不動産取引の電子契約はいつから?メリットや手順・注意点を解説
  • 不動産電子契約とは?
  • 不動産電子契約はいつからはじまる?
  • どういう対策をしたほうがよい?

法改正(デジタル改革関連法)により不動産契約もいよいよ電子契約が本格化してきます。

本ページでは不動産会社が電子契約を進めていくにあたって知っておきたいポイントをまとめてご紹介いたします。

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不動産電子契約はいつから始まる?

まず最初に把握しておきたいことが「不動産電子契約はいつから施行されるのか?」という点です。

結論からいうと、2021年9月~2022年5月19日の間に開始されます。

不動産業界の各種契約においての完全電子化は、次のように2段階に分かれて実施されます。

1. 2021年9月1日に「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」が施行され関係する48の法律の改正が実施される(一定の準備期間が必要な法律に該当しており)
2. 遅くとも2022年5月19日から上記の準備期間を要する法律の改正が有効となる

※宅地建物取引業法の改正については、一定の準備期間が必要な法律に該当しており、2022年5月18日までに施行されます。

そもそも不動産の電子契約とは

不動産の電子契約とはそもそもどういったものなのでしょうか?

その前にまずは「デジタル改革関連法案」について理解する必要があります。

デジタル改革関連法とは、地方自治体を含む行政システムの統一を図り、官民のデジタル化を推進することで国民や民間企業の利便性を向上させるための法案」を指します。

要するに、従来の紙媒体での契約書ではなく、デジタルな電子文書や電子サインによって利便性を高めようというものです。

不動産業界においては

  • 申込書
  • 重要事項説明書
  • 35条書面
  • 賃貸借契約
  • 37条書面

これらがすべてが電子書面・電子サインで締結が可能となります。

具体的に電子契約でどのように変わる?

従来 電子契約
申込書 オンライン可 オンライン可
重要事項説明 オンライン可 オンライン可
35条書面※ 書面での交付が必須 オンライン可
賃貸借契約 オンライン可 オンライン可
37条書面※ 書面での交付が必須 オンライン可

不動産契約締結において特に大きく変わる部分は35条書面・37条書面の交付です。

これまではすべての契約で重要事項説明書を宅地建物取引士が交付・説明し、37条書面と定義される契約書に、宅地建物取引士が押印したうえで宅建業者が交付していました。

電子契約の場合でもこの流れは変わりませんが、説明はオンラインでおこない重要事項説明書および契約書は電子交付することが可能となります。

不動産電子契約メリットは主に3つ

電子契約が始まっても、従来通り書面での手続きももちろん可能です。
では不動産会社が電子契約を導入する上でのメリットはなんなのでしょうか?

電子契約の導入によって得られる主なメリットは次の3つです。

  1. 業務効率化
  2. コストの低減
  3. オフィスのダウンサイジング

業務効率化

電子契約の導入によって得られる主なメリットは次の3つです。

電子契約になると重要事項説明はIT重説でおこないますが、契約締結はメールで送信しておくと契約相手の都合で手続きしてくれます。

立ち会う必要や説明の必要もないため、準備さえ完了するとあとは締結手続きそのものに手間がかかることはありません。

さらに書面契約でおこなっていた書類の印刷・製本といった手作業がなくなり、業務効率は大幅に向上します。

コストの大幅削減

業務の効率が高まるとコスト削減にもつながります。

  • 用紙代
  • 製本代
  • 印刷代

などの目に見える経費の削減と、契約当事者であれば印紙税がかからないのが最大のメリットです。

【補足】印紙税

印紙税は次の文書に課税されます。

  • 不動産の譲渡契約書
  • 地上権の設定または譲渡契約書
  • 土地の賃借権の設定または譲渡契約書

「文書」にかかるのであって、電子契約の場合は課税されないとされています。

なぜ課税されないのか?

その理由は電子契約サービスのひとつであるクラウドサインを運営する弁護士ドットコムのサイト「サインのリ-デザイン」に、詳しく書かれているので参照してください。

※必須ではありませんが、課税対象外の根拠はしっかり押さえておきましょう。

参照:サインのリ-デザイン「収入印紙が電子契約では不要になるのはなぜか?—根拠通達と3つの当局見解」

保管スペースが不要になる

宅建業法では取引台帳を作成し5年間の保存が義務づけされています。

契約時には重要事項説明書の控えや契約書の控えに添付資料など、膨大な文書類がテーブルに置かれるものです。

契約が終了するとそれら書類の控えもすべて保存することが多く、その期間は取引台帳に合わせて最低5年間おこなっているケースもありますが、万が一取引におけるトラブルにより訴訟になることもあります。

