【媒介獲得のポイント】新駅/新線による不動産市況の変化【東急/相鉄相互直通運転】

2023年3月18日に運行を開始する相鉄・東急直通線。

(株)LIFULLの調査によれば、相鉄線沿線の中古マンション価格が2019年以降上昇傾向にあり、同年の相鉄・JR直通線の開通と併せて、相鉄から都心部へのアクセス向上が図られることが、沿線の不動産価格に表れていると言えそうです。

そこで今回は、相鉄線の都心方面への直通運転開始によって、沿線の不動産価格や人口動態がどのように変化したかを分析し、それらを踏まえた売主/買主を含めた不動産検討層へのアプローチについて考察してみたいと思います。

【1】相鉄/東急/JRの直通運転とは?

相鉄・東急直通線は、相鉄・JR直通線羽沢横浜国大駅から新横浜駅を経由し、東急東横線・目黒線の日吉駅を接続するものです(※資料参照)。

2019年11月に開通済みの相鉄・JR直通線(相鉄本線西谷駅からJR東海道貨物線へ乗り入れ、羽沢横浜国大駅を開業)と併せて「神奈川東部方面線」として整備が進められてきました。

<※資料>国土交通省「神奈川東部方面線(相鉄~JR・東急直通線)の整備」

神奈川東部方面線(相鉄~JR・東急直通線)の整備

引用元:国土交通省「神奈川東部方面線(相鉄~JR・東急直通線)の整備」

この直通運転により、横浜市西部・神奈川県央部と東京都心部のアクセスが向上することで、経路の選択肢の増加による乗り換え回数の減少などが見込まれ、速達性が高まることが期待されています。

加えて、新横浜駅を経由することで東海道新幹線へのアクセスが高まることで、中・広域への経済効果の波及も期待できます。

そのため、特に新横浜周辺から相鉄線沿線の活性化にとってはメリットが大きいとプロジェクトと言えるでしょう。

【2】沿線の物件価格の推移

では次に、相鉄と各線の直通運転が相鉄沿線の不動産価格にどのような影響を与えているかを見ていきましょう。

以下のグラフ①は、LIFULL HOME'Sに公開している中古マンションのうち、「旭区」「保土ヶ谷区」内で駅徒歩10分以内の物件(青い線)と「二俣川駅」「西谷駅」駅徒歩10分以内の物件(オレンジ色の線)の2019年以降の価格推移を表しています。

グラフ①中古マンションの平均価格(単位:万円)

中古マンションの平均価格

引用元:(株)LIFULL「『相鉄・東急直通線』2023年3月18日開業の影響で住宅価格上昇中!ハブ駅『二俣川』『西谷』の中古マンション価格は3年で2.1倍に」

旭区・保土ヶ谷区内の中古マンション価格は緩やかに上昇を続けており、2019年12月からの3年で1.6倍となっています。

「二俣川駅」「西谷駅」駅も同様に、2019年12月からの3年間で約2倍の価格となっています。

以下の表①では、国交省「不動産取引価格」で公開されているデータを元に、同エリアの中古戸建ての取引価格(坪単価)の推移をまとめています。

西谷駅・二俣川駅を最寄りとする物件の取引価格の坪単価は、2018年からの5年間で10~15%程度上昇していることが分かります。

表①「西谷駅」「保土ヶ谷駅」の中古戸建ての取引平均坪単価(単位:万円)

2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
西谷駅 108.32 115.29 105.92 107.50 116.57
二俣川駅 126.79 120.17 138.16 133.87 144.32

引用元:国土交通省「不動産取引価格情報」のデータを元に筆者が作成

西谷駅に関しては、羽沢横浜国大駅の開通の影響もあり、2019年の価格が前年比で上昇しているものの、二俣川駅は同下落となっています。

しかし、2020年以降はコロナ禍における郊外居住のトレンドの影響もあり、二俣川駅の価格が大きく上昇となりました。

2022年は両駅共に、前年比および開業前の2018年比でも価格が上昇しており、相鉄・東急線の直通運転開始の影響が窺える結果となっています。

【3】相鉄沿線の人口動態と転入元の変化

以下のグラフ②は、直近10年間の旭区と保土ヶ谷区の人口の推移を表したものです。

直近10年間で保土ヶ谷区は横ばい、旭区は緩やかに減少していることが分かります。

相鉄ホールディングスの「2020年3月期決算説明会資料」によると、相鉄・JR直通線開通後(2019年11月30日~2020年3月31日)の利用者は1日あたり2万5,000人で、当初想定の5万6,000人の半数以下となりました。

