不動産業界もその他の業界も、ビジネスを展開するのにインターネットは欠かせないツールとなっています。
その傾向はコロナ禍により鮮明になり、「web集客の成果=ビジネスの成果」と言っても過言ではなくなりつつあります。
そんな中、インターネット広告を取り巻く環境に変化が生まれてきており、不動産会社さまの多くが利用されているリスティング広告・ディスプレイ広告などにも影響を与えるかもしれません。
この記事では、昨今のインターネット業界、とりわけネット広告業界で起きている変化を解説し、貴社および貴社物件を訴求するための最適な広告手法について考えてみたいと思います。
インターネット広告業界を取り巻く環境の変化
世界のインターネット広告市場はGoogleとFacebookによる寡占状態が続いていますが、両社への逆風が強まりつつあります。
2020年末にはアメリカの10州が反トラスト法違反で両社を提訴するなど、インターネット広告に対する消費者の批判の声が顕在化しているのです。
日本も同様に、リスティング広告入札システム市場の過半を占めるGoogleに対して、日本政府が情報開示の義務付けなどを盛り込んだ報告書を公表するなど、規制強化の機運が高まっています。
インターネット広告への嫌悪感の広がり
日本インタラクティブ広告協会(日本国内のインターネット広告企業団体)の2019年調査によると、ネット広告への嫌悪感が、テレビ・新聞広告の倍以上となっています。
インターネット広告については、「しつこい/不快」、「邪魔な/煩わしい/うっとうしい」という評価が、30%台で、他メディアの10%前後に比べると高い割合となっています。
また、一部の広告配信では、位置情報や閲覧履歴などのデータを活用した広告配信を行っていますが、こうしたデータ活用について「(対策となる)行動した」、「不安に感じる」と回答した人が80%強に達しました。
ユーザーによっては、インターネットブラウザで広告を非表示にするアプリの購入者が増加するなど、有償であっても広告表示を回避しようとする動きが顕在化しています。
インターネット広告のビジネスモデルは転換するのか?
インターネット広告を取り巻く環境、そしてその媒体社であるGoogleやFacebookを取り巻く環境を考えると、従来型のインターネット広告ビジネスは転換期が近いのかもしれません。
インターネット広告に関する風当たりが強まる中、2020年のGoogleの決算はコロナ禍による収入減で上場以来初の減収となり、従来型のビジネスモデルからの転換を図る機運が高まっていると言えるでしょう。
昨今、テレビCMでもYouTubeプレミアムを訴求するCMをご覧になったことがあるという方も多いことと思います。
このCMは、YouTubeの有料プレミアム会員になると動画視聴中にCMが流れないため、快適なユーザー体験ができることを訴求したものです(CMを落とす内容をCMで訴求するという皮肉な内容ではあるのですが…)。
これは、月額が支払える人には広告が届かなくなるということであり、媒体が一方的にユーザーに広告を配信する現状の広告効果が低下することを意味します。
リスティング広告やディスプレイ広告(バナー広告)にも直ちに同様の措置が取られるとは思いませんが、インターネット広告を取り巻く環境の変化によって、ユーザーに嫌悪されない広告のあり方を模索する動きは続いていくと思われます。
コンテンツマーケティングの重要性がさらに高まる
従来型のインターネット広告の効果が低下した場合、コンテンツマーケティングの価値は相対的に上がっていくでしょう。
というのも、コンテンツマーケティングにおける訴求は、ユーザーが興味のあるコンテンツに自発的に閲覧したコンテンツにおいて、その内容に関連付けて行うユーザーファーストの広告手法だからです。
コンテンツマーケティングとは?
