
不動産売買仲介を仕事にされている方に質問です。
入社してから、「案内の仕方・方法」を教えてもらったことはありますか?
おそらく大多数の方が、教わったことがないと想像しています。もちろん、上席(管理職)の方も教わったことがないので、教えられる人がそもそもいないからです。私も、以前勤めていた会社で「接客の仕方」や「資金計画の仕方」は教わりましたが、案内の仕方は教わったことがありませんでした。
数年前までは、まず不動産会社に来店してから物件を見に行くお客様が多かったのですが、最近は大半の物件がインターネットに掲載されていて(一部の特殊な物件以外の中古マンションは95%以上と言っていいほど)、まずインターネットで物件を探して、見学したい物件だけに問合せをしてくるお客様が大変多くなりました。必然的に、お客様は物件を見学に行くことが目的となり、来店を促すことが難しくなりました。
この実情において、何も対策を練らずに物件案内をしてしまうと、案内歩留まりが5%を切ると推察します。
これをどのように7~10%などに歩留まりを上げていくかが多くの企業・組織の課題であり、現場の営業マンに求められる能力です。
なぜ案内後の次回アポイントが取れないのか
都心部での物件案内は、物件がお客様の希望通りの場合など、よほど条件が良くない限り1回の案内では契約に至りません。
契約に向かうためには、初案内後の来店・資金計画の約束等、次回打合せのアポイントが必要になってくるのですが、なぜそこで次回アポイントが取れない営業マンが多いかというと、物件案内の仕方が間違っているからです。
お客様が求めている案内ではなく、上司に報告するための案内になっていませんか?
物件を見せるだけ、立ち会うだけの案内になっていませんか?
例えば、管理職は【 属性、年収、勤務先、勤続年数、動機 】 の報告が欲しい一方で、お客さんが聞きたいことは【 物件の概要、設備の説明、使い方、メリットとデメリット 】です。
ここに大きなズレが生じる原因があります。
例えば、買い物でフラッと入ったお店で商品をみている時に、店員さんから「何をお探しですか?」と言われたら逃げたくなりませんか?
逆に、自分が手に持った商品の情報を教えてくれる店員さんには、もっと話を聞きたいと私は思います。
「こちらもいいですよ!」と他の商品も紹介されるとついつい話を聞いてみたくなったりして、そのあと、「お探しのものはあるのですか?」と聞かれたら、何が欲しいという話になるわけです。
不動産仲介営業もこれと同じことです。
お客様の物件案内のポイントは【感度を出すこと】、この一言に尽きます。
不動産業界での10年以上の経験で、私自身が得た案内の極意をここでは共有します。
案内の進め方
事前準備
まず事前準備として、空室物件であれば案内の前に物件を見ておきます。
待ち合わせの20~30分前には物件に入って、室内を確認します。
・スリッパ準備
・天井高を測っておく
・カーテン開ける
・電気を全部つける(特に玄関・廊下・トイレ・洗面化粧台・お風呂は必須)
・必要であれば換気
・設備や仕様の確認
大切なことは、お客様の案内の導線をイメージして、事前に計画しておくことです。どの順番でどこを案内して、どういうトークを打つか、事前に想像しておきましょう。
挨拶
案内の時間になったら、お客様に名刺を渡して挨拶し、案内に入ります。
戸建ての場合は中に入る前、中古マンションの場合はエレベーター前か中で総戸数・築年数などの簡単な概要を伝えます。場合によってはこのタイミングで、「たくさんのお問合せがある」とか、「いつ販売開始した物件」とか、「今日だけで案内が3件も入っている」などとお伝えできるとよいです。
よく案内するときにお客様に販売図面を渡す営業マンがいると思いますが、特殊な物件以外は基本的に案内の最後に渡します。先に資料をくださいと言われた場合や、お客様が間取りを見たそうでしたら渡してもOKですが、お客様は図面を見に来たわけではないので、物件を見るように促していくのが正解です。
なぜなら、不動産は物件を見て欲しいと思うから購入するもので、販売図面を見て購入するものではないからです。
先に販売図面などの資料は渡さない、案内終了後に渡すのが正解
リビングへ向かう
部屋に着いたら、お客様に最初に室内に入ってもらい、「どうぞ奥のリビングまでお進みください」と誘導します。
多くの人にとってリビングが一番感度の出やすい場所なので、最初に見せます。
リビングに行くまでの部屋や水回りを先に見ないように、この一言が大切です。
リビングでは方位の確認と、畳数の確認を行います。
ここでペアガラス、樹脂サッシの説明など、豆知識を伝えられるととても良いです。
「どうぞリビングまでお進みください」とお客様を誘導する
キッチン
リビングの説明が終わったらキッチンです。
大切なことはお客様をキッチンの中に誘導することです。放っておくと、ご主人と奥様・お子様方は別々に行動し始めます。これは避けてください。せっかくの案内が残念な結果に近づきます。
自分はキッチンの入り口に立ち、しっかりとキッチン種類や設備の使い方の説明を行い、メリット・デメリットをお話しします。
その後の洗面化粧台、浴室、トイレの案内方法も同様です。
ここでも同じく先にお客様を中に入れて入り口に自分が立ち、知識をお伝えます。
自身の持っている知識を総動員して、お客様に情報を伝えてください。
続きは、トップセールスマンの物件案内の極意➁【物件案内~クロージング編】でお伝えします。