【自治体に引き取ってほしいだけでは進まない】市道認定が簡単ではない理由と不動産業者の関わり方

【自治体に引き取ってほしいだけでは進まない】市道認定が簡単ではない理由と不動産業者の関わり方

皆さんは不動産実務において、顧客から「私道を自治体に寄付したい」「相続時に、私道の管理責任を引き継がせたくない」といった相談を受けたことはないでしょうか。

しかし、実際に手掛けた経験がなくとも、「無償だからといって、自治体が引き受けてくれるとは限らない」という現場の感覚は持ち合わせていることでしょう。

たとえ位置指定を受けていたとしても、私道である限り、道路の所有権は私人に帰属します。

そのため、その維持・管理責任については、原則として道路敷地の所有権を有する者が担うことになります。

さらに、私有地である私道だからといって、所有者が自由に処分することもできません。

建築基準法上の道路として利用されている私道については、接道義務との関係から重要な役割を担っているため、その変更・廃止によって、当該道路の接する敷地が建築基準法第43条に規定する接道義務等に抵触することとなる場合、特定行政庁がその変更・廃止を禁止または制限することができるからです。

国土交通省も、私道の維持管理は原則として権利者に委ねられているとの見解を示す一方、公益上の観点から、一定の制限が加えられることを示しています。

つまり、私道の所有権を持っているからといって、必ずしも一般の土地と同じように自由に扱えるわけではないのです。

さらに、管理上の負担も伴います。

具体的には、道路の舗装や補修、側溝・排水施設の維持、雑草の処理、陥没や破損への対応などですが、これには相応の労力と費用が必要となります。

かつては、私道所有者が通行や掘削などについて第三者から承諾を求められた際、いわゆる「ハンコ代」などの名目で金銭を受け取るケースも見受けられましたが、近年は私道をめぐる権利関係について法整備が進んでいることに加え、生成AIを利用すれば関連する法令や対応方法について情報収集することも容易になっています。

したがって、従来のように承諾を与えることを前提として私道所有者が収益を得る機会は、少なくとも一部については縮小していると考えられるのです。

このため、私道を所有していることが必ずしもメリットになるとは限らず、むしろ所有者にとって管理が大きな負担となっているケースがあるのです。

そのためでしょうか、筆者のもとには時折、「私道を自治体に寄付するにはどうしたら良いのでしょうか」といった相談が寄せられてきます。

一般の方は、「無償で譲渡するのだから、すぐに市が引き取ってくれるだろう」と安易に考えてしまいがちですが、皆さんならご存じのとおり、この考えは正しくありません。

市区町村が私道の寄付に応じ、その道路を市道として認定・管理することになれば、道路の維持管理に必要な費用や労力を行政が負担することになります。

つまり、行政側から見れば、新たに維持管理すべき公共施設が増加することにほかならないのです。

このような理由だけでも、市区町村が「無償だから」という理由だけで私道を無条件に受け入れることはないと理解できるでしょう。

自治体が公表している基準を見ていくと、幅員、接続状況、道路の構造、境界の確定などはもとより、建築基準法上の道路であることを要件の一つとしている自治体も多く、かつ、その道路に沿って家屋が連たんし、現実に地域の生活道路や通学路として利用されていることなど、公共性を求めている自治体が大半であると分かります。

つまり、建築基準法上の道路ではない私道については、市道として認定・管理することを想定していない自治体が多く、無償であっても引き受けてもらえない可能性が高いと言えるのです。

もっとも、市道の認定基準は全国一律ではありません。

市区町村ごとに認定に求められる要件が細かく決められています。

例えば道路の幅員について、札幌市では原則として道路の幅員が8m以上確保されていることが条件とされています。

ただし、その道路が既成市街地に存在し、地域の人たちに幅広く利用され、かつ拡幅が困難と思われる通り抜け道路である場合に限り、4m以上にまで緩和できるものとされています。

