今回は、株式会社LIFULLが行った「住み替えに関する意識調査」の結果から、ユーザーの住み替えに対する意識の変化についてご紹介したいと思います。
同調査では、住み替えが一生に一度ではなくなったこと、「先に購入」「後から売却」の住み替えが増加していることなどを指摘しています。
このトレンドの変化とその背景に触れつつ、媒介獲得のポイントについて考えてみたいと思います。
「売却額を考慮せずに新居の予算を決める」46.9%
調査結果①は、住み替えにあたって購入・売却の検討の順番について聞いた結果をグラフに表したものです。
調査結果①(引用元:(株)LIFULL「住み替えに関する意識調査」)
全体の53%が「購入→売却の順で検討」と回答し、「売却→購入の順で検討」の18%を大きく上回る結果となりました。
新たに住まいを購入したいという気持ちや理由が先にあり、後から現住居を売却しようとしている人が多いことが分かります。
続く調査結果②では、物件の購入予算と売却価格について聞いています。
調査結果②(引用元:(株)LIFULL「住み替えに関する意識調査」)
「前の家の売却価格を踏まえて、現在の住まいの購入予算を決めた」、「前の家の売却価格と購入予算は無関係」という回答がほぼ半々で拮抗する結果となっています。
従来は、現住居を売却した上で、その資金を元手に新居を購入することが一般的な住み替えの流れとされてきました。
しかし、今回の調査結果からは「売却額を考慮せずに新居の購入価格を決める人」が増えてきていることが分かります。
「一生に一度」ではなくなった住宅購入
調査結果③では、売却した物件の築年数をグラフに表しています。
調査結果③(引用元:(株)LIFULL「住み替えに関する意識調査」)
売却した物件の築年数は「築10年以上20年未満」が29.4%で最も多く、「築3年以上10年未満」が21.8%で続く結果となりました。
築20年未満を合計すると売却物件全体の57.9%を占めています。
この傾向は特に現役世代で顕著となっていることが同調査で指摘されています。
30代の「築3年以上10年未満」、40代の「築10年以上20年未満」がそれぞれ4割程度を占めているとのことです。
また、別の問いで現住居売却時の住宅ローンの残債についても聞いていますが、「住宅ローンが残っていた」と回答した人は41.0%となり、住宅ローンが残った状態で売却活動を開始していることが多いことが分かります。
住み替えを検討したきっかけ「ライフスタイルの変化」「不動産価格の高騰」
調査結果④では、住み替えを検討した理由について調査した結果をまとめています。
調査結果④(引用元:(株)LIFULL「住み替えに関する意識調査」)
「住んでいる家に対する不満(狭い、部屋数が足りない、古いなど)」(25.6%)、「住宅の老朽化」(24.5%)といった現住居に対する不満が上位に散見されます。他にも「子どもの誕生・成長」(21.9%)、「自分や家族の介護・高齢化」(18.0%)といったライフステージの変化を理由に住み替えを検討した人も多くなっています。
また、「コロナの影響による生活スタイルの変化」(15.4%)、「不動産価格が上がっていたので高く売れそうだと思った」(14.0%)など、直近の住まい・不動産市場を取り巻く環境の変化も住み替えの要因として消費者に影響を与えていることが読み取れます。
不動産価格の高騰については、以下の調査結果⑤でさらに詳しく聞いています。
Q.住み替え前の住居の売却価格と購入時の価格の価格差はどのくらいですか?
