「絶対に値上がりする」は処罰対象!不動産営業における『断定的判断の提供の禁止』とは

不動産営業では、物件の魅力をアピールするために様々な営業トークを展開します。
その中で、「この物件は将来絶対に値上がりしますよ」といった言葉でお客様の背中を押したくなることがあるかもしれません。
しかし、こうした不確実な未来のことを確実であるかのように伝える行為は、宅地建物取引業法(つまり不動産業界のルールブックということ)において「断定的判断の提供の禁止」というルールで固く禁じられています。
本記事では、法律の知識がない初心者でもスラスラ読めるよう、禁止されている営業トークの具体例や実務での注意点について噛み砕いて解説します。
結論から言うと?「断定的判断の提供の禁止」ルールのキホン
結論として、不動産会社やその営業担当者が、お客様に契約を勧める際、「絶対に儲かる」「確実に値上がりする」といった、将来どうなるか確実にはわからない事柄を「確実である」と勘違いさせるような言い方をしてはいけない、というルールです。
これは、天気予報で「明日は100%絶対に晴れます。もし雨が降ったら全額返金します」と言い切ってしまうようなものに例えられます。
天気は様々な要因で変わるため、どれだけ精度の高いデータがあっても100%とは言い切れませんよね。
不動産の価値や周辺環境も、経済状況や社会の変化によって大きく変動します。
確実ではない未来を「絶対」と断定してお客様の判断を誤らせることは、非常に高額な買い物である不動産取引において、お客様に致命的な借金や損害を与える危険があるため、法律で厳しく禁止されているのです。
そもそも「断定的判断の提供」とはどんな行為か?
宅地建物取引業法第47条の2第1項では、宅地建物取引業者等(つまり不動産会社やその営業担当者などのことということ)が、契約の締結の勧誘をするに際して、相手方に対して「利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為」をしてはならないと定めています。
将来の「利益」に関する断定はNG
不動産の価格や賃料収入などの利益は、将来どうなるか誰にも確実なことはわかりません。
それにもかかわらず、物件の値上がりが確実であるから将来の転売によって必ず一定の利益が生じるなど、将来利益を断定的に提供することは禁止されています。
NGな営業トークの例
- 「2から3年後には、物件価格の上昇が確実です」
- 「この物件を購入したら、一定期間、確実に収入が得られます。損はしません」
将来の「環境や交通」に関する断定もNG
利益に関することだけでなく、周辺の環境や交通機関の将来の状況に関する断定も禁止されています。
宅地建物取引業法施行規則において、将来の環境、交通その他の利便の状況について相手方を誤解させるべき断定的判断の提供を行ってはいけないとされています。
NGな営業トークの例
- 「将来南側に5階建て以上の建物が建つ予定は全くありません」
- 「この位置には、国道が2から3年後に必ず開通します」
実務で要注意!うっかり言いがちなNGトーク例と対策
悪気(故意)がなくても処罰の対象になる
ここで実務上もっとも注意しなければならないのは、この「断定的判断の提供の禁止」の規定は「故意であることを要しない(つまりわざと騙すつもりがなくても、うっかり断言してしまっただけで法律違反になるということ)」という点です。
営業担当者が個人的な見解や経験から「絶対に値上がりする」と強く信じ込んでいて、悪気なく善意でお客様にそう伝えてしまった場合でも、法律違反として処罰の対象となってしまいます。
リスクもあわせて説明することが鉄則
将来利益に関する情報の提供に当たっては、良い面だけでなく、将来の紛争を防止する観点から、当該不動産取引に関し考えられる「リスク」についてもあらかじめ説明することが求められます。
| トークの分類 | 具体例 | 法的な評価 |
|---|---|---|
| 断定的判断(NG) | 「新駅ができるので、絶対に値上がりします」 | 宅建業法違反となる |
| リスクを含めた説明(OK) | 「新駅の計画はありますが、計画が変更・中止になるリスクもあります。 もし予定通り完成すれば価格が上がる可能性があります」 | 適法であり、推奨される |
違反した場合の重いペナルティ
もし「断定的判断の提供の禁止」に違反してしまった場合、宅地建物取引業法に基づき、監督官庁から重い行政処分を受ける可能性があります。
- 業務停止処分 宅地建物取引業者に対し、1年以内の期間を定めて、その業務の全部または一部の停止が命じられることがあります。
- 免許取消処分 情状が特に重い場合や、業務の停止処分に違反した場合には、不動産業の免許そのものが取り消される(つまり会社として不動産営業ができなくなるということ)ことになります。
営業担当者の言葉選びのミスが、会社全体の存続を揺るがす事態に発展することをしっかりと肝に銘じておく必要があります。
このルールがあるメリット・デメリット
断定的判断の提供の禁止というルールが法律で厳格に定められていることには、次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
買主(お客様)側
営業担当者の根拠のない「絶対に儲かる」といった言葉に騙されるリスクが減り、自分のペースで冷静に物件の良し悪しやリスクを判断して購入できるという大きな安心感があります。
売主(不動産会社)側
オーバートークによる契約後の「言った、言わない」のトラブルや、「値上がりしなかったじゃないか」といった損害賠償請求などの泥沼のクレームを未然に防ぐことができます。
また、業界全体のクリーンなイメージが保たれます。
デメリット
売主(不動産会社)側
お客様の背中を強く押すための言い切りトークが法律違反となるため、言葉選びに細心の注意を払う必要があります。
「絶対」「確実」といった言葉が使えないため、営業活動において見込み客の決断を引き出すのに苦労する場面が出てくる可能性があります。
まとめ:誠実な説明で信頼される営業を目指そう
宅建業法における「断定的判断の提供の禁止」ルールのポイントは以下の通りです。
「絶対に値上がりする」といった甘い言葉は、一時的に契約を取るためには魅力的なツールに思えるかもしれません。
しかし、それはお客様の冷静な判断を奪う行為であり、後になって重大なトラブルに直結します。
プロの不動産営業担当者として、物件の魅力だけでなく、不確実性やリスクも正直に説明する誠実な姿勢こそが、長く続くお客様との信頼関係を築く最強の武器となります。

