宅建業法の「所有権留保等の禁止」とは?代金の3割基準や抵当権設定の例外を解説

宅建業法の「所有権留保等の禁止」とは?代金の3割基準や抵当権設定の例外を解説

不動産取引において、お客様が代金を分割で支払う割賦販売(つまり代金を分割して支払う販売方法のことということ)。

このとき、不動産会社が「代金を全額支払ってくれるまで、この物件の名義(所有権)は渡しませんよ」と主張する行為は、宅地建物取引業法(つまり不動産業界のルールブックということ)によって厳しく制限されています。

これが「所有権留保等の禁止」と呼ばれるルールです。

しかし、法律用語が難しく、代金の3割基準や例外となるケースについて正確に理解できていない営業担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、この所有権留保等の禁止ルールについて、法律の知識がない初心者でもスラスラ読めるよう、わかりやすく噛み砕いて徹底解説します。

結論から言うと?「所有権留保等の禁止」ルールのキホン

結論として、宅地建物取引業者(つまり不動産会社ということ)が自ら売主となって分割払いで不動産を売る場合、物件をお客様に引き渡すか、あるいは代金の「3割」を超える金額を受け取った時点で、必ずお客様に所有権の登記を移さなければならないというルールです。

これは、マイカーローンで車を買う時の「車の名義」に例えるとわかりやすいでしょう。

車をローンで買った場合、支払いがすべて終わるまでは車の名義がディーラーやローン会社のままになっていることがよくあります。万が一支払えなくなった時に、車を没収しやすくするためです。

しかし、不動産という数千万単位の超高額な買い物でこれをやられてしまうと、お客様は「たくさんお金を払って住んでいるのに、いつまで経っても自分の家として登記されない」という非常に不安定な状態に置かれます。

そのため不動産取引では、この車のローンのようなやり方を禁止し、「代金の3割を払ったら、確実に名義はお客様に変えなさい」と法律で義務付けているのが、このルールの本質です。

そもそも「所有権留保」や「譲渡担保」とは何か?

宅建業法第43条では、主に以下の2つの行為を禁止しています。

所有権留保とは「名義を売主のままにしておくこと」

所有権留保(つまり代金を全額支払ってもらうまで、売主が物件の所有権を手元に留めておくことということ)は、残りの代金を取りっぱぐれないようにするための手段です。

しかし、この状態でお客様が物件を第三者に転売しようとしても、名義が不動産会社になっているため手続きができず、お客様の権利が大きく制限されてしまいます。

譲渡担保とは「担保として名義を売主に戻すこと」

譲渡担保(つまり一度買主に所有権を移したあと、残りの代金の担保として再び売主に所有権を戻すことということ)も同様に禁止されています。

「一応名義はお客様に移しますが、まだお金を全部もらっていないので、担保としてやっぱり名義はうちの会社に戻しておきますね」というやり方です。

形を変えただけで結果的にお客様の権利が奪われるため、宅建業法ではこれも明確に禁じています。

宅建業法の「代金3割」基準と登記の義務

それでは、不動産会社は具体的に「いつ」のタイミングでお客様に登記を移さなければならないのでしょうか。

宅建業法では、代金の「十分の三(3割)」という金額を基準にして義務のタイミングを定めています。

原則:物件の引渡しまでに登記を移す

不動産会社は、割賦販売を行った場合、当該物件を買主(お客様)に引き渡すまでに、所有権の移転登記などの売主としての義務を完了させなければなりません。

3割ルール:代金の3割を超えて受け取るまでに登記を移す

ただし、物件を引き渡す時点でお客様から受け取っているお金が「代金の3割以下」だった場合は、まだ登記を移さなくても構いません(所有権留保が可能です)。

その後、お客様が分割払いを続けていき、支払った総額が「代金の3割」を超えるタイミングで、不動産会社は速やかに登記をお客様に移さなければならないと決められています。

受領した代金の額と引渡しの状況登記(名義変更)の義務
引渡し前 + 代金の3割超を受領3割を超えた時点ですぐに登記を移す
引渡し時 + 代金の3割以下を受領まだ登記を移さなくてよい(所有権留保OK)
引渡し後 + 代金の3割超を受領3割を超えた時点ですぐに登記を移す
登記を移したあと担保目的で名義を戻してはいけない(譲渡担保NG)

