【低金利】築古物件は今が売り時【コロナ禍】

2022年2月10日の(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の発表によると、首都圏(1都3県)における22年1月の中古マンション成約件数は、前年同月比マイナス20.7%、中古戸建ての成約件数は同マイナス17.9%となり、いずれも20年4月・5月の緊急事態宣言(初回)以来の大きな減少となりました。
21年は年間を通じて中古不動産市況は活況を呈してきました。
しかし、新規登録物件数・在庫物件数の減少、価格の高騰などから、22年以降の市況に変化が起こる兆しを指摘する論調が少しずつ増えてきています。
そこで今回は、中古不動産市況を取り巻く最新動向を検証・分析し、中古物件の売り時について考察してみたいと思います。

【1】中古ストックの築古化が進行

(株)東京カンテイの調査「都道府県・主要都市のマンションストック戸数&マンション化率 2021」によれば、21年のマンションストック数のシェアは、築10年以内の割合が16.1%となり、19年の調査に比べて3.7%減少した一方、築30年を超える物件は35.2%となり、19年比で3.5%増加する結果となりました。
中古戸建ても同様で、東日本レインズ「月例マーケットウォッチ」によると、在庫物件の平均築年数の築古化が進行しています。

【2】中古不動産マーケットの現況

コロナ禍の中古不動産市況は、価格の高騰や物件数の減少などのマイナス要素がありながらも、旺盛な不動産需要によって活況を呈してきました。

①成約数の減少は、マーケットの変化の兆し?

冒頭でも延べたように、2021年は中古マンション・中古戸建てともに成約数を伸ばし、活況を呈していました。
しかし、2021年後半から2022年にかけて、成約数の伸びに減速感が見られます。
以下のグラフ①と②は、それぞれ首都圏の中古マンション・中古戸建ての2018年1月から2022年1月までの成約数と在庫物件数の推移を表したものです。

<グラフ①>中古マンションの成約数と在庫物件数の推移(首都圏)

引用:(公財)東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」のデータから筆者が作成
※グラフ見方:左軸が成約件数、右軸が物件数

<グラフ②>中古戸建ての成約数と在庫物件数の推移(首都圏)

引用:(公財)東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」のデータから筆者が作成
※グラフ見方:左軸が成約件数、右軸が物件数

コロナ禍による最初の緊急事態宣言は2020年の4月に発令され、中古マンション・中古戸建ての成約数はいずれも大きく減少(黄色軸)しましたが、緊急事態宣言が解除された7月以降は一気に盛り返します。
2021年の成約数も堅調に推移していましたが、2021年後半から成約数の伸びに鈍化の傾向が見られます。
冒頭で触れた2022年1月の大幅減はこの流れを汲んだものですが、過去の同月と比較(緑色軸)すると、中古マンションはコロナ前を同水準、中古戸建てはコロナ前の水準よりも高い状態を保っていることが分かります。

②中古マンション販売期間の短縮化

以下のグラフ③は、東京23区と大阪市の中古マンションの売出開始から販売終了までの平均日数をまとめたものです。

<グラフ③>

引用:マンションリサーチ(株)「中古マンション流通レポート2022年1月vol1」(マンションナビ調べ)

東京23区・大阪市ともに2020年の後半から販売期間が短くなっており、特に東京23区は2021年に入ってからさらに短縮する傾向が見られ、引き続き需要が旺盛なことが見てとれます。

【3】消費者マインドの変化

【2】で触れた旺盛な不動産需要は、コロナ禍で生まれた住まいのトレンドに加えて、住宅ローンの低金利が背景にあります。

以下の表①は、(株)リクルートが実施した『住宅購入・建築検討者』調査 (2021年)から、コロナ禍における住宅に求める条件の変化のうち、2021年1月〜6月の調査で最もニーズが高い5項目を抜粋したもの、表②は(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームに関する消費者・事業者実態調査」から、コロナ禍で相談や情報提供を行うことが増えた項目について、リフォーム事業者に聞いた結果をまとめたものです。

<表①>コロナ禍拡大による住宅に求める条件の変化(複数回答)

収納量を増やしたくなった 広いリビングが欲しくなった 部屋数が欲しくなった 日当たりの良い住宅が欲しくなった 庭が欲しくなった
2020年4月〜

5月

20% 21% 19% 20% 16%
2020年9月〜

12月

17% 21% 21% 21% 13%
2021年1月〜

6月中旬

26% 26% 25% 23% 21%

引用:(株)リクルート『住宅購入・建築検討者』調査(2021年)

<表②>コロナ禍による消費者ニーズの変化(複数回答)

テレワークのスペースの確保 換気設備の更新 非接触型器機への変更(水栓・扉など) 温熱環境の改善 抗菌建材への変更
32.30% 31.50% 30.80% 26.90% 9.20%

