不動産大手の現在と新興デベロッパーの登場

リーマンショック後に不動産業界が大きく変わった姿の一端を『新築から中古・リフォームへ住宅産業の潮流が変化』で触れましたが、不動産業界の勢力図にも変化が顕われます。

安定した経営基盤を形成し不動産業のリーディングカンパニーといえる大手不動産会社、そして成長を遂げる新興デベロッパーの台頭がみられるようになるのです。

不動産業界の上位企業

不動産開発などをおこなうデベロッパー・住宅産業を中心にみていきます。

順位は Ullet(ユーレット)のデータにもとづきます。

上場企業約3,700社から上位1,000までにランキングされる企業をピックアップしています。

順位 社名 売上高
33 大和ハウス工業 4.3兆円
60 積水ハウス 2.4兆円
89 三井不動産 1.9兆円
106 大東建託 1.5兆円
119 飯田グループHD 1.4兆円
131 三菱地所 1.3兆円
159 住友不動産 1.0兆円
165 東急不動産HD 9,631億円
190 長谷工コーポレーション 8,460億円
234 野村不動産HD 6,764億円
281 オープンハウス 5,403億円
299 レオパレス21 5,052億円
397 ヒューリック 3,572億円
418 イオンモール 3,241億円
420 東京建物 3,230億円
428 パーク二四 3,174億円
486 日本空港ビルデング 2,736億円
567 プレサンスコーポレーション 2,240億円
592 スターツコーポレーション 2,090億円
637 タマホーム 1,868億円
807 タカラレーベン 1,320億円
850 三栄建築設計 1,210億円
854 ケイアイスター不動産 1,207億円
912 コスモスイニシア 1,105億円
913 フジ住宅 1,104億円
948 三重交通グループHD 1,039億円
978 穴吹興産 996億円
999 シノケングループ 957億円

上記28社の売上合計は約20兆円、日本のGDPは2019年名目で552兆円、3.6%を占めています。

三井不動産、三菱地所、住友不動産、と明治以来の旧財閥系不動産は健在です。

さらに大和ハウス、東急不動産、長谷工、野村不動産といったデベロッパーグループが上位を占めています。

積水ハウスや大東建託そして飯田グループは、住宅に特化したデベロッパーともいえるのです。

新興勢力の代表ともいえるのが全体で281位、不動産部門では11位にランクインしたオープンハウスです。

上位10社+1の概要

上位10社の現状と、11位の新興勢力代表といえるオープンハウスの現状についてみていきます。

1位 大和ハウス工業

戸建住宅からスタートした大和ハウス工業ですが、現在はハウスメーカーというよりデベロッパーとしての地位を確保しています。

2020年3月期は売上総額約4兆5千億円ですが、セグメント別構成比は次のようになります。

・事業施設:25%
・賃貸住宅:22%
・商業施設:17%
・戸建住宅:11%

戸建住宅の占める割合は1割強であり、事業施設・賃貸住宅が5割近くにのぼります。

2位 積水ハウス

大和ハウスと同様、ハウスメーカー黎明期の主役であった積水ハウスですが、セグメント別構成比から窺われるのは、多様な住宅事業展開の姿です。

・不動産フィー:22%
・賃貸住宅:17%
・戸建住宅:16%
・国際事業:16%

不動産フィーの主力は賃貸住宅の一括借上げ事業と賃貸管理事業であり、国際事業は米国、中国、豪州における賃貸住宅開発事業と、ハウスメーカーを脱皮したデベロッパーといえるでしょう。

