「築古でも高く売りたい!」売主ニーズへの対応とは?

中古マンション市場の在庫物件数が減少を続ける中(新築マンションも供給が細っています)、買主においては希望する物件がなかなか見つからないという状況が続いています。
築年数が30年を超えるような築古物件にまで検討対象を広げても希望する物件がなかなか見つからず、住み替えを断念するというケースが増えているようです。

一方の売主においては、一定の住み替えニーズがあるものの、不動産価格の上昇による「売り渋り」が発生しているという見方もあります。
そこでこの記事では、マンションの売主のインサイトを取り上げ、そのニーズについて検証してみたいと思います。
また、それらを踏まえてどのようにすればビジネスチャンスにつなげていくことができるかについても考察していきます。

1.首都圏中古マンション市況の現状

まず最初に、首都圏における中古マンション市況を確認しておきましょう。

①在庫物件数の動向

以下の【表1】は、首都圏中古マンションの在庫物件に関するデータ(直近3年間の1月〜9月の平均)をまとめたものです

【表1】首都圏中古マンションの在庫物件数および平均築年数(各年1月〜9月の平均)

2019年 2020年 2021年
在庫物件数(件) 47,741 45,308 34,800
在庫物件の平均築年数(年) 24.31 25.34 26.29

引用:(公財)東日本不動産流通機構「月例マーケットウオッチ」から抜粋

2021年の在庫物件数は、過去3年間で最も少なく、前年同期比で約23%減少しています。
一方の築年数はほぼ同じペースで築古化が進んでいます。

②築古物件の成約数動向

以下の【表2】は、首都圏中古マンションの築年帯別成約状況(2021年7月〜9月)をまとめたものです。

【表2】首都圏中古マンションの築年帯別成約数(2021年7月〜9月実績)

〜築5年 ~築10年 ~築15年 ~築20年 ~築25年 ~築30年 築30年~ 合計
件数(件) 735 1,187 1153 1,168 948 707 2,737 8,635
前年同期比(%) −0.5 −17.9 -23.7 −15.1 −12.5 −3.5 9.0 −8.1

引用:(公財)東日本不動産流通機構「REINS TOPIC:首都圏中古マンション・中古戸建住宅地域別・築年帯別成約状況」から抜粋

2021年7月〜9月期の中古マンションの成約数は、築30年以下はすべて前年同期比減となり、唯一築30年以上のみ前年同期比増となりました。
これらの結果を踏まえると、中古マンションの在庫物件が減少の一途を辿る中、買主は希望する物件が見つけることができず、築古物件に検討対象を広げていると言えそうです。
マンション建築コストの高止まり、土地仕入れの難化などによりマンション供給には不安材料があり、中古マンションも含めたマンションの需給バランスがさらに不安定化する可能性があります。

2.築古物件に関する売主のニーズとインサイト

次に、売主の売却時のインサイトについて検証してみたいと思います。
ここでは、株式会社ツクルバが行った「マンション売却に関する意識調査」から、東京23区内にマンションを所有し、3年以内に売却を検討している売主のニーズとインサイトについて分析してみたいと思います。

■「マンション売却に関する意識調査」概要
調査対象: 東京23区在住のマンション所有者で3年以内に売却を検討している20歳〜79歳
有効サンプル数: 200名
調査実施日: 2021年4月23日~27日

売主のインサイト①売却を検討する理由

以下の【グラフ①】は、住まいの売却を検討する理由について聞いた結果(複数回答)から、回答率の高い上位10項目を抜粋したものです。

【グラフ①】住まいの売却検討理由(複数回答)

出典:(株)ツクルバ「マンション売却に関する意識調査」(カウカモ調べ)

売却理由の最多は「より良い住まいに住み替える」(42.5%)で、「今が売り時」(26.0%)が次点という結果となりました。
コロナ禍における住まい方のトレンド変化、中古住宅の価格高騰が売主の売却意向を高めているようです。

売主のインサイト②売却時の懸念点

以下の【グラフ②】は、マンション売却時に感じる不安(複数回答)について聞いた結果から回答率の高い上位10項目を抜粋したものです。

【グラフ②】マンション売却時に感じる不安(複数回答)

出典:株式会社ツクルバ「マンション売却に関する意識調査」(カウカモ調べ)

マンション売却時の不安で最も多いのは「築年数が古いこと」(32.0%)で、それに関連して「内装状態が老朽化していること」(19.5%)も上位に入っています。
他にも「売却開始から売却完了までの期間」や「どの不動産業者を選んで良いかわからないこと」といった、住み替えを前提とした回答が散見されます。

続いて以下の【グラフ③】では、【グラフ②】で「築年数が古いこと」に不安を感じると回答したユーザーを、所有する物件の築年帯別にまとめています。

【グラフ③】所有物件の築年数別に見た「築年数が古くて不安」回答者割合

出典:株式会社ツクルバ「マンション売却に関する意識調査」(カウカモ調べ)

「築10年〜」と「築20年〜」を比較すると割合がほぼ倍増しており、マンション売却時に「築年数が古いこと」の不安は「築年数20〜30年未満」が一つの節目と言えそうです。
また、築年数が30年を超えると不安に感じる人の割合は過半数となり、築年数を減るごとに不安を抱えるユーザーが増していきます。
「1.首都圏における中古マンションマーケットの状況」で述べた、築30年以上の物件の関心が高まっていることとは好対照な結果となっています。

売主のインサイト③売却時のニーズ

以下の【グラフ④】では、売主がマンション売却時に欲しいと感じるサービス(複数回答)に関する調査結果の回答率上位10項目をまとめています。

【グラフ④】マンション売却時に欲しいサービス(複数回答)

出典:株式会社ツクルバ「マンション売却に関する意識調査」(カウカモ調べ)

マンション売却時に欲しいサービスでは、「壁・床リペアリング」(32.5%)、「クリーニングサービス」(30.0%)、「撮影サービス」(26.0%)などが上位を占めました。
他にも「CGイメージサービス」(20.5%)などが上位に入っており、物件をより良くきれいに見せたいというニーズが高いことが分かります。

<まとめ>築古物件に関する売主のインサイト・トレンドとは?

