グリーンポイント制度は今後も続くか?首都圏からの移住政策

令和3年10月31日までの契約に適用される「グリーンポイント制度」が終了し、来年は同じようなポイント制度がおこなわれるのか?まったく別のポイント制度が開始されるのかまだわかりません。

グリーンポイント制度には首都圏からの移住促進を図る、住生活基本計画との連携政策が反映されていました。

ここではグリーンポイント制度の概要をふりかえり、次年度以降も継続すると考えられる住生活基本計画の狙いについて解説します。

10月で終了するグリーンポイント制度

2020年12月15日からの契約を対象とした「グリーンポイント制度」は、2021年10月31日までの契約で終了となります。

高い省エネ性能を有する住宅や省エネ基準に適合する住宅に対し、新築住宅には30万ポイント~100万ポイントが受けられる補助金制度です。

この制度には既存住宅の購入に対してもポイントが付与されるようになっており、次の4つのケースが対象となっていました。

1. 空き家バンク登録住宅の購入に30万ポイント
2. 東京圏から移住するための住宅購入に30万ポイント
3. 災害リスクの高い区域から移住するための住宅購入に30万ポイント
4. 住宅の除却に伴い購入する既存住宅の購入には15万ポイント
(ただし1~3については、住宅の除却を伴う場合は45万ポイント)

注目すべきは「移住目的」そして「空き家問題」についても対象となっているところです。

令和3年の新たな住生活基本計画

2006年(令和18年)に制定された「住生活基本法」にもとづく「住生活基本計画」、これまで平成18年9月、平成21年3月、平成23年3月、平成28年3月と4度の基本計画が策定され、今年(令和3年)3月19日に5回目の計画が閣議決定されました。

このなかで「住生活をめぐる現状と課題」として、6つの課題を取り上げています。

1. 世帯の状況
2. 気候変動問題
3. 住宅ストック
4. 多様な住まい方、新しい住まい方
5. 新技術の活用、DXの進展等
6. 災害と住まい

これらの課題に対応するため3つの視点と8つの目標を設定しています。

グリーンポイント制度は8つの目標のうち

・目標2
・目標3
・目標7

の3つの目標を実現させるうえで効果を期待できる制度でした。

目標2:頻発・激甚化する災害新ステージにおける安全な住宅・住宅地の形成と被災者の住まいの確保

最近の自然災害の大規模化と頻発性に鑑み、災害に強い安全な住宅地の形成は重要な政策となっています。

その実現のため豪雨災害などの危険性が高い地域から、安全な立地に誘導する施策が有効と考えられ、グリーンポイント制度はそのインセンティブを与えるため、災害リスクの高い区域から移住するための住宅購入に30万ポイントを付与しています。

ハザードマップの整備がすすみ、自身が居住するエリアの危険性をみずから確認できるようになっていますが、洪水・内水氾濫・土砂崩れ・津波など自然の猛威から命を守るには、みずからの意識が必要であり場合によっては移住が最善の選択肢ともなるでしょう。

人口減少社会に対応したコンパクトシティ化が、これからの都市形成にとって重要なコンセプトです。

住宅地をできるだけ安全なエリアに集約しようとする施策はごく自然な考え方であり、そのためにわずかとは言え費用面での支援は有用なことと言えます。

目標3:子どもを産み育てやすい住まいの実現

子どもを産み育てやすく良質な住宅の確保のため、良好な環境を得やすく住宅取得費を低く抑えやすい地方都市への移住も有効な方法です。

人口の一極集中をすこしでも緩和し地方都市の活力を取り戻すため、東京圏から周辺都市圏への移住促進を図ることも国の重要な政策です。

グリーンポイント制度では、東京23区内または東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)に居住し、東京23区内に通勤する人が東京圏外に移住する場合に、30万ポイントを付与していました。

茨城県・栃木県・群馬県・長野県・山梨県・静岡県などが移住先として対象になりそうですが、 “一定期間” という表現があるため、多拠点居住であればもっと遠くても可能かもしれません。

目標7:空き家の状況に応じた適切な管理・除却・利活用の一体的推進

空き家の所有者に適切な空き家管理を促すため、管理不全空き家の除却や特定空家に係わる対策強化を図るとともに、空き家バンクの活用や空き家の利活用を促進するよう施策が図られています。

空き家対策はコンパクトシティ施策とも一体となった総合的な整備が必要であり、除却が望ましい空き家に対しては積極的な推進が必要です。

グリーンポイント制度では、住宅の除却に伴う既存住宅の購入には15万ポイントを付与しました。

さらに空き家バンク登録住宅の購入には30万ポイントを付与し、空き家対策とグリーンポイント制度の連携を図っています。

前述した移住に対するポイント付与に対して、住宅の除却を伴う場合は15万ポインが付与されます。

住生活基本計画にもとづいた今後の政策

グリーンポイント制度には住生活基本計画にもとづくコンセプトが反映されていました。

補助金等の制度は年度ごとの予算により実施されます。

令和4年度の予算編成は今後の話になるわけですが、次年度もグリーンポイント制度のように「首都圏からの移住政策」をあと押しする財政的な支援制度が実施されると思われます。

首都圏一極集中の緩和と増加する空き家の利活用、そしてコンパクトシティ化の推進は住宅政策と都市政策に係わる重要なポイントの1つです。

併せて災害危険区域から安全な地域への移転促進は、令和3年の住生活基本計画において加わった重要な目標でした。

継続して政策が実施される財政的措置がとられることになると予想されます。

住生活基本計画」では、8つの目標とは別に「大都市圏における住宅の供給等及び住宅地の供給の促進」を並立する目標として掲げています。

その基本的な考え方としては以下のような課題について言及しています。

・大都市圏における長時間通勤の解消と居住水準の向上、そして密集市街地の改善を図る必要性
・多様な世代のライフスタイルに応じた居住ニーズの変化と、住宅や宅地ストックの流動性を考慮した住宅・住宅地の供給システムの確立
・具体的な施策として「既成市街地内のストックを活用し空き家の有効活用やリフォームを推進」する一方、既に着手している郊外型の新市街地開発については「優良な市街地の形成が見込まれる」もののみに限定して事業を推し進める

以上の施策をあと押しする補助金制度が次年度も見込まれるでしょう。

まとめ

国がおこなう政策は補助金などの財政的な措置により実施されます。

国が策定する住生活基本計画は地方自治体が策定する住宅政策にも反映され、全国でほぼ同様の政策になっていきます。

住宅に係わる事業者にとっては補助金などの制度に対応した事業計画・営業戦略が望ましく、政策を先取りした方針を立てる必要もでてきます。

そのような意味から住生活基本計画に盛り込まれた8つの目標

1. 「新たな日常」やDXの進展等に対応した新しい住まい方の実現
2. 頻発・激甚化する災害新ステージにおける安全な住宅・住宅地の形成と被災者の住まいの確保
3. 子どもを産み育てやすい住まいの実現
4. 多様な世代が支え合い、高齢者等が健康で安心して暮らせるコミュニティの形成とまちづくり
5. 住宅確保要配慮者が安心して暮らせるセーフティネット機能の整備
6. 脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成
7. 空き家の状況に応じた適切な管理・除却・利活用の一体的推進
8. 居住者の利便性や豊かさを向上させる住生活産業の発展

これらの目標に沿った経営方針が望ましいと考えられます。

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