますが、ここでは「バリューアップに向けての修繕」という意味でリノベーション(リノベ)で定義してお話します。

リノベを実施すれば、賃料を上げられる可能性がある、少なくとも入居付がしやすくなることについては、異論はないでしょう。

空室がある物件を購入する際にプロが考えるのは「保有期間中の賃料アップ」「売却価格のアップ」です。

例えば、1室22,000円で募集している空室のアパートがあったとします。

ここにアクセントクロスや調光機能付きの照明・モニターフォンなど、設備を増設してリノベを施すと35,000円の賃料が見込めるとします。

その工賃が50万円であったときに、

「家賃が上げられても13,000円か…。
年間で156,000円、回収するのに3年ちょい。
普通の原状回復にしておくか。」

こんなふうに考えていたりしませんか?

「普通の大家さん目線」であれば、これも決して間違いではありませんが、プロ業者としては、その先を見る必要があります。

13,000円の差異の行く末

仮にこのアパート、わかり易く全空で10世帯だとします。

原状回復レベルの通常の修繕をすることで、
22,000円×10戸×12ヶ月で「年額264万円」です。

ここに、先程のリノベを実施することで35,000円の賃料が見込めるとします。

35,000円×10戸×12ヶ月で「年額420万円」となります。

年間の賃料の差は「156万円」です。

続いて、これらを売却時の金額に反映させてみましょう。

利回り10%での売却が見込めるエリアであれば、

===
戸当り賃料22,000円のときは、
264万円÷10%=2,640万円
===

===
戸当り賃料35,000円のときは、
420万円÷10%=4,200万円。
===

差額は
4,200万円―2,640万円⇒1,560万円

そう、当たり前の話では有るものの、たかが13,000円の差が、売買価格ベースに頭を切り替えると、1,560万円というとても大きな金額となります。

このことから、仮に、このアパートで今現在22,000円の賃料で入居中の部屋があったとして、「退去した部屋からリノベして35,000円で入居する見込みがある」のなら、全体で1,560万円、1戸当たり156万円まではお金をかけても売却によって回収できる(損はしない)と読むことが出来ます。

当然運営中賃料も上がる

加えて、単純計算年額156万円の賃料のアップサイドが見込める為、
仮に5年間保有するのであれば、
156万円×5年で、
780万円分の価値が有ると言えます。

売却時と保有時における価値増加分としては、「1560万円+780万円」で、合計2,340万円。戸当たり234万円以下でリノベ後想定賃料でのリーシングが見込めるのであれば、そのリノベを実施する意義があると言えます。

不動産業者目線であれば、さらに安く仕上げることで、売上・利益に直結する形です。

短期間のプロジェクト融資等での転売などを目指すのであれば、前者の賃料アップに付随する売買価格の引き上げに、一定期間(数年)ホールドするタイプでの保有販売を考慮する不動産業者やプロ大家業な方であれば、後者の保有期間中のアップ賃料も加味。

この頭の体操をするだけで「リノベーションにいくらまでなら掛けて良いか」という部分が把握できます。

賃料のアップサイドの有無を把握

もちろん、前提条件である見込み賃料の算出には注意が必要です。

不動産の賃貸マーケットは、地域によって賃料相場の上限があります。

同じ20㎡のワンルームでも、東京都心部なら7-10万円のレンジでよく見かけるものが、埼玉エリアなら3-5万円のレンジに留まるなどはイメージしやすいところでしょうか。

築年数やリノベーションの度合いなどによって、賃料の優劣はあれども、3-5万円のレンジであるエリアにおいて、8-10万円の賃料を想定するなどは無謀です。

SUUMOやホームズなどの賃貸ポータルサイトなどから、賃貸物件広さや駅距離、所在地等で類似物件を絞り込んで、相場賃料を把握。

その類似物件について、賃料の安い順に並べ替えをして、下限の賃料と上限の賃料を見て、自分のもつ(または取得予定の)物件が、どのポジションにいるのかを把握します。

今現在の賃料が、検索結果の最安値に近いところに位置していれば、リノベーションによる賃料の上昇余地があるかもしれませんが、すでに高めの賃料でリーシングできているのであれば、ここからのリノベーションは、過剰な投資かもしれません。

ビジネスという、大前提において、回収が見込めないリノベーションは、ただの慈善事業です。

あくまで不動産投資のプロが目指すべきは

「高く貸す」
「高く売る」

ことであって、リノベーション自体はそのための有効な「手段の一つ」に過ぎないことを忘れてはいけません。

尚、先程の事例、手前味噌ではありますが、【22,000円】⇒【35,000円】への賃料159%アップは、私が現在保有中の木造アパートです(総戸数は違います)。

また、昨年(2019年)に取得した埼玉中部エリアの一棟マンション、

その中の2DKも

取得前の募集:月額賃料【63,000円】

今回の成約賃料:【86,000円】

約132%アップでの成約です。

「賃料は築年数の経過で下がる一方だ」というのはセオリーではありますが、それは途中でのテコ入れをしない場合の話です。テコとなるリノベによっては、このように「マーケットで戦える存在」に引き上げることもできる、かもしれません。

回収できない「ヤリ過ぎ」は論外ですが、可能な範囲で「上を目指す」と、思わぬ優良物件に仕上がる可能性、見逃すと勿体ないです。

攻めの賃貸経営、攻めの収益不動産売買、攻めの賃貸管理提案には、こういった視点もぜひ。

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