住宅の品質確保の促進等に関する法律が成立

1950年(昭和25年)に建築基準法が制定され半世紀、1999年(平成11年)「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が制定されます。

日本の住宅行政の柱ともなる法律であり、建築基準法と車の両輪のごとく機能する住宅法制は、新時代を象徴するものでした。

2000年はさらに新しい法制の骨格が成立した節目でもあったのです。

20世紀から21世紀へとミレニアムに登場した法制の数々をみていきます。

住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要

「住宅の品質確保の促進等に関する法律」は、平成12年に改正される建築基準法の “仕様規定から性能規定” を補完する意味でも必要な法律でした。

昭和25年の建築基準法は一定の性能をもった建築物を建築するうえで、細かく「壁の下地は石こうボード12㎜以上の・・・」などと使用材料の規格を定める「仕様規定」により、法律が構成されていました。

これを「壁は50dbの遮音性能を・・・」のように、性能値で必要な基準を規定する「性能規定」といわれる法律構成にしたのが平成12年の改正です。

住宅の品質確保の促進等に関する法律」は、住宅性能を共通のルールにもとづいて比較し、評価する仕組みをつくることにより、高品質な住宅の供給を図ることを目的として制定されました。

法の枠組みとして3つの骨子が設定されています。

1. 住宅性能表示制度
2. 住宅に係る紛争処理体制
3. 10年保証

住宅性能表示制度の意義

住宅性能表示は新築住宅で10分野、既存住宅で9分野の性能評価をおこない、おもに等級表示による性能ランクを消費者が認知できるようにしています。

新築 既存
構造の安定性能
火災時の安全性
劣化の軽減
維持管理更新の配慮
温熱環境性能
空気環境性能
光・視環境性能
音環境性能
高齢者等への配慮
防犯性能

*◎印は必須項目
出典:一般社団法人 住宅性能評価「住宅性能表示制度について」

評価するのは全国に123ある登録評価機関(2020年5月現在)です。

評価の表示方法は主に「等級」を付しておこないますが、分野によっては異なる方法で性能ランクを表示します。

たとえば「光・視環境性能」では、開口面積の比率や方位別の開口比をパーセンテージで表示します。

では住宅性能表示を受けた住宅取得者は、どのような恩恵を受けられるのでしょう。

1. 住宅性能表示のない住宅に比べて品質に対する信頼度が高い
2. 品質性能に問題があった場合に、施工業者や売主業者との紛争処理に、強力なバックアップを受けることができる

住宅性能を公的機関が評価した住宅といえども、引渡し後に不具合や欠陥がみつかることもあります。

すると施工業者や売主との間で修補に関してトラブルとなるケースも多いものです。

そのような場合に住宅取得者を支援するしくみがあります。

住宅に係る紛争処理体制

全国にある都道府県弁護士会に「指定住宅紛争処理機関」が設置されており、民事訴訟に至らずに紛争を処理できるしくみが利用できます。

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引用:国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」

建築士会などから派遣された建築士の協力を得ながら、弁護士が紛争相手との話し合いをおこない問題解決にあたります。

分譲住宅・建売住宅は不動産売買契約により取得しますが、注文住宅は工事請負契約によるため、不具合や欠陥があった場合の紛争に関しては違いがあります。

建売住宅では瑕疵担保責任による契約解除がありますが、請負契約では引渡し後の契約解除はありません。

瑕疵担保責任として修補義務があるだけです。

そのため紛争が起きた場合に多くは泣き寝入りをせざるを得ないことが多かったのです。

民事訴訟に至った場合も精神面や経済面での負担は大きく、建築紛争訴訟は消費者にとり非常に不利な条件となっていました。

訴訟前の紛争処理が制度化されることにより、事業者側のコンプライアンス向上が期待でき、トラブルそのものの低減を図ることができると考えられます。

新築住宅に10年間の瑕疵担保責任義務づけ

住宅性能表示制度は事業者が申請するもので、年間着工数の約2割の利用となっています。

つまり「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の恩恵を受けられる人は2割しかいないわけですが、「10年保証」はすべての新築住宅取得者が恩恵を受けられるのです。