築古物件に関する売主のインサイト・トレンドを以下にまとめます。

・コロナ禍による住まいのトレンド変化(在宅時間の増加、中古住宅価格の上昇など)を理由とした売却意向の割合が高い

・築古で内装の劣化が進んでいる物件の売主は、適正な価格・時期に売却できるかどうかを懸念している

・その傾向は築20年を節目増加し、築年数を経るごとにより顕著となる

・売却時には修繕やクリーニングを行い室内の劣化が目立たないようにしたいと考えている

現住居をできるだけ高い価格で売却し、住み替える物件の購入資金に充てたいと考えている売主にとって、現住居が築古であることや、それに伴う室内の劣化が懸念材料であることが分かります。
そういった懸念を解消するために、修繕・クリーニング・撮影・CGイメージなどを活用し、物件をよりきれいに魅力的に見せたいと考えているようです。

3.売主のニーズに対応するためのポイント

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こういった売主のニーズに対して、築古物件を検討する買主が増えていることを訴求しつつ、買主が住まいに求めるトレンド・ニーズを踏まえた物件の魅せ方に関する提案がポイントになりそうです。

コロナ禍の住まい探しニーズ

買主のニーズについては、(株)リクルートが行った『住宅購入・建築検討者』調査 (2021年)からポイントを取り上げて考えてみたいと思います。
以下の【表3】は、テレワークの実施割合の変化を一回目の緊急事態宣言時と2021年で比較したものです。

【表3】テレワーク実施割合

2020年4月

(一回目の緊急宣言事態時)

2021年

(1月〜6月)

首都圏 64% 58%
東海 35% 28%
関西 42% 39%

引用:(株)リクルート『住宅購入・建築検討者』調査 (2021年)

三大都市圏ではいずれも実施率が若干低下しているものの、2020年夏以降の調査ではほぼ横ばいで推移しています。
その間、度重なる緊急事態宣言の発令、ワクチン接種などがありましたが、テレワーク実施率はほぼ一貫して同水準で推移しています。
コロナ禍如何に関わらず、テレワークが普及し、在宅勤務が働き方のスタンダードとして根付きつつあることが分かる結果と言えるでしょう。

以下の【表4】は、コロナ禍の拡大によって変化した住宅に求める条件のうち、一回目の緊急事態宣言時と2021年で比較したものの中で差分が大きかった上位3項目を抜粋しています。

【表4】コロナ禍拡大による住宅に求める条件の変化(複数回答、差分の大きい上位3項目を抜粋)

2020年4月

(一回目の緊急宣言事態時)

2021年
収納量を増やしたくなった 20% 26%
部屋数がほしくなった 19% 25%
広いリビングがほしくなった 21% 26%

引用:(株)リクルート『住宅購入・建築検討者』調査 (2021年)

コロナ禍におけるテレワークの推進や外出自粛によって、在宅時間が長くなったことで、住まいへのさまざまなニーズが高まったことはすでにご存知のことと思いますし、【表⑤】【表⑥】の結果からも明らかです。
しかし、一口に「収納を増やす」と言っても、単身・DINKS・ファミリーといった属性ごとにニーズは異なります。
例えば、共働き夫婦の世帯であれば、週末に食材をまとめ買いしておくと、日々の買い物の手間を軽減できますので、パントリーのニーズが高いことが考えられます。

子育て世帯であれば、ベビーカーや子どものおもちゃといった従来の荷物に加えて、昨今では玄関に消毒用のアルコールやマスク置き場を配置するなどといったトレンドが現れています。
室内外の中間地点としての「玄関」の役割がクローズアップされており、その意味において土間収納的なアイデアなども有効な提案の一つとなるかもしれません。
ポイントは、商圏エリアにおける中古マンション購入者の想定ターゲット(ペルソナ)を明確にした上で、買主の住まいニーズを見極めることと言えるでしょう。

売主は、不動産・住まいのプロならではの分析を元にした最適な提案を求めており、現住居のどこをどのように手直しすることで、効率よく物件の魅力を高めることができるのかについての意見やアドバイスを欲しています。
なお、これはコロナ禍の短期的なトレンドへの対応としてだけではなく、中古マンションのストックが今後さらに積み重なっていく中で、貴社が独自性を打ち出すことで競合他社との差異化を進めるためのポイントにもなっていくはずです。

■『住宅購入・建築検討者』調査(2021年)概要

調査対象:過去1年以内に住宅の購入・建築、リフォームについて「具体的に物件を検索した。もしくは建築・リフォーム会社の情報収集をした、している」「資料請求をした」「モデルルームや住宅展示場、モデルハウスを見学した」「不動産会社、建築、リフォーム会社を訪問した」「購入する物件や、建築・リフォームの依頼先と契約した」のいずれかの行動をしており、検討に関与している

調査地域:首都圏(東京都/千葉県/埼玉県/神奈川県)、東海(愛知県/岐阜県/三重県)、関西(大阪府/京都府/奈良県/兵庫県/和歌山県/滋賀県)・札幌市・仙台市・広島市・福岡市在住の20歳~69歳の男女

調査期間:2021年6月11日(金)~6月21日(月)

有効回答数:2,714(集計対象:1,291サンプル)

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