3位 三井不動産

旧財閥系不動産会社の筆頭が三井不動産です。2020年3月期は1兆9千億円と堂々の総合3位に君臨しています。

セグメント別構成比は以下のように、創業以来のビジネススタイルを継承しているといえるでしょう。

・賃貸事業:33%
・分譲事業:27%
・マネジメント:22%

4位 大東建託

1974年設立の大東建託は、土地活用ビジネスとしてアパートオーナー開発をメインとして事業展開、管理戸数と供給戸数では業界1位を保っています。

・不動産事業:61%
・建設事業:34%

セグメント構成でわかるように、賃貸住宅の一括借上げ事業が大きいのですが、建設事業の利益率が高く利益構成比をみると次のように逆転します。

・建設事業:52%
・不動産事業:38%

5位 飯田グループHD

戸建住宅ビルダー5社による飯田グループ、ハウスメーカーとしてはトップにランクされます。

各社の売上・経常利益を一覧にまとめると以下の通りです。

事業 売上(億円) 構成比 経常利益(億円) 利益率
一建設 3,394 24.21% 213 6.28%
飯田産業 2,031 14.49% 150 7.39%
東栄住宅 1,690 12.05% 108 6.39%
タクトホーム 1,404 10.01% 65 4.63%
アーネストワン 3,003 21.42% 175 5.83%
その他 2,498 17.82% 76 3.04%
合計 14,020 100% 787

6位 三菱地所

丸の内の主、三菱地所ですが丸の内の比率は46%であり、東京および東京以外の都市やアウトレットモールと賃貸事業が5割強、海外事業も1割と多角的な事業展開をおこなっています。

主なセグメントは以下のとおりです。

・ビル事業:43%
・住宅事業:29%
・海外事業:10%
・生活産業不動産:9%

7位 住友不動産

旧財閥系不動産会社の3社目が住友不動産、事業内容としてはシンプルに3本柱になっています。

・賃貸事業:39%
・分譲マンション:32%
・新築そっくりさん・注文住宅:21%

8位 東急不動産HD

田園都市開発からスタートした東急不動産、事業多角化によりデベロッパーとしての地歩を継続してきました。

・都市開発:30%
・不動産管理:19%
・住宅開発:14%
・不動産仲介:13%
・ウェルネス事業:11%
・ハンズ事業:10%

9位 長谷工コーポレーション

マンション開発の総合企業が長谷工コーポレーションです。

マンション建設とサービス関連事業が二本柱となっています。

・建設関連:71%
・サービス関連:28%

10位 野村不動産HD

戸建、マンション、オフィスビル、商業施設、物流施設と幅広く不動産開発をおこなう野村不動産ホールディングス。主要事業は次の3本柱です。

・住宅部門:48%
・都市開発部門:31%
・運営管理部門:13%

11位 オープンハウス

1996年創業、不動産仲介事業からスタートして2013年東証一部上場、急成長した総合不動産企業です。

不動産開発は3つのセグメントを持ちます。

・戸建関連:63%
・収益不動産:20%
・マンション:11%

老舗企業を追いかける新興勢力

11位にランクインしたオープンハウスは、上場時の売上が969億円でしたが、上場後8期目となる2020年9月は5,700億円と予想しています。

引用:オープンハウス「事業領域と成長の理由」

8年間で6倍もの急成長を遂げる企業は、どのような軌跡を歩んだのでしょう?

オープンハウスは「センチュリー21」のフランチャイズに加盟し不動産仲介からスタートしました。

2001年には戸建事業をスタートさせ2008年には分譲マンション事業をスタート、現在は東京23区内でのマンション供給棟数は№1とされています。

2011年からは収益不動産の開発にも着手し、2013年上場の基盤が形成されました。

武器は商品開発力と “攻めの” 営業力、そして一人当たり売上高が2億円ともなる高い生産性です。

営業エリアは首都圏の1都3県と名古屋市・福岡市と限定し、全国ネットで営業網を展開する戦略とは異なり、集中すべきところに経営資源を集中する経営戦略が、短期間での成長を可能にしたのではないかと思われます。

人口減社会に突入する日本において、人口が集中する地域に限定した戦略がみえてきます。

今後は大阪市・神戸市・仙台市・札幌市が進出地域として予想されます。

さらに2017年にスタートしたのがアメリカでの不動産事業です。

オープンハウス以外にも、新興勢力ともいえる企業が上位にランクインしています。

・ケイアイスター不動産(854位、1990年創業)
・シノケングループ(999位、1990年創業)
・三栄建築設計(850位、1993年創業)
・プレサンスコーポレーション(567位、1997年創業)*オープンハウスの持分法適用会社

いずれも、戸建住宅・分譲マンション・投資用不動産と不動産開発事業を展開し、不動産業界・住宅産業においての “世代交代” を印象づける企業といえるでしょう。

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