不動産取引の契約を電子契約で行う手順と注意点

不動産の賃貸契約および売買契約で本格運用される電子契約は、重要事項説明をオンラインでおこなう「IT重説」、説明する書面をオンラインで送る「電子交付」、そして契約締結をオンラインで完結させる「電子契約」の3つのステップで構成します。
不動産業界で長年使われた「紙とFAX」がITに置き換わり、対面でおこなうことがあたり前とされていた契約手続きが大きく変わります。

ここではまもなく本格的にスタートする「電子契約」の手順と、注意点について解説します。

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電子契約の流れ

電子契約には3つのステップがあります。

・ITによる重要事項説明
・重要事項説明書の電子交付
・契約書類を電子交付し契約を締結

それぞれのステップの概要を把握しておきましょう。

IT重説

重要事項説明は契約の前におこなうことが義務づけされています。
契約の直前の場合や数日前におこなうこともあり、買主や借主の希望に応じておこないますが、宅地建物取引業法では「対面による説明」が前提でした。

しかし電子契約の本格化に向けて、非対面のオンラインによる方法が認められたのが「IT重説」です。
ZOOMなどのWeb会議システムを利用し、対面で説明するのと同じように重要事項について宅地建物取引士が説明します。
宅地建物取引業法で定める「宅地建物取引士証」の提示は、カメラをとおしたモニターにより説明を受ける買主や借主が確認します。

電子契約において「IT重説」を必ずおこなう必要はありません。
買主や借主のなかには、重要事項の説明は “対面” で受けたいと希望するケースもあるでしょう。
そのようなケースでは重説は対面で、契約はオンラインでおこなうなどの柔軟な対応が必要です。

重説の電子化

IT重説は重要事項説明書の説明を受ける相手側に書面を事前に送っておき、届いてからオンラインで説明する方法でもよいのですが、せっかくオンラインで説明するので、書面を説明時にメールやサーバーからダウンロードする方法で相手側に届けることを「重説の電子化」といいます。
宅地建物取引業法は重要事項説明書を必ず書面で交付するよう定めています。

対面でおこなう説明では重要事項説明書の本書を手元に置き説明を受けます。
説明が終了し十分理解できたところで記名押印します。このことはIT重説で事前に説明書が郵送された場合でも同様です。
そのため説明を受けた書面は “唯一無二” であり、改ざんや偽造はできないようになっています。

ところが重要事項説明書をオンラインで受け取った場合、モニターで見ている説明書が正真正銘、ほんものの重要事項説明書である証明が必要になります。
重要事項説明書を電子化により交付するには「電子署名」という方法を用いて、宅地建物取引業法にもとづく真正な書面であることを担保します。

電子契約

電子契約の定義は契約締結行為をオンラインでおこなうことを言いますが、事前におこなうIT重説を含めて「電子契約」と位置づけるケースと、契約行為のみを「電子契約」と位置づけるケースがでてくると思います。
ここではIT重説以降の契約締結について解説をすすめていきます。

契約書の内容に関しては重要事項説明時において、契約書案についても説明をしますので、電子契約時は契約書の真正さを担保したうえで、契約する本人が記名押印するプロセスをオンラインでおこなうことになります。
対面契約では本人確認書類を提示しながらおこなうので、当事者が記名押印していることを確認することが可能です。

しかしながらオンラインでは当事者以外が契約行為をすることも考えられ、なりすましなどの詐欺行為がリスクとしてあります。
契約の成立は当事者による意思表示の合致が要件です。
そのうえで合致を証するために当事者が記名押印します。

電子契約では当事者の記名押印に代わる方法が用いられます。
それが「電子署名」というデジタル技術です。
電子署名が付された契約は当事者がおこなった行為と同様という法的な担保がされるわけです。

電子契約で注意したいポイント

電子契約はこれまでおこなわれてきた対面による書面契約と異なり、注意しなければならないポイントが3つあります。

紙と電子化の違い

不動産の契約については宅地建物取引法第35条と第37条に次の定めがあります。

1. 宅地建物取引士は不動産の契約成立までに、法が定める事項を記載した書面を交付して説明をする(第35条)
2. 宅地建物取引業者は不動産の契約が締結されたときは、法が定める事項を記載した書面を交付する(第37条)
3. 宅地建物取引士は法第35条に定める書面を作成し記名押印する(第35条7項)
4. 宅地建物取引士は法第37条に定める書面に記名押印する(第37条3項)

