今回は、各社が行った不動産売却に関する調査結果から売主のインサイトを分析し、媒介獲得のポイントを考察します。
【1】不動産売却時に最も重視したポイント「売却期間」「手間」
グラフ①(引用元:ベンチャーサポート不動産株式会社「不動産売却の実態調査」)
グラフ①は、ベンチャーサポート不動産株式会社が行った「不動産売却の実態調査」から、不動産売却時に最も重視したポイントについて聞いた結果を表したものです。
「売却金額(66.2%)」を除くと「売却までの期間(23.4%)」が最も多くなっており、売却金額だけでなく、早期の売却完了についても重視していることが分かる調査結果となっています。
【2】査定先は一括査定サイトよりも不動産会社を重視
グラフ②(引用元:ベンチャーサポート不動産株式会社「不動産売却の実態調査」)
グラフ②は、「どこに不動産売却査定を依頼したか」について調査した結果で、「大手不動産会社(46.0%)」と「地元の不動産会社(45.8%)」が上位を占める結果となりました。
「不動産一括査定サイト」と回答した割合は24.1%となっており、大手・地元の不動産会社に依頼する割合の半分程度にとどまっています。
【3】不動産会社間の査定額の差異「100万円以上~500万円未満」が46.8%
グラフ③(引用元:ベンチャーサポート不動産株式会社「不動産売却の実態調査」)
グラフ③は、不動産売却査定額の不動産会社間での差異について調査したもので、「100万円以上~500万円未満の差があった(46.8%)」が最も多い結果となりました。
グラフ④(引用元:ベンチャーサポート不動産株式会社「不動産売却の実態調査」)
グラフ④では、実際の不動産売却額と査定額の差異について聞いています。
「ほぼ差はなかった(46.3%)」が約半数を占めた一方、「100万円以上~500万円未満(30.8%)」「500万円以上~1,000万円未満(16.5%)」が続く結果となり、金額差の有無は概ね半々となりました。
不動産会社間での査定額の差だけでなく、実際の不動産売却額と査定額にも差があることが分かる結果となっています。
【4】売却査定を依頼したい不動産会社の特徴とは?
グラフ⑤(引用元:ベンチャーサポート不動産株式会社「不動産売却の実態調査」)
グラフ⑤では、ここまでの調査結果を踏まえて、どのような不動産会社に不動産売却を依頼するのが良いと思うかを調査した結果をまとめています。
70.9%が「適切な評価・判断のもと売却をしてくれる」不動産会社に依頼したいと回答し、「売却に関して客観的な意見をくれる」(51.5%)、「売却後もしっかりサポートしてくれる」(29.1%)が続く結果となりました。
高く・早く売却を完了してくれることはもとより、査定額の妥当性に加えて、売却前・後のサポートまで含めた「不動産売却の総合力」で査定先、委任先を決めていると言えそうです。
【5】不動産売却における仲介担当者への不満
ここからは、日本トレンドリサーチとタクシエ(TAQSIE)による「不動産売却で失敗したこと」に関する調査から媒介獲得のポイントについて考えてみたいと思います。
グラフ⑥(引用元:日本トレンドリサーチ・タクシエ(TAQSIE)「不動産売却で失敗したこと」調査)
グラフ⑥は、「不動産売却をする上で、仲介担当者の対応など“不満だったこと”」の有無について聞いています。
不満が「ある」と回答した割合は23.8%となりました。
具体的な不満の内容は以下に引用いたします。
・安値で売り出した。(60代・男性)
・親身になって売却先を探してくれない(60代・男性)
・細かな事を忘れているし突っ込むと答えられない(30代・女性)
・お願いした会社の担当者が、全く動かず3年以上無駄な時間を費やした事です。(60代・男性)
・売り手と買い手の仲介業者が同じだった。買い手側の意向で交渉してきたので金額が下げられた。(50代・男性)
・売却希望金額を下げられた(70代・男性)
・交渉途中での連絡が少ない(80代・男性)
・誠実に対応してくれなかった(50代・女性)
「売却金額が低い」「コミュニケーション上の不備」などが売主の不満の主な要因となっているようです。
【6】媒介獲得のポイント「売主が営業に求めるものとは?」
ここまでのポイントを以下にまとめます。
・売主は、売却金額以外に「売却期間」や「手間」を重視している
・売却査定額および売却金額は、委任した不動産会社間で金額差がある
・売主は不動産会社に対し、高く・早く売却を完了してくれることはもとより、査定額の妥当性に加えて、売却前・後のサポートまで含めた「不動産売却の総合力」を求めている
・不動産会社の担当者に不満を持った割合は約4人に1人。「売却金額が低い」「コミュニケーション上の不備」などに不満を持つケースが多い
