不動産会社が知っておくべき家族信託の基本

家族信託とは、認知症対策として非常に有効な制度です。

意思判断能力がしっかりとある元気なうちに、自身の所有している財産の運用や管理をする権利を信頼できる家族に託す、財産管理手法の一つです。

その一方で、把握しておかないと、思わぬ親族間や金銭面でのトラブルを招く落とし穴になり得る注意点がいくつかあります。

今回は、そのような家族信託における注意点を解説していきます。

▼家族信託の仕組みについてはこちらの記事をご参照ください(外部サイト):

1,受託者の負担や責任が大きい

財産を託す人を「委託者」、託される人を「受託者」と言います。

この受託者は、託された財産に関して「信託法」に則り、課された義務と責任を果たす役割を担っています。

例えば、自身の固有財産と託された信託財産をきちんと分別して管理する義務や、委託者のために使用した生活費や医療費の出費を記録し、保存するといった義務です。この帳簿内容に関しては、委託者へ報告するという義務も発生します。

家族信託は、自由で柔軟に信託内容を決められるからこそ、信託内容によっては帳簿の記帳や、レシート管理などの事務作業が頻繁に発生する場合があり、受託者への負担が大きいと言えるでしょう。

信託契約がきちんと果たされるために、受託者を引き受ける方には、重大な義務と責任を負う可能性があるということを事前にきちんと説明し、理解してもらう必要があるでしょう。

2,受託者が見つからない場合がある

家族信託は、「委託者」と委託する財産を引き受ける「受託者」の存在があって初めて成立する制度です。

血縁関係がなくても問題ありませんが、そのような存在がいることが前提となるため、「信頼して託せる人が誰もいない」「頼んだけれど断られてしまった」といった場合には、家族信託を利用することができません。

その場合の解決策としては、「信託内容の再検討」「商事信託の検討」が考えられます。

受託者候補に断られてしまった場合はその原因を考え、対処することが必要です。

受託者の負担や責任は大きく、信託内容によっては不安を強く感じている可能性があります。

そんな時は専門家のもと、信託する財産を限定するなど、再検討を行い、負担の軽減に努めましょう。

受託者がどうしても見つからない場合は、信託会社や信託銀行が提供している「商事信託」と呼ばれる信託サービスの利用も可能です。

費用が高額となったり、会社や銀行によって制限が発生する場合もあるため、こちらも専門家に相談のもと慎重に検討することをお勧めします。

3,損益通算をすることが出来ない

信託財産の中に家賃収入を目的とする不動産(収益物件等)が含まれている場合、信託財産における損失はなかったものとみなされ、その不動産から生じる損失は信託財産以外の所得と損益通算することは出来ません。

その結果、所得税の課税対象が増え、通常より多くの所得税を支払うといった事態が生じる可能性があります。

そのため、複数不動産を保有していて、その一部のみを信託する際は、税務に精通した専門家等に相談の上、収益の見込みや信託財産に含めるタイミングも考慮して信託を行うか検討する必要があります。

4,身上監護に対応していない

身上監護とは、生活を維持するために必要な介護・医療サービスを受けられるように本人に変わって、手配や手続きを行うことです。

実際に介護や入院の際のお世話を行うわけではありません。

家族信託の契約の中に、身上監護を含むことも可能ではありますが、受託者はあくまでも信託された財産の管理・運営を行うため、身上監護においての「代理権」は有していません。

家族信託と「任意後見制度」を併用することで、身上監護について定めておくことが可能です。

必要な場合は専門家に相談し、ニーズに合わせた提案を受けることをお勧めします。

5,家族信託に関して熟知した専門家が少ない

家族信託は、従来資産凍結対策として用いられてきた成年後見制度よりもはるかに歴史が浅く、信頼に値する実績を持つ専門家は多くありません。

家族信託の利用にあたっては、法務の知識はもちろん税金や不動産といった幅広い情報が必要不可欠です。

安心して家族信託を利用するためには、そのような豊富な知識を持って適切な提案を行なってくれる、実績と経験を持つ専門家に相談することが必要です。

まとめ

ここまで、家族信託のデメリットを解説してまいりました。

家族信託には、確かにこれまで挙げたような注意点はあるものの、それらを事前に把握することで正しい理解のもとに、その選択が最適かどうかを判断することが可能になります。

ご家族様全員にとって、最善な形での家族信託を形成するために、豊富な知識を持つ専門家のもと、進めていきましょう。

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