【宅建業法】「長期の空き家等」の貸借における仲介手数料(報酬)の特例ルールを解説

【宅建業法】「長期の空き家等」の貸借における仲介手数料(報酬)の特例ルールを解説

日本全国で増え続ける空き家問題。不動産会社にとって、長期間放置された古い空き家や土地を賃貸物件として市場に出すのは、現地の調査や所有者との調整に多大な手間がかかります。

しかし、家賃設定が安い物件だと、宅建業法(つまり不動産業界のルールブックということ)で定められた仲介手数料も安くなり、不動産会社としては経費倒れになってしまうというジレンマがありました。

そこで、国土交通省のガイドラインにより「長期の空き家等」の貸借に関する報酬の特例が設けられました。

本記事では、この特例ルールの対象物件や計算方法について、初心者にもわかりやすく噛み砕いて徹底解説します。

結論から言うと?「長期の空き家等」の貸借特例のキホン

結論として、長期間放置された空き家等を賃貸に出す仲介をする際、事前に貸主の承諾を得ることで、調査などにかかる実費を上乗せして「貸主側からのみ」通常の最大2倍(家賃の2.2ヶ月分以内)までの仲介手数料を受け取ることができるという特例ルールです。

これは、引っ越し業者の料金システムに例えるとわかりやすいでしょう。

通常の引っ越し料金は距離や荷物の量で一律に決まりますが、エレベーターがない5階の部屋や、道が狭くてトラックが入れない山奥の家の場合、「特別作業料金」として追加費用が請求されます。これと同じように、現地の調査や権利関係の確認に特別な手間と時間がかかる「長期の空き家」を扱うなら、不動産会社も正当な追加の手間賃をもらってよい、というのがこの特例ルールの本質です。

そもそも「長期の空き家等」とはどんな物件か?

特例の対象となる物件の具体例

特例の対象となる「長期の空家等」とは、宅地建物取引業者(つまり不動産会社ということ)が貸主である依頼者から媒介の依頼を受ける時点において、以下のいずれかに該当する宅地や建物のことを指します。

  • 現に長期間にわたって居住の用、事業の用その他の用途に供されていないこと
  • 将来にわたり居住の用、事業の用その他の用途に供される見込みがないこと

具体的には、少なくとも1年を超えるような長期間にわたり住む人が不在となっている戸建ての空き家や、分譲マンションの空き室が該当します。

また、相続したばかりで利用されなくなった直後の戸建てなど、今後も所有者等による利用が見込まれないものも対象となります

普通の賃貸アパートの空室は対象外なので注意

ここで注意が必要なのは、入居者を募集している一般的な賃貸集合住宅(アパートやマンション)の空き室です。

これらはすでに事業の用に供されているものと解釈されるため、たとえ長期間空室が続いていたとしても「長期の空家等」には該当せず、この特例を利用することはできません。

貸借の媒介(仲介)における特例ルールと計算方法

上限は合計で「家賃の2.2ヶ月分以内」にアップ

通常の貸借の媒介(つまりお客さまの間に立って契約をまとめる仲介のこと)では、不動産会社が受け取れる報酬の合計額は、原則として借賃(つまり家賃のこと)の1.1ヶ月分以内と定められています。

しかし、長期の空き家等の特例を利用した場合、当該媒介に要する費用を勘案して、依頼者の双方(貸主と借主)から受け取る報酬の合計額を「家賃の2.2ヶ月分以内」まで引き上げることができます。

増額できるのは「貸主(大家さん)」からの報酬のみ

この特例の最大のポイントは、「借主(お客さま)」から受け取る報酬額は通常の上限のままでなければならないという点です。

居住用の建物の貸借であれば、借主から受け取れるのは原則として家賃の0.55ヶ月分以内(依頼時の承諾があれば最大1.1ヶ月分以内)に制限されます。

つまり、上限が2.2ヶ月分に広がった枠を使って通常より多く報酬を受け取れるのは、長期の空き家等の貸主である依頼者から受け取る場合に限られます。

対象者受け取れる報酬の上限(特例利用時)
貸主(大家さん)から通常の上限を超えて請求可能(実費等を加味)
借主(お客さま)から通常通り「家賃の1.1ヶ月分以内」(居住用は原則0.55ヶ月分以内)のまま
双方の合計額家賃の2.2ヶ月分以内におさめること