コンテンツマーケティングとは、ユーザーが興味・関心のあるコンテンツを提供し、ファン化を促すことで収益性を高めていくマーケティング手法を指します。
例えば、暮らし・住まいに関連する質の高い記事を通じて、潜在顧客を見込み客・ファンに育ててて、需要が顕在化した際に購買に結びつけます。
GoogleはすでにSEOにおける表示順位をコンテンツ内容に基づいて行っており、その情報量や内容のわかりやすさなどの総合的な評価から検索結果の順位付けが行われています。
コンテンツマーケティングのメリット・デメリット
不動産のプロとしての情報を発信することは、ユーザーの信頼獲得、ファン化を促す一助となり、一度評価を得られれば貴社のブランドに大きな価値を与えるでしょう。
また、コンテンツはアーカイブとして蓄積されるので、定期的なメンテナンスを行いながら長期的な集客ツールとして活用することも可能なため、費用対効果も高いことも特長です。
また、紙・メルマガ・SNSなどのさまざまな媒体で転用可能な事も費用対効果を高める重要なポイントとなります。
一方のデメリットは、効果が出るまで時間がかかること、質の高いコンテンツを継続して発信していくためのリソースの確保が難しい点などが挙げられます。
不動産における良質なコンテンツの作り方
不動産会社には、エンドユーザーが住まい探しで知りたい・知っておくべき情報がたくさん眠っており、それらをエンドユーザーに分かりやすく表現することがコンテンツマーケティングを成功させるポイントです。
訴求ポイントは、主に以下の3つのテーマが軸になります。
②暮らしのコンテンツ
③地域のコンテンツ
それぞれ順を追って解説します。
①住まいのコンテンツ
一生で最も大きな買い物と言われるだけあって、住まい探し・住み替えに関する勘所を紹介するコンテンツは大きな付加価値を生みます。
昨今であれば、テレワークのための住まいづくり、子育てに良い間取りなど、ターゲットを意識したコンテンツづくりが重要です。
貴社の認知度向上はもちろんのこと、生活イメージを高めるようなコンテンツで購買意欲を高めるようなコンテンツにすることができればなお良いでしょう。
新築/中古、マンション/戸建て、賃貸/購入などさまざまな切り口がありますので、それぞれの想定ユーザーに最適なコンテンツづくりを意識するようにしましょう。
②暮らしのコンテンツ
暮らしのコンテンツは、テーマが無数にありますので、住まいと関連付けて住み替え検討層の生活イメージを喚起させるような構成にすると良いでしょう。
例えば、梅雨の季節であれば湿気・カビ対策と住まい、台風シーズンであれば防災・耐震と住まいといったように、日々の生活のお困りごとを不動産会社の目線で解決するコンテンツなどが挙げられます。
ご自身の経験談だけでなく、お客さまとのコミュニケーションの中で得た生活の知恵などをご紹介するような内容でも良いでしょう。
暮らしのお困りごとを住宅のプロとして解決することができれば、貴社認知が高まることはもとより、関係性の向上・拡大にもつながります。
③地域のコンテンツ
不動産会社は地域に深く根付いて日々の業務を展開されていることと思いますので、そういった強みをコンテンツで活かさない手はありません。
例えば、地域のイベントやグルメ、商業施設情報など、地域に深く根付いた不動産会社だからこそ発信できる情報があるはずです。
見ず知らずの街で住まい探しをする際に頼りになるのはその街に詳しい不動産会社しかありませんので、街にプロとしてのブランディングが成功すれば、貴社の知名度・集客力は大幅に向上するでしょう。
④売買ノウハウのコンテンツ
基本的に多くのエンドユーザーは不動産売買の取引経験が少なく、漠然と不安を感じておられる方が多いです。
そして不安を解消するための手段として最も用いられるのはWeb上での情報収集になってきています。
したがって、そうした不安を感じるエンドユーザーに対して不動産売買に関する「お役立ち情報」や「ノウハウ」「基礎知識」といったものを発信することで、将来的なユーザーの獲得や「親切な会社である」というイメージ戦略にも役立ちます。
不動産会社の皆様にとっては当たり前のことでも、一般の方にとっては知らないことはたくさんありますので、「媒介契約の種類」や「レインズについて」「測量の重要性」「境界の確認方法」など、身近な話題を少しずつ発信してはいかがでしょうか?
不動産会社がコンテンツマーケティングに注力すべき3つの理由
ここまで、不動産会社がコンテンツマーケテイングに注力する理由について解説しました。
ポイントは以下のとおりです。
①インターネット広告業界を取り組む環境の変化
・Googleなどのメディア運営企業への監視の目が強まっている
・インターネット広告に対する消費者の嫌悪が高まっている
②コンテンツマーケティングの有用性が今後さらに高まる
・ユーザーファーストの広告手法
・コンテンツの質がSEOにおいても重視されている
③コンテンツマーケティングが不動産業界に適している
・エンドユーザーは情報を欲している
・家/地域/暮らしなど、不動産・住まいのプロとして発信しやすいテーマが多い
住宅のような耐久財は、購入までの検討期間が長く、その間の情報収集も多岐に渡るため、コンテンツマーケティングで訴求するのに適しています。
しかし、リスティング広告とは違ってすぐに成果を出しづらいですし、コンテンツを作成する手間暇を考えると長期間継続することがなかなか難しい点がデメリットと言えるでしょう。
ただし、コンテンツは作成すればするほど検索エンジンからの流入量の増加が見込めますし、一度貴社のファンになった顧客とは強い関係性を築くことができます。
コンテンツマーケティングには、他の広告手法では得られない、ならではの利点がありますので、メリット・デメリットを十分に検討した上で、チャレンジしてみることをおすすめします。