制震・免震技術開発が着手される

昭和56年に改正された建築基準法耐震基準、あわせてこのころ本格的に着手されたのが「制震・免震」といった、新たな耐震性能を高める技術や工法の開発です。

高度経済成長期を全力で駆けてきた日本ですが、経済力や技術力など一定のレベルを超えたころ、余裕がなければ手をつけることのできなかった研究分野にやっと手が回ったという感じがします。

世界で発生するマグニチュード6以上の地震、その約2割が日本付近で発生します。過去30年で私たちが経験した大きな地震、マグニチュード7以上の地震は約50回起きています。地震に対する防災対策に合格点はなく、まだまだつづくことを覚悟しなければなりません。

ここでは「制震・免震」に関わる技術的環境と、当時の不動産業の状況について触れてみます。

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鹿島建設が制震(制振)・免震工法の研究に着手

日本の大手ゼネコン鹿島が制震構造の実用化に着手したのが、1985年(昭和60年)とされています。

しかし古くは1881年(明治14年)、司法省・内務省の建築技師であった河合浩蔵が、工部大学校時代に考案した「地震の際大震動ヲ受ケザル構造」と名付けた、べた基礎の下に方向を直交させた二層の丸太を敷きならべる「免震工法」が発表されていました。

日本は地震国であり免震や制震(制振)への関心は昔から高かったといえます。

日本建築センターは昭和60年に「免震構造」の評定を開始しています。さらにその2年前には国内初の免震ダンパーを設置した建物の審査おこないました。

平成元年には日本建築学会が「免震構造設計指針」を発表し、免震に関する技術が構造設計者に共有化されるようになり、建設会社・設計事務所・自治体建設部局においても研究開発が盛んになるのでした。

そして免制震工法の実用化に拍車がかかったのが、平成7年の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)です。

被害は新耐震基準の建物にも及び、地震力を低減させる免震や制震(制振)のしくみは、官公庁の施設に導入されていくようになりました。

2000年(平成12年)には建築基準法耐震基準の改正があり、兵庫県南部地震の被害状況に鑑み、より耐震性の高い建築物の設計がおこなわれるようになりました。さらに同年10月に「免震建築物及び免震材料に関する技術基準」が設けられ免震工法がより普及するようになります。

免震と制震(制振)の違い

免震とは地震による水平力(横方向に働く力)が建物に伝わるときに、地盤(基礎)と建物本体の間で緩衝作用のある材料や装置によって、水平力を低減させる働きを持つしくみです。

制震(制振)は建物に伝わった水平力を吸収することにより、構造部材にかかる負荷を低減するしくみです。

簡単にいうと、建物に力が伝わる前に効くのが「免震」、建物に力が伝わってから効くのが「制震(制振)」と捉えるとわかりやすいと思います。

どちらも水平力が低減されるので、建物の倒壊とか室内における家具の転倒などを防止することができます。一方直下型地震に特有の縦揺れには、効果が期待できないといわれます。

1993年(平成5年)に竣工した横浜ランドマークタワーには、ハイブリッド方式の制振装置が設置されていました。

一方免震構造による超高層建物としては、2000年(平成12年)に竣工したタワーマンション「パークシティ杉並」が知られています。

しくみの違いから制震(制振)装置は後付けすることが可能で、昭和49年に竣工した「新宿三井ビルディング」には、平成28年に「D3 SKY(ディースカイ)」が設置されています。
参照: 建設・ビル業務をIT・先進技術で革新する - BUILT「超高層ビルに巨大な振り子、鹿島が制震効果を確認」

戸建住宅における免震・制震(制振)工法

免震・制震(制振)工法は前述のように高層建築はもちろんのこと、中低層建築においても導入する動きが活発になります。特に災害時の拠点となる官公庁や拠点病院などに導入され、中高層の集合住宅にも導入される事例もみられるようになります。

そして2000年(平成12年)の建築基準法耐震基準の改正と、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の制定により、戸建住宅でも導入する動きがでてきました。

早い時期に取組まれたのが「免震」でしたが、コストが高いことと阪神淡路大震災からの時の経過により、消費者の免震への意識が薄れていき「制震(制振)」を導入するハウスメーカーが増えていきます。

次に紹介するのは平成25年の『日経クロステック』に掲載された記事です。

“耐震住宅の場合、揺れが繰り返し加わるうちに柱梁の接合部などがもまれ、構造用合板の外周や接合金物に打ち付けたくぎが曲がったり、くぎ穴が広がったりする。その結果、建物が当初の剛性を維持できなくなり、変形が大きくなる。”
引用:日経クロステック「安価な制振工法で普及に弾み」

木造住宅の耐力壁が繰返し大きな地震にあった場合、起こりうる危険性について述べており、制振装置の有効性を知らせる記事といえるでしょう。

経済成熟期と見えなかった狂乱の兆し

免震構造の評定がスタートした昭和60年、来るべき大地震に対する研究開発が本格的に始動したわけですが、同時期に大地震に匹敵する経済的ダメージを与えることになる、社会的な変化がおきていました。

このころ不動産業全体の売上は20兆円前後で推移しています。まもなく “バブル経済” に突入する直前でした。

制震,免震
出典:『日本不動産業史』

昭和48年、昭和54年と2度にわたるオイルショックの影響もあり、昭和60年前後のころ不動産取引は伸び悩んでいました。

高度経済成長の最終ステージであったこのころ、土地の取引は落ち着いており、バブル経済に入っても件数そのものはけっして多くなっていないのは意外なことです。

制震,免震引用:一般財団法人土地総合研究所「データでみる5年間の不動産経済」

不動産の流通は建物のみというケースは稀であり、土地の流通が落ち着いていることは建物の流通も少なかったと考えられます。

制震,免震

引用:一般財団法人土地総合研究所「データでみる5年間の不動産経済」

グラフではマンション供給戸数は落ち着ているというよりも、むしろ下降気味だったこともわかります。どこにもこのあと驚異的な地価の上昇を招く “バブル経済” の兆候はみられません。だれもあの狂乱の時代が到来することを予測した人はいなかったのです。
大地震の予測が不可能であることと同じように。

参考サイト

鹿島建設株式会社「制震構造研究・免震構法研究の歴史」
鹿島建設株式会社「制震・免震技術」
一般社団法人日本免震構造協会「免震建築物に関する法令」
CERA-DESIGN 建築構造設計「免震構造の歴史年表」
田守講義資料「免震構造」
一般社団法人日本免震構造協会「免震構造の安全性:耐震性能と耐風性能」
J-Stage「免震・制振・制震構造建築物と建築基準法」
一般社団法人日本免震構造協会「免震住宅の計画」
一般財団法人土地総合研究所「データでみる5年間の不動産経済」
【参考書籍】
・『日本不動産業史』 発行所:財団法人名古屋大学出版会 編者:橘川武郎・粕谷誠 発行者:金井雄一

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