貸借の代理における特例ルールと計算方法

貸借の代理(つまり依頼者の代わりとして契約権限を持って取引を行うこと)に関しても、媒介と同様の考え方で特例が適用されます。

  • 長期の空き家等の貸主である依頼者から、家賃の2.2ヶ月分に相当する金額を超えない範囲内で報酬を受け取ることができます。
  • もし代理の依頼者(貸主)に加えて、貸借の相手方(借主)からも媒介として報酬を受け取る場合、その両方から受け取る報酬の合計額が家賃の2.2ヶ月分以内に収まっていなければなりません。
  • この場合も、借主である相手方から受け取る報酬は、通常の上限(原則として家賃の0.55ヶ月分以内、承諾があれば最大1.1ヶ月分以内)を超えることはできません。

実務で必須!特例を利用するための絶対条件

この特例を利用して、通常よりも高い報酬を受け取るためには、一つだけ絶対に守らなければならない法律上のルールがあります。

それは、「媒介契約や代理契約の締結に際して、あらかじめ、特例の規定に定める上限の範囲内で報酬額について依頼者(貸主)に対して説明し、合意すること」です。

不動産会社が勝手に「調査に手間がかかったから」と判断して、後から事後報告で2.2ヶ月分の請求をすることは許されません。

契約を結ぶ前の段階で、費用を勘案した報酬額をしっかりと貸主に説明し、納得して合意してもらうことが不可欠です。

この特例ルールがあるメリット・デメリット

長期の空き家等の貸借における特例ルールが整備されたことには、次のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

不動産会社側

今まで「調査や広告の手間ばかりかかって利益が出ない」と敬遠しがちだった家賃の安い空き家物件でも、人件費や実費を含めた適正な報酬(最大2.2ヶ月分)を受け取れるため、ビジネスとして積極的に取り組みやすくなります。 貸主(所有者)側:少額な家賃の物件でも、不動産会社がしっかりと調査や募集活動を行ってくれるようになり、長年放置していた空き家を活用して賃貸収入を得やすくなります。

借主側の初期費用負担は増えないため、入居者も集まりやすいままです。

デメリット

不動産会社側

特例を利用するためには、対象が「長期の空家等」であることの確認や、事前の説明と合意形成という事務的なステップを踏む必要があります。

また、むやみに上限の2.2ヶ月分を請求できるわけではなく、あくまで「媒介に要する費用を勘案して」適正な原価を償う範囲で設定しなければなりません。

まとめ:適正な報酬を受け取り、空き家問題を解決へ

宅建業法における「長期の空き家等の貸借の特例」は、不動産会社が安い空き家を扱う際の赤字リスクを減らし、社会問題となっている空き家の流通を促進するための重要なルールです。

  • 現に長期間使用されていない、または将来も使用される見込みがない物件が対象
  • 事前の説明と合意があれば、合計で「家賃の2.2ヶ月分以内」まで報酬上限が引き上げられる
  • 増額して請求できるのは「貸主」からのみであり、「借主」の負担は通常ルールのまま

このルールを正しく理解し、適正な事前合意のステップを踏むことで、自社の利益を確保しながら地域の空き家問題の解決に貢献することができます。

ぜひ日々の実務に活かしていきましょう。

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免責事項

本記事は、「宅地建物取引業法」および国土交通省の「解釈・運用の考え方」の概要を、実務に携わる方向けに分かりやすく要約・解説したものです。正確な情報提供に努めておりますが、法令の厳密な定義や例外規定をすべて網羅しているわけではありません。最終的な法解釈や、お客様との個別具体的な取引における適法性のご判断につきましては、ご自身の責任において法令の原文を直接ご確認いただくか、行政機関・弁護士等の専門家へご相談いただきますようお願いいたします。

監修者情報

ミカタ株式会社 代表取締役 荒川 竜介
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