一方、京都市では原則として全線にわたり6m以上であることを求めていますが、公共性を有し、かつ特に市道とする必要があると認められる場合においては幅員が4m以上とすることができ、さらに建築基準法第42条第2項の規定による指定を受けたもの(いわゆる2項道路)については、

一定の条件を満たす場合に限り2.7m以上にまで緩和されています。

市道,認定基準,市区町村

もちろん、幅員以外にも接続状況や道路の構造など細かい要件が設けられています。

そもそも、建築基準法では、建築物の敷地と道路との関係を規律するため、道路について一定の定義を設けていますが、市道はあくまで道路法に基づき市区町村が管理する道路です。

つまり、建築基準法上の道路である、あるいは幅員があるから市が引き取ってくれるといった単純な話ではなく、さらに、建築基準法上の道路であることと、道路法上の市道であることは別の問題であると理解しておく必要があるのです。

市道の認定基準は、必ずしも媒介業者に必須の知識ではありません。

ですが、顧客からの相談に応じたことをキッカケに信頼を得て、それがビジネスチャンスに繋がる場合もあるでしょう。

また、「不動産に関する相談であれば、大半のことには回答できる」との矜持が、不動産取引のプロフェッショナルには必要だとも言えます。

学びから得た知識や経験は、決して無駄とはなりません。

他者に奪われることのない、個人の財産となるからです。

本稿では、市道認定の対象路線と範囲、さらには最低限として求められる道路用地の権利関係、構造上の条件、申請方法について解説します。

建築基準法上の道路と市道は別物である

私たち不動産業者が、正確に理解しておかなければならないものの一つに、「建築基準法上の道路」と「道路法上の道路」は同じものではないという点があります。

「市道に接していれば建築が認められるのだから、同じだろう」と考える方は業界内でも一定数おられるようですが、「建築基準法」と「道路法」はそもそもの目的が異なります。

建築基準法における「道路」は、主として建築物の敷地が道路に適切に接しているかどうかを判断するための道路です。

つまり、建築物の敷地と道路との関係を規律することにより、火災や地震などの災害時に消防車や救急車などの緊急車両がスムーズに通れることや、安全な避難経路の確保といった、いわば防災上の安全確保に加え、衛生的な居住環境の維持を求めているのです。

一方、道路法は、道路網の整備を図るため、路線の指定や認定、管理、構造、保全、費用の負担区分に関する事項を定めたものです。

したがって、その対象は一般交通の用に供される道路であり、道路法第3条で①高速自動車国道、②一般国道、③都道府県道、④市町村道の4つに分類され、それぞれの道路について定義が明確にされています。

建築基準法における道路とは,道路法における道路とは

この違いを正確に理解すれば、「建築基準法上の道路」=「道路法上の道路」ではないことが理解でき、さらには建築基準法上の道路だからといって、市が引き受けてくれるとは限らないことが理解できるでしょう。

特に若手やビギナーは、建築基準法第42条第1項第5号で規定された「位置指定道路」に関し、その説明や表現に留意する必要があります。

そもそも、位置指定を受けていることだけを理由に、その道路が「公道」であると判断することはできません。むしろ、位置指定道路には私道が多く、公道であることとは別問題なのです。

にもかかわらず、営業研修時のロールプレイングにおいて位置指定道路を、「公道ですから再建築も問題なく行えます」と説明するケースが見受けられます。

解説するまでもないでしょうが、この説明は明らかな誤りです。

なぜなら、位置指定道路ではあることは、あくまで建築基準法上の道路であることを示すだけであって、それだけで道路法上の公道であることが保証されるわけではないからです。

