不動産に係る契約には複数の法律が関係しています。
「契約自由の原則」は2020年に民法が改正され新設された規定です。さらに契約の方式についても自由であることが新設され、電子契約の法律的根拠が規定されました。
不動産の電子契約を有効なものにするには、不動産に係る特別法の根拠も必要になってきます。
本格運用まで数ヶ月となった現在、関係する法律の現状について確認しておく必要があるでしょう。
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電子契約に係る法律
不動産業に関する電子契約には法律の係わりがあり、本格的運用には法律の改正や運用方法の見直しなどが必要になります。
関係する法律としては次の5つがあげられます。
2. 民法
3. 借地借家法
4. 電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)
5. 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法)
宅地建物取引業法と電子契約
宅地建物取引業法は電子契約に直接関係する法律であり、現行法では宅建業法第35条書面(重要事項説明書)および宅建業法第37条書面(契約書)を、そして宅建業法第34条の2、3書面(媒介契約書、代理契約書)を「紙の書類」として作成・交付しなければなりません。
電子契約本格運用にあたっては “書面” を電磁的な記録でも有効である旨の改正が必要になりますが、2021年第204回国会にて改正法案が成立し、施行を待つ状態となりました。
現在はIT重説が本格運用されており、上記の書面を電子交付する社会実験もおこなわれています。
これらの施策は宅建業法改正前に実施されていますが、その法的根拠はガイドラインの改正にもとづいています。
宅建業法ガイドラインとは?
2000年4月1日から施行された「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」により、宅建業法は国の事務から地方公共団体の事務として処理されるようになりました。(宅地建物取引業法 附則(平成11年7月16日法律第87号))
都道府県が宅建業法に係る事務処理を行うようになったのですが、都道府県別に異なった運用がなされることを防ぐため、国土交通省はガイドラインとして「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」を通達しています。
IT重説に関しては次のようにガイドラインの改正がされてきました。
平成29年8月30日国土動第76号では、宅地又は建物の貸借の代理又は媒介に係る重要事項の説明にITを活用する場合の取扱いについて規定されました。
さらに令和3年3月30日国不動第106号にて、宅地もしくは建物の売買・交換についても重要事項の説明にITを活用する場合の取扱いが追加され、現在本格運用されています。
民法と電子契約
民法第522条には契約成立に関する規定があります。
さらに2項には『契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。』との規定があり、電子契約は契約当事者の正しい意思表示であれば何ら問題がないとされました。
これらの条項は2020年に施行された改正民法で新設された条項であり、電子契約も契約方式のひとつと認めるものです。
さらに遡って2000年には「電子署名法」が成立しており、電子メールやWeb上における申し込みも法的に有効な契約方式であることが認められていました。
借地借家法と電子契約
現行の借地借家法では書面による契約を義務付けています。
・定期建物賃貸借は第38条
定期借地・借家契約については、宅地建物取引業法とは別に借地借家法において “書面化” を義務づけするものでした。
そのため前述のIT重説や書面の電子交付に係る社会実験では対象外となっていたものです。
しかし宅建業法の改正を含めて、2021年第204回国会にて『デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案』が成立し、借地借家法も改正施行されることになりました。
電子署名法と電子契約
電子署名及び認証業務に関する法律は2001年4月1日に施行され、電子署名に法的根拠を与える法律です。
第3条に『電磁的記録であって情報を表すために作成されたものは、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する。』と規定し、契約書における記名・押印と同様の効力があると認められています。
現在リリースされているクラウド型電子契約サービスは、システム上で本人が署名したことを証明する方式となっており、宅建業法や借地借家法上の契約として有効とみなされるわけです。
電子帳簿保存法と電子契約
「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」は国税関係帳簿の保存に関する法律ですが、不動産売買契約書、不動産賃貸借契約書、不動産媒介契約書は、不動産所得あるいは仲介会社の事業所得に関する書類に該当します。
これまで契約書などは紙の書面として保存されていましたが、電子契約により非書面化されます。
電子帳簿保存法の改正により電子取引の取引情報も保存が義務づけされています。
ただし保存方法は電子データを出力し印刷した書面などでもよいとされています。
電子契約の注意点
書面による契約と電子契約の大きな違いは「契約締結」というイベントがないことです。
対面契約では相手方同席のもと、あるいは仲介会社が同席したうえで申し込みや承諾の意思表示をします。
そのため事前に契約日を決めて契約締結を行いますが、電子契約では相手方や仲介会社が不在のなかで、申し込みや承諾をすることになります。
契約日時をあらかじめ決めることなく契約手続きに移行するので、一方が申し込みをしても一方がなかなか承諾をしないといったことが考えられるのです。
民法では『承諾の期間の定めをしない申し込みは、承諾の通知までに相当の期間が経過するまでは撤回できない』とされており、中途半端な状態がつづく可能性もあります。
電子契約サービスでは送信した契約文書の承諾(確認)までに、期限を設けるケースもあります。
電子契約では「契約期限」を決めておくことが望ましいでしょう。
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- そもそも電子契約ってどんなもの?
- 電子契約は法的効力が認められる?
- 電子契約の全面解禁とは?
まとめ
不動産の電子契約に関する法律上のポイントをチェックしてきました。
2001年施行の「電子署名法」をスタートとし、2020年の改正民法そして2021年のデジタル関係法成立により、不動産業界でも電子契約が可能になりました。
宅地建物取引業法や借地借家法が改正され、不動産業界のDXは契約方式の変更にも及ぶことになります。
業務の効率化が図られ取引に係るデータがデジタルされることは、想像以上の効果を生み出します。不動産業界がさらに発展成長する機会になることを期待したいものです。
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