電子契約は不動産業界で普及するのかしないのか?

紙とハンコによる契約が法律的にも要求されていた不動産業では、いよいよインターネットを用いた電子契約が可能になります。

企業間契約ではすでに6割以上の企業で導入されている電子契約ですが、不動産業では企業間のほか個人も関わることの多い契約形態のため、電子契約がどこまで普及するのか注目されます。

ここでは電子契約の信頼性と対面契約との違いに着目し、不動産業界にどのような変化を及ぼすのか考察します。

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不動産業界での電子契約

不動産業における契約シーンには次の3とおりあります。

1. BtoB
2. BtoC
3. CtoC

すべての契約シーンには仲介会社が関わるようになり、契約書類へは宅地建物取引士の押印が必要です。

つまり「BtoB」などにさらにBが加わる「BtoB+B」などとなるのが不動産取引の特徴と言えるでしょう。

電子契約は「BtoB」や「BtoC」では導入がしやすいのではないかと考えられます。

契約の具体例をあげると以下のようなものです。

・管理会社と法人が契約する賃貸借契約
・管理会社と個人が契約する賃貸借契約
・法人間で取引される売買契約
・法人と個人との間で取引される売買契約

CtoCで考えられるのは次のような契約種類があげられます。

・大家と個人が締結する賃貸借契約
・個人と個人が取引する売買契約

書面契約においても重要な立場である宅地建物取引士は、電子契約でも変わることはなく「IT重説」では、説明のわかりやすさ丁寧さがより求められるようになります。

実際の重説の現場では、ただ重要事項説明書を読み上げるだけの宅建士もいます。

モニター越しのIT重説となると、事務的に読上げられるだけの説明では、本当に借主・買主の理解が得られるのか不安な面もあると言えるでしょう。

重要事項説明の信頼度

電子契約のメリットを最大限に引き出すには、重要事項説明はITにより説明し契約書類は電子交付をするのが望ましいです。

前述したようにIT重説による説明は対面と異なり、説明を受ける相手の表情を直接確認することはできません。

Web会議特有のフリーズやタイムラグがあり、対面による説明とはかなり勝手が違うことを感じる方も多いのではと思います。

そのため説明はより丁寧に時間をかけて、1項目ずつ「ここは理解できましたか?」など、確認しながら進める必要があるでしょう。

契約内容の説明もIT重説時になるので、電子契約では電子交付された契約内容について合意し、その証明として電子署名し契約は成立します。

つまり重要事項説明時が契約内容を理解する唯一の機会となります。

変更や修正すべき点があれば、重要事項説明時におこなわなければなりません。

Web会議のなかでは、借主・買主が意思表示をしやすくできるよう、宅建士がそのような機会を作らなければならないと言えるでしょう。

不動産DXの今後

不動産業界のDXは契約業務もさることながら、内見・内覧・接客・商談などの顧客対応によるものから、社内コミュニケーションや社外のビジネスパートナーとのコミュニケーションにも浸透していきます。

賃貸管理では業務支援ツールがすでに普及しており、多くの不動産会社が導入しシステムの改善・改良が進んでいます。

不動産業界のDXは今後も、AIを積極活用したソリューションが生まれてきます。

クラウドソフトは低額や無料でのトライアルができ、自社に合ったソリューションを見つけることが可能です。

低コストで業務改善や効率を高め、より質の高いサービスを提供することにより、他社との差別化を図る戦略としても活用できるでしょう。

またDXは新しいビジネスモデルの創出も可能であり、これまでの固定観念から脱却し事業の拡大や伸展を図るチャンスを捉えることもできるのです。

対面契約が望ましいシチュエーション

電子契約が本格運用となっても、これまでの対面による書面契約が望ましい場合があります。

・個人と個人の売買契約
・大家と個人の賃貸借契約

これらの契約でしかも契約当事者が高齢者あるいは、ITにあまり馴染みのない人などは電子契約を敬遠することが考えられます。

ほかにも紹介受注の期待がもてる顧客や、対面によるコミュニケーションを図ることにより、信頼関係や人間関係を深めたいと考えるケースもあるでしょう。

たとえばオープンハウスに来場して契約に至った買主など、知人を紹介してもらえる可能性もあります。

せっかくオフラインで知り合ったお客様です、契約終了で終わらせることなくそのごはメールやSNSでつながりを保てるように、重説・契約は対面でしっかりおこないたいものです。

電子契約が普及するには

不動産業界の契約電子化が進んだ流れは、新型コロナによって一気に加速した感がありますが、実は2014年から進められていたことです。

契約を対面でしなければならない必然性や法律上の規制と、電子化による合理性をつきつめていくと、電子契約でまったく問題のないケースもあります。

インターネットを経由して商品を注文し、注文した商品が宅配便による届く、もはや日常的な風景にもなっている商習慣も実は電子契約です。

対面して説明を受けることなくWeb画面の情報だけで発注をし、クレジットカードで決済し商品を発送する相手側の債務履行を待ちます。

不動産でも同様の流れで取引を成立させることは可能です。

ただ宅建業法にもとづく事業者が取引の仲介をする場合に限り、宅建業法が定める契約成立の要件を満たすことが求められています。

電子契約にはメリットがあればデメリットもあります。

必ずしも電子契約を優先させる必要はありません。

対面契約のほうが望ましい場合もあるわけです。

電子契約が普及するには不動産業界にて、そのメリット・デメリットが十分周知され、ケースバイケースで活用することが自然なことと言えるでしょう。

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  • そもそも電子契約ってどんなもの?
  • 電子契約は法的効力が認められる?
  • 電子契約の全面解禁とは?

まとめ

電子契約を業務の効率性や契約当事者の利便性だけで、評価するのはすこし問題があると思います。

より信頼性が高くトラブルの防止ができる契約システムとして成長することを期待したいです。

不動産業界では頻度は少ないですが、大型の詐欺事件なども発生しており、契約当事者のなりすましが大きなリスクとなっています。

ブロックチェーンによる所有権移転システムなども研究されており、契約の電子化は次のステップに不動産業界が進む通過点かもしれません。

不動産業界のビジネスパーソンは業界のDXにますます注目しなければならないでしょう。

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