構造上主要な部分と雨漏りに関し、施工業者または売主は10年保証することが、義務づけられることになりました。

それまでは1年または2年間の瑕疵担保責任を、特約にて設けることがおこなわれていたのです。

10年保証は法施行が平成12年4月1日でしたが、同日から即日実施となり、住宅性能表示制度は10月3日からの実施となりました。

住宅の性能を公的に証明する制度の創設は、万が一性能に問題のある住宅があった場合、供給者の修補責任を明確にする必要がありました。

民法上の瑕疵担保責任よりも強制力のある法整備が求められ、欧米諸国ではすでにおこなわれていた「10年保証」を、性能証明制度とセットにして創設したのが「住宅の品質確保の促進等に関する法律」なのです。

消費者契約法の制定

平成12年5月12日には「消費者契約法」が制定され、事業者と消費者間の契約を対象にして消費者保護を目的としています。

消費者とは事業者以外の個人を指し、不動産業においては個人の売主と買主、賃貸物件の個人借主を保護する法律です。

また、事業者とは宅地建物取引業者に限定されず、すべての事業を営む法人・団体・個人をいうことに注意が必要です。

不動産取引において事業者と消費者とでは、知識や情報量の面で圧倒的に事業者が有利であり、契約の取決めについて事業者に有利な条項を盛り込むことが可能です。

消費者は自己に不利な条項であっても、応じざるを得ない面がこれまでありました。

消費者契約法は消費者にとって不利な条項を無効とし、事業者が誤認や困惑させる行為により締結された契約については、消費者の取消権を認める内容となっています。

不動産取引における具体的な例として、次のような契約条項や判例に消費者契約法の考え方が反映されています。

・不当な違約金の額は無効
・重要事項に関する不利益・不実告知による契約解除や損害賠償
・民法上の瑕疵担保責任期間の短縮は無効

すべての事業者は消費者契約法により、利益追求型から社会貢献型の姿勢が求められるようになったともいえるでしょう。

金融公庫が住宅融資事業を縮小

2003年(平成15年)には住宅金融公庫の役割が大幅に改正され、これまでおこなってきた直接融資を取り止め、証券化された民間住宅ローンの買取りと、民間ローンに対する債務保証をおこなうようになります。

つまり現在の「フラット35」の原型が生まれました。

そして住宅金融公庫はこののち、独立行政法人住宅金融支援機構へと組織替えされるのです。

約50年間にわたり住宅金融を牽引し持ち家政策の推進に寄与した “住公” は、住宅ローンの主役の座を民間金融機関に譲り、民間融資を補完する役目を担うことになりました。

戦後、日本は膨大な住宅不足解消という大きな課題に直面し、土地法制・住宅生産・住宅金融を国主導で積極的に押しすすめ、50年をかけて量的充足度を達成したといえるでしょう。

その間、民間における住宅供給体制が整い住宅産業が形成されるようになりました。

民間金融機関は住宅ローンを主力金融商品として育てることに成功し、先に触れたように「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の制定により、今後は民間主導による住宅産業の発展が可能になったといえるでしょう。

住宅金融公庫の縮小はこのことを象徴しているのです。

マンション関連法案の制定

マンションに関連する法制にも大きな動きがあったのが2000年です。

平成12年12月8日「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」が成立します。

1. 管理組合に対する支援態勢整備
2. マンション管理業者の規制
3. マンション分譲業者の義務規定

が明文化されます。

さらに2年後には区分所有法が改正されます。

これらの法制により、マンション管理の適正化をはかることが可能となりました。

具体的に施策として次のことが可能となったのです。

・マンション管理士の創設により長期修繕計画の適正な策定
・管理業者の選定や管理規約変更
・マンション管理業者の登録制度と管理業務主任者設置の義務化
・管理組合理事長名義の銀行口座
・建物設計図面などの管理組合による保管
・共用部分の変更要件の緩和(持分過半数で可)
・建替え決議要件の緩和(4/5の議決で可)

現在すでに問題として表面化している「マンションの建替え」に関し、法律上の整備に着手したのが2000年でした。

参考サイト

一般財団法人 不動産適正取引推進機構「資産デフレ期の不動産政策(下)」
・国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」
一般社団法人 住宅性能評価
一般財団法人 不動産適正取引推進機構「消費者契約法は不動産取引にどのような影響をもたらしているか」

不動産の歴史まとめページ

 

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