【顧客ニーズへの対応】売主・買主の心理から考える、2022年の集客活動のポイント【競合との差異化】

エキテン総研の調査「「不動産仲介会社に関するユーザーアンケート」によると、「不動産の賃貸や売買でどのような不動産仲介会社を利用しますか?」という問いに対して、50.2%が「こだわりはない」と回答しました。

また、「大手」と「街の小規模」の不動産仲介会社で比較すると、それぞれ25.1%と19.4%で拮抗しています。

エキテン総研,不動産仲介会社に関するユーザーアンケート

引用:エキテン総研「不動産仲介会社に関するユーザーアンケート」

一般的に、消費者の購買行動は企業の知名度・ブランド力に依存する傾向がありますが、不動産仲介においてはその限りではないようです。

そのため、地場の不動産仲介会社さまにおいては、地域における強みを最大限活かし、「こだわりはない」層の取り込むことが重要になると考えられます。

そこで今回は、マーケティングにおける「カスタマージャーニー」(消費者心理分析手法)の観点から、売主・買主双方の集客戦略について検証・分析してみたいと思います。

【1】カスタマージャーニーとは何か?

まず、カスタマージャーニーとは何か?について、ご存知の方も多いとは思いますが、ご説明したいと思います。
カスタマージャーニーとは、ターゲットとする顧客層の動き(行動、思考、感情など)を時系列に沿って見える化するものです。

この「見える化」によって、顧客との接点(オンライン・オフライン問わず)が明確になり、適切な場所・タイミングで態度変容を促す最適な情報の伝達・コミュニケーションを可能にします。

例えば、貴社で売主に訴求するためのLPを作成する場合で考えると、売主が情報を検索している場所(一括査定サイト、不動産会社のホームページ・LP、SNSなど)で、どういった情報をどのようなタイミングで探しているのかを把握することが重要になります。

これらを把握した上で、最適なタイミングで最適な情報を与えることなくして、最終的に売主が売却を委任するように促していくための戦略が機能することはありません。

今日のユーザーはさまざまな媒体を使って情報収集を行い、意思決定を行っているため、その行動の把握は難しくなる一方です。

その反面、情報を発信する側もテクノロジーの進化によって取得・分析できる情報量・質が増加しており、メールを活用した自動追客ツールやweb広告などを駆使した、より緻密なマーケティング施策を打つことができるようになっています。

こういった背景の下、マーケティングにおけるカスタマージャーニーの考え方は広く普及し、マーケティング戦略構築の第一歩として利用されています。

【2】売主の動き出し時期は?

では、売主・買主のカスタージャーニーを考えるにあたって、まず「いつ」について検証してみたいと思います。
以下のグラフは、キーワード「不動産売却」のGoogleにおける検索数の推移を、過去5年間で振り返ったものです。

Googleトレンド

引用:Googleトレンド

グラフ内の赤い矢印は各年の2〜3月頃の動向を指したものです。

各年ともに直近の数ヶ月と比較して検索ボリュームが増加していることが分かります。

理由としてはさまざまな仮説が考えられますが、直前の年末年始に家族が話し合いやすい機会があること、2月〜3月の不動産繁忙期で不動産各社のプロモーション量が大幅に増加することなどで、売却ニーズが顕在化していると考えられます。

【3】自社ホームページの差異化

続いて、売主・買主とのタッチポイントにおいて、どのようなコミュニケーションを図るかについて考えてみたいと思います。

以下のグラフは、エキテン総研の調査「不動産仲介会社に関するユーザーアンケート」で「不動産仲介会社の情報をどのように調べたか」について聞いたものです。

エキテン総研,不動産仲介会社に関するユーザーアンケート

引用:エキテン総研「不動産仲介会社に関するユーザーアンケート」

アンケート結果から、ポータルサイトでの情報収集を行っている割合が高いこと、検索エンジンや不動産仲介会社の自社ホームページなどの利用率も高いことが分かります。

次に、同アンケートから「不動産会社を選ぶ際に重視している情報」について見てみましょう。

エキテン総研,不動産仲介会社に関するユーザーアンケート

引用:エキテン総研「不動産仲介会社に関するユーザーアンケート」

不動産仲介会社を選ぶ基準として、仲介手数料はもとより、口コミや更新頻度、メールでの問い合わせから物件写真・スタッフ・店舗など、実に幅広くさまざまな情報を重視していることがわかります。

これらを踏まえると、ポータルサイトにおける集客の重要性もさることながら、売主・買主の細かなニーズに対応するために、自社ホームページやLPなどを活用したオンラインコミュニケーションにおける情報の充実度が、集客の成否に影響を与えていると言えるでしょう。

