【中古戸建】高まるリフォームニーズへの最適な提案とは?

国交省が平成13年度から毎年実施している「住宅市場動向調査」の最新の調査結果が公表されました。

同調査は、住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯を対象に、住み替え・建て替え前後の住宅・世帯の状況などの実態を調査したものです。

今回は、この「住宅市場調査」の結果に関する特筆点を取り上げ、中古戸建て購入・取得世帯のニーズについて考えてみたいと思います。

■国交省「住宅市場動向調査」(令和2年度)概要
調査対象:全国で2019年4月~2020年3月に住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯(リフォームのみ三大都市圏)
調査数:3,794サンプル
調査期間:令和2年9月1日〜12月14日

住宅市場動向調査結果の分析

①平均購入資金額が過去最高(2,894万円)に

以下のグラフは、中古戸建住宅の購入資金を調査し、直近5年間の動向を比較したものです。

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引用:国交省「住宅市場動向調査」(令和2年度)

令和2年度の中古戸建て住宅の購入資金は、平均2,894万円となりました。

この金額は、平成13年の調査開始以来の最高額となっています。

首都圏では、中古戸建ての価格は2015年から2018年前後までは上昇傾向にあり、以降高止まりしている状況となっていますが、そういった価格動向を反映した結果と言えるでしょう。

②中古戸建てを選んだ理由「価格が適切だから」が最多

以下のグラフは、中古戸建を選んだ理由を聞いた調査結果から、上位5項目を抜粋し、過去5年間の推移を表したものです。

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引用:国交省「住宅市場動向調査」(令和2年度)

中古戸建てを購入した理由で最も多いものは、過去5年間のいずれも「価格が最適だから」(グラフ青)となっていますが、徐々にその割合が減少していることがわかります。

また、全体的に回答率が年々低下傾向にあることも特徴的で、購入に対する満足度が年々低下していると考えられます。

③購入・取得世帯主の30代・40代の割合が減少傾向

以下のグラフは、中古戸建住宅を購入した世帯の世帯主の年齢をまとめたものです。

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引用:国交省「住宅市場動向調査」(令和2年度)

世帯主のボリュームゾーンが30代〜40代であること変わりはありませんが、平成28年度が全体の66.7%を占めていたのに対し、令和2年度は55.9%まで低下しています。

一方、50歳以上の割合は平成28年度に26.3%だったのに対し、令和2年度には34.4%となっています。

また、20代以下も元々のボリュームは少ないものの、ここ数年の減少傾向から一転して増加に転じています。

④「不動産業者で」物件をさがす割合が年々減少

以下のグラフは、物件に関する情報収集方法の上位5項目を抜粋し、過去5年間の推移を表したものです。

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引用:国交省「住宅市場動向調査」(令和2年度)

「インターネットで」が令和元年度に「不動産業者で」を上回り、今年度は44.3%で最多となりました。

他にも「新聞折込」が5年前の1/3まで縮小しており、インターネットを中心とした集客戦略の構築の重要性がますます高まっていきそうです。

⑤「購入後のリフォーム」が増加傾向、築11年以降の物件で特に顕著

以下の表は、中古戸建住宅の購入後のリフォーム動向について、過去5年間の推移をまとめたものです。

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引用:国交省「住宅市場動向調査」(令和2年度)

購入後のリフォームは徐々に上昇し、令和2年度は半数がリフォームを実施した(もしくは実施予定)と回答していることがわかりました。

続けて、以下の表では購入した中古戸建物件のリフォーム有無と建築時期についてまとめています。

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引用:国交省「住宅市場動向調査」(令和2年度)

築11年未満の物件では、リフォームなしが60%弱となっているのに対し、築11年以降では20%前後まで低下しています。とりわけ、売主によるリフォームの上昇幅が大きく、10%前後から30%前後まで上昇しています。

住宅市場動向調査のまとめ

ここまで、「住宅市場動向調査」の結果から特筆点をピックアップしました。ポイントは以下の通りです。

・購入価格は令和13年以降最も高い2,894万円となった
・選んだ理由は「価格が最適だから」が最多となったが、その割合は年々減少し、全体的な満足度は低下傾向にある
・購入者のボリュームゾーンは30代〜40代だが、50代以上の購入が増加傾向にある
・物件の探し方は、「インターネットで」が「不動産業者で」を上回った
・購入後のリフォームは、半数が実施。購入前の売主によるリフォームも築11年以降の物件で増加する傾向にある

リフォームに関するニーズ

住宅市場動向調査の結果から、エンドユーザーのリフォームニーズが高まっていることがわかりましたが、同調査でリフォーム工事に関する興味深い調査結果がありましたのでご紹介します。

