前回の「借地権の売却準備について(土地調査)」では、主に借地の概要についてのチェックポイントについて触れてみました。
今回は、借地契約の内容についてのチェックポイントについて挙げてみます。お客様の借地権が地上権ではなく、土地賃借権である場合について、土地賃貸借契約書等の関係書類を見ながら一つずつ確認していきましょう。
借地権の売却準備時にチェックしたい9つのポイント②(借地権内容の確認)
1. 土地賃借人の名義は誰でしょう?
不動産売買仲介担当の皆様のもとに相談に来られたお客様が土地賃貸借契約書の借主でしょうか?
違う場合にはお客様に事情をお聞きして適切な対応をしましょう。おそらく親族等の場合も多いと思いますが、借主本人と接触することが大切です。
2. 土地と建物、両方とも登記事項証明書を入手しましょう。
まずは、いずれも所有者が誰になっているかを確認しましょう。
また、土地に賃借権が登記されているか(登記はない場合がほとんどですね)、建物は登記されているか?それぞれ抵当権等は設定されているか?など、確認してみましょう。
3. 建物の名義人は誰でしょう?
お客様に建物所有者が誰かを教えてもらいましょう。
お客様と土地賃貸借契約の賃借人は一致していますか?
建物の登記事項証明書に記載されている所有者とも一致していますか?いずれかが違う場合には事情をお聞きして、対応を検討しましょう。
4. 土地賃貸人(所有者・地主)は誰でしょう?
土地賃貸借契約書の賃貸人と賃借人が賃料を支払っている相手方は一致していますか?
土地登記事項証明書に記載されている土地所有者とも一致していますか?
違う場合には、お客様と一緒に確認作業を進めましょう。土地賃貸人に相続が発生していたり転貸借が絡んでいたりすることがあるかもしれません。
5. 借地の面積や地番を確認しましょう。
公図や土地登記事項証明書との照合もしておきましょう。
土地賃貸借契約書の記載と一致しているでしょうか?
公簿面積と実測面積が一致していますか?借地部分を明示した図面はありますか?何か疑問が生じたら、この段階で調査・確認しておきましょう。
6. 借地契約の種類を確認しましょう。
土地賃借権の場合だけでも、借地借家法による借地(普通借地権(堅固・非堅固)と定期借地権(一般・建物譲渡特約付・事業用))と旧借地法による借地(堅固・非堅固)というように種類がいくつもありその性質が異なります。
契約書を見ながら、お客様と一緒に確認しましょう。使用目的も確認しておきましょう。
借地借家法と旧借地法では法律の規定・扱いが大きく異なります。ただ、まだまだ借地権売却の相談で扱われるのは旧法が圧倒的に多いと思います。
7. 借地契約の賃料・期間・地代・更新料等を確認しましょう。
権利金・保証金・敷金等、名目の如何を問わず契約書に出てくる金銭授受をはじめとした契約内容の確認をしましょう。また、それらについてのお客様の認識も確認しておきましょう。
未払い賃料はないでしょうか?
契約更新の時期は近いのでしょうか?
更新料の取り決めはあるのでしょうか?
地代の増減はどのような仕組みで決めるのでしょうか?
金員に関するトラブルはないでしょうか?どんな小さなことでも話してもらうように努力しましょう。貸主と借主の契約の内容なので、一つずつ確認していきましょう。
8. 借地権譲渡の際の手続きに関する規定はありますか?
土地賃借人が土地賃貸人から譲渡承諾を得ることになりますが、書面での申し出になるのでしょうか?
また、譲渡承諾料を土地賃貸人に支払うという規定になっているのでしょうか?その場合、その金額はいくらでしょう?これらを確認しておきましょう。
なお、更新料の規定があり、かつ、更新の時期が間近に迫っている中で借地権譲渡承諾を得ようとした場合には、土地賃貸人から譲渡承諾料だけでなく更新料も請求される可能性が考えられます。
土地賃貸人の立場になって考えてみれば、なんとなく想像がつきますね。
9. 新土地賃借人が増改築や新築をしたいときの承諾料支払いの規定はありますか?
借地権を売買で取得した新土地賃借人は、建物に手を加える(増改築)か、既存建物を解体して新しい建物を建設する希望を持っていると思われます。そこで、それらについても承諾料を支払う必要があるのか確認をしておきましょう。
まとめ
- 土地賃借人の名義は誰でしょう?
- 土地と建物、両方とも登記事項証明書を入手しましょう。
- 建物の名義人は誰でしょう?
- 土地賃貸人(所有者・地主)は誰でしょう?
- 借地の面積や地番を確認しましょう。
- 借地契約の種類を確認しましょう。
- 借地契約の賃料・期間・地代・更新料等を確認しましょう。
- 借地権譲渡の際の手続きに関する規定はありますか?
- 新土地賃借人が増改築や新築をしたいときの承諾料支払いの規定はありますか?
以上、いくつか土地賃貸借(借地)契約に関してのチェックポイントを列記してみました。その土地賃貸借契約ごとに内容が違いますから、チェックポイントは変わってきます。また、上記の項目をチェックしていく間にもいろいろとあらたな疑問点も発見できると思います。できる限り明らかにして、土地賃貸人との借地権譲渡交渉に臨みましょう。