不動産業界では書面契約から電子契約に移行するケースが増えてくると予想されます。
契約手続きの方法が変わることに注目しがちですが、対面契約とは異なるプロセスにより不動産会社が予想していない変化が生じる可能性もあります。
それは「電子化の社会実験」では表面化していない問題です。
社会実験では電子契約のプロセスにおけるトラブルが主に検証されましたが、借主や買主の理解度については検証されておらず、非対面による理解度の浅さによるトラブルが契約終了後に生じる可能性もあります。
ここでは、このような契約当事者の理解度の違いにより起こるトラブルを防ぐために、電子契約をリードする仲介会社の役割について解説します。
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電子契約における仲介会社の役割
賃貸借契約・売買契約の電子契約が可能になり、仲介会社の役割はどのように変わるのでしょうか?
仲介会社は契約時に契約当事者の媒介役であり契約立会人の役割をもっています。
また媒介契約においては契約当事者となるのが仲介会社です。
ここでは媒介契約は後段のテーマとし、まず賃貸借と売買について話をすすめていきます。
電子契約は契約当事者が契約の方法として選択するものですが、不動産に関する契約においては契約当事者ではなく、仲介会社が「電子契約でよろしいですか? 」と勧めることが多くなると思われます。
理由は不動産の契約手続きは仲介会社主導でおこなわれており、次のようなことも仲介会社が提案し契約当事者の承諾を得てすすめることが多いのです。
・重要事項説明と契約の場所
・決済および引渡しの場所
賃貸借と売買の契約に不動産会社が関わる形態としては、媒介と代理があります。
どちらの場合も取引の公正さを保ちながら安心して取引が成立するよう、法律上の知識および物件に関する知識を持ち合わせた「宅地建物取引士」が、説明をおこない契約内容についての適正さを担保します。
この役割は電子契約でも同様であって、重要事項説明は宅建士のリードで進んでいきます。
契約書の内容についても疑義や修正事項があれば、宅建士が仲介する形をとりながら契約当事者同士が協議します。
したがって重要事項説明において説明する「契約書案」については、IT重説の時点で修正され即時に契約書の文言に反映させることもできます。
重要事項説明において契約書案についても合意が得られると、契約書の文言が確定し契約プロセスに移っていくのです。
書面契約においては重要事項説明の前に、契約書案の調整について契約当事者を交えておこない、重説時には契約書案はほぼ最終案としてまとまっているのがこれまででした。
しかし電子契約では上記のように、重要事項説明後に契約書を最終的にまとめるプロセスも可能になります。
IT重説時のWeb会議に貸主・売主も参加し契約内容の煮詰めをおこなうことにより、仲介会社がもっている契約内容のとりまとめについての役割を、オンラインでもおこなえるようになっていきます。
このことはIT重説が契約プロセスにおいては、対面契約以上に重要性があることを意味していると言えるでしょう。
電子契約マニュアルの準備
仲介会社が媒介する契約当事者には法人と個人の両方があります。
契約当事者の組合せとしては次の3種類になります。
2. 個人対法人
3. 法人対法人
法人の場合は不動産以外の商取引において電子契約を導入するケースは多く、個人よりも電子契約に対する理解や対応力はあります。
個人も商品購入などでEコマースの利用は多くなっていますが、不動産のように長い期間の生活の場となる住宅を借りる・買うなど、人生において大きなトピックになる取引をインターネットでおこなうことに戸惑うこともあり得ます。
契約締結はまだしも、重要事項説明は対面で説明してもらいたいと希望する人もいるでしょう。
電子契約の手順がよくわからず不安に思う人がいるかもしれません。
不動産の契約とくに売買契約は動くお金の大きさと、人生で何回もあることではないといった面から、手続きそのものの理解を深め納得して契約に臨めるような工夫が必要なことです。
そのような目的のため仲介会社は、IT重説と電子契約・署名についてのわかりやすいマニュアルを準備することをおすすめします。
電子契約の顧客フォロー
電子契約と書面契約の大きな違いは「当事者の理解度」を確認できないむずかしさがあることです。
対面の場合は重要事項説明書や契約書案に記載される文言に対し、相槌や頷きなどの当事者の様子から理解度をある程度窺うことが可能です。
これまでの対面における重説や契約書の読上げにおいて、宅地建物取引士は上記のように契約当事者の様子から、スムースな説明ができているかどうかを自己確認してきました。
しかしIT重説時のモニター画面経由では、このような外見上から把握することはむずかしくなります。
説明の途中で「質問をする」という行動がないと、宅地建物取引士はどんどん説明をつづけてしまい、契約当事者は質問の機会を失うといった可能性も否定できません。
仮にそのような状況でIT重説が終了し電子契約も完了してしまうと、法律上は契約が成立してしまいます。
対面ではないからこそ契約当事者に「質問や疑問」について投げかかることが、これまで以上に重要なことと言えるでしょう。
媒介契約の電子契約
電子契約は媒介契約においても可能になります。
媒介契約は売りたい・買いたいといった依頼を、契約書として書面にすることが宅地建物取引業法で定めています。
また契約の形態は専属専任・専任・一般と、依頼者には複数の選択肢があり自由度が高い性格があります。
媒介契約において重要な要素は「売買価額」であり、契約条項そのものにトラブルが発生するような要素は少なく、電子契約でも大きな問題は生じないと予想できます。
また契約条項は記載された文言を読むと理解できる内容であり、特別な説明を必要とする事項は少ないと言えるでしょう。
仲介会社としては査定金額の説明に時間をかける必要があり、Web会議サービスで説明したうえで電子契約のプロセスに入るパターンが多くなるのではと考えられます。
媒介契約の電子化については契約手続きそのものよりも、査定結果の説明における添付資料などのわかりやすさなどに気を遣う必要がありそうです。
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- そもそも電子契約ってどんなもの?
- 電子契約は法的効力が認められる?
- 電子契約の全面解禁とは?
まとめ
不動産に関わる電子契約は2021年6月現在、社会実験中であり参加する事業者は数百社というレベルです。
すでにおこなわれた社会実験では大きなトラブルはなく、今般の社会実験が終了すると本格運用がスタートする見込みです。
本格運用となると電子契約によりおこなわれる件数は大幅に増加し、予想していないトラブルが発生する可能性もあります。
不動産会社にとっては業務効率を高め大きなメリットのある電子契約ですが、一般消費者である借主・買主にとっては対面契約と異なり、デメリットがあることは否定できません。
仲介会社はできるだけデメリットが少なく、顧客に優しい電子契約の実現に備えたいものです。
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