以下の表は、今回の調査で「リフォーム工事を行った」と回答した人に対し、前回リフォームを行った時期を聞き、過去5年間の調査結果と比較したものです。

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引用:国交省「住宅市場動向調査」(令和2年度)

直近5年間で見ると、前回のリフォーム工事から「5年以内」に再度リフォームを行ったと回答する人が増える傾向にあります。

続いて、以下のグラフは、リフォーム工事の具体的な内容について聞いたものの中から上位項目を抜粋し、過去5年間で比較したものです。

引用:国交省「住宅市場動向調査」(令和2年度)

直近の5年間では、「冷暖房設備等の変更」が唯一増加傾向にあり、約1.5倍となっています。

「冷暖房設備等の変更」といった断熱性・気密性の向上などの生活空間の改善を目的としたリフォームは、修繕や更新を目的としたリフォームとは異なり、わかりやすい効果が見出しづらいため、結果として短い期間のうちに再度リフォームが行われる一因となっていると考えられます。

まとめ

今後、省エネルギーやバリアフリー対応などの住生活空間の改善を目的とした工事件数は増加が続くと見込まれており、プロのアドバイスによって、適切な現状把握、課題認識、費用対効果の見極めなどを行いながら、消費者に納得感を与えながらプロセスを進めることの重要性がますます高まるでしょう。

以下の表は、日本建築学会が行った調査で、戸建住宅への転居経験者に、転居前後の疾病状況をヒアリングし、住宅の断熱・気密性能の工場によって、居住者の各種疾病の改善率をまとめたものです。

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引用:日本建築学会「健康維持がもたらす間接的便益(NEB)を考慮した住宅断熱の投資評価」(グラフは筆者が作成)

リフォームによって得られるメリットをクオリティと価格(コストパフォーマンス)を比較した表面的な高い安いだけではなく、こういったデータを活用することで、光熱費に加えて医療・介護・保険などの幅広い視点で見たトータルなコストでの理解が進み、顧客の納得度を高めることができそうです。

これはリフォームに限らず、成約価格の上昇や在庫物件数の減少によって、顧客の選択肢が狭まることで顧客満足度が低下しやすい昨今の不動産仲介市場でも同様です。

顧客が求める最適な提案を行うことで、関係性の構築・囲い込みの促進し、競合との差異化を図る絶好のチャンスとすることができるでしょう。

■中古戸建住宅を選択した理由(複数回答、上位5項目を抜粋)

平成28年度 平成29年度 平成30年度 令和元年度 令和2年度
価格が最適だったから 65.4% 65.5% 59.7% 57.2% 56.0%
一戸建てだから 59.7% 58.4% 58.3% 56.5% 47.2%
住宅の立地環境が良かったから 52.7% 42.5% 44.5% 49.8% 45.5%
住宅のデザイン・広さ・設備等が良かったから 32.5% 32.6% 34.1% 30.0% 29.2%
昔から住んでいる地域だったから 23.5% 23.9% 22.4% 23.0% 28.0%

■物件に関する情報収集方法(複数回答、上位5項目を抜粋)

平成28年度 平成29年度 平成30年度 令和元年度 令和2年度
インターネットで 37.4% 36.0% 40.0% 44.5% 44.3%
不動産業者で 48.6% 51.6% 45.2% 42.4% 38.5%
知人等の紹介で 13.6% 20.8% 16.2% 20.1% 16.0%
新聞等の折り込み広告で 18.5% 18.9% 14.1% 11.7% 6.7%
住宅情報誌で 12.8% 9.3% 6.2% 8.8% 6.1%

■リフォームの内容(複数回答、上位項目を抜粋)

平成28年度 平成29年度 平成30年度 令和元年度 令和2年度
住宅外の改善・変更 38.8% 41.5% 31.3% 30.9% 35.3%
住宅内の設備の改善・変更 48.6% 46.9% 38.9% 34.9% 33.8%
冷暖房設備等の変更 19.5% 19.8% 28.0% 33.4% 30.3%
内装の模様替えなど 38.6% 34.2% 32.4% 29.1% 27.8%
高齢者に配慮し段差をとるなど 8.9% 7.8% 8.3% 9.4% 6.8%

◼︎断熱・気密性能の向上による疾病有病率の変化

転居前 転居後
アレルギー性鼻炎 28.9% 21.0%
アレルギー性結膜炎 13.8% 9.3%
アトピー性皮膚炎 8.6% 3.6%
気管支喘息 7.0% 2.1%
高血圧性疾患 6.7% 4.5%
関節炎 3.9% 1.3%
肺炎 3.2% 1.2%
糖尿病 2.6% 0.8%
心疾患 2.0% 0.4%

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