株式会社And Doホールディングスが行った「不動産売却・購入に関するインターネット調査」によれば、不動産売却における情報収集の方法について年代ごとに違いがあることがわかりました。
そこで今回は、売却のボリュームゾーンと考えられる40代以上が主に利活用している「ネット検索」について、2023年上半期の「不動産売却」に関する検索動向をGoogleのデータを元にご紹介します。
実際に検索されているキーワード、検索ボリュームの増加率が高いキーワードをピックアップしつつ、媒介獲得のためのポイントについて考えてみましょう。
年代別「不動産売却に関する情報収集方法」
表①不動産売却に関する情報収集方法(引用元:(株)And Doホールディングス「不動産売却・購入に関するインターネット調査」)
不動産売却のボリュームゾーンと考えられる40代以上の情報収集方法では「ネット検索」が上位を占めています。
どの年代においてもインターネットでの情報収集が比重を占めていますが、年代によってどういったメディアを活用しているかに違いがあるようです。
なお、20代、30代では「YouTubeなどの動画サイト」「Twitter」「Instagram」などのSNS関連が上位を占めており、20代においては「ネット検索」がトップ3にも入っていないという状況になっています。
媒介獲得における「SNS戦略」の重要性も今後さらに高まっていくことが予想されますが、それはまた別の機会で改めて深堀りしたいと思います。
「不動産売却」関連のGoogleキーワード分析
話を「ネット検索」に戻し、Googleにおける「不動産売却」関連のキーワードの検索動向について見ていきたいと思います。
表②2023年上半期「不動産売却」検索ボリュームの推移(引用元:Googleトレンド)
表②は、2023年1月から6月に「不動産売却」というキーワードが検索された回数の推移をグラフ化したものです。
年末年始から繁忙期に向けて検索回数が増加し、4月以降は安定的に推移していることが分かります。
表③2022年上半期「不動産売却」検索ボリュームの推移(引用元:Googleトレンド)
表③は2022年1月から6月における「不動産売却」の検索ボリュームの推移をグラフに表したものです。
前年同期で比較すると、2023年は2022年に比べて繁忙期以降の検索ボリュームの減少幅が小さく、関心が高い状態が続いていることが見てとれます。
次に、「不動産売却」関連で検索されているキーワードの検索回数の変化について見ていきましょう。
<表④>2023年上半期「不動産売却」関連キーワード検索ボリューム
キーワード | 検索指数(※) |
不動産 | 100 |
売却 | 97 |
税金 | 16 |
不動産 売却 税金 | 16 |
マンション 売却 | 13 |
土地 | 13 |
土地 売却 | 13 |
相続 | 13 |
不動産 査定 | 11 |
不動産 売却 査定 | 10 |
確定 申告 | 10 |
確定 申告 不動産 売却 | 10 |
住宅 売却 | 10 |
不動産 会社 | 9 |
不動産 売却 税 | 9 |
買取 | 8 |
不動産 買取 | 8 |
家 売却 | 8 |
中古 | 7 |
不動産 売却 費用 | 6 |
不動産 売買 | 5 |
大阪 | 5 |
購入 | 5 |
不動産 購入 | 5 |
大阪 不動産 売却 | 5 |
引用元:Googleトレンド
※検索指数:検索指数100に対して当該のキーワードがどのくらい検索されたのかを表したもの
表④は、2023年1月~6月の「不動産売却」関連キーワードの検索ボリュームを多い順にまとめたものです。
「査定」「不動産会社」「買取」といった常套句とは別に「税金」「確定申告」などのワードが上位に散見される結果となっています。
<表⑤>2023年上半期「不動産売却」関連キーワード増加率
キーワード | 増加率(※) |
不動産 売却 確定 申告 e tax | 急激増加 |
不動産 売却 確定 申告 やり方 | 急激増加 |
確定 申告 2023 | 急激増加 |
不動産 売却 税金 計算 ツール | 急激増加 |
不動産 投資 初心者 | 急激増加 |
etax | 急激増加 |
大東 建 託 リーシング | 急激増加 |
すまい value | 急激増加 |
譲渡 所得 確定 申告 | 1,350% 増加 |
不動産 売却 確定 申告 書き方 | 600% 増加 |
土地 売却 確定 申告 必要 書類 | 250% 増加 |
相続 不動産 売却 確定 申告 不要 | 250% 増加 |
3000 万 円 特別 控除 | 200% 増加 |
固定 資産 税 評価 額 | 200% 増加 |
確定 申告 不動産 売却 | 100% 増加 |
確定 申告 | 100% 増加 |
引用元:Googleトレンド
※増加率:前年同期と当期の検索回数を比較したもの
続く表⑤は、2023年1月~6月の「不動産売却」関連キーワードの検索数の増加を前年同期比でまとめたものです。
