不動産仲介において借地権を扱う際に避けて通れない法律に、借地法(旧法、以下「旧借地法」という)と借地借家法(現行法)があります。大正10年から平成4年まで施行された旧法である借地法と、それと入れ替わる形で平成4年以降現在も施行されている借地借家法の2つの法律です。
仲介や売買において取り扱う物件がどちらの法律の対象になっているか、またその内容についても理解しておくことが大切です。
なぜ旧借地法は廃止され、借地借家法になったのか
旧借地法の成り立ち
借地法(旧法)は借地権者の居住する権利を守るために生まれました。旧借地法が制定される以前は、借地において発生する問題については民法が適用されていました。
民法においては、売買によって得られる権利は賃貸借によって得られる権利に比べて強く(売買は賃貸借を破る)、仮に地主が底地を第三者に売却した場合、借地権は無効になると判断されていました。
これによって、借地契約中に借地上に建物を所有している借地権者であったとしても、地主が底地を第三者に売却した場合には追い出されてしまうことになりました。このように借地人の権利は非常に弱く、本来借地人に所有権が認められている建物についても権利を守ることができない状況でした。
この状況を踏まえ、明治42年に「建物保護ニ関スル法律」が施行され、借地上にある建物でも登記をすれば土地の売買に対して借地権を対抗できることが定められました。これによって、借地権者は借地の権利と自らの建物を守ることができるようになりました。
更に、大正10年に「借地法(旧法)」と「借家法(旧法)」が施行され、借地権者の権利は更に強く保護されることになりました。大きな点としては、借地権者が借地契約の更新を望んだ場合に半永久的に借地契約を継続することができる(自動更新の原則)ことが挙げられます。
借地借家法の成り立ち
旧借地法が制定されたことによって、借地人は半永久的に土地を借り続けることができるようになりましたので、地主から見ると「土地は一度貸したら二度と返ってこないもの」という共通の認識が広まっていきました。
借地権者の権利が強くなったということは、相対的に地主の権利が弱くなったことを意味します。
このことから、地主は有効活用されていない土地を持っていたとしても、簡単に賃貸に出すことができなくなってしまいました。時を経てバブル期になり、土地の価格が高騰しその利用価値が高まったにも係わらず、活用されない土地が多くあることが問題に取り上げられるようになりました。
そこで、平成4年8月1日に「借地法(旧借地法)」「借家法(旧借家法)」「建物保護に関する法律」の3つを廃止し、それに代わって「借地借家法」が施行されるようになりました。
これは、強くなりすぎた借地権者の権利を弱くし、地主に権利を戻す流れとなりました。大きな点として、「定期借地権」ができたことが挙げられます。
それまでの借地契約は、その契約期間が満了しても借地権者が望めば契約を更新することができるものでした。地主はそれを回避するために、借地契約の締結時に「不更新の合意」を特約として設定することもできましたが、その特約は借地権者に対して不利な契約と考えられ、裁判で争いになった際には無効と判断されることが一般的であり、法的に有効とは言えませんでした。
そのような中、この「定期借地権」が制定されたことにより、地主は借地期間満了とともに必ず土地を取り戻すことができるようになったのです。これにより、土地所有者にとって土地の利用方法の選択肢の一つが増えたと考えられるようになり、結果的に地域の活性化へと繋がりました。
今でも生き続ける旧借地法
しかしながら、旧借地法で契約した地主と借地権者の取り決めが、法改正によって変更になってしまえば混乱を生じることになります。
例えば、旧借地法の考えによって設定した権利金の金額も、現行法の借地借家法になれば額も違ったものとなるでしょう。旧借地法のつもりで借地権を購入した買主も、代金を支払った後で背景となる法律が変わったとなれば国に対して損害賠償をしたくなるかもしれません。
そのため、旧借地法の時期に締結した契約については、そのまま旧借地法が適用されることになりました。このため、現在でも多くの旧借地法の契約が残っています。
そのため、借地権を取り扱う際にはこの2つの法律について最低限理解しておく必要があります。今回は時代背景と一緒に2つの法律の歴史を振り返ってみました。参考になれば幸いです。