手付金等の保全措置における「指定保管機関」とは?手付金等寄託契約の仕組みと条件

宅地建物取引業者(つまり自らが売主となる不動産会社のこと)が物件を販売する際、買主から受け取る手付金を守るための「手付金等の保全措置」というルールがあります。
この保全措置の方法として「指定保管機関」という言葉が登場しますが、「銀行や保険会社とどう違うの?」「寄託契約や質権設定などの言葉が難しくてよくわからない」と悩む新人営業マンも多いのではないでしょうか。
この記事では、宅建業法(つまり不動産取引のルールを定めた法律のこと)における指定保管機関の役割や、手付金等寄託契約の仕組みについて、法律の知識がない初心者でもスッと理解できるように、日常の出来事に例えながらわかりやすく解説します。
結論:指定保管機関とは、買主の大切な手付金を不動産会社の代わりに安全に預かってくれる「公的な金庫番」のこと!
結論から言いますと、指定保管機関を利用した保全措置とは、駅の「コインロッカー」のようなものです。
買主が支払う大切なお金を、売主である不動産会社の財布に直接入れるのではなく、第三者である国から指定された安全な金庫(指定保管機関)に預けておき、物件が確実に引き渡されるまで保管してもらう仕組みです。
万が一、不動産会社が倒産して物件が引き渡されなくなっても、金庫の中にあるお金は買主の手元にそのまま戻ってくるため、非常に安全な取引が可能になります。
そもそもなぜ必要?手付金等の保全措置とは
不動産取引では、契約時に手付金等(つまり契約の証として代金の一部を先払いするお金のこと)が支払われます。
しかし、物件が引き渡される前に売主である不動産会社が倒産してしまった場合、買主は物件を手に入れられないばかりか、支払った手付金も返ってこないという最悪の事態に陥ります。
これを防ぐため、宅建業法では不動産会社に対し、手付金等を安全に守る(保全する)措置を講じることを義務付けています。
「完成物件」における保全措置の3つの方法(保証・保険・保管)
宅地や建物の工事がすでに完了している「完成物件」の売買においては、以下の3つの保全措置のうちいずれかを講じなければなりません。
今回のテーマである「指定保管機関(つまり国土交通大臣から指定された手付金等を預かる専門機関のこと)」による保管措置は、完成物件を売買する際にのみ認められている選択肢です。
注意!「未完成物件」では保管措置が使えない
ここで実務上の非常に重要な注意点があります。
工事が完了していない「未完成物件」の売買においては、保全措置として「指定保管機関による保管」を選ぶことはできません。
未完成物件の場合は「銀行等の連帯保証」か「保険事業者の保証保険」の2つしか認められておらず、もし未完成物件で指定保管機関に預けてしまった場合は宅建業法違反となってしまうため、絶対に間違えないようにしましょう。
指定保管機関を使った保全措置の仕組み
指定保管機関による保全措置を行うためには、単にお金を預けるだけでなく、法律で定められた「2つの契約」をセットで結ぶ必要があります。
1. 手付金等寄託契約(不動産会社ではなく金庫番に預ける約束)
1つ目は、不動産会社と指定保管機関との間で結ぶ「手付金等寄託契約(つまり手付金を指定保管機関に預けて保管してもらう約束のこと)」です。
これは「買主から受け取るお金を、不動産会社に代わって指定保管機関が受け取り、保管しますよ」という契約です。
2. 質権設定契約(買主が確実にお金を取り返すための約束)
2つ目は、買主と不動産会社との間で結ぶ「質権設定契約(つまり万が一の時に預けたお金を優先的に返してもらうための担保の約束のこと)」です。
コインロッカーに荷物を入れたら、鍵(質権)は荷物の持ち主である買主が持っておかなければ安心できませんよね。
不動産会社が倒産した際に、指定保管機関に預けてあるお金を買主が真っ先に取り戻せるようにするための法的な権利の縛りが、この質権設定契約です。
この契約による質権の設定は、民法に基づく確定日付のある証書(つまり後から作成日をごまかせないように公的に証明された書類のこと)をもって、指定保管機関に通知しなければなりません。
お金は買主から指定保管機関へ「直接」振り込む
国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」によれば、これら2つの契約を結んだ後、手付金等の金銭は、買主から不動産会社へ支払うのではなく、買主から指定保管機関に対して「直接」支払われることとされています。
不動産会社の口座を一度も経由しないことで、より確実にお金が守られる仕組みになっています。
手付金等寄託契約を結ぶための必須条件
手付金等寄託契約や質権設定契約を結ぶ際には、以下の要件を満たしていなければなりません。
保管される金額は「受領する手付金等と同額」であること
指定保管機関に保管される金額は、宅地建物取引業者が受領しようとする手付金等の額と「同額(全額)」でなければなりません。
手付金の一部だけを預けたり、残りを会社の運転資金に回したりすることは許されません。
もし不動産会社がすでに手付金等を受け取ってしまっている場合は、買主が手付金等を支払う前に、不動産会社が自らその金額を指定保管機関に交付(預け入れ)しなければなりません。
保管期間は「物件の引き渡しまで」であること
お金を保管する期間は、少なくとも「指定保管機関がお金を受領した時」から「物件の引き渡し」まででなければなりません。
引き渡しの前に途中で保管をやめてお金を引き出すことはできません。
物件が無事に買主の手に渡って初めて、指定保管機関から不動産会社へお金が支払われることになります。
指定保管機関のルールが存在するメリット・デメリット
指定保管機関による保全措置が存在することには、次のような意味があります。
メリット
買主にとっては、支払った大切なお金が倒産リスクのない第三者の金庫(指定保管機関)で確実に守られるため、安心してマイホームを購入できるという大きな得があります。
不動産会社にとっても、自社の経営状況に関わらずお客様に高い安全性と信頼をアピールすることができます。
デメリット
不動産会社にとっては、物件を引き渡すまでの間、手付金等を自社の運転資金として使うことができなくなります。
また、手付金等寄託契約や確定日付のある質権設定契約など、通常の取引よりも専門的な書類の手続きや事務作業の手間が増えることになります。
まとめ
手付金等の保全措置における「指定保管機関」の役割と仕組みについて解説しました。重要なポイントを箇条書きで振り返りましょう。
手付金等は、お客様が長年貯めた大切なお金です。不動産業に従事する皆様は、万が一の事態からお客様の財産を守るこの保全措置の仕組みを正しく理解し、適正な手続きで安心・安全な不動産取引を実現しましょう。
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