今回の調査結果をまとめると、売主は売却を委任する不動産会社に対して、売却前の検討段階から売却後のサポートに至るまで、納得して売却を任せられる環境づくりを求めていると言えそうです。
不動産・住宅情報サービス『LIFULL HOME'S』が行った「住まい探しの満足度に関する調査」では、住まい探しおよび住まい探し以外の大きな金額が動く買い物における営業担当者との相性の重要性を調査しています。
グラフ⑦(引用元:株式会社LIFULL「住まい探しの満足度に関する調査」)
グラフ⑦は、「住まい探しや、住まい探し以外の金額の大きな買い物の際、営業担当者との対応・相性が重要だと感じるか」について聞いた結果をグラフにしたものです。
住まい探しでは92%、住まい探し以外でも77.9%が大きな買い物をする際の営業担当者との「対応・相性が重要だと感じる」と回答しています。
グラフ⑧(引用元:株式会社LIFULL「住まい探しの満足度に関する調査」)
グラフ⑧では、「営業担当者との相性は、会ってみないと判断できない『運』だと思うか」(グラフ左)について調査しています。
約9割(88.9%)の人が「思う(そう思う/ややそう思う)」と回答しており、運次第で成否が分かれる「営業ガチャ」と認識しているようです。
加えて、「これまで営業担当者の対応・相性が悪く、ストレスを感じた・買い物に不満を感じた経験があるか」(グラフ右)との問いでは、営業担当者との相性が悪いことが原因で、ストレスや不満を感じたことがある人が過半数となっています。
不動産の場合、問合せたタイミングや順番、エリアなどで営業担当者が決まっていくことがほとんどだと思いますが、この調査結果から顧客と営業とのミスマッチによって取引の満足度が大きく低下する可能性があることが分かります。
【7】情報収集能力を日々高める生活者とどのように向き合うべきか
顧客の情報検索能力は日々向上しており、webサイトやSNSといったさまざまなツールを駆使して情報収集を行っています。
特定の分野においては、プロである不動産会社の営業担当者よりもはるかに豊富な知識を持つ生活者が増えています。
表①(引用元:株式会社LIFULL「住まい探しの満足度に関する調査」)
表①は、営業担当者の対応・相性が重要だと感じた(感じそうな)シーンについて調査した結果です。
「家を購入する(借りる)とき」が80.4%で最多となり、「車を購入するとき」「保険を選ぶとき」が続く結果となりました。
高額だからこそ十二分に下調べを行い、実物を確認するために問い合わせ・来店をするというエンドユーザーは少なくありません。
今回の一連の調査結果を踏まえると、そういったエンドユーザーは、機能やスペックといった商品知識を紹介して欲しいのではなく、プラスアルファを求めていると言えそうです。
というのも、営業には従来から聞く力・トーク力といったコミュニケーション能力、プレゼン力などが求められてきました。
しかし近年では、コンサルタントやメンター、時にはマーケターや御用聞きとしてさまざまな役割と能力を駆使しながらお客様に貢献していくことが求められるようになりました。
古くから「営業はモノを売るのではなく人を売る」などと言いますが、相手に信頼されてこそ「この人と取引したい」と思ってもらえることは言うまでもありません。
高い買い物を決断するのにあたって不安を持つお客さまに対して、その不安を払拭するためのさまざまな引き出しを増やしておくことの重要性が高まっています。
例えば、限られた時間で顧客の印象に残る接客術とその勘所について、不動産業界だけでなく、高級車や高級ブランドといった異業種のトップセールスマンからコンサルやセミナーを受けてみるというのも一つのアプローチになるかもしれません。
不動産会社の営業担当も生活者と同様、もしくはそれ以上に情報力を高めていくことが求められています。
■「不動産売却の実態調査」概要
調査の対象:ゼネラルリサーチ社登録モニターのうち、不動産(マンション、戸建て、土地)を売ったことある人を対象に実施
有効回答数:1,006人
調査実施日:2023年1月11日(水)~2023年1月12日(木)
■「不動産売却で失敗したことに関するアンケート」概要
調査期間:2023年2月3日 ~ 2023年2月7日
集計対象:不動産売却の経験がある全国の男女
有効回答:400サンプル
https://trend-research.jp/16749/
https://taqsie.jp/
■「住まい探しの満足度に関する調査」概要
調査方法:インターネット調査
調査時期:2022年12月10日~12月12日
調査対象:20~50代の男女・計800人(住み替え経験者:賃貸400人、売買400人)