地方都市のマンション市況が活況な理由

コロナ禍にもかかわらず、地方の中核都市ではタワーマンションの竣工が相次いでいます。

(株)東京カンテイの調査「2020年タワーマンションのストック数(都道府県)」によれば、地方都市における供給棟数のシェアが2010年からの10年間に比べて、2021年の予定では約1.5倍となっています。

これは、コロナ禍による住まい探しトレンドの変化に加えて、地方都市ならではの生活環境も背景にあるようです。

この記事では、地方都市におけるタワーマンションの供給・販売状況を分析し、中古マンションも含めた地方都市のマンション市況について検証してみたいと思います。

供給が続く地方都市のタワーマンション

以下の表は(株)東京カンテイが行った調査「2020年タワーマンションのストック数(都道府県)」から三大都市圏とそれ以外のエリアのタワーマンションの供給数を引用したものです。

■エリア別タワーマンションの竣工棟数

2010〜19年に竣工

(築10年以内)

2020年竣工 2021年竣工予定
棟数 シェア 棟数 シェア 棟数 シェア
首都圏 242 48.30% 17 42.50% 15 39.47%
中部圏 50 9.98% 8 20.00% 5 13.16%
近畿圏 123 24.55% 7 17.50% 8 21.05%
その他エリア 86 17.17% 8 20.00% 10 26.32%

引用:(株)東京カンテイ「2020年タワーマンションのストック数(都道府県)」

2010〜2019年の10年間における三大都市圏以外のタワーマンション供給数は86棟で全体の約17%(赤枠)を占めています。

しかし、2020年になると20%(8棟)となり、2021年の竣工予定では約26%(10棟)まで上昇しています。

地方都市で増加するタワーマンション「山形市の事例」

タワーマンションの増加が顕著な例として山形県を取り上げてみたいと思います。

(株)東京カンテイのデータによると、山形県のタワーマンションのストックは3棟で、いずれもこの10年以内に竣工(竣工予定も含む)しています。

(公財)東日本不動産流通機構のデータによると、2020年の山形県の中古マンションの成約価格は1,000万円台中盤で推移していますが、2020年に販売したタワーマンションは3LDK〜4LDKで平均4,000万円台という価格帯でありながら完売となっています。

タワーマンション増加の背景

地方都市では少子高齢化による人口減少の影響が大きく、山形市も人口は減少傾向にありますが、山形市内のタワーマンションが所在するエリアは人口が増加傾向にあります。

この現象は、山形市郊外の戸建てから都市部のマンションに住み替える高齢者のニーズが高まっていることが背景にあります。

少子高齢化・人口減少に加えて、コロナ禍で在宅時間が長くなり、都市部の快適な住まいを検討する時間ができたことが相まって住まい探しニーズが高まっているようです。

地方であっても県庁所在地であれば、病院や商業施設が充実し、自動車免許を返納しても生活の足を確保できる利便性の高さが評価されています。

また、除雪をしなくて良いといった北国ならではの事情も影響しているのでしょう。

地方都市(県庁所在地など)では、人口減少によるシャッター商店街の増加などの空洞化が課題となっていましたが、利便性の高いマンションニーズの高まりによって地方都市の活性化、ひいては地方の中古不動産流通の活性化にもつながっていくことでしょう。

山形市の中古マンション市況への影響

では、この山形市で高まる「タワマンニーズ」は同市に所在する中古マンションにどのような影響を与えているのでしょうか?

レインズで公開されている山形県の中古マンション関連データで最も古い2018年度と2020年度のデータを比較してみました。

■中古マンション成約状況(各月)の年度平均(山形県)

成約数 ㎡単価 価格 専有面積 築年数
2018年度 3.67 23.19 1,660 71.08 19.16
2020年度 4.42 21.83 1,512 69.21 20.17

引用:(公財)東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」

※公開データから算出

成約数自体は伸びているものの専有面積・成約価格共に下落傾向にあります。

母数が小さいので断定的なことは言えませんが、老夫婦2人世帯に合ったコンパクトな物件のニーズが高まっていると仮定した場合、専有面積が低下していることと関連付けることができるかもしれません。

実際、suumoに登録されている山形市所在の中古マンション45件のうち、夫婦2人住まいに適した1LDK〜2LDKの物件は17件となっており(2021年7月20日現在)、過半がファミリー向けの物件(3LDK〜)となっています。

■中古マンション新規登録状況(各月)の年度平均(山形県)

登録物件数 ㎡単価 価格 専有面積 築年数
2018年度 11.58 21.98 1,498 67.51 20.54
2020年度 16.75 23.92 1,678 69.66 21.81

引用:(公財)東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」

※公開データから算出

■中古マンション在庫状況(各月)の年度平均(山形県)

在庫物件数 ㎡単価 価格 専有面積 築年数
2018年度 45.08 19.85 1,333 67.10 22.95
2020年度 67.33 24.16 1,739 71.95 21.37

引用:(公財)東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」
※公開データから算出

中古マンションの新規登録状況・在庫状況は、いずれも物件数が増加する傾向にあります。

新規・在庫のいずれも専有面積からファミリー向けの物件であると推察され、老夫婦2人暮らしには持て余す広さ・スペースと言えるでしょう。

コンパクトな物件のニーズが高まっている一方で、マーケットにはファミリー向けの物件の供給が多く、ニーズとのアンマッチが起きている状況と言えそうです。

<まとめ>地方都市の中古マンションニーズとリフォーム・リノベーション

ここまで、「地方都市のマンション市況が活況な理由」について、山形市の事例を元に分析・検証を行ってきました。
ポイントを以下にまとめます。

・全国のタワーマンションの供給量のうち、三大都市圏以外のシェアが増加傾向にある・その背景には、地方の少子高齢化・人口減少の進展があり、コロナ禍をきっかけに利便性の高い近隣都市部への住み替えニーズが顕在化した

・中古マンションマーケットの過半はファミリー物件であり、老夫婦2人向けの住まいの提案がニーズの取り込みに欠かせない

高齢化および人口減少が進んだ地方の過疎地から近隣の地方都市部への住み替えニーズは今後ますます高まっていくものと思われます。

タワーマンションに限らず、居住性・利便性の高い地方都市部のマンションは引き続きニーズが高い状況が続いていくでしょう。

中古マンションでこの需要を取り込むためには、リフォーム・リノベーションによる居住性の向上、間取り・空間の改善が欠かせないと考えます。

(株)LIXILが行った「50代-60代 リフォームに関する意識調査」の「今後やってみたいリフォームやほしい設備」では、「整理整頓しやすい収納」(20.0%)、「使いやすいシステムキッチン」(19.2%)、「防音や断熱に効果のある内窓」(15.2%)がトップ3を占めています。

リフォームで水回りのニーズが高いのはもちろんのこと、収納や防音・断熱など、生活空間にゆとりや快適性を付与するリフォームニーズが高くなっていると言えそうです。

他にも、非接触型の水栓や抗ウイルス、落ち着いた仕事・作業空間を確保した書斎など、コロナ禍を踏まえた設備や内装もニーズが高いようです。

高齢者の都市部への住み替え需要を取り込むためには、こういったアイデアを踏まえた生活空間の改善提案が欠かせないと言えるでしょう。

【調査概要】
調査名:「50代-60代 リフォームに関する意識調査」
調査対象:1年以内のリフォーム経験者で、持ち家(戸建・マンション)に居住する全国の51歳~69歳既婚男女
有効回答数:600
調査期間:2021年1月27日~29日
調査方法:インターネット調査

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