引用:(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームに関する消費者・事業者実態調査」

住み替えにおいて、スペースや住宅に求める快適性を求めるニーズは、コロナ禍初期から顕在化していましたが、2021年に入ってさらに高まっており、当面この傾向が続くものと考えられます。
加えて、近年はSDGsの啓発が進んだことで、環境負荷軽減を目的とした持続可能性や耐久性の高い住まいを求めるニーズも高まりつつあり、住宅ローン減税は、22年度の税制改正大綱で限度額・控除率の引き下げを盛り込んだ一方、脱炭素による環境負荷軽減を目的とした住宅の省エネ性能などに応じて各種優遇を手厚くしました。
政府・自治体、企業、消費者の新たな動きとして注視する必要がありそうです。

なお、住宅ローン金利は、デフレが継続していることなどを理由に、日銀の黒田総裁は現状の路線を継続することを明言しており、任期の2023年4月までは現状の低金利が続くものと考えられます。
ただし、世界的にはインフレが進行していること、ロシア情勢が不透明化していることなどを踏まえ、今後何らかの政策転換や修正が図られる可能性も留意しておく必要がありそうです。

【3】まとめ「築古物件は今が売り時」な理由

ここまで、中古不動産市況を取り巻く最新動向を検証・分析し、中古物件の売り時について考察してきました。
ポイントを以下にまとめます。

中古物件のストック蓄積が進み、築古物件のシェアが拡大している。新規物件の供給減などの影響もあり、特に築古物件は条件によって売れる物件と売りづらい物件の二極化がさらに進行すると考えられる

・活況を呈していた中古不動産市況で、成約数の減速傾向が見られる。しかし、成約率(成約数/在庫物件数)で見るとコロナ前の水準を維持していることに加えて、売出開始から販売終了まで期間も大きく変化していないことから、需要は引き続き高いレベルにあると考えられる

・旺盛な不動産需要は、コロナ禍によって生まれた住まいニーズ(住環境の改善・住宅性能の向上など)に加えて、歴史的な低金利などの各種政策によって下支えされている。一方、アフターコロナの動向・インフレ・ロシア情勢の変化など、経済情勢の不透明感によってリスクが生じる可能性もある

売主への訴求ポイント!

上記考察を踏まえると、「市況の変化の予兆」に対して、所有する不動産を適切に対処することを促すことが売却委任を獲得するにあたってのポイントになりそうです。
中古不動産のストックの蓄積が今後さらに進んだ場合、競合する物件が増加することによる売出期間の長期化、それに伴う値下げの必然性の高まりなどが想定されます。
築年数が経過すればするほど、昨今のトレンドであるテレワーク・持続可能性などにそぐわなくなるため、マーケットにおいて住み替え検討層の耳目を引く機会が減少することも加味しておく必要があります。

一方で、一時的な成約数の増減といった市況の変化の兆しは見られますが、消費者の旺盛な不動産需要がすぐに消えてなくなるといったことは考えにくい状況です。
使い勝手の悪い間取りやアクセスの悪い立地、環境負荷や持続可能性など、昨今のニーズに合致していない物件ほど、需要が高いうちに売却してしまうというのは一つの選択肢になりうると言えるでしょう。

※調査概要

■(株)リクルート『住宅購入・建築検討者』調査(2021年)

調査対象:首都圏(東京都/千葉県/埼玉県/神奈川県)・東海(愛知県/岐阜県/三重県)・関西(大阪府/京都府/奈良県/兵庫県/和歌山県/滋賀県)・札幌市・仙台市・広島市・福岡市在住で、2021年1月から2021年6月中旬までの期間に、行動をしている(2020年12月以前に検討を終了した方を除外)20歳~69歳の男女

調査方法 :インターネットによるアンケート調査

調査時期・回答数:2021年6月11日(金)~6月21日(月) 有効回答数:2,714

■(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームに関する消費者・事業者実態調査」(2021年度)

<リフォーム事業者調査>

調査対象:全国の住宅リフォーム推進協議会会員団体参加の事業者、住宅リフォーム推進協議会以外のリフォーム関連団体参加の事業者、長期優良住宅化リフォーム推進事業申請事業者、ストック循環支援事業登録業者のいずれかに該当する事業者の「経営者」「事業責任者」「事業全体を把握している担当者」

調査方法:郵送調査/インターネットリサーチ

実施期間: 2021 年 7 月 14 日~ 8 月 12 日

回答数:1,679 名(郵送: 856 名 インターネット: 823 名)

-本文ここまで、以下各データの参照元-

※データ元
レインズ:http://www.reins.or.jp/library/
東京カンテイ:https://www.kantei.ne.jp/report/110karitsu-stock.pdf
マンションリサーチ(株):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000013438.html
(株)リクルート:https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2021/0928_9581.html
(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームに関する消費者・事業者実態調査」:https://www.j-reform.com/pdf/r3_chosa.pdf

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