新駅「羽沢横浜国大駅」の利用者数は1日あたり4,000人で、こちらも計画していた8,000人の半分となっています。

新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年1月28日には「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令検疫法施行令の一部を改正する政令」が公布され、その後の外出自粛のきっかけとなりました。

コロナ禍の影響が新線・新駅の効果を削いでしまったと言えそうです。

なお、グラフをよく見ていただくと、旭区は2017年から2019年にかけて減少傾向が横ばいに転じてることが分かります。

限定的とはいえ、相鉄・JRの直通運転開始の影響で、転入者が一時的に増加したことで、一時的に人口減少に歯止めがかかっていたようです。

グラフ②旭区・保土ヶ谷区の人口動態

旭区・保土ヶ谷区の人口動態

引用元:総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」のデータを元に筆者がグラフを作成

次に、横浜市旭区の転入状況について、表②で転入者の移転元の内訳をまとめましたので深堀りしてみましょう。

表②横浜市旭区転入者の移転元内訳

2017年 2018年 2019年
横浜市内 4490人 5009人 4491人
神奈川県内その他 1676人 1834人 1605人
東京都区部 681人 742人 782人
その他都道府県 562人 636人 608人
合計 7409人 8221人 7486人

引用元:総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」のデータを元に筆者が表を作成

横浜市旭区への転入は2018年が特に多くなっており、隣接区をはじめとする横浜市各区から転入が多かったことが分かります。

2019年11月の相鉄・JR直通線の開始に伴う転入者の増加が伺える結果と言えるでしょう。

この傾向は2019年に一旦収束しますが、東京23区からの転入は引き続き増加していることもポイントの一つです。

2019年に入り、相鉄/JRの相互運転が各種メディアで報じられるケースが増加し、沿線周辺地域のトピックだったものが他県にも波及したことで、都内居住者の関心がより高まったと推測されます。

【4】まとめ

ここまで、相鉄の都心方面への直通運転の開始により、沿線の不動産価格や人口動態の変化について見てきました。

ポイントは以下の通りです。

・新線/新駅の開通によって当該エリアの不動産ニーズが上昇し、沿線の中古不動産価格が上昇している
・少子高齢化の影響で人口減少傾向が伺える旭区・保土ヶ谷区ではあるが、新線/新駅の影響で転入者が増加した
・転入元の多くは横浜市内、特に隣接する各区からのものが大半を占めているが、広域からの転入者が徐々に増加している

最後に、消費者の関心度について、Googleトレンドから検索数の推移を見てみたいと思います。

以下のグラフ③④は、それぞれGoogle検索における「相鉄」「新横浜」といったキーワードの検索回数の推移を表したものです。

<グラフ③>キーワード「相鉄」の検索数推移

キーワード「相鉄」の検索数推移

出典:Googleトレンド

キーワード「相鉄」は、2018年から2019年の相鉄・JR直通線開通に向けて検索数をじわじわと伸ばし、2019年11月の開通直前・直後に急激に検索回数が上昇しています。

<グラフ④>キーワード「新横浜」の検索数推移

キーワード「新横浜」の検索数推移

出典:Googleトレンド

この傾向は、今回の相鉄・東急直通線開通についても同様で、キーワード「新横浜」の検索数は2020年から緩やかに増加し続けています。

開通前後に「新横浜」も含めた沿線関連のキーワード検索数が急激に上昇することも予想されます。

媒介獲得のポイント

新駅「羽沢横浜国大前」駅の新築分譲マンションは、横浜市内からよりも相鉄・東急直通運転で接続する東横線・目黒線沿線からの反響が多いとのこと。

23区内や川崎に比べてリーズナブルな価格でありながら、都心方面だけでなく横浜方面へのアクセスも良いことが好評を得ているようです。

3月13日からはコロナ対策としてのマスクの着用について、屋内・屋外を問わず個人の判断に委ねることに加え、5月8日からは新型コロナの感染症法上の位置づけについて季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行するなど、今後アフターコロナの流れがより加速することが予想されます。

2020年以降、旭区・保土ヶ谷区共に人口が減少する傾向にありますが、引き続き都心へのアクセスが良い郊外の需要は高い状況にあります。

新線開通による沿線の注目度の向上とアフターコロナに向けた生活者のマインドの変化、都心から郊外へのトレンドなどを上手く活用しつつ、売主/買主それぞれへの訴求を強めていくことがポイントになりそうです。

保土ヶ谷区 旭区
2013 204,422 248996
2014 204,442 248164
2015 205,493 247144
2016 206,423 246868
2017 206,608 245765
2018 205,568 245747
2019 205,859 245169
2020 207,811 245174
2021 207,185 243564
2022 206,152 242572

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