ローン(金銭の借入れ)の保証をした場合も制限がある

割賦販売だけでなく、不動産会社がお客様の住宅ローンなどの金銭の借入れについて「連帯保証人」になった場合も、同じように所有権留保等の制限がかかります。

お客様が銀行からお金を借りて不動産会社に代金を一括で支払ったとしても、その借金(引渡し後1年以上・2回以上の分割返済)の保証を不動産会社がしているなら、実質的には割賦販売と同じリスクをお客様が負っているとみなされるためです。

この場合も、お客様がローンを返済して残りの借金が代金の7割未満になった(つまり実質的に3割以上の支払いが終わったということ)時点で、不動産会社は登記を移さなければなりません。

所有権留保が例外として認められるケース

この厳しいルールにも、たった一つだけ例外があります。

以下の場合に限り、代金の3割を超える支払いを受けた後でも、不動産会社は所有権留保を続けることができます。

抵当権の登記や保証人の見込みがない場合

不動産会社がお客様に名義を移すと、もしその後お客様が残りの代金を払わずに逃げてしまった場合、会社は大きな損害を受けます。

これを防ぐため、通常は名義を移すと同時に、残りの代金に対して抵当権(つまり万が一支払えなくなった時に不動産を競売にかけて借金を回収できる権利のことということ)を設定します。

しかし、お客様がこの抵当権の登記に応じない場合や、残りの代金を確実に支払うことを約束する連帯保証人を立てる見込みがない場合は、例外として不動産会社は所有権の登記を渡さなくてもよい(所有権留保が認められる)とされています。

これは、自分を守る手段を絶たれた売主(不動産会社)を救済するためのルールです。

このルールがあるメリット・デメリット

所有権留保等の禁止ルールが法律で定められていることには、次のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

買主(お客様)側

代金の3割という一定の金額を支払えば確実に自分の名義の不動産になるため、安心して分割払いを続けることができます。

また、名義が自分になることで、その物件を担保に別の融資を受けたり、将来的に売却したりする自由な権利を手に入れることができます。

売主(不動産会社)側

3割を受け取るまでは所有権を留保できるため、初期の段階でお客様が支払えなくなった場合のリスクを抑えることができます。

また、抵当権の設定を拒否された場合の例外規定があるため、泣き寝入りを防ぐことができます。

デメリット

売主(不動産会社)側

代金の3割を受け取った時点で所有権を手放さなければならないため、残りの7割の代金を回収するリスクを常に抱えることになります。

万が一回収できなくなった場合に備えて、抵当権の設定登記といった法的な保全手続きを確実に行う事務的な手間とコストがかかります。

まとめ:お客様の権利を守り、安全な取引を完了させよう

宅建業法の「所有権留保等の禁止」は、お客様が長期間にわたって不安定な権利状態に置かれるのを防ぐための大切なルールです。

  • 不動産会社が自ら売主となる割賦販売に適用される。
  • 物件の引渡し、または代金の3割を超える額を受け取るまでに登記を移さなければならない。
  • 一度移した登記を担保として戻す「譲渡担保」も禁止されている。
  • お客様が抵当権の設定や保証人を立ててくれない場合のみ、例外として所有権留保が認められる。

不動産の取引において、お客様に安心感を持ってもらうことは何よりも重要です。

このルールを正しく理解し、代金回収のリスク管理(抵当権の設定など)を適切に行いながら、お互いが納得できるクリーンで安全な取引を心がけましょう。

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免責事項

本記事は、「宅地建物取引業法」および国土交通省の「解釈・運用の考え方」の概要を、実務に携わる方向けに分かりやすく要約・解説したものです。正確な情報提供に努めておりますが、法令の厳密な定義や例外規定をすべて網羅しているわけではありません。最終的な法解釈や、お客様との個別具体的な取引における適法性のご判断につきましては、ご自身の責任において法令の原文を直接ご確認いただくか、行政機関・弁護士等の専門家へご相談いただきますようお願いいたします。

監修者情報

ミカタ株式会社 代表取締役 荒川 竜介
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