【4】店舗情報・オンライン接客の有無を重視

最後に、コロナ禍によって、オンライン接客の重要度が高まったことが分かる調査結果をご紹介します。

以下のグラフは不動産情報サイト事業者連絡協議会が行った「不動産情報サイト利用者意識アンケート」から、売買物件の検討者に「問合せや訪問を行う際に不動産会社を選ぶ時のポイント」について聞いたものです。

売買物件検討者が問合せや訪問を行う際に不動産会社を選ぶ時のポイント(2020年と2021年調査比較、複数回答)

2020年

(n=240)

2021年

(n=138)

写真の点数が多い 68.1% 72.9%
写真の見栄えがよい 29.7% 30.8%
他にもたくさんの物件を掲載している 29.7% 48.8%
部屋の雰囲気が分かる動画が付いている 29.0% 29.2%
店舗がアクセスしやすい場所にある 29.0%
不動産会社の担当者自身が見学した際のリアルな感想が自身の言葉で語られている 27.5% 24.2%
会社のホームページが充実している 23.2%

引用:不動産情報サイト事業者連絡協議会「不動産情報サイト利用者意識アンケート」

2020年には「店舗がアクセスしやすい場所にある」が5位で約30%の回答率だったものが、2021年には上位項目から消える結果となりました。

コロナ禍によって、Zoom等を活用したオンライン接客が増えていること、郊外移住も含めた検討物件の広域化などがその理由として考えられます。

【5】売主・買主の心理から考える、2022年の集客活動のポイントまとめ

ここまで、マーケティングにおける「カスタマージャーニー」の観点から、売主・買主双方のインサイトについて検証・分析してきました。

ポイントは以下の通りです。

<ポイント>
1.生活者の半数は、不動産仲介会社を選ぶ際に「大手」や「地場」にこだわりを持っていない
2.生活者が不動産仲介会社を選ぶ際に重視している情報は、仲介手数料・口コミ・情報の更新(鮮度)
3.生活者が問い合わせや訪問する不動産仲介会社を選ぶ際の条件「店舗の立地」は優先度が低下している
4.Googleにおける「不動産売却」の検索ボリュームは、直近5年間で見ると、2月〜3月に増加する傾向にある

上述の通り、「不動産売却」の検索数は年末年始頃から上昇し、2月〜3月にピークを迎えていますので機運が高まる中での集客強化が一つのポイントとなるでしょう。

実際に「不動産売却」で検索してみると、検索結果には「基礎知識」「仲介と買取の違いは?」「不動産会社の選び方」といった検討初期にニーズが高いと思われる情報が上位に表示されます。

これは「不動産売却」というキーワードで検索しているユーザーに最適化した検索結果をGoogleが表示させているため(ちなみに、ここにもカスタマージャーニーの考え方が取り込まれています)です。

クリックして各サイトに飛んでみると、「あなたが不動産を売る理由とは」、「 不動産売却を成功させるための心構え」、基礎知識として「 不動産売却の流れと期間」「不動産の査定とは」といった項目が並んでおり、貴社が検討初期の売主に対して提供するコンテンツのヒントになると思います。

例えば、前回の記事(【成約数4ヶ月連続マイナス】転換期を迎える中古マンション市況の売主・買主対策とは?)のように、貴社の商圏エリアで「今が売り時」であることを訴求することを目的に、レインズなどが公開しているデータを用いて、プロの目線で市況を解説するというのも一つの切り口となるのではないでしょうか。

他にも「大手と地場の仲介会社の違い」「不動産売却にかかる費用」など、売主の検討動機(住み替え、相続、転勤/転職など)ごとのカスタマージャーニーに応じて、「不動産売却」のノウハウを丁寧に解説しつつ、自社のサービスに誘導していくと、売主の納得感を高めることができるはずです。

2022年も当面はコロナ禍が続き、引き続き先が見通しづらい状況が続くと思われる中、生活者のニーズの多様化・細分化は今後も進んでいくものと考えられます。

ニーズを拾い上げて成約に結びつけていくためには、カスタマージャーニーの見える化を通じた顧客目線での施策がさらに重要になることでしょう。

■エキテン総研「不動産仲介会社に関するユーザーアンケート」調査概要
対象者:店舗の口コミ・ランキングサイト「エキテン」のユーザー(全国10~80代男女)
回答数:411
調査時期:2021年4月28日~2021年5月6日
調査方法:インターネット調査

■不動産情報サイト事業者連絡協議会「不動産情報サイト利用者意識アンケート」調査概要(①2020年度②2021年度)
(1)調査方法
①②不動産情報サイト事業者連絡協議会サイト、会員サイト、不動産情報サイト上で行ったオープン型調査

(2)調査期間
①2020 年 3 月 19 日~7 月 17 日の 121 日間
②2021 年 3 月 18 日~6 月 16 日の 91 日間

(3)有効回答数
①2,966 人
②2,608人
※いずれも過去 1 年のうちにインターネットでご自身が住む住まいを賃貸または購入するために不動産物件情報を調べた(調べている)方

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