また、再建築の可否についても、「公道か私道」かだけで単純に判断できるわけではありません。

建築基準法上の接道義務を満たしているかどうかなどを確認する必要があるからです。

余談となりますが、「公道」との表現は、道路法や民法などの基本法で明確な定義や規定がされた法律用語ではありません。

あくまでも、一般的な行政用語や実務上の言葉として、国や自治体が所有・管理する一般道路を指しているに過ぎないのです。

しかし、「公道」と「私道」を区別して用いる実務慣行がある以上、位置指定を受けているという事実だけをもって「公道」と表現するのは適切ではありません。

位置指定道路であることと、公道であることは別問題だからです。

この点を曖昧にしたまま顧客へ説明すると、道路種別だけではなく、再建築の可否についても誤った認識を与える結果となりかねません。

不動産取引において道路を説明する際には、「道路法上の道路なのか、建築基準法上の道路なのか」「誰が所有し、管理をしているのか」を分けて確認することが重要なのです。

相談に応じる際の留意点と報酬

私道を自治体に引き取ってもらいたいという相談を受けた場合、不動産業者としてまず注意したいのが、一般的な制度説明と、個別具体的な法律問題を混同しない姿勢です。

市区町村ごとに異なる市道認定の基準や一般的な流れを正確に把握したうえで説明すること自体は問題ありません。

しかし、相談者の具体的な権利関係について報酬を得る目的で法的な判断や助言を行う、あるいは本人に代わって法的な交渉や手続きを行った場合などにおいては、弁護士法第72条との関係で、「非弁行為」に該当する可能性があります。

例えば、「市道認定にはどのような条件が求められるか」「どこの部署に相談すればよいのか」といった説明であれば、不動産業者が有する知識の提供にあたるため、そのことだけで直ちに非弁行為となるものではありません。

一方で、「共有者の同意がなくても、市に寄付できる方法がある」といった、個別具体的な法律関係について断定し、解決方法まで示すことは避けるべきです。

ましてや、「市道認定に関するコンサルティング料」などの名目で報酬を受け取り、個別具体的な法律問題について継続的に助言する行為は慎む必要があります。

とはいえ、相談に応じて助言する程度であればそれほど労力を必要とはしないものの、現地踏査や資料収集、申請準備の補助などを行えば、少なからぬ実働を伴います。

非弁行為に抵触することを恐れ、無償サービスとしてしまう方が、むしろ不自然だとさえ言えるのです。

そのため筆者は、「市道認定を成功させたことに対する報酬」ではなく、「不動産コンサルティング業務」として業務範囲と報酬を明確にする方法をお勧めします。

ご存じかとは思いますが、国土交通省も宅建業者に対して、媒介業務にとどまらない役割の発揮を期待しています。

そのため、媒介業務との区分を明確にしたうえで、業務内容・報酬額等を明らかにした書面(コンサルティング業務委託契約書等)に基づいて、媒介報酬とは別にコンサルティング報酬を受けることは可能と整理しています。

宅建業者,媒介以外の関連業務

ただし、国土交通省は宅地建物取引業法第34条の2関係を整理しただけであって、「業務委託契約書を締結すれば、どのような業務についても自由に報酬を受け取れる」と示唆しているわけではありません。

そもそも、業務委託契約書は「錦の御旗」ではないのです。

私たち不動産業者は、業務の実態が法律事務に該当することがないようにコンサルティング業務の具体的な内容と報酬を、明確にしておく必要があるのです。

例えば、次のような内容です。

  1. 自治体の認定基準調査(2万円から)
  2. 資料収集及び作成・整理(1.5万円から。ただし、取得に要する実費は別途請求とする)
  3. 現地踏査(3万円から)
  4. 認定基準との照合(2万円から)
  5. 「市道認定の可能性」に関する報告書(3万円から)
  6. 自治体担当部署への事前相談同行(1万円/時間)
  7. 追加調査の補助・事項整理(2万円から)

なお、上記で記載した報酬額はあくまで一例であり、実際の報酬額は案件の内容や難易度、必要となる調査・資料収集の量などを踏まえて設定し、かつ個別に見積書を作成する配慮が不可欠です。

