テレワークやおうち時間など、コロナ禍によって新たな住まい探しのニーズが顕在化し、不動産市場は引き続き堅調に推移しています。
その一方で、中古市場における在庫物件数は前年同月比マイナス20%程度で推移しており、売却委任の獲得が以前にもまして難しくなったとお感じの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、コロナ禍の不動産売却マーケットについて、売主のインサイトを取り上げます。
不動産売却のトレンドを検証し、売却委任を獲得するためのポイントについて考えてみましょう。
コロナ禍の不動産売却理由「住み替え」が半数
株式会社Speeeが不動産売却経験者を対象に行った「不動産売却に関するアンケート」によると、コロナ禍の不動産売却の理由は「住み替え」が最多となりました。
さらにこの結果を分譲マンションの売却理由に絞ると、「住み替え」と回答した人の割合は46.4%と半数近くに上ります。
なお、次点は「遺産相続」(20.0%)、次いで「転勤・転職」(10.8%)となっており、「住み替え」とは大差がつく結果となりました。
「住み替え」のために売却を考えた理由として多かったのは、「子供の成長により手狭になったため」など、家族構成の変化によるものが大半を占めています。
売却物件の45%は「築10年以内」
同じく株式会社Speeeが運営する「イエウール」の調査によると、「住み替え」を理由に売却した物件の築年数は「6年〜10年」(24.5%)が最多となりました。
「5年以内」が20.4%で次点となっており、これらを合計すると、約半数が築年数「10年以内」に住み替えをしているようです。
「住み替え」となると大きな費用負担が発生しますので、築浅で資産価値が高い状態で売却し、少しでも手残り金を増やそうとしていることが背景にあると考えられます。
売却を後悔した主な理由「スケジュール」「価格」「情報収集」
同じ調査で「不動産売却で後悔した点」を聞いたところ「余裕のある売却スケジュールを立てればよかった」が最多(23.2%)となりました。
次いで「売り出し価格を低めに設定してしまったこと」(22.2%)、「念入りな情報収集を怠ったこと」(16.2%)となっています。
「スケジュール」と「価格」は関連性が高く、いずれもしっかりとした情報収集によって解決しなければならない課題です。
不動産のプロによる適切な誘導によって、不動産取引経験の浅い売主を誘導していく必要性が分かる結果と言えるでしょう。
不動産会社の決め手「担当者」
イエウールの調査によると、不動産会社の決め手は「信頼できる担当者だった」が最多で約60%が回答する結果となりました。
次点は「対応が早い」(約40%)、次いで「地元に強いと感じた」となっています。
不動産の売却について後悔することも多い売主にとって、パートナーとなる不動産会社、とりわけ「担当者」への信頼感を重視したいと考える人が多いのでしょう。
なお、売主が考える「信頼」については、不動産・税務知識、マーケット動向などの専門性が高い知識を分かりやすく丁寧に教えてくれたといった回答が多かったようです。
調査結果のポイント
ここまで、株式会社Speeeおよびイエウールの調査について取り上げました。
以下に結果をまとめます。
・コロナ禍において、特に分譲マンションで「住み替え」を理由とした不動産売却が増加している
・売却物件の多くは「築10年以内」の築浅物件で、資産価値が残っている段階で早期に売却し、住み替え費用・残債の支払いに充てている
・売却を後悔した主な理由は、「スケジュール」「価格」「情報収集」
・不動産会社の決め手は「担当者」のスキルに大きく依存している
売却委任を獲得するためには?
コロナ禍における集客手段としてwebに注力している不動産会社さまも多いと思いますが、売却委任の獲得においてもwebでの集客が有効です。
LIFULL HOME’Sの調査「住まいの売却データファイル」によると、売却の情報収集で最も利用されたメディアは「不動産会社が運営するwebサイト」が最多となりました。
特に「素早く売却することができた」と回答した人の利用割合が高く、50.3%が利用したと回答しています。
ポータルサイトや一括査定サイトよりも「不動産会社自身が運営するwebサイト」の利用体験が、不動産売却の成否に影響を与えている可能性が高いと言えそうです。
売主集客用の専用サイト作成のポイント
ここまでの結果を踏まえると、適切な情報発信を通じた「信頼できる不動産会社」としてのブランディングが「売り」顧客専用サイトの訴求ポイントとなるでしょう。
具体的には、以下のポイントが重要になります。
②コンサル力(売買に加えて、賃貸管理・仲介、リフォーム、買取など)
③集客力(ポータルサイトの利用状況、ポスティング・DMなどの販促実績)
④スタッフ紹介(スタッフの実績・人となりなど)
⑤その他(インスペクション・瑕疵保険への対応、コロナ対策としてのオンライン接客など)
①〜⑤に関連して、早く・高く売却するためのノウハウや売出し価格の考え方、諸費用などについて啓発し、売主のお困りごと・後悔しやすいポイントに答える情報発信を行いましょう。
「買い」顧客だけでなく「売り」顧客にも注力していることは、売却代金を購入費用や残債の支払いに充てたいと考えている住み替え検討層への訴求も期待できますので、費用対効果は大きいと言えるでしょう。
まとめ
売却委任の獲得においては、全国規模で展開している大手不動産会社が優位なケースが多くなっています。
しかし、地域に根ざした活動を継続することで商圏エリアでビジネスを拡大させている不動産会社さまの事例も散見され、「売り」顧客向けのサイトを上手に活用されているケースも多いようです。
不動産会社さまのホームページは、「買い」顧客向けとなっているケースが多く、「売り」顧客専用サイトを展開している不動産会社さまは比較的少ないため、差異化が図りやすいことも背景にあります。
地域に根ざした活動による実績を訴求し、貴社認知の向上とともに顧客のファン化の促進を図るようなブランディングができれば、売却委任獲得の強力なツールとなることでしょう。
※「不動産売却に関するアンケート」 調査の概要
調査期間 :2019年12月~2021年2月
回答者の属性:全国20代~90代の男女
有効回答人数:5,205名
※ 調査概要(イエウール調べ)
調査期間:2020年10月16日~10月30日
調査手法:過去にイエウール経由で不動産を売却したユーザーにアンケートメールを送付
集計数 :イエウール経由で不動産売却を経験した男女全国100名
※「住まいの売却データファイル」調査概要
調査日:2019/9/19
調査対象者:過去2年以内に不動産の売却をした方
調査方法:インターネット調査
有効回答数:3,000票
調査主体:LIFULL HOME'S
「LIFULL HOME'S不動産査定」https://www.homes.co.jp/satei/
「住まいの売却データファイル」https://www.homes.co.jp/satei/datafile/