過去2回の「借地権の売却準備について」では、借地そのものについて(①)と借地契約の内容について(②)のチェックポイントについて触れてみました。
前回記事をまだご覧になってない方は下記よりご覧ください。
今回は、借地上の建物のチェックポイントについて挙げてみます。
お客様のお話しを、参考書類を見ながらお聞きして一つずつ確認していきましょう。
建物の所有者が誰か確認しましょう。
不動産売買仲介担当の皆様のもとに相談に来られたお客様が建物の所有者でしょうか?
土地賃貸借契約書に記載されている借主でしょうか?建物の登記事項証明書に記載されている所有者とも一致していますか?どこかで異なっていたら、お客様に事情をお聞きして適切な対応をしましょう。
当社に相談に来られる方によくあるのは、
- 「自分の親が建物所有者です」
- 「自分と兄弟の共有です」
- 「自分の配偶者が所有者です」
などというように、相談者自身が所有者ではなかったり、現段階では共有者のうちの1名であって、単独では処分できないといったパターンです。
まずは真の所有者を探しましょう。
おそらく所有者は親族等の場合も多いと思いますが、本当に売却活動を検討されているのなら、「建物所有者=借地人」本人と接触して直接意思確認をすることが大切です。
建物に関する書類や図面を提出してもらいましょう。
既存建物が譲渡されたあと、解体されずに利用される可能性があるなら、関係書類はその買主に渡す必要があります。
たとえば、建築確認通知書、検査済証、設計図書類、建物施工業者が発行したアフターサービス規準や保証書などです。
場合によっては、建物状況調査やアスベスト調査の結果報告もあるかもしれません。
所有権土地建物の売買と同じく、所有者からヒアリングをしながら、漏れのないように資料を収集しましょう。
また、このようにまだ利用できる建物の売買の場合には、修繕履歴の提示や建物状況調査の実施も売却を容易にするかもしれません。
必ず内見して建物を確認しましょう。
建物内外に渡ってくまなく確認しましょう。基本的に所有権土地建物のときと同じです。
設計図書と見比べて、増改築がないかどうかもチェックしておきましょう。これによって建ぺい率等がオーバーしている建物もよく見受けられますので。
天井裏・床下等、見にくい箇所の故障等で不安があったら、専門業者に点検してもらいましょう。
設備や各種配管の不具合チェックも重要です。
建物と土地境界の関係を確認しましょう。
借地の場合は特に、敷地境界があいまいな場合が多いと思われます。
建物を建てたのちに必要にかられて分筆したり、売却相談をいただいた段階でも境界杭はあるものの隣の建物の敷地と分筆されていなかったりすることもあります。
ですから、境界付近の越境問題も所有権土地の場合よりも多く目にします。
まずはすべての境界線を確認して建物の一部が隣地に越境していないか確認しましょう。同時に隣地から当該借地に越境しているものがないかも確認しましょう。
建物の庇や雨どい・出窓等が越境していないでしょうか?ついでに樹木や境界塀についても互いに越境していないか確認しましょう。
これらの越境対策については、速やかに越境解消作業を実施するのか、または、覚書等を締結して越境の事実を関係者で確認したうえで越境解消にはある程度の猶予を保つのかといったことを協議する必要があります。
この段階で、境界線の位置についてや境界塀の所有権についての問題が発覚することも多いです。問題点の洗い出しのためにも、現地で一つずつ丁寧に確認をして疑問点を解決していきましょう。
【建物の地中埋設物についても確認しましょう(上下水管、ガス管、地中杭等)
地中の埋設管についても、借地の方が所有権土地の場合よりも越境問題が多いと思われます。
境界線があいまいで結果的に隣接地で越境が発生したり、当初から借地範囲外の地中に上下水道管を埋設していたりすることが多いようです。
まずは、上下水道管が前面道路から借地に直接引き込まれているか確認してみましょう。設計図書を確認することも重要です。都市ガスのエリアなら、ガス管についても念のために確認しておきましょう。
これらの上下水道管については、誰の所有か、維持管理の方法はといったことも借地人の方に聞いておきましょう。借地の場合にはどうしても道路も私道の場合が多いですし、そうなると上下水道管も私設管の場合が多いためです。
なお、その他によくある埋設物としては、地中杭と浄化槽があります。これらについても設計図書で確認するとともに、借地人にヒアリングしておきましょう。
地中杭は建て替えの際に障害になります。
浄化槽も現に利用しているかもしれませんが、そうでなくとも利用していない浄化槽が埋設されていることもままあります。これら地中杭や浄化槽の撤去には相当の費用がかかりますので、売買の際には明らかにしておく必要があります。
まとめ
以上、借地上に存する建物に関してのチェックポイントを列記してみました。
上記の項目をチェックしていく間にもいろいろとあらたな疑問点も発見できると思います。できる限り明らかにした上で、土地賃貸人との借地権譲渡交渉や売却活動に臨みましょう。