ここで重要なのが、「市道に認定されること」を成果報酬とはしないことです。

そのため、業務委託契約書には「本業務は、市道認定の可能性を調査し、必要な情報を整理するとともに、自治体への相談・申請準備を支援するに過ぎず、市道認定やその他行政上の処分・判断を保証するものではない」との条項を入れておくと良いでしょう。

さらに、各項目ごとに調査費用を事前に提示し、納得を得たうえで報酬を支払ってもらう姿勢が肝要です。

ただし、申請の代理や、私道共有者との権利関係交渉などの分野には、安易に踏み込むべきではありません。これらについて個別具体的な法律事務を取り扱う場合には、弁護士法等との関係を慎重に検討する必要があるためです。

したがって、実際に有償業務として提供する場合には、業務委託契約書に「業務内容・報酬・実費精算・成果物・行政判断を保証しないこと・法律事務は受任しないこと」を確実に明記しておく必要があるのです。

具体的な手続きの流れ

それでは、実際に相談を受けた場合、私たち不動産業者はどのように対応すればよいのでしょうか。

① 自治体の市道認定基準を確認する

最初に行うべきなのが、私道が所在する市町村の認定基準を確認することです。

先述したように、市道の認定基準は全国一律ではありません。

幅員、道路の構造、接続状況など自治体によって求められる条件が異なります。

そのため、一般論を根拠に市道認定の可否について断定的な助言をする行為は、避ける必要があります。

自治体のホームページなどで認定基準を確認し、不明な点がある場合には道路担当部署へ確認するなど、正確な情報の取得に努める必要があります。

② 現状確認と書類収集

認定基準を確認したうえで、当該私道が市道認定の基準を満たしている可能性があるかを現地で確認します。

なお、現地確認に先立って、少なくとも、付近見取図、実測求積平面図、地積測量図、登記事項証明書(写)は取得しておいた方がよいでしょう。

さらに、担当部署へ相談する際に必要となる可能性が高いため、現地踏査の結果に基づく「道路附属物及び占有物件表示図」を作成しておくことをお勧めします。

ただし、申請に必要な図面や様式は自治体によって異なるため、その点についても事前に確認しておく必要があります。

また、事前調査及び現地確認においては、最低限、次の点を正確に把握する必要があります。

事前調査および現地確認で把握すべき8つのポイント

実務においては、認定基準の確認と書類収集、現地踏査を行えば、市道に認定される可能性があるか否かはある程度推測できます。

しかし、最終的に市道として認定するかどうかを判断するのは、あくまで市町村です。

不動産業者としては、自治体に相談するための資料を整理するという位置付けで対応する必要があるのです。

もっとも、相談が徒労に終わる可能性が高いのであれば、「認定基準を満たしていないため、実現は難しい可能性が高い」旨の助言を与えることは差し支えありません。

ただし、この場合も「認定されない」と断定するのではなく、あくまでも認定基準と調査結果に基づく現時点の見通しとして説明する姿勢が大切です。

③ 担当部署への相談

必要な資料を整理し終えたら、私道が所在する市区町村の担当部署へ相談します。

担当部署の名称は自治体によって土木部維持管理課、用地管理課、都市整備課など様々ですが、総合窓口で「市道認定の担当部署」がどこか聞けば案内してもらえます。

先述した資料を持参して担当部署に相談すれば、認定基準への適合状況を確認したうえで、現地調査や測量、権利関係の調査など次の段階に進む可能性があるかどうか、さらには認定が困難であるなど今後の手続きに関する見通しについて助言をしてくれます。

端的に表現すれば、担当部署への事前相談で、市道認定の可能性についてある程度の目安がつくのです。

ただし、この段階で市道認定が決定されるわけではありません。

あくまでも自治体が定める基準に照らし、今後の手続きを進めることが可能かどうかを確認するための作業だからです。

④ 自治体の指示に従って正式な手続きを進める

事前相談の結果、認定の可能性があると判断された場合には、担当者から案内された必要書類や手続き方法を確認したうえで、正式な申請・寄付手続きを進めることになります。

申請時には、先述した書類に加え、市道路線認定申請書、寄付書、登記原因証明情報兼登記承諾書、印鑑証明書などが必要となるのが一般的ではあるものの、市町村によって異なる場合があるため担当部署への確認が必須です。

