借地権を売却したいとの要請を受けたとき、借地人や地主との打合せで媒介契約締結までにどのようなことを確認・協議していったらよいかを説明します。
売買仲介担当の皆様のところに借地権売却の相談が来る場合、その借地上の建物は旧耐震ビルか中古戸建が建っている場合がほとんどではないでしょうか?そしてその借地権の購入者として想定されるのは、ほとんどの場合、個人ではなく不動産業者(それも多くの場合、戸建分譲業者)なのではないでしょうか?
これは、築古の建物が建っている借地を購入したいという個人客のニーズがかなり少ないからです。
そんな状況の中、今回は借地権売買がされる都市部の、売買仲介担当の皆さんが経験される可能性が高く、かつ、成約可能性も高い中古戸建付の借地権売買に焦点を絞って解説したいと思います。
関係書類を収集し、関係者からのヒアリングを重ねながら媒介契約の準備をいたしましょう。
借地権の売却準備時にチェックしたい9つのポイント(土地調査)
1.借地権の種類を確認しましょう
相談者である借地人から、借地権の種類を聞き取りましょう。
多いのは旧法借地権でしょう。基本事項ですから、土地賃貸借契約書を細部までしっかり確認しましょう。
2.借地面積を確認しましょう。
借地人から借地の面積を教えてもらいましょう。
土地賃貸借契約書や登記事項証明書、地積測量図等に記載してある面積と相違がないか確認しましょう。
相違がある場合にはその原因を調べましょう。
3.その借地は一筆の土地ですか?
借地は「一筆の土地」でしょうか?それとも「一筆の土地の一部」でしょうか?
該当する借地が大きな土地の一部だとすると、そのままでは売買の際の対象面積・位置が明示できません。
一筆の土地の一部である場合には、地主に分筆をしてもらうように交渉しましょう。
4.その借地は分筆ができる状態ですか?
多くの場合、1区画のままで取得者が利用する面積であることは少ないと思います。
やや一宅地としては大きな土地でその借地を2分割以上にして分譲戸建用地にする可能性が高いと思います。
また、小さな1区画だけだと分譲業者としては採算が取れにくく敬遠されがちです。その場合には、他の売却先も検討しておきましょう。
5.その借地は測量がされていますか?官民査定・民民境界確認は完了していますか?
上記の分筆の可否とも関係しますが、売買をするなら所有権土地と同様、これらも必要です。
土地の測量だけでも、隣地の方たちの立会や承諾も必要ですし、面積の過不足が出てくれば、その協議にも相当の期間がかかるでしょう。
測量等が未了であれば、地主に依頼をしましょう。
これらの手続きが終わっているなら、土地家屋調査士に分筆登記が可能かどうか、内容を確認してもらっておきましょう。
6.現地で境界の確認をしましょう。
境界杭はあるでしょうか?
境界塀はどうでしょう?
塀の所有者の確認も必要です。
ケースバイケースですが、すべて地主の所有とか、隣地と地主の共有とかいろいろな可能性が考えられます。
借地権売買に伴って、それらの取り扱いをどうするのか、関係者にヒアリング、または協議しておく必要があります。
7.土地の定着物についての扱いを協議しておきましょう。
立木、庭石、あるいは井戸や浄化槽等もあるかもしれませんが、借地権売買に伴ってそれらをどう扱うのかも地主と協議をしておきましょう。
8.隣地との越境問題はありませんか?
こちらも所有権土地の売買と同様、地上も地中もしっかり確認する必要があります。
越境がある場合にはその対策を検討しましょう。借地の場合、所有権の土地以上に地中埋設物の越境の可能性が高いです。その処理には時間もお金もかかります。
一般的には、「出来るだけ速やかに越境状態を解消する」または「越境している側が建替えの際に越境状態を解消する旨の覚書を締結する」のいずれかの方策を採用することが多いと思います。
9.その借地は建築基準法の要件を満たしていますか?
道路の種別、接道間口をはじめ、要件を確認していきましょう。
あらためて分筆をするのであれば、最小宅地面積の規定も行政の指導要綱などで確認しましょう。
まとめ
- 借地権の種類を確認しましょう
- 借地面積を確認しましょう。
- その借地は一筆の土地ですか?
- その借地は分筆ができる状態ですか?
- その借地は測量がされていますか?官民査定・民民境界確認は完了していますか?
- 現地で境界の確認をしましょう。
- 土地の定着物についての扱いを協議しておきましょう。
- 隣地との越境問題はありませんか?
- その借地は建築基準法の要件を満たしていますか?
以上、いくつか土地に関して思いつくままに列記してみました。
その土地によってチェックポイントは変わってきますが、上記の項目をチェックしていく間にいろいろと疑問点も発見できると思います。
参考にしていただければ幸いです。