電子契約が可能な定期借家契約と契約に求められる要件

定期借家契約も電子契約が可能になり効率化を図ることができます。

とくに再契約において電子化が可能になることは「定期契約の繰り返し」が簡単になり、定期契約導入のシーンが大幅に増加すると予想できます。

ここでは改めて普通借家契約と定期借家契約の違いをおさらいし、定期借家契約に求められる法的要件について解説します。

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定期借家契約のメリットとデメリット

定期借家契約は契約終了期日を確定できる契約方式であり、賃貸人にとってはメリットの大きなものです。

しかしながら終了時に「再契約」を前提として定期借家契約を導入するケースもあり、その場合は契約終了時に再び対面による契約手続きが必要であり面倒なものでした。

「再契約」を前提とする場合は普通借家契約であれば、自動更新とすることも可能であり、再契約に係わる事務処理のコストは大幅に削減できます。

一方、定期借家契約は万が一入居者が「不良借家人」であった場合、契約終了が容易であり退去・明け渡しに係わるコストがほとんどかかりません。

このように定期借家契約は賃貸管理の面において、柔軟な運用方法を可能にする大きな選択肢でもあったわけです。

定期借家契約の電子化

賃貸借契約の電子化は「IT重説」が本格運用されており、2022年5月までには契約に係わる書面の電子交付が可能になります。

重要事項説明から契約締結と契約書面の交付すべてがオンラインでおこなわれ、定期借家契約の再契約も当然ですがオンラインで完了することができ、大幅に事務処理の手間が削減されるのです。

普通借家契約の更新手続きと同様とは言えませんが、定期借家契約の再契約は効率化され、通常の賃貸管理のなかで定期借家契約を導入するハードルは低くなったと言えるでしょう。

定期借家契約に求められる法的要件

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定期借家契約には借地借家法にもとづく規定があり、以下の法的要件を満たさなければ普通借家契約とみなされてしまいます。

1. 契約成立の要件
書面による契約のみ有効であり、電子契約では電子署名の施された電磁的データが書面に代わります

2. 契約期間
普通借家契約では1年未満の契約期間とした場合は「期間の定めのない契約」とみなすが、定期借家契約は契約期間に制限はありません

3. 更新しない旨の書面交付
契約書とは別に賃貸人は「期間満了により契約が終了し、更新しない」旨を記載した書面の交付が必要であり、電子契約では電子署名の施された電磁的データが書面に代わります

4. 賃料増減額請求権
家賃の増減についての請求権は認められます、また特約にて一定期間の増額を認めない特約が可能です

5. 契約の終了
期間満了により契約は終了します、ただし1年以上の契約の場合は賃貸人が1年前から6か月前までの間に期間満了により契約が終了することを通知する必要があります

6. 再契約
期間満了により契約が終了し再契約するには賃貸人と賃借人の合意がなければなりません

7. 中途解約
・ 特約により中途解約について取り決めした場合は特約に従い解約が可能、ただし解約予告期間を設けるとともに、賃貸人からの解約は正当事由も必要となります
・ 中途解約の特約がない場合は、賃貸人・賃借人どちらからの解約もできません
・ 居住用の建物の定期賃貸借では床面積が200㎡未満の場合、賃借人に転勤や親族の介護などのため引っ越す必要が生じ、住居として使用できない事情があれば解約が可能です、ただし1か月前に申し出することが求められます

定期借家契約の再契約と契約に関するQ&A

定期借家契約の再契約は最初の契約と同じ手順を踏みますが、入居審査は簡単になり勤務先や同居家族の変化について確認します。

連帯保証人については最初の契約時と同様に、債務保証意思の確認をしなければなりません。

また2020年の民法改正により保証人から請求があった場合は、入居者のこれまでの家賃支払い状況などの情報提供をする義務が賃貸人にはあります。

契約に必要な書面などはすべて電子署名つきの電磁記録になり、保証人との連絡は電話または電子メールによる方法になるでしょう。

国土交通省が公表している定期借家権に関するQ&Aより、重要な項目について次項にまとめました。

定期借家契約に関するよくある質問

1. 契約書は公正証書でなければならないのか?
借地借家法では定期契約の要件として「公正証書による等書面によって」と記載されているため、公正証書でなくてはならないとの誤解もあるようですが、公正証書に限られてはおらず、また、電子契約の本格運用により「書面」による規定が変更になります

2. 契約書とは別におこなう書面による説明は誰が?
契約の更新がないことと、期間の満了により契約が終了することを説明する書面の交付は、賃貸人がおこなわなければなりません、仲介する不動産会社がおこなう重要事項説明とは別におこなうことが必要です

3. 契約終了の通知方法は?
契約期間が1年以上の場合におこなう契約終了通知は、形式を限定しておらず口頭でもよいが、トラブル回避のため内容証明郵便が望ましいとされています

4. 賃借人からの中途解約
賃借人からの中途解約が可能な居住用賃貸借物件には「店舗併用住宅」で、生活の本拠として使用している場合も含まれます

出典:国土交通省「定期借家権に関するQ&A」

定期借家契約の活用シーン

電子契約,定期借家契約

定期借家契約が電子契約により効率化が図られ、活用されるケースが増えると予想できます。

具体的な活用シーンを考えてみましょう。

1. 属性的に心配な入居希望者に対しては、一定期間定期借家契約による「お試し入居」を導入する
2. 普通借家契約に代わり、賃料増減額請求を特約にて定め10年間などの長期契約とする
3. 建替え計画が予想される物件では建替え時期までの定期借家契約とする
4. 転勤などのためマイホームを賃貸する場合、戻れる時期に合わせて定期借家とする

などが考えられるでしょう。

定期借家契約は原則的に中途解約ができません、しかし200㎡未満の一般的な賃貸物件は入居者からの中途解約が可能であり、普通借家契約と変わりません。

賃貸人からの契約解除や更新拒絶をするケースは少なく、定期借家契約であっても賃貸人にはあまりデメリットがありません。

賃借人の立場からは中途解約の権利があれば、長期の契約であってもあまりデメリットとはならず、定期借家契約が活用されるシーンはまだまだありそうと言えるでしょう。

普通借家契約が望ましいと考えられるのは住宅確保要配慮者であり、50歳代までの一般サラリーマンなどは定期契約として、賃貸人の自由な資産活用の方法を拡大することも重要なことです。

賃貸物件の利活用はより柔軟に、かつ流動的になっていく可能性があります。

住宅不足の時代はとっくに過ぎ去り、今や空き家の活用方法に悩む時代に変化しました。

借地借家法の趣旨も変化しており、より賃貸人の立場に立った運用が必要になってくると思います。

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まとめ

定期借家契約の導入状況について、アットホームが調査した2018年度のデータでは、一戸建て物件での定期契約が11.4%ともっとも高かったと公表しています。

参照:アットホーム「2018年度の首都圏の「定期借家物件」の成約状況」

首都圏のデータのため全国的な傾向は不明ですが、定期契約導入割合はあまり高くないことは想像できます。

本文で述べたように契約電子化により再契約の手間が楽になることから、案件によっては定期借家契約のほうが望ましいケースもでてくると思われます。

定期契約の積極的導入を検討してみてはいかがでしょう。

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