申請後は、市町村が認定の適否を判断するため、現地や権利関係を調査し、さらには関係部署との協議を行います。それらの過程で解消すべき問題点(支障物件の撤去や土地の追加寄付など)が判明した場合には、自治体から個別に条件を示される場合があります。

市道認定が困難となる理由としては、幅員が基準を満たしていない、起終点が公道に接続していない、権利関係に問題がある、無償寄付に共有者全員の同意が得られないなど様々ですが、特に、境界が不明瞭、道路敷地が共有、抵当権などの権利が設定されている場合には留意が必要です。

権利関係について具体的な法的判断が必要となった場合には、不動産業者だけで判断はせず、弁護士や司法書士、土地家屋調査士など、問題に応じた専門家へ相談する姿勢が必要です。

境界が不明瞭な場合などにおいては、必要に応じて市町村が道路用地とそれに接する土地(宅地)の境界や面積等について調査・測量を行う場合があります。

ただし、境界確定や測量の方法、誰がこれを実施するのか、隣接土地所有者の承諾をどの段階で求めるかについては、自治体によって取扱いが異なるため、あらかじめ担当部署に確認する必要があります。

また、測量の結果、道路用地に接する土地の所有者から境界確定等について承諾を得る必要が生じる場合もあり、この同意が得られなければ手続きに影響する可能性があります。

そのため、案件によっては、事前に関係者との調整を行っておくことが重要となります。

このように、必要な調査や関係者との調整、書類の整備等が完了すれば、自治体内部で認定に必要な手続きが進められることになります。

市道認定の手続きでは、土地の所有権を自治体へ移転することが前提となる一方、所有権移転、道路の路線認定などは、法律上別の手続きとして扱われます。

そのため、自治体によっては土地の寄付・所有権移転の書類を提出してもらったうえで、市道認定について議会の議決を経るなど、複数の手続きを順次進めることになります。

例えば、筆者の暮らす札幌市では、「事前相談→測量前調査→適否の検討及び申請者への回答→申請書の提出(登記申請書類含む)→測量実施→権原の取得→議案提出及び議決→路線名・道路区域・供用開始時期の決定→告示→供用開始」という流れです。

もっとも、議会における付議の要否や、所有権移転登記、道路区域の決定、供用開始などの具体的な手続きや順序は自治体によって異なるため、「適判定を受けた」あるいは「議決された」からといって、手続が完了したと考えてはなりません。

あくまでも、自治体から案内された手続きに従うことで、当該私道を市道として引き受けてもらうための手続きを進め、必要な手続きがすべて完了し、自治体による道路の管理・供用開始等が行われた段階で、始めて市道としての取扱いが開始されることになるからです。

不動産業者が、どこまで関与すべきか

これまでの解説をお読みいただければ分かるとおり、「私道を自治体に引き取ってもらいたい」という相談に対して回答するためには、当該私道が存在する市町村の市道認定の基準を確認するだけでは足りず、道路の現況、利害関係者の有無、境界、抵当権などの権利関係、道路の構造や接続状況などさまざまな事項を確認する必要があります。

さらに、実務としては自治体への事前相談を経たうえで、必要な書類を整え、測量や境界確認、所有権移転などの手続きを進めていく必要があります。

したがって、市道として引き取ってもらえるかどうかについて、認定される可能性も含め、安易に回答することはできないのです。

筆者の経験から申し上げれば、相談者の多くは市町村の認定基準に目を通していました。

しかし、自身が所有する私道が認定基準を満たしているのか、さらには申請して認定される可能性がどれくらいあるのかが判断できないため、相談をしてきたのです。

こうした相談に対して私たち不動産業者は、「市道認定については、自治体に確認されたほうが良いでしょう」と回答するのが、法律上の問題に踏み込まないという観点に基づけば、ある意味では正解なのかもしれません。

