保証協会の「弁済業務保証金準備金」の仕組みと、業者が納付する「特別弁済業務保証金分担金」

保証協会の「弁済業務保証金準備金」の仕組みと、業者が納付する「特別弁済業務保証金分担金」

宅地建物取引業者(つまり自らが売買などの取引を行う不動産会社のこと)の多くは、営業保証金の供託という高額な負担を免除されるために、宅地建物取引業保証協会(つまり不動産会社が加入する公式な業界団体のこと)に加入しています。

しかし、その保証協会の中で管理されている「弁済業務保証金準備金」や、いざという時に請求される「特別弁済業務保証金分担金」の仕組みを正確に理解している方は少ないのではないでしょうか。

この記事では、宅建業法(つまり不動産取引のルールを定めた法律のこと)における保証協会の連帯責任の仕組みについて、法律の知識がない初心者でもスッと理解できるように、日常の出来事に例えながらわかりやすく解説します。

結論:「弁済業務保証金準備金」は連帯責任の貯金箱、「特別弁済業務保証金分担金」は貯金が足りない時の追加カンパ!

結論から言いますと、「弁済業務保証金準備金」とは、トラブルを起こした不動産会社が逃げてしまった場合に備えて、保証協会が普段からコツコツ貯めている「予備の貯金箱」のことです。

そして「特別弁済業務保証金分担金」とは、もしその貯金箱のお金だけでは足りなくなってしまった時に、保証協会に加入している他のすべての不動産会社に対して「連帯責任で追加のカンパをお願いします」と請求されるお金のことです。

そもそもなぜ必要?トラブル時の「還付」のおさらい

宅地建物取引業保証協会の主な役割のひとつに、お客様の保護があります。

もし、保証協会に加入している不動産会社が倒産したり、お客様にお金を返さずに逃げてしまったりした場合、お客様はその取引によって生じた損害分について、保証協会が国に預けているお金から支払いを受けることができます。

これを還付(つまりお客様が被った損害分のお金を保証協会から代わりに支払ってもらうこと)と呼びます。

お客様に還付が行われた後、保証協会はトラブルを起こした不動産会社に対して、「あなたの代わりにお客様に支払ったから、その分のお金を保証協会に返しなさい」と請求します。

この請求されるお金を還付充当金(つまり保証協会がお客様に立て替え払いしたお金を、トラブルを起こした不動産会社が保証協会に返すお金のこと)と呼びます。

トラブルを起こした本人が素直にこの還付充当金を全額支払ってくれれば何も問題はありません。

しかし、すでに倒産して夜逃げしてしまった後など、還付充当金が回収できないケースが発生します。

この「回収不能」という最悪の事態に備えるために作られたのが、今回のテーマである「準備金」と「特別分担金」の仕組みなのです。

万が一の立て替え資金「弁済業務保証金準備金」の仕組み

宅建業法第64条の12第1項では、保証協会は、還付充当金の納付がなかった場合の供託に充てるため、弁済業務保証金準備金を積み立てなければならないと定められています。

還付充当金が未納になったときの「予備の財布」

もし、トラブルを起こした不動産会社が還付充当金を支払えずに倒産してしまった場合、保証協会は国に預けているお金が減ったままになってしまいます。

そのまま放置することは法律で許されないため、保証協会は自分たちの手持ちの資金から、減った分のお金を国に補充しなければなりません。

その補充のために使う「予備の財布」が、弁済業務保証金準備金です。

準備金の財源は保証金の「利息や配当金」

では、この予備の財布である準備金は、どこから湧いてくるのでしょうか。

宅建業法第64条の12第2項によれば、保証協会が国(供託所)に預けている巨大な額の弁済業務保証金から生ずる「利息」や「配当金」を、この弁済業務保証金準備金に繰り入れなければならないとされています。

つまり、加入している全業者から集めたお金を運用して得られた利息などを、コツコツと「トラブル発生時の連帯責任用の貯金」として積み立てているのです。

貯金が底をついた時のルール「特別弁済業務保証金分担金」

利息で作った予備の貯金箱(弁済業務保証金準備金)のお金でカバーしきれれば良いのですが、超大型の倒産事件などが起きて、何千万円という還付が発生した場合、予備の貯金箱が空っぽになってしまうことがあります。

準備金で足りない分を社員全員で「割り勘」する

宅建業法第64条の12第3項では、弁済業務保証金準備金を充ててもなお不足するときは、その不足額に充てるため、社員(つまり保証協会に加入している他のすべての不動産会社のこと)に対し、「特別弁済業務保証金分担金」を納付すべきことを通知しなければならないと規定されています。