上位には「確定申告」「税金」「計算」「etax」などのワードが散見されます。これらは「急激増加」となっており、前年同期の2022年1月~6月には見られなかった新たなトレンドと言えるでしょう。
その背景としてさまざまな理由が考えられますが、不動産価格の高騰により、譲渡所得が発生するケースが増加したことが一因と考えられます。
譲渡所得の発生により、不動産売却時の確定申告が必要になったことで、検索数の増加につながったものと考えられます。
なお、確定申告関連の検索ボリューム増加は確定申告が始まった2023年の3月頃で一旦収束していますが、不動産価格の高騰は現在も続いていることから、2024年の同期も同様のトレンドが発生することが予想されます。
まとめ
ここまでのポイントを以下にまとめます。
- 不動産売却のボリュームゾーンと考えられる40代以上の情報収集方法では「ネット検索」が上位を占めている。
- 2023年上半期の「不動産売却」関連の検索は、2022年上半期に比べて検索回数が増加傾向にあり、不動産売却への関心が高まっていることが分かる。
- 具体的な検索キーワードとして「確定申告」「税金」「計算」「etax」などの検索回数が増加しており、不動産価格の高騰による譲渡所得の発生機会の増加がその一因と考えられる。
豊富な知識・情報量を活かした高い提案力
「不動産売却・購入に関するインターネット調査」によれば、「売却を決めた不動産会社の選定理由」は以下のような結果となっています。
表⑥売却を決めた不動産会社の選定理由(引用元:(株)And Doホールディングス「不動産売却・購入に関するインターネット調査」)
どの年代層においても「地元に強い」、「担当者が信頼できた」が上位を占めていますが、特に40代以上でより重視される傾向が強くなっています。
では、不動産会社および担当者に対する「信頼」とはどういったものなのでしょうか?
株式会社AlbaLinkが行った「信頼できる不動産営業担当者に関する意識調査」の結果から考えてみましょう。
表⑦信頼できる不動産営業担当者の特徴(引用元:株式会社AlbaLink「信頼できる不動産営業担当者に関する意識調査」)
表⑦「信頼できる不動産営業担当者の特徴」を見ると、上位には「正直・誠実な対応」、「親身・丁寧な対応」、「マナー・身だしなみ」などが並んでおり、顧客に対する「正直さ」「丁寧さ」を重視していることが窺えます。
競合他社との差異化という意味では、6位「知識・情報量が豊富」、7位「提案力が高い」に注力することで、信頼できる不動産会社・担当者という認知を獲得することがポイントになりそうです。
幅広く多様な情報に触れる機会の創出
表⑥不動産売却にかかった期間(引用元:(株)And Doホールディングス「不動産売却・購入に関するインターネット調査」)
不動産売却にかかった期間を見ると、年代が上がるほど売却期間が長期化していることが分かります。
特に長期化が顕著な50代以上は「表①不動産売却に関する情報収集方法」の情報収集方法において「特に無い」が上位を占めており、幅広い多様な情報に触れる機会が他世代に比べて少ないことが売却期間の長期化につながっている一因と考えられます。
これらを踏まえると、40代以上の媒介獲得のためには多様で幅広い情報提供に加え、出口となる最適な提案を通じた訴求・サポートが欠かせないと言えるでしょう。
潜在層に対しては、Googleにおける「不動産売却」関連の検索動向などから、不動産売却を検討している方が増えていること、不動産売却による譲渡所得の発生機会が増加していることなどを訴求することも一つのアプローチになりそうです。
「今が売り時!」と考える売主が増えていることを根拠に、売却を促していくことができるでしょう。
顕在層に対してはオンライン/オフラインを問わず、不動産売却におけるプロセス、特に今回ご紹介した検索キーワードに関連するポイント(確定申告の流れやe-taxなど)について情報提供する機会を創出し、不動産売却をスムーズかつスピーディーに完了するためのサポートの重要性が高まっていると言えそうです。
■(株)And Doホールディングス「不動産売却・購入に関するインターネット調査」概要
調査期間:2022年12月14日~2023年1月3日
調査方法:インターネット調査
調査数(有効回答数):20歳以上の全国2,219人(不動産を売却した経験及び購入した経験を持つ方)
■(株)AlbaLink「信頼できる不動産営業担当者に関する意識調査」概要
ホームページ:https://albalink.co.jp/
調査対象:不動産会社を通して物件の購入や賃貸住宅を借りた経験がある人
調査期間:2023年3月3日~3月13日
調査機関:自社調査
調査方法:インターネットによる任意回答
有効回答数:500人(女性275人/男性225人)
回答者の年代:20代 17.4%/30代 36.8%/40代 30.2%/50代 13.2%/60代以上 2.4%