つまり「重要事項を記載した書面(重要事項説明書)」と「不動産の取引に関する事項を記載した書面(契約書)」を作成し、宅地建物取引士が記名押印することを宅建業法で規定しています。
そのため契約に関しては次のようなプロセスを経ます。

1. 重要事項説明書の作成と印刷、製本および宅地建物取引士の記名押印
2. 重要事項説明書の説明
3. 契約内容を協議し合意をする
4. 契約書の作成と印刷、製本および宅地建物取引士の記名押印
5. 契約当事者の記名・押印
6. 印紙税法にもとづき契約書に印紙を貼付

以上が契約を書面でおこなう場合ですが、電子化になると次のプロセスを省くことができます。

1. 印刷、製本、記名押印
2. 印紙の貼付

また契約内容については契約書案にもとづき協議し、変更もしくは修正などをおこない最終的な契約内容としてまとめていきますが、契約書案をメール送付しオンラインで協議することはすでに実施しているケースも多くみられます。
紙から電子化に移行しても実務において支障がでるようなことは想定できません。
逆に協議過程がすべてデジタルデータとして記録されるため、ミスの少ない契約が可能になります。

注意したいポイントとしては説明を受ける借主や買主が、パソコンやスマホの画面上で書類を閲覧するため、全体把握がむずかしいことがあげられます。
丁寧な説明を心がけることと、場合によっては借主や買主が書類をプリントアウトできる時間的な余裕をもつことも大切です。

メールアドレスの認証

不動産に関わる契約では契約当事者に加え、媒介する宅建業者の介在が一般的です。
そして契約書に記名押印しなければならないのは次の3者になります。

1. 売主または貸主
2. 買主または借主
3. 宅地建物取引士

売買契約では契約当事者が複数いる場合もあり、媒介する宅建業者が複数になるケースは売買でも賃貸でも一般的です。
電子契約ではメールによる連絡が通常であり、重要事項説明時や契約締結時にそれぞれの当事者に対して送付するメールアドレスは、事前に知っておく必要があります。
なおかつ打合せ等においてたびたびメールの送受信をおこなうことにより、本人確認が可能になります。

契約時に初めてメールアドレスを知らされるのは、なりすましに遭遇するリスクもあり危険なことと承知しておきたいものです。
電子契約サービスでは「メール認証」による本人確認をおこなっていますが、当事者が法人の場合は担当外の従業員がメールを受信できるケースもあり、厳密な意味で本人確認ができたとは言い難い面もあります。
契約前のメールのやりとりで確認できているメールアドレスであれば、本人確認を補完する証明ともなります。

本人確認の方法

電子契約は書面契約と異なり契約当事者を目の前にしての契約ではないため、離れたところにいる契約当時者が本人に間違いないのかをアナログで確認することはできません。
また契約手続き(記名・押印)をリアルタイムで確認することもできないので、本人確認が対面以上により確実な方法によらなければなりません。
本人確認のための電子署名には2種類あります。

1つは前述の「メール認証」です。もうひとつがより厳格な方法による「高度電子署名」です。
第三者機関である電子認証局が審査をおこない、本人の身元確認を済ましたうえで電子証明書を発行します。
不動産関係の電子契約サービスには、上記の2とおりの電子署名をおこなうタイプや、メール認証+アクセスコード認証などでおこなうこともあります。
複数の電子契約サービスがすでに運用されており、なかにはサービス運営主体が署名者になる事業者署名型のタイプもあります。
電子契約サービスを選択するさいには、電子署名の方法が自社の考え方に合致するかどうかを確認する必要があるでしょう。

まとめ

電子契約にかかわるトラブルの多くは「音が聞こえない」「電子ファイルが開けない」などの、インターネット接続や操作方法などであり、契約締結に係る根本的な問題が生じていないことは社会実験で確認されています。
本格運用によっても大きなトラブルは予想されず、宅建業法の改正がなされた時点で電子契約は一般化されるでしょう。
電子契約の実績が積み重ねられることにより、新たな知見を得ることもできより使いやすいサービスが生まれることを期待したいものです。

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