不動産売買仲介営業テクニック

不動産の実需(住宅)売買に関する「仲介営業担当者」の極めて実務的な営業テクニックについてお話します。

買付の使い方

「購入申込書」、業界用語では「買付(カイツケ)」。
御存知の通り、これそのものは「契約書」ではありません。
簡単に表現すると「私はこうこう、こういう条件だったらこの物件が欲しいです。(買います。)」という希望を伝えるための書類。
業者間だと「取り纏め依頼書」という名称のものもありますが、ほぼ類似のものです。

投資用の一棟モノなどは、買手の使う金融機関によって、物件の評価もマチマチ、「買いたくても融資が付かなくて買えない人」が少なくないので、単純に買付けのスピードだけではなく、融資特約の有無や、融資の固さ、資金面の裏付けなどにより、「より手堅く購入して貰える人」が優先される傾向にあります。

一方で、実需(自分の住宅)向けの「住宅ローン」は、物件面の評価は最低限あるものの、基本的には購入者の「本人属性」が大部分のウエイトを占めるため、買手の「年収・勤務先・他の債務の有無」などが分かれば、その当人が購入できそうな人かどうかは、営業担当者ベースでも比較的簡単に把握できます。そのため、よほど高額でもない限りは、「買付を入れる人=購入できる人」に近い認識で、実需物件においては、特に買付けのスピードが重要になってきます。

どちらにしても、原則論的には、この買付(申込書)が売主の手元に届いた早いもの順で、購入(予定)者の優先順位が決まります。
要は申込書を書いて初めて「唾を付けた」状態にできるわけです。
そして、裏面に何も条項が無いように、「やっぱりやめた!」と言っても、「売買契約の前」であれば、何のペナルティもありません。(あるように言う営業さんもいるかもしれませんが…。)

そのこともあって、買付の使い方は営業担当者によって千差万別。

    • 「練習がてら、試しに書いてみます?」

    本当に緩く、いつか欲しい物件が見つかったときのための「練習」に。

    • 「とりあえず、押さえるのに、書いてみます?

    明日中には、結論をください。奥様がNGだったら破棄します。」なんていうのもあり。

    • 「絶対に欲しいと思ったら書いてください。書いたら基本的に断れないと思ってください。」

    書面に残す+口頭での念押しをすることで、「縛り」を感じさせる。

     申込書(買付)の位置づけをハードルの高い(固い)モノとして扱うか、ハードルを低く(緩く)して、書いてもらいやすくするか…この目に見えない調整は、営業のウデと、その場の雰囲気等々、シチュエーションによって、変わってきます。
    顧客が「欲しくない物件に申し込む」ことは無いでしょうが、「感度が出ている物件」、「金額が下がれば、本命になりうる物件」等については、積極的に「金額交渉」を含めた申込をされることは、アリだと思います。

    ※もちろんデキる営業担当者であれば、ご案内前の時点で売主サイドへ

    「金額どのくらいまでいけますか?」というヒアリングは済んでいますよね?
    あとは、買付の金額をそのライン以上で取得できれば、纏まる可能性はより高まります。

    期待を超える営業

    お客様に「満足」していただける営業、お客様から「よくやってくれた」と言っていただける営業、言葉でいうのは簡単ですが、その「お客様の期待を超える営業」、実現できていますか?
    これは、その極意についてのお話です。
    営業職でない方も、会社勤めしていない方にも社内営業や、家族・地域での高感度アップ等にお役立ちできるかもしれません。

    相手の期待値を超える為の要点は2つ。

    • 相手の望むものを適切に把握すること
    • その期待値を予め下げておくこと

       「私は150の仕事ができます!」と言って入社してきた新人君が、蓋を開けてみたら「100の仕事で目一杯だった」となれば、「何だよアイツ」と成りかねません。
      それに対して「60の仕事くらいまでしか出来ないと思います」と言っていた他の新人が「100の仕事」を熟(こな)してくれたら「アイツやるじゃん」ってなりますよね。
       要するにこの作戦です。 
      不動産の売買(主に仲介)業では、このテクニックが至るところで活用されています。

      • 媒介受付(査定)時
      • 買付取得時
      • 決済時期の調整時 その他諸々

         一番実践的に使われる場面としては何と言っても「金額交渉」そのものです。

         簡易版:具体例

        買手:「どの位まで金額イケますか?」

        営業:「300万円くらいが限界かなと…」

        (金額交渉後…)

        営業:「300万円下がりました」

        買手:「(もっと下がったんじゃ…)」

        <期待値調整テク使用時>

        買手:「どの位まで金額イケますか?」

        営業:「200万円くらいが限界かなと…」

        (金額交渉後…)

        営業:「300万円下がりました」

        買手:「(おお!)」

         結果は同じでも相手の気持をどう動かすか、小手先ではありますが、営業テクニックの一つです。
         不動産営業以外でも、以下のような場面でこのテクニックは使えます。

         ・待ち合わせ等の際に遅れてしまいそうなとき、「15分遅れます」といって「5分遅れ」でくる。

        「来週中には送ります」といって「今週」のうちに送る。

        「料理は簡単なものしかできないの」と言っておいて「かなりのモノを作る」

         これらも同じです。はじめから見放されてしまうほど、期待値を下げ過ぎるのは問題ですが、適度に抑えておくことで、その見えないハードルを越えるのが楽になります。
        しかしながら、一期一会に近い不動産営業の場面とは異なり、私用で身近な人に使いすぎると、「アイツはココに着地点を持ってくるだろう」と逆に捲れてしまうので、用法用量にはご注意下さい。