②購入時の価格と、売却価格は同じくらいだった(18.5%)
③購入時の価格より売却価格は下がったが、想定していた範囲内だった(22.3%)
④想定以上に購入時の価格より売却価格が下がったが、納得できる範囲だった(11.6%)
⑤納得できないくらいに、購入時の価格より売却価格が下がった(6.2%)
⑥分からない・覚えていない(5.9%)
※調査結果⑤(引用元:(株)LIFULL「住み替えに関する意識調査」)
「購入時より高く売れた」という方が35.5%、「購入価格と売却価格が同程度だった」が18.5%となり、両者を合わせて半数以上の方は売却損を出さずに住み替えを行うことができたようです。
なお、不動産売却による譲渡所得の増加については、前回の記事でレポートしています。
Googleにおける「確定申告 譲渡益」といった関連キーワードの検索回数の変化から媒介獲得のポイントを検証・分析しました。併せてご覧ください。
<関連記事>【媒介獲得のポイント】不動産売却におけるGoogle検索の動向
まとめ「新たな住み替えトレンドへの対応」
ここまで、(株)LIFULLが行った「住み替えに関する意識調査」の結果から、ユーザーの住み替えに対する意識の変化についてご紹介してきました。
ポイントは以下の通りです。
・住み替えのトレンドに変化が生じ、まずは購入を先行させ、後から売却するというケースが増加している。ライフスタイルやライフステージに応じた住まいのニーズを優先していることがその一因と考えられる。
・このトレンドの変化は「売却額を考慮せずに新居の購入価格を決める人」が増えてきていることからも伺える。背景には、不動産価格の高騰があり、過半数が売却損を出さずに住み替えをできていることが背景にある。
「マイホームは一生に一度の大きな買い物」などと言われてきましたが、ライフステージや社会状況の変化によって柔軟に判断し、必要に応じて自宅の売却・新居の購入を適宜行っていくという意識の変化が今回の調査結果から窺えます。
媒介獲得のポイント「スムーズな売却完了」ニーズに応える
以下の調査結果⑥は、株式会社リクルートが行った「住まいの売却検討者&実施者調査」から、住み替えにおいて売却の時期と価格のどちらを優先するのかについて聞いた結果を抜粋したものです。
調査結果⑥(引用元:(株)リクルート『住まいの売却検討者&実施者』)
住み替えを検討するユーザーにおいて、物件が「いつ売れるか」を重視している人が増加し、「いくらで売れるか」が減少する傾向(画像赤枠内)にあります。
築浅の物件数が限られる中、購入したいと思った物件を確実に購入したいと考えていることが背景にあると考えられます。
(株)LIFULLの「住み替えに関する意識調査」によれば、不動産売却時に「もっとこうすれば良かったと思うポイント」(調査結果⑦)は以下のような結果となりました。
①「余裕のあるスケジュールを立てる」(24.1%)
②「価格や担当者を、複数の不動産会社でしっかり比較する」(21.0%)
③「売れないからといって安易に価格を下げない」(20.8%)
④「不動産会社の言うことが正しいかどうか判断できるようにする」(19.8%)
⑤「不動産会社に任せきりにせず、自分でも情報収集する」(18.8%)
※調査結果⑦(引用元:(株)LIFULL「住み替えに関する意識調査」)
媒介獲得のポイントとしては、これらの売主ニーズに寄り添う、とりわけスムーズな売却完了を目指し、同じ意識を共有することが重要になりそうです。
例えば、「売渡し価格」の決定には時間がかかることが一般的ですが、買い手が決断しやすい価格設定にしておく、値引き交渉が入った場合の最低ラインを決めておくなど、事前準備の重要性をあらかじめ伝えておくことなどが考えられます。
商圏の不動産市況・相場などについて売主の理解を促し、売主が納得する形での最適な売却戦略を共に構築していくコミュニケーションが求められます。
また、査定時に権利証や固定資産評価証明書などの必要書類を用意しておくと査定と売出をスムーズに進めることができるといった、不動産売却をスムーズに進めるためのちょっとしたコツなども売主の気持ちをつかむためのポイントになるでしょう。
■(株)LIFULL「住み替えに関する意識調査」概要
調査実施期間:2023年6月2日(金)~6月5日(月)
調査対象者:過去3年以内に自分が住んでいた一都三県の購入物件を売却し、新たに購入した物件に住み替えた25~84歳の男女
有効回答数:500人
■株式会社リクルート「住まいの売却検討者&実施者調査」概要
調査対象:首都圏(東京都/千葉県/埼玉県/神奈川県)在住の20-69歳男女のうち、過去1年以内に土地や居住用不動産の売却を主体的に検討し、情報収集、仲介会社へ問い合わせ、訪問査定、媒介・代理契約、売却完了または停止などを行った方。
調査時期・回答数:2022年12月20日(火)~12月24日(土)
有効回答数:1,239人