その場合に備え契約関係書類はできれば長期間保存しておくことが望ましく、期間は不法行為の時効に合わせて20年間が望ましいとも言われます。

書類の年間契約件数の多い不動産会社では、保存スペースに膨大な面積を必要とする場合もあるでしょう。

しかし電子契約になりすべての書類を電子化すると、このような保存スペースは不要となります。

また対面契約でおこなっていた打ち合わせコーナーや会議室なども不要になり、オフィスは最低限のスペースで済むようになります。

さらに店舗に来られるお客様がいなくなるなど、営業スタイルが変化すると1階にオフィスがある必要はなくなり、賃貸オフィスでは賃料の削減にもつながります。

不動産会社以外にもメリットあり

電子契約は不動産会社だけでなく、賃貸ユーザーの7割以上が望んでいるというデータもあります。

今後、お客様ファーストを目指し、機会損失をなくすのであれば、電子契約必須といえます。

不動産電子契約にはデメリットもある

不動産の電子契約はメリットが非常に多いですが、デメリットもあります。

  • 相手先への対応依頼
  • 業務フローの変更
  • スキル向上が必要

お客様仲介業者・共同仲介業者への対応依頼

電子契約を本格的に採用しようとする場合、取引に関わるすべての方に電子契約に対応を依頼する必要があります。

  • 賃貸や売買の契約当事者
  • 仲介を依頼する不動産会社や共同仲介会社

契約当事者には個人の場合と法人の場合があります。

個人ではITデバイスに不慣れな人もおり、電子契約に抵抗のある方がいる可能性もあります。

法人の場合はITに対応できないケースは非常に少ないと思われますが、組織の大きな企業では全社的な導入に時間がかかるといったケースも考えられます。

また電子契約サービスには複数の事業者があり、相手方が採用している電子契約サービスが異なる場合、どちらの方式を利用するのかを協議する必要がでてくることもあります。

業務フローの変更

電子契約に移行すると「ペーパー」がなくなり、社内においてもネットワーク上で確認・修正作業が必要になります。

ネットワーク上のチェックになった場合、これまでの業務フローが変わる可能性もでてきます。

とくに最終案の決済については次のようなポイントに注意が必要です。

  • 決裁権限者の明確化
  • 決裁の明示方法

これまでは「紙とハンコ」でおこなっていた決裁を、どのような方法でおこなうか社内ルールをしっかりと見直し、電子契約に相応しい業務フローの構築が必要です。

ITスキルの向上が必須

電子契約は特別な知識は必要なく、すべてクラウドサービスを使うと簡単にできるようになっています。

にもかかわらず「電子契約」を敬遠する経営者は少なくないでしょう。経営者が電子契約を敬遠すると従業員の意識も低下、ITスキルはどんどん下がっていきます。

不動産DXが進化する今日ではITスキルの向上が最重要な課題と言えるでしょう。

【不動産取引】電子契約の流れ

ここからは具体的に電子契約をする際のステップをご紹介いたします。

不動産電子契約には3つのステップがあります。

  1. ITによる重要事項説明
  2. 重要事項説明書の電子交付
  3. 契約書類を電子交付し契約を締結

1.IT重説

IT重説はZOOMなどのWeb会議システムを利用し、対面で説明するのと同じように重要事項について宅地建物取引士が説明します。

宅地建物取引業法で定める「宅地建物取引士証」の提示は、カメラをとおしたモニターにより説明を受ける買主や借主が確認します。

電子契約において「IT重説」を必ずおこなう必要はありません。

買主や借主のなかには、重要事項の説明は “対面” で受けたいと希望するケースもあるでしょう。

そのようなケースでは重説は対面で、契約はオンラインでおこなうなどの柔軟な対応が必要です。

2.重要事項説明書の電子化

IT重説は重要事項説明書の説明を受ける相手側に書面を事前に送っておき、届いてからオンラインで説明する方法でもよいのですが、せっかくオンラインで説明するので、書面を説明時にメールやサーバーからダウンロードする方法で相手側に届けることを「重説の電子化」といいます。

宅地建物取引業法は重要事項説明書を必ず書面で交付するよう定めています。

対面でおこなう説明では重要事項説明書の本書を手元に置き説明を受けます。

説明が終了し十分理解できたところで記名押印します。このことはIT重説で事前に説明書が郵送された場合でも同様です。

そのため説明を受けた書面は “唯一無二” であり、改ざんや偽造はできないようになっています。

ところが重要事項説明書をオンラインで受け取った場合、モニターで見ている説明書が正真正銘、ほんものの重要事項説明書である証明が必要になります。

重要事項説明書を電子化により交付するには「電子署名」という方法を用いて、宅地建物取引業法にもとづく真正な書面であることを担保します。

3.電子契約

契約書の内容に関しては重要事項説明時において、契約書案についても説明をしますので、電子契約時は契約書の真正さを担保したうえで、契約する本人が記名押印するプロセスをオンラインでおこなうことになります。