しかし、不動産に関する専門知識を有する事業者として正しい回答であるのかどうかについては、疑問が残ります。

なぜなら、市道認定がもたらす「不動産評価」と「管理コストからの解放」というメリットを深く理解したうえで回答しなければ、顧客にとって真に最適なアドバイスであるとは言えないからです。

不動産評価の側面から見れば、私道であっても建築基準法上の道路と見なされていれば接道要件を満たし、法令による一定の制限が課される可能性はあるものの、建築が可能です。そのため、公道に面している不動産に近い評価が得られる可能性はあるでしょう。

しかし、先述したように道路法上の道路と建築基準法上の道路は、その位置づけや管理の仕組みが異なります。一概に、「私道だから価値が低い」「市道になれば評価が必ず上がる」とは言い切れないのも事実です。

しかし、少なくとも市道認定を受けることで、私道所有者はそれまで負担していた道路の維持管理に関する負担から、解放されることに期待できます。

現況として道路に供され、さらに地目が公衆用道路であれば地方税法第348条第2項第5号の規定に基づき固定資産税は非課税とされます。

ですが、固定資産税が非課税であることと、道路の維持管理や事故等に関する責任を負うことは別問題です。

例えば、民法第717条(工作物責任)に基づき、道路の陥没や段差などが原因で第三者が怪我をした場合などについては、損害賠償責任の問題に発展する可能性があります。

私道である以上、その所有者等が道路の維持管理について一定の負担を負う場合があることを、見落としてはならないのです。

だからこそ、相談を受けた不動産業者が一般の方では理解をしにくい自治体の市道認定基準を確認し、さらには測量図などの資料を整理し、現地の状況を確認したうえで、相談者に分かりやすく説明することに意味があるのです。

もちろん、最終的に市道として認定するかどうかを判断するのは自治体です。

さらに、共有者間の権利関係や境界問題、抵当権などについて個別具体的な法律上の問題が生じれば、弁護士、司法書士、土地家屋調査士などの専門家に相談する必要があるでしょう。

ですが、相談の窓口となり、相談者が置かれている状況を整理し、自治体への相談に必要な情報や資料を整える役割は、不動産取引の専門家である私たちの得意分野です。

「現在の私道はどのような状態なのか」

「市道認定の基準に照らして何が不足しているのか」

「不足を解消するためにはどのような方法が考えられるか」

これらを一つずつ整理したうえで、顧客に対して適切なアドバイスを与え、必要に応じてサポートする。

これこそが相談者にとって有益な行動であり、不動産業者としての専門性を存分に発揮する機会となるのではないでしょうか。

まとめ

私道の寄付や市道認定は、一般の消費者にとっては手続き上の負担が大きく、何から手を付けてよいのか、自治体にどのように相談を持ちかければ良いのかすら迷うことが多いテーマです。

媒介業者にとって、本稿で解説した市道認定に関する知見は、すべての業者にとって必須といえる知識ではありません。

ですが、顧客が抱える悩みやリスクを正しく汲み取り、客観的な整理と助言を行う能力は、競合他社との差別化要素となり得ます。

とはいえ、法律上の判断や手続きの代行まで抱え込む必要はありません。

むしろ、それらを手掛けること自体がリスクになりかねないからです。

あくまでも、顧客が置かれている現状と課題を整理したうえで、必要に応じて専門家や行政との橋渡しを行う。

いわば、「ハブ」としての役割を果たすことこそが、顧客の信頼を獲得すると同時に、不動産のプロフェッショナルとして専門性を発揮する重要な役割となるのではないでしょうか。

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監修者情報

H.L.C不動産コンサルティング 奥林洋樹
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