        抜きテクニック

        ここで言う「抜き」とは、他の不動産業者にて「専任媒介」もしくは「専属専任媒介契約」での販売中物件について、自分たちの媒介契約に切り替えてもらう。
        または、一般媒介(複数の業者に依頼可能な形態)なら、それに自分たちも加えてもらう。
        これらのことを指します。

         まだ具現化されていない、「売却相談ありませんか」を探すのではなく、すでに他業者で販売されている具体的な案件について「ウチに売らせてくださいよ」or「ウチも混ぜてくださいよ」という荒業です。
        決して推奨される行為ではありませんが、何も案件がないところから動き出すには効果的な方法であることは否めません。
        もちろん、レインズ(不動産業者が見られるネットワーク)等で、他業者の物件は分かりますが、あからさまなアプローチは禁止されています。

        そこで、以前から当たり前のようにあるのが、「○○マンション限定4LDK5階以上の物件をお探しの方がいます」といったチラシやダイレクトメールで攻める方法。
        限定の購入需要のある顧客がいて、そのマンションのそのフロア全体にダイレクトメールを入れたら、たまたま販売中のオウチがあって、売主さんから「今、うち販売中なんだよね、オタクでもお願いできる?」って言われちゃったら仕方ないですよね?

        その他、もっと直接的な方法としては…
        他社媒介で販売中の物件があったとします。
        特に狙うべきは、敢えての「売主様居住中の物件」。
        そこを、意図的にご案内ルートに組み込みます。

        不動産の購入のための内見・案内は、1件だけ見て決めることは多くありません。
        駄目もとでも、比較するための物件(アテ物・回し物件)を案内するのがセオリー。
        そのアテ物を、毎回「狙った物件」にすることで、売主様に「顔を売る」わけです。

         居住中の売主様が、

        • 「あの会社・担当は何度も熱心ご案内してくれる」
        • 「たくさんお客さんを抱えているんだなぁ」
        • 「あっちに任せた方が売れるかも…。」

         なんて、思ってくれたらしめたもの。
        媒介契約の期限は、「レインズ」で把握できます。
        その頃合いを狙って…。
        押しの一言…なんていう技。
        客観的にみると、「そんなのバレバレでしょ?」とも思えますが、いざ、自分が売主になると、視野は狭窄するものです。
        海千山千の営業担当者が、用意周到にこれを行うことで、心をぐっと掴んでしまうこともあったりします。

        【タイミングのテクニック】

        不動産の売買仲介営業、「タイミング」はとっても重要です。
        通常、実需物件においては、お申込み(買付)をお客様から頂戴すると、1週間程度の間に売買契約を締結するのがセオリーです。
        そのお申込みに「価格交渉」が含まれる場合、契約予定日までの間に、仲介の営業担当者が売主様と交渉を行い、まとまるように調整します。

        (契約日時等もそこで詳細を確定します)

        この金額交渉がスンナリまとまる場合もあれば、もつれることも有れば、却下されることもあります。
        仮に、スンナリとお話がまとまったとして、慎重な営業担当者はそれをすぐに買主様(申込みをされた方)にお知らせすることはありません。

        買主様の心変わりを防ぐために。

        では、具体例。
        5,480万円の物件に対して5,280万円のお申込みを頂いたとします。(交渉金額200万円)
        ここで、実は売主様と仲介業者においては事前に調整が済んでいたとします。
        (表示金額は5,480万円だけれども、5,000万円以上であればOK等)
        そう、今回の申込み金額についてはその買付をもらった時点でまとまっているんです。

        「お申込みありがとうございます。この金額ならOKです!」
        このように営業担当者が申込者に即答し、そのまま無事に契約まで至ることも多々あるでしょう。

        ただ、慎重な営業担当者であれば、この事実は契約の直前まで伏せたりします。
        「価格がまとまった」、「住宅ローンの仮審査がOKだった」、これらは売買契約の締結に至るまでにクリアしなければならない項目ですし、遅かれ早かれ買主様にはお知らせする内容です。

        しかしながら、買主様がこれらを認識してから売買契約までの時間が空いてしまうと、

        ・実はもっと価格が下がったんじゃないか?

        ・あの物件でローンが組めるなら、こっちの物件でもいけるんじゃ…。

        ・第三者の「買う時期じゃないヨ」

        その他諸々、余計な事を考え出したり、他から邪魔がはいったりということが少なからず起こり得ます。
        経験のある営業担当者であれば、 

        (営業:買付取得日)

        ・「金額が通るか分かりませんが、頑張ります」

        (営業:契約2日前等)

        ・「何とかまとめることができそうです。ご準備を!」

        (営業:契約前日)

        ・「まとまりました!売主様の気持ちが変わらないうちに契約をしてしまいましょう。」

         ※ワザワザ書いてはいませんが、買付の取得と同時に住宅ローンの事前審査を並行して提出、契約前には融資をほぼ固めて、融資特約での解除が事実上は「無い」状態に持っていきましょう。

         こんな感じの対応。買付をより堅固なものにするための、タイミングのテクニックです。

        まとめ 

        営業の(小手先)テクニックをサクッとまとめてみました。
        事実がどうあれ、「買主様・売主様に与える印象」は、営業担当者の立ち回り次第。
        自分が仲介業者として売買に携わるのであれば、売主様・買主様には、気持ちよく売買をして頂きたいですよね。
        一杯売買していただいて、たくさん仲介手数料を頂きましょう(業法に従って下さい)。

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