対面契約では本人確認書類を提示しながらおこなうので、当事者が記名押印していることを確認することが可能です。

しかしながらオンラインでは当事者以外が契約行為をすることも考えられ、なりすましなどの詐欺行為がリスクとしてあります。

契約の成立は当事者による意思表示の合致が要件です。
そのうえで合致を証するために当事者が記名押印します。

電子契約では当事者の記名押印に代わる方法が用いられます。

それが「電子署名」というデジタル技術です。
電子署名が付された契約は当事者がおこなった行為と同様という法的な担保されます。

不動産取引の電子契約で注意したい5つのポイント

電子契約はこれまでおこなわれてきた対面による書面契約と異なり、注意しなければならないポイントが5つあります。

紙と電子化の違い

説明を受ける借主や買主が、パソコンやスマホの画面上で書類を閲覧するため、全体把握がむずかしいことがあげられます。

丁寧な説明を心がけることと、場合によっては借主や買主が書類をプリントアウトできる時間的な余裕をもつことも大切です。

メールアドレスの認証

不動産に関わる契約では契約当事者に加え、媒介する宅建業者の介在が一般的です。

契約書に記名押印しなければならないのは次の3者になります。

  1. 売主または貸主
  2. 買主または借主
  3. 宅地建物取引士

電子契約ではメールによる連絡が通常であり、重要事項説明時や契約締結時にそれぞれの当事者に対して送付するメールアドレスは、事前に知っておく必要があります。

なおかつ打合せ等においてたびたびメールの送受信をおこなうことにより、本人確認が可能になります。

契約時に初めてメールアドレスを知らされるのは、なりすましに遭遇するリスクもあり危険なことと承知しておきたいものです。

本人確認の方法

電子契約は書面契約と異なり契約当事者を目の前にしての契約ではないため、離れたところにいる契約当時者が本人に間違いないのかをアナログで確認することはできません。

また契約手続き(記名・押印)をリアルタイムで確認することもできないので、本人確認が対面以上により確実な方法によらなければなりません。

本人確認のための電子署名には2種類あります。

1つは前述の「メール認証」です。もうひとつがより厳格な方法による「高度電子署名」です。

第三者機関である電子認証局が審査をおこない、本人の身元確認を済ましたうえで電子証明書を発行します。

不動産関係の電子契約サービスには、上記の2とおりの電子署名をおこなうタイプや、メール認証+アクセスコード認証などでおこなうこともあります。

複数の電子契約サービスがすでに運用されており、なかにはサービス運営主体が署名者になる事業者署名型のタイプもあります。

電子契約サービスを選択するさいには、電子署名の方法が自社の考え方に合致するかどうかを確認する必要があるでしょう。

保存方法

電子契約になって多く異なる点は異なる点が書面作成から契約書類の保存まで、書面を印刷することなくすべてパソコンおよび社内ネットワークで処理されます。

途中経過でのデータ保存は社内のネットワークサーバーまたは、クラウドサーバーを利用するケースが多くなるかもしれません。
契約締結後は書面契約と異なり紙のファイルなどに綴じ込まず、電子フォルダに格納され保存するので目で見ることはありません。
書類棚や保管庫に並ぶこともなくパソコンを立ち上げなければ、書類の保存を確認することもできません。

誰もがアクセスできるサーバーであれば、フォルダにアクセス制限をかける必要性もあります。
アクセス権を設定する従業員の範囲や管理者の設定も必要です。

重要事項説明書と37条書面には電子署名を施しますが、担当する宅地建物取引士が自ら署名することが求められ、社内においての「なりすまし」を防止する工夫も必要になるでしょう。

書面のフォーマット

重要事項説明書と37条書面はこれまで利用しているフォーマットがそのまま使えます。

WordやExecelで作成したファイルをPDFに変換して電子ファイルにするので、書面契約と異なるフォーマットはとくに必要ありません。

ただし文言の変更をしなければならない部分があります。

  1. 記名押印→電子署名
  2. 契約当事者が契約書類を保有→電子データとして保存

記名押印の代わりに電子署名を施し、原本は電子契約サービスのクラウドサーバーに保存されます。

契約書面を契約当事者が保存したい場合は、電子データをダウンロードしたものが「写し」となります。

またこれまでの契約当事者の押印欄や、宅地建物取引士と宅建業者が押印していた位置についても、電子署名のしやすい位置にレイアウトする必要もあるでしょう。

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電子契約は社内全員で取り組むことがマストですので、社内共有用にも是非ご活用ください。


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  • そもそも電子契約ってどんなもの?
  • 電子契約は法的効力が認められる?
  • 電子契約の全面解禁とは?

まとめ

  • 不動産の電子契約は2021年9月~2022年5月19日の間にスタート
  • 不動産契約締結において特に大きく変わる部分は35条書面・37条書面の交付部分
  • 電子契約には業務効率化・コスト削減・保管スペースの削減など多くのメリットあり
  • 電子契約は関係各所の協力が必要になり、社内でも一定のITスキルが必要となる

お客様にも望まれている電子化。

是非競合他社に後れを取らぬよう、電子化を取り入れてみてください。

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