これは、町内会の修繕積立金(準備金)が底をついたので、町内会の住民全員に「特別カンパ(特別分担金)」をお願いするようなものです。

このときのカンパの額は、各業者が入会時に支払った弁済業務保証金分担金(つまり保証協会に加入する際に不動産会社が支払う初期費用のこと)の額に応じて、公平な割合で計算されます。

通知から「1ヶ月以内」に納付しないと社員の地位を失う

「他社が起こしたトラブルの尻拭いなんてしたくない」と支払いを無視することはできません。

宅建業法第64条の12第4項および第5項の規定により、通知を受けた社員は、その通知を受けた日から「1ヶ月以内」に、指定された額の特別弁済業務保証金分担金を納付しなければなりません。

もし、この1ヶ月の期限内に納付しなかった場合、その不動産会社は「保証協会の社員としての地位を失う」という非常に重いペナルティを受けます。

保証協会の社員でなくなると、営業保証金として高額な現金を自腹で国に預け直さなければならず、それができなければ事業の継続ができなくなります。

後から回収できた場合の処理と、貯まりすぎた場合のルール

連帯責任で特別カンパを集めた後、もし奇跡的にトラブルを起こした張本人からお金が回収できた場合はどうなるのでしょうか。

立て替えたお金が回収できたら準備金へ戻す

宅建業法第64条の12第6項では、弁済業務保証金準備金を供託に充てた後において、後から還付充当金の納付を受けた(つまり逃げていた業者からお金を回収できた)ときは、その回収したお金を「弁済業務保証金準備金」に繰り入れなければならないとされています。

社員に直接返金されるわけではなく、再び「予備の貯金箱」に戻して、将来のトラブルに備えることになります。

なお、長年トラブルが少なく、弁済業務保証金準備金の額が国土交通省令で定める上限額を超えた場合は、国土交通大臣の承認を受けて、超過した分を取り崩し、宅地建物取引業の健全な発達に寄与する事業などの費用に充てることができるというルールもあります。

準備金と特別分担金のルールが存在するメリット・デメリット

このような連帯責任のルールが存在することには、次のような意味があります。

メリット

お客様にとっては、トラブルを起こした不動産会社が夜逃げしてしまっても、業界全体の連帯責任による資金(準備金や特別分担金)で確実にお金を返してもらえるため、安心して不動産取引ができるという絶大な得があります。

業界全体としても、「消費者保護」という高い信頼性を世間にアピールすることができます。

デメリット

真面目にルールを守って営業している不動産会社にとっては、自分たちとは全く無関係の他社が起こした不祥事のせいで、突然「特別弁済業務保証金分担金」という予期せぬ出費(カンパ)を請求されるリスクを抱えることになります。

期限内に支払えなければ保証協会をクビになるという理不尽なプレッシャーを背負うことになります。

まとめ

保証協会の「弁済業務保証金準備金」と「特別弁済業務保証金分担金」について解説しました。

重要なポイントを箇条書きで振り返りましょう。

  • 弁済業務保証金準備金は、他社の還付金未納に備えるための「予備の貯金箱」である。
  • 準備金の財源は、国に預けている保証金の「利息や配当金」から作られる。
  • 準備金が底をついた場合、全社員の連帯責任で「特別弁済業務保証金分担金」が請求される。
  • 特別分担金は、通知を受けてから「1ヶ月以内」に納付する義務がある。
  • 期限内に支払わなかった場合、保証協会の社員の地位を失い、事業継続の危機に陥る。
  • 後から未納分が回収できた場合は、再び準備金(貯金箱)に戻される。

保証協会に加入するということは、初期費用が安く済むというメリットの裏に、「業界全体で連帯してお客様を守る」という重い責任を背負うことでもあります。

不動産業に従事する皆様は、この相互扶助と連帯責任の仕組みを正しく理解し、自社がトラブルの原因となって仲間に迷惑をかけないよう、日頃から誠実で安全な取引を徹底しましょう。

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免責事項

本記事は、「宅地建物取引業法」および国土交通省の「解釈・運用の考え方」の概要を、実務に携わる方向けに分かりやすく要約・解説したものです。正確な情報提供に努めておりますが、法令の厳密な定義や例外規定をすべて網羅しているわけではありません。最終的な法解釈や、お客様との個別具体的な取引における適法性のご判断につきましては、ご自身の責任において法令の原文を直接ご確認いただくか、行政機関・弁護士等の専門家へご相談いただきますようお願いいたします。

監修者情報

ミカタ株式会社 代表取締役 荒川 竜介
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