新型コロナウイルス感染症の影響は、不動産事業やその営業活動に大きな影響を与えています。
4月・5月の緊急事態宣言時は、生活者が外出自粛を余儀なくされた結果、多くの仲介業者が成約数の減少という事態に直面しました。
緊急事態宣言が解除され、当面のコロナリスクが回避されたことで集客は少しずつ回復する傾向にありますが、第二波によってまた大打撃を被るような事態はなんとしても避けなければなりません。
今回は、LIFULL HOME'Sが行った「新型コロナウイルス感染症の影響による生活者の住み替え行動に関する調査」を検証し、ウィズコロナ・アフターコロナの接客について考えてみたいと思います。
1.住み替え・建て替えの今後の見通し「どうしたらいいかわからない」「延期」が71.3%
Q.住み替え・建て替えを検討している人に伺います。住み替え・建て替えの今後の見通しはどのようにお考えでしょうか?(全体n=16,810、択一回答)
住み替え・建て替えを延期する/延期した(後に再検討するつもり):33.9%
住み替え/建て替えを中止する/中止した:6.7%
どうしたらいいか分からない・決めていない:37.3%
その他:0.4%
「住み替え・建て替えを検討している・していた」生活者に今後の見通しを聞いたところ、「延期して後に再検討」が33.9%、「分からない・決めていない」が37.3%となり、保留は全体の約7割となっています。
その一方で、「中止する・中止した」と回答した人は6.7%にとどまっています。
ポータルサイトや自社ホームページでの反響はあるものの、来店・成約につながらないのはこういった背景が影響しているようです。
2.住み替え・建て替えを中止した理由「仕事・収入関連」63.6%、「外出の不安・在宅勤務」51.8%
Q.住み替え・建て替えを中止する/した理由は何ですか?(上位5項目、全体n=1,131、複数回答)
新型コロナウイルス感染症による現在の金銭面の変化(退職、減収など):28.7%
新型コロナウイルス感染症による意識の変化(外出の不安など):28.5%
新型コロナウイルス感染症による生活の変化(在宅勤務・休校など):23.3%
新型コロナウイルス感染症によるライフイベント(結婚・転勤・転職など)の延期:15.0%
「住み替え・建て替えを中止する/した」と回答した方(6.7%)に、その理由を聞いたところ、新型コロナウイルス感染症を理由とした「将来の収入の不安」(34.9%)、「現在の金銭面の変化(退職・減収など)」(28.7%)などの仕事・収入関連が63.6%となりました。
また、「意識の変化(外出の不安など)」(28.5%)や「生活の変化(在宅勤務・休校など)」(23.3%)などの「外出できないこと」を要因とした人が51.8%となりこちらも過半数となりました。
仕事・収入の不安は過去の経済危機においても起こった事象ですが、外出できないというのはコロナ禍ならではの事態であり、第二波に向けた備えがますます重要だとわかる結果と言えます。
3.住み替え・建て替えを延期した方の4割、中止した方の3割がオンラインでの対応に期待
Q.住み替え・建て替えを延期・中止する/した方に伺います。
不動産会社のやりとりから内見・重要事項説明・契約まですべてオンラインで対応してくれる不動産会社があれば、住まい探しを続けたと思いますか?
(延期する/した全体n=200、中止する/した全体n=100単一回答)
続けたと思う:10%
多分続けたと思う:33%
わからない:38%
多分続けなかったと思う:11%
続けなかったと思う:8%
<中止する/中止した>
続けたと思う:9%
多分続けたと思う:25%
わからない:39%
多分続けなかったと思う:18%
続けなかったと思う:9%
不動産会社とのやり取りから内見・重要事項説明・契約までのすべてを、オンラインで対応できる不動産会社があれば住まい探しを続けたかを聞いたところ、「延期」した方のうち43.0%、「中止」と回答した方の34.0%が住まい探しを「続けたと思う」「多分続けたと思う」と回答しました。
コロナ禍による「外出への不安」「外出できない」といった状況に対して、オンラインでの非対面接客による安心安全の提供が、生活者の住まい探しプロセスを前に進めることに一定の効果があると言える結果となっています。
4.ウィズコロナにおける仲介業者が生活者に提供すべき価値とは?
ここまでの結果を総括すると、コロナと共生していく「ニューノーマル」において、生活者が安全安心に住まい探しをできる環境を用意することの重要性は、今後ますます高まっていくものと思われます。生活者が不動産会社を選ぶ基準の一つとして「コロナ対策」が加わったとも言えるでしょう。
加えて、非対面接客を実現するIT化は、契約書+印鑑といった従来の紙でのやりとりを無くすことで、手間と時間のかかっていた不動産契約の効率化・合理化といった副次的な効果も生み出し、顧客の満足度向上、貴社の生産性向上をもたらす可能性があります。
「災い転じて福となす」ではないですが、不動産業務のIT化・オンライン化を通じて、カスタマーエクスペリエンスの再構築および業務効率化の実現を図る絶好の好機が到来したとも言えるのかもしれません。
<調査概要>
実施期間:2020年4月17日 ~ 2020年4月21日
調査地域:全国
調査対象:17~49歳男女
回答件